システムエンジニアはさまざまな業種・業界で活躍しています。そのため、あなたが現在働いている業種以外でも、システムエンジニアを募集している求人は多いです。

実は、業種を変えて転職すると、会社の福利厚生や年収相場が変わります。また、仕事中の会話で扱う言葉も変わります。

ここでは、システムエンジニアが現在働いている業種とは異なる業種に転職するときの考え方・求人探しのポイントを解説します。

システムエンジニアは業種を変えて転職しやすい

会社は何かしらの業種に分類されます。参考までに、経済産業省の企業分類の一部を下の表に示します。

電機・ガス・熱供給・水道業 金融業, 保険業
学術研究, 専門・技術サービス業 情報通信業
鉱業, 採石業, 砂利採取業 建設業
生活関連サービス業, 娯楽業 製造業
宿泊業, 飲食サービス業 卸売業, 小売業
不動産業, 物品賃貸業 運輸業, 郵便業
教育, 学習支援業 医療, 福祉
複合サービス事業 サービス業

このあとで詳しく説明しますが、システムエンジニアの求人は情報通信業か製造業の企業から出されているものが多いです。

そして、情報通信業や製造業からそのほかの業種に転職することは十分可能です。逆に、情報通信業や製造業の企業以外からこれらの業種に転職することもできます。

SEの求人はSIerなどの情報通信業の企業が最も多い

システムエンジニアの求人は、転職サイトなどで検索すると、簡単に多くの求人に触れることができます。

例えば、10万件を超える求人を取り扱っている大手転職サイトのdodaで「システムエンジニア」のキーワードで求人を検索すると、以下のように多くの求人がヒットします。

これらの求人がどのような企業から出されているかを確認すると、ほとんどの求人がSIerから出されています。SIerは、情報通信業に分類される企業です。

さきほどの検索でヒットした求人のうち、下の扶桑電通株式会社の求人は、SI業務を担当するシステムエンジニアを募集しています。

扶桑電通社は、東京都中央区に本社を構えるSIerです。求人票にも記載されているように、さまざまな企業に対してICTを提供しています。

この求人の応募条件は、以下の通りです。「業種未経験者歓迎」と記載されており、SIer以外の企業で働いている人でも応募することができます。

必須の条件として挙げられているのは「システム開発経験」か「プログラミングスキル」のいずれかです。システムエンジニアとして働いているほぼすべての人が条件を満たすのではないでしょうか。

この求人では、C#、Java、VBA、COBOLなどのプログラミング経験者が歓迎されます。

例えば、製造業に分類される電機メーカーで、組み込み系エンジニアとして活躍していれば、C#やJavaを扱っているかもしれません。

また、製造業に限らず、システム開発でエクセルを使用する場合に、VBAでマクロを組んでいる場合も歓迎条件を満たします。

このように、情報通信業での業務経験がなくても、ほかの業種での業務経験を活かして情報通信業の企業に転職することができます。

製造業(メーカー)の求人は製品開発と社内SEの求人に分かれる

システムエンジニアが働く業種として、情報通信業以外で多いのが製造業です。そして、製造業(メーカー)の求人は、販売する製品の開発と、社内SEに分かれます。

・製品開発の求人例

製品開発の求人例は、下の西部電機株式会社の求人が該当します。この求人では、動作管理システムのソフトウェア設計・開発を担当する人材を募集しています。

西部電機社は、福岡県古賀市に本社がある搬送機器、産業機械などを製造・販売しているメーカーです。

そしてこの求人の応募条件は、以下のとおりです。必須条件は、「プログラム設計の経験がある方」のみです。

求人票には、現在働いている業種に関する記載はありません。つまり、どの業種で働いていても、プログラム設計の経験があれば応募して、採用される可能性があります。

製品開発に携わるシステムエンジニアは、西部電機社が製造販売しているような搬送機器や産業機械のように、何かしらのソフトウェアが搭載されている製品のシステム開発を担当します。

・社内SEの求人例

続いて紹介するのは、社内SEの求人例です。

社内SEは、所属する会社のシステム構築・運用保守業務や、ヘルプデスク業務として社員からの問い合わせ対応などを行う職種です。

下に示す奥野製薬工業株式会社の求人では、社内インフラやアプリケーションの企画から運用までを担当する社内SEを募集しています。

奥野製薬工業社は、表面処理・無機材料・食品部門を3本柱として事業展開している化学メーカーです。本社は大阪府大阪市にあり、この求人では同市にある事務所で働く社内SEを募集しています。

社内SEが担当するのは、会社が販売する製品の開発ではありません。自社内のインフラやITシステムの企画から運用までが担当業務です。

そして、この求人の応募条件は、以下の通りです。この求人でも、SI経験も歓迎と記載されており、情報通信業のSIerからの転職も十分可能です。

このように製造業の企業では、製品開発に携わるシステムエンジニアと社内SEを募集しています。いずれも製造業以外の業種からの転職が可能です。

異業種企業の社内SEに転職する

では、情報通信業と製造業以外の業界に、システムエンジニアは転職できるのでしょうか。

ITシステムは、あらゆる業界の企業で利用されています。事業を継続するためや、より効率よく事業を展開するために、ITシステムは必要不可欠です。

そのような社内のITシステムを開発したり管理したりするのは、社内SEの仕事です。そのため、社内SEの求人は、あらゆる業界から出されています。

ここでは、金融業に分類される銀行と、医療業に分類される病院から出されている社内SEの求人を紹介します。

銀行から出されている求人は、下に示す株式会社中国銀行の求人です。中国銀行の求人では、システム開発・管理・運用業務を担当する人材を募集しています。

中国銀行は岡山県岡山市に本店がある地方銀行です。この求人で採用されると、本社か同市にある事務センターのいずれかで社内SEとして働くことになります。

そして、中国銀行の求人の応募条件は、以下の通りです。必須条件として挙げられている内容は、一般的なシステムエンジニアの業務内容です。

金融機関での業務経験があれば尚可と記載されていますが、もちろんほかの業種の企業での業務経験があれば採用される可能性は十分あります。

続いて紹介するのは、病院から出されている求人です。下に示す社会医療法人北海道循環器病院の求人では、病院内のITを担当する社内SEを募集しています。北海道循環器病院は、北海道札幌市にある循環器疾患の専門病院です。

そして、この求人の応募条件は、以下の通りです。必須条件は、プログラミング経験5年以上、DB(データベース)関連、ネットワークの経験です。

入社後の習得でも問題ないと記載されており、これらのすべての経験がなくても応募することができます。

このように、社内SEの求人は、幅広い業種の企業から出されています。

業種が変われば、扱う専門用語や、会社の福利厚生が大きく変わる

システムエンジニアは、業界を変えて転職することができます。そして、システム開発や運用に携わるという意味では、転職前後で仕事内容が大きく変わるわけではありません。

しかし、業界が変わると、仕事で扱う専門用語や、所属している会社の福利厚生が変わります。

さきほど紹介した医療業界と金融業を例に紹介します。

私の友人で、病院でシステムエンジニアとして働いている人がいます。

彼のところには、病院内の医師、薬剤師、看護師などの医療専門職から、システムに関するさまざまな問い合わせや要望が寄せられます。問い合わせのときには、医療用語や医薬品名などが使われることも多いと教えてくれました。

また、銀行で利用されているシステムでは、企業や個人のお金を扱います。そのため、「預金」「金利」「投資信託」などの金融業界で用いられる用語について理解しておかなければなりません。

このように、働く業種が変われば、職場で用いられる専門用語は変わります。

また福利厚生では、病院に勤務していれば、勤務先の病院を受診した場合に治療費がかからないことが多いです。薬を処方された場合の薬代も福利厚生で賄ってくれます。

金融機関特有のルールとしては、1年に1回は1週間続けて有給休暇を取得しなければなりません。これは、お客さんから預かったお金を着服していないかなどを調査するために、強制的に休暇をとらせるものです。

このルールは、お客さんと直接かかわらない本部で働く人にも適応されます。

このように、働く業種が変われば、福利厚生やルールが異なります。

業種が変われば、年収相場も変わる

最後に、業種が変わったときの年収について解説します。実は、働く業種が違えば、平均年収は大きくわかります。

厚生労働省が毎年調査している賃金構造基本統計調査では、業種ごとの平均年収が公開されています。その結果をグラフ化したものが、下の図です。

引用:賃金構造基本統計調査より

年収にこだわるのであれば、少しでも年収が高い業種の企業に転職することで、高年収を得やすくなります。

まとめ

ここでは、システムエンジニアが異業種・他業種に転職するときのポイントについて解説しました。

システムエンジニアの求人は、情報通信業の企業から出されている求人が最も多いです。

次いで多いのが製造業から出されている求人です。製造業から出されているシステムエンジニアの求人は、製品開発と社内SEに分かれます。

社内SEの求人は、あらゆる業種の企業から出されています。業種が変われば、仕事で扱う専門用語や福利厚生が変わります。

業種が変われば、平均年収も変わります。年収にこだわるのであれば、年収が高い業種を理解して転職活動をすることで、年収面でも満足できる転職を実現できます。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。