化学メーカーの研究職への転職を考えているあなたは、求人サイトなどで求人情報を見て、「英語が喋れないのに大丈夫かな」と感じていないでしょうか。
大学生や大学院生のときは、就活対策でTOEICを受験したかもしれません。高得点がとれて、面接のときに英語力をしっかりアピールした人もいると思います。
逆に私は、TOEICで点数が取れなかったので、英語力以外の自分の売りをアピールしました。
では、化学メーカーの研究職に転職するときに、英語力は重要視されるのでしょうか。
ここでは、英語力がどの程度重要視されるかについて、実際の求人例を示しながら解説します。
もくじ
化学メーカーの研究職で英語が必要な場面とは
まず、「英語ができる」「英語力が高い」とはどのような状態を指すのでしょうか。それは、仕事で英語を使う際に、円滑に業務を遂行できることをいいます。
例えば、研究の進捗状況を英語で問いかけられて、英語でスムーズに返答できれば、「この人は英語ができる」と思われます。
逆に、英語で問いかけられても、何を言っているかもわからなかったり、返答をしてもしどろもどろになったりすると、「この人は英語ができない」と思われます。
では、具体的にどのような場面で英語が必要になるのでしょうか。続いて、化学メーカーの研究職で、実際に英語を使う場面について説明します。
メールでのやり取り
化学メーカーは、最終的には製品を販売して利益を得ます。その製品の研究段階に携わるのが研究職です。
そのため、研究職として働いていると、開発職の人や、取引先とのやり取りは必要不可欠です。このとき、メールでのやり取りが頻繁に行われます。
このメールでのやり取りが、同じ部署内だけであれば日本語で問題ありません。これが、海外の会社や、同じ会社の海外支店となると、英語でのやり取りになります。
実際の求人例を紹介します。下の求人は、有機合成品や合成樹脂製品などを製造している、日系グローバル企業のものです。予定勤務地は東京都か兵庫県です。
この求人の「応募資格」の欄には、技術的な内容を英語のメールでやり取りする必要があることが謳われています。
なお、この求人は非公開求人です。そのため、詳細はわかりませんが、求人の「会社概要」の欄に以下のように記載されていました。
このような情報から、日本国内だけでなく、海外にある会社とも英語でメールのやり取りが行われていることが推測できます。
ビジネスでメールのやり取りをするのは、プライベートと大きく異なります。
これは日本語の場合でも同じです。友人に携帯から送るメールと、仕事で上司に送るメールは、文面が全く違うはずです。
取引先や共同研究先に失礼がないような言葉を使い、伝えたい内容を正確にメールで送る必要があります。
取引先との調整や打ち合わせ
メールは文章を打ち込むので、会話をする必要はありません。しかし、働いてると、直接人と会って話し合いをする場面も当然あります。
次の求人は、研究開発グループのマネージャー(管理職)を募集しています。勤務予定地は神奈川県です。
そして、この求人では、日常会話程度の英会話、TOEIC600点以上(目安)の英語力が必須です。
この求人で就職すると、管理職として働くことになります。求人情報に記載されているように、取引先との調整や打ち合わせも仕事の1つになります。
求人情報に詳細は記載されていませんが、調整や打ち合わせの際に、英語が必要になる場面があると考えられます。
TOEIC600点以上の英語力であれば、ある程度の英語ができるとみなされます。また、仕事で英語を使用するので、日常会話ができるだけでなく、ビジネス英語が求められていると考えましょう。
海外への転勤
ここまで説明してきた内容は、いずれも日本国内で働きながら英語を使用するケースです。そのため、日常会話は日本語で、必要時だけ英語を使用します。
しかし、海外への転勤となると、日常会話から仕事中の会話まですべてが英語になります。この場合、高い英語力が必要になります。
次に紹介する求人は、東京都と大阪府に本社がある株式会社ダイセルのものです。
この求人の「対象となる方」と「勤務地」の欄には、それぞれ以下の記載があります。
入社して最初は、兵庫県姫路市にあるイノベーションパークで光学製品の研究開発に携わることになります。その時点でも、英語での資料作成やメールのやり取りが求められる可能性が高いです。
そして、その後は海外のグループ会社などへの転勤を命じられる可能性があります。この求人の「仕事内容」の欄には、多くの海外拠点があることが記されています。
このように、高い英語力があれば、将来的には海外で英語力を活かせる仕事を任されるかもしれません。
英語の論文を読む
研究開発職では、常に新しい知見を求めて実験を行います。やる前から結果がわかっているようなことは基本的にありません。
私は化学メーカーで、化成品の研究に携わっており、主な実験は有機合成でした。
そして、その際に扱っていた候補化合物のコストダウンも研究課題の1つでした。そのため、自分の有機化学の知識を振り絞って、より安い原料で合成できないかを考える日々でした。
それと同時に、論文を検索して、似たような反応を実施している例を調べていました。
論文の公用語は英語です。日本語で書かれている論文もありますが、より多くの知見に触れようと思うと、英語の論文を読むことになります。
入社後すぐに英語が必要になるかはわからない
ここまで、化学メーカーの研究職で英語が必要な場面について解説しました。
ところが、会社によっては、「実際に英語を使う仕事をする可能性は低いけど、英語の勉強をさせられること」もあります。
私がかつて働いていた化学メーカーは、従業員数が300名強で、中小企業よりは規模が大きい準大手企業でした。そして、その会社には、インドに子会社がありました。
私が入社する少し前に、その子会社ができたので、同期入社で英語ができる人は、「インドに興味ない?」と声をかけられていました。
社内でも英語の研修が開かれており、最低でも週に1回はネイティブの先生との英会話レッスンを受けていました。定期的に、ウェブで行う英語のテストも受けされられていました。
しかし、実際に仕事で英語を使う場面があったかというと、私は全くありませんでした。周囲にも、実際に仕事で英語を使っている人はいませんでした。
そして、同期入社の人も、結局インドの子会社への転勤は、いまだにないそうです。
このように、英語の研修に力を入れている会社であっても、英語を使わなくても仕事ができることもあります。
将来の海外留学や勉強会参加のため
この求人は、東京都と山口県宇部市に本社がある宇部興産株式会社の求人です。この求人で採用されると、低分子医薬品原薬や核酸医薬の製造プロセスの構築に携わることになります。
そして、この求人の「仕事内容」と「対象となる方」の欄には以下のように記載されています。
英語の読解能力が、歓迎条件として挙げられています。そして、国外の学会参加や派遣留学も推進されています。
当然、将来的には海外留学や学会に参加するために、英語が必要になるかもしれません。入社後は、英語の勉強を指示される可能性が高いです。
次の求人は、大手化学メーカーの旭化成株式会社のものです。
この求人の「対象となる方」の欄には、中級レベルの英語力を歓迎することが記されています。
また、「仕事内容」と「勤務地」の欄には、それぞれ将来的に海外工場へ赴任する可能性があることが記載されています。
この求人で採用されると、将来的には、テーマのリーダーとしての活躍が期待されます。そして、5年後、10年後には海外の工場へ赴任の可能性もあります。
また、「待遇・福利厚生」の欄には、海外留学や語学研修の制度が整備されていることも記されています。
このような制度を利用して英語力を高めながら、将来のリーダーを目指すようになります。
これらの求人では、英語力は歓迎条件ではありますが、必須条件ではありません。また、求人情報の内容からも、入社後すぐに高い英語力が必要な業務を任されるとも考えにくいです。
社内での目標基準がある
この章の冒頭でも説明しましたが、私がかつて働いていた化学メーカーでは、英語の研修に力を入れていました。
すぐに英語が必要でなくても、英語ができる状態を維持するために、全社的に英語の研修を実施している会社は多いです。
次に紹介する求人は、東京都品川区に本社がある三井金属鉱業株式会社です。主に機能材料事業、金属事業、自動車部品事業を展開しています。
この求人情報の、「歓迎要件」の欄を下に示します。
歓迎条件は、初級レベルの英語ですが、補足として、社内の英語力の目標がTOEIC600点以上であることが示されています。
この求人情報には、「英語でのメールのやり取り」や「英語での電話会議」などの文言はありません。
そのため、すぐには英語が必要ではないものの、将来に備えて英語力を高めておくという会社の方針が伝わってきます。
どのような場面で英語を活用するかはっきりしない求人もある
実際の求人でも、どのような場面で英語を活用するのかはっきりしないものもあります。次に紹介する求人は、種々の化学品の製造、販売をしている某大手化学メーカーのものです。
この求人案件では、樹脂素材の開発から、部品化までのプロセスに関わることになります。
そして、この求人の「対象となる方」の欄には、以下のように歓迎条件として英語初級が挙げられています。
ちなみに、この求人にも、「海外出張あり」や「海外企業とのやり取りあり」などの記載はありません。
しかも、あくまで英語力は「歓迎条件」として載っています。そのため、英語が全くできなくても入社することはできます。
この求人の必須条件は、機能樹脂部品の設計開発と物性評価の経験です。そのため、英語力よりもこれらの経験の方が優先されます。
もし、下のような二人が同時に研究職の求人にエントリーしてきた場合、あなたならどちらを採用しますか。
- 英語は少ししか話せないが、求人案件の分野での研究業績が優れている
- 英語はある程度話せるが、求人案件の分野での研究は未経験
ケースバイケースだと思いますが、多くの場合で前者を採用するのではないでしょうか。その理由は、あくまで研究者としての採用だからです。
転職の場合は新卒と異なり、即戦力としての入社を期待されます。そのため、主に研究で実績があることが求められ、英語力はプラスアルファとして求められることも多いです。
英語力が必須条件に満たなくても応募した方がよい
英語力が高い人は、求人に記載されている英語力のレベルを気にせずにエントリーできるでしょう。
英語力は少し勉強したくらいで上達するようなものではありません。特に独学で勉強するのであれば、上達するのには年単位の努力が必要です。
そのため、英語力が求人で求められるレベルまで上達するのを待っていると、いつまで経っても応募できません。
求人案件は、基本的に募集する期間が決められています。例えば、下の求人であれば14日間だけです。
この求人では、上級レベルの英語力が求められています。
求人を見つけて慌てて英語の勉強を始めても、すぐに上達しないことは明らかです。もちろん、将来的なことを考えて、英語の勉強は始める、もしくは、続けるのがよいです。
研究職に就くのであれば、基本的には英語力を求められます。たとえすぐには必要なくても、将来的にまず間違いなく求められます。日頃から英語の勉強は行った方がよいでしょう。
そして、興味がある求人が見つかれば、たとえ必須条件を満たしていなくても応募した方がよいです。この場合、転職エージェントを活用することをおすすめします。
転職エージェントが、その求人はどの程度の英語力を求めているのかなど、求人情報には記載されていないことまで教えてくれることがあります。
また、転職エージェントからあなたの現状(英語力、どの程度努力をしているかなど)を企業にアピールしてもらえます。
会社によっては、下の求人のように「意欲を持っていること」を歓迎するような求人もあります。
あなたの努力を企業に伝えてもらうことで、内定を勝ち取れる可能性もあります。実際に私の知り合いでも、必須項目を満たしていなくても内定をもらえた人はいます。
気になる求人は、頻繁に出てくるわけではありません。そして、先にほかの誰かが内定をもらってしまうと、転職市場から求人自体がなくなってしまいます。
あなたの希望に近い求人があれば、早めにエントリーしてしまった方がよいでしょう。
英語力不問の求人はほとんどない
では、化学メーカーの研究職の求人で「英語力不問」の求人はないのでしょうか。
複数の転職サイト(doda、マイナビ転職、リクナビNEXT、ミドルの転職)で「化学メーカー 研究 英語 不問」で検索してみた結果、英語力不問の研究職の求人はありませんでした。
ヒットする求人はあるものの、詳細を見ると研究職ではないものや、業界経験不問のような求人ばかりでした。そして、英語力不問であっても、以下のような、製造業の購買に関わるような事務職だけでした。
したがって、化学メーカーの研究職に転職するときは、基本的に英語力は重視されると考えた方がよいです。
化学メーカーは日本国内で研究、開発、営業が完結することは、まずありません。ほとんどの企業で、海外の会社との共同研究を行ったり、海外の会社に営業に行ったりしています。
私が働いていた会社でも、ヨーロッパに営業に行っていました。また、一部の製造品目は、インドや中国で製造していました。
このように、化学メーカーで働くということは、海外の企業とのやりとりがあると考えておいた方がよいでしょう。
まとめ
ここでは、化学メーカーの研究職に転職するときに、英語力がどの程度重要視されるかについて、実際の求人例を示しながら解説しました。
化学メーカーで研究職として働くと、英語論文を読む以外にも、メール、打ち合わせ、海外への転勤などで英語を使用する場面があります。
基本的には、研究職として働くのであれば英語力が求められることを認識する必要があります。
英語力は、一朝一夕で上達するようなものではありません。転職活動のときだけでなく、入社後も英語の勉強は続けた方がよいでしょう。
しかし、すべての研究職の人が英語を使用して働いているわけではないのも現実です。また入社後すぐに、英語が必要な仕事(海外への転勤など)を任されるかはわかりません。
そこで、実際に転職活動をするときは、転職エージェントを活用して、実際にどの程度の英語力が必要かを確認するとよいです。転職エージェントを介してあなたの英語力や、英語に対する熱意をアピールしてもらうこともできます。
もし求人情報で求められる英語力に満たなかったとしても、専門職としての経験値などが要件を満たしているのであれば、エントリーしてみる価値は十分あります。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。