社内SEは、自社内のシステム全般の企画から運用までを任されます。実は、社内SEに転職する人は、システム開発や運用を経験している人ばかりではありません。これらの経験が全くない人でも応募できる求人もあります。

しかし、社内SEがどのような仕事を担当するのかを理解して転職しなければ、転職後の後悔につながってしまう可能性があります。また、仕事内容だけでなく、社内SE特有の仕事のやり方も理解しておかなければ、スムーズに働くことができません。

ここでは、未経験から社内SEに転職するときのポイントについてくわしく解説します。

社内SEの業務内容を理解する

社内SEの仕事は、一言でいうと「自社内のシステムの企画から運用」です。

会社では事業を運営するために、多くのシステムを活用しています。それらのシステムの企画から運用の一部またはすべてを担当するのが、社内SEです。

多くの企業で導入しているシステムの1つは、勤怠管理システムです。

IT技術が発展する前は、下の写真のような紙のタイムカードを利用して、出勤時間と退勤時間をチェックしていました。

例えば下の写真は、とある会社の入り口に設置されている勤怠管理システムです。社員証をかざすか、社員コードを入力することで、出勤時間と退勤時間が記録されます。

このような出勤時間や退勤時間を管理する勤怠管理システムの導入検討から運用までを担当するのも、社内SEの仕事です。

勤怠管理は、従業員がいる会社であれば必ず実施されています。つまり、会社の業種にかかわらず、あらゆる業種の企業で利用されています。

一方で、勤怠管理システムのようにすべての業界で利用されるシステムだけでなく、会社の業界特有のシステムもあります。

例えば、製造業の企業であれば、製品の生産計画、ロット、品質などを管理する生産管理システムを利用します。

また、医療機関を受診したときに、下の写真のように医師がパソコンに向かって診察内容を入力している場面を見たことがあると思います。

このときに利用しているのは、電子カルテです。電子カルテには、患者さんの診察内容、検査結果、薬の使用歴などが電子データとして保管されます。

生産管理システムは製造業、電子カルテは医療業特有のシステムです。それ以外の業界で利用することはありません。

このように業界特有のシステムの企画から運用までを担当するのも、社内SEの仕事です。

ネットワークやパソコンの管理・設定も担当する

次に紹介する株式会社SceneLiveの求人では、社内のシステム導入検討以外に、各部署で使用されているパソコンなどのツールや、社内ネットワークの構築・運用も仕事内容に含まれています。

会社では多くのパソコンが利用されています。個々のパソコンのアップデートやセキュリティ対策、動きが遅いなどのトラブル対応も仕事内容に含まれます。

そして、パソコンやデータベースがネットワークでつながっています。下の写真は、とある会社の社内ネットワークの無線ルーターです。この会社は無線環境でネットワークを構築しています。

このようなパソコンやネットワーク機器の管理・運用も社内SEの仕事内容です。

求人によって仕事の開発要素の割合は異なる

社内SEの仕事は、自社内で利用するシステムの企画から運用までです。実は、そのシステムを自社内で開発するかは、会社によって違います。

例えば、下に紹介する京セラ株式会社の求人では、生産管理システムの企画から開発にかけての上流工程を担当する人材を募集しています。京セラ社は、京都府京都市に本社がある大手電子部品・電子機器メーカーです。

この求人で採用されると、自社内で生産管理システムを企画し、開発も行います。担当するほとんどの業務がシステム開発といえます。

一方で、次に紹介する御国色素株式会社の求人では、業務内容にシステム開発は含まれていません。仕事内容の具体的なイメージについても記載されていますが、IT面の困りごとへの対応が中心です。御国色素社は、兵庫県姫路市に本社がある化学メーカーです。

私の知り合いで、病院で社内SEとして働いている人がいます。彼に仕事内容について質問すると、以下の話をしてくれました。

基本的には、病院内で稼働しているシステムのメンテナンスやトラブル対応が主な仕事になる。診察では電子カルテを利用しているが、「最近特定の操作をしたときにパソコンがフリーズすることがあるから、改善してもらいたい」などの相談がくることがある。そのような場合は、ログを解析して、原因を突き止めなければならない。

私が働いている病院では、勤怠管理システムや電子カルテを一から開発することはしない。それぞれシステムを販売している会社から購入したものを利用している。

私がそれらに若干のカスタマイズを加えることはあるが、わからないことはそれぞれのメーカーに問い合わせて、対処法を教えてもらっている。

これは病院特有かもしれないが、システムだけでなく、機械全般に疎い従業員が多いと感じる。なので、「PHSの操作方法がわからない」「会議室のプロジェクターにうまく接続できない」などの初歩的な相談も多い。

彼の仕事にはシステム開発の要素はほとんどなく、システムの運用やトラブル対応の占める割合が多いです。表現は悪いかもしれませんが、「機械全般の何でも屋」のようなポジションとも言えます。

このように、会社によって社内SEの仕事内容は大きく変わることを覚えておきましょう。

社内SEに未経験から転職するときに求められるもの

では、社内SEに未経験から転職しようとしたときに、どのような経験が求められるのでしょうか。

実際の求人票の応募条件を確認してみましょう。

何らかのシステム開発・運用の経験を求められる求人が多い

前の章でも紹介しましたが、社内SEは会社内で利用されているシステムの企画から運用までを担当します。そのため、入社後に携わるシステム開発や運用の経験を求められる求人が多いです。

前の章で紹介した京セラ社の求人では、システム構築・運用・管理の実務経験が必須条件として挙げられていました。

この求人では、自社で利用する生産管理システムの企画から運用までを担当する求人でした。

また、SceneLive社の求人では、開発、サーバー、ネットワークなどに触れた経験が必須条件に挙げられています。

もちろんこれまで社内SEとして、システム開発やネットワーク管理、社内ヘルプデスク業務などを経験していれば、即戦力として採用される可能性が高いです。

このように幅広い業務ではなく、「ネットワークエンジニアとして企業のネットワーク構築からアフターフォローを経験している」という、社内SE業務の一部を経験している人でも採用される可能性はあります。この場合は、入社後にこれまで経験していない領域の経験を積みながら、一人前の社内SEを目指すことになります。

システムエンジニア未経験でも社内SEに転職できる

では、これまでシステム開発やネットワーク構築などの業務を経験したことがない人は、社内SEに転職できないのでしょうか。実は、選択肢は狭くなりますが、未経験者でも応募できる社内SEの求人はあります。

下に示す公益社団法人ビルメンテナンス協会から出されている求人は、基本的なPCスキルがあれば応募できます。特別な業務経験がなくても応募できることが明記されています。

社内SEとして働くと、会社内のあらゆるシステムやIT機器の相談を受けることになります。そのため、パソコンやIT機器を扱うことに抵抗があると転職後にしんどい思いをすることになります。

逆に、「パソコンの設定を変更することに抵抗がない」「普段から機械を扱うことに慣れている」という人は、転職後もストレスなく学んでいくことができます。

コミュニケーションスキルや折衝のスキルは必須

社内SEは、在籍している会社のあらゆるシステムの企画から運用を担当します。つまり、会社内の全部署と関わりながら仕事をしなければなりません。

私は、今働いている会社の同僚から以下のような相談を受けたことがあります。

研究用のデータをエクセルで整理しているが、データの量が多くて、ファイルを開くまでに時間がかかる。また、今の整理の仕方では、特定の期間のデータだけを取り出すことができない。1つ1つデータを抽出するしかないので、データをまとめるのにかなり時間がかかる。

何かいい方法はないだろうか。

この相談を受けたときに、私は「システム課のエンジニアに相談してみたらいいんじゃないですか」と回答しました。それに対して相談してきた人は以下のように答えました。

一度相談したけど、こちらのニーズをうまく汲み取ってもらえなかった。

その人は、それ以降データ整理に関してシステム課に相談をする人はなくなりました。

このように、社内SEは従業員とコミュニケーションをとり、要望をうまく汲み取らなければなりません。

また、自社内でシステム開発やネットワーク構築をせずに、これらの工程を外部企業に委託している場合は、外部企業との折衝を担当します。

この場合は、外部企業と適切にコミュニケーションをとらなければなりません。自社内の要望を集約し、満足できるシステムやネットワークを構築してもらうよう働きかけます。

運用の工程においても、トラブル内容や改善要望事項を伝達し、対応方法を教えてもらう必要があります。社内システムがスムーズに稼働し続けられるように対応しなければなりません。

社内SEはこのような仕事を担当するので、コミュニケーションスキルは必須のスキルといえます。

IT系の資格があればアピールポイントになる?

すでにシステムエンジニアとして働いている人は、自己研鑽やキャリアアップのためにIT系の資格を取得しているかもしれません。

社内SEに転職するときには、IT系の資格があれば有利に転職できるのでしょうか? 実は、社内SEに転職するときに、IT系の資格が条件に挙げられることはまずありません。

大手転職サイトのdodaで「社内SE 未経験」で求人を検索すると、300件以上の求人がヒットします。

これらの求人を確認しましたが、社内SE未経験者が応募できる求人で、IT系の資格が必須条件に挙げられている求人はありませんでした。つまり、IT系の資格がなくても、問題なく応募して採用される可能性はあります。

さきほどの条件で求人を検索して、IT系の資格について記載されている求人が1件あったので紹介します。

この求人は、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークから出されている求人です。応募条件に、基本情報技術者試験以上の知識が歓迎するスキル・経験として挙げられています。

基本情報技術者試験では、ITエンジニアとして働くための基礎知識が問われます。つまり、この求人では、社内SEとして働くための最低限の知識があることを担保するために、基本情報技術者試験が歓迎条件に挙げられています。

IT系の資格は、あなたがシステムエンジニアとして働くための知識を有していることを証明できます。その証明する相手は、所属する企業内だけではありません。仕事を受注する顧客にも、資格があることでIT系の知識・技術力をアピールできます。

例えば、SIerのように、顧客がメーカー企業やほかのSIerの場合は、IT系の資格があれば仕事を受注しやすくなります。

一方で、社内SEの場合、顧客は自社の社員だけです。そのため、IT系の資格をもっていても、知識や技術力をアピールする相手のほとんどはITの素人です。資格の価値を知っている人は、ほとんどいません。

もちろん、IT系の資格を有していてマイナス評価されることはありません。すでに資格があれば、履歴書に記載するようにしましょう。まだ資格を取得していなくても、転職のために取得を目指したり、取得を急いだりする必要はありません。

年齢制限が設けられていることがある

未経験の職種に転職すると、ほとんどの場合、即戦力として活躍できるわけではありません。何年もかけて実力をつけていかなければなりません。

そのため、未経験者が応募できる社内SEの求人によっては、年齢制限が設けられていることがあります。前に紹介した全国ビルメンテナンス協会の求人では、35歳以下の年齢制限があります。

これは、少しでも若い人材を採用して、長く会社に貢献してもらいたいと考えているからです。20代よりも30代、30代よりも40代の方が、未経験から社内SEに転職しやすいです。

未経験から社内SEに転職を考えているあなたは、少しでも早く転職活動を始めるようにしましょう。

まとめ

ここでは、未経験から社内SEに転職するときのポイントについて解説しました。

社内SEの仕事は、在籍する会社内のあらゆるシステムの企画から運用までを担当することです。会社によってはシステム開発は外部企業に依頼し、企画と運用だけを任されることもあります。

社内SEに転職するときには、何かしらのシステム開発やネットワーク構築などを経験していれば有利です。これらの経験が全くない人も応募できる求人はありますが、転職してから学んでいく必要があります。

社内SEとして働くときには、社内・社外問わず、コミュニケーションをとらなければなりません。そのため、コミュニケーションスキルは社内SEに求められる必須のスキルです。

未経験者が社内SEに転職するときには、年齢制限が設けられていることがあります。採用する企業も少しでも若い人材を求めているので、転職活動を早く開始するようにしましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。