webエンジニアの求人の多くはSIerから出されています。そのため、webエンジニアが転職するとき、SIerは有力な転職先です。

しかし、SIerは事業会社と比べて働き方が異なります。あなたが希望する仕事内容・働き方と現実に乖離があると、後悔につながってしまいます。

転職後に後悔しないためにも、情報収集をしっかり行った上で転職しなければなりません。

ここでは、SIerのwebエンジニアに転職するときのポイントについて解説します。具体的には「SIerで働くwebエンジニアの仕事内容」「転職で求められる経験」「SIerでの働き方」について順に説明します。

SIerで働くweb系エンジニアの仕事内容

webエンジニアは、webアプリケーションを設計・開発・運用を担当する職種です。そして、SIerにwebエンジニアとして採用されると、開発依頼元の企業の要望に沿ったwebアプリケーションを作成・運用することが仕事になります。

例えば、下に紹介する株式会社アイティーシェルパの求人では、通販企業から開発依頼を受けたECサイトの構築やweb開発が業務内容に挙げられています。

アイティーシェルパ社は、福岡県に本社があるECサイト以外にもクラウドサービスやスマートフォンのアプリ開発を行っている企業です。

多くの企業がECサイトを活用して商品販売を行っていますが、ECサイトは自社で開発されたものばかりではありません。

特に、自社でwebエンジニアを抱えることができない企業は、SIerにECサイトなどの開発を依頼します。

そして、ECサイトは開発したら終わりではありません。新商品の発売やセキュリティの改善などで適宜メンテナンスが必要です。アイティーシェルパ社の求人にも、運用・保守の工程にも携わることが記載されています。

このような業務を受託するのがSIerで働くwebエンジニアです。

SIerからの業務委託もある

SIerは、開発依頼があったシステムを開発し、発注元に納品します。ちなみに、先ほど紹介したアイティーシェルパ社の求人には、「100%プライム」と記載されています。

プライムとは、「プライム案件」を省略したもので、開発依頼をする企業と直接契約をした案件を指します。つまり、開発したシステムを利用する企業と契約をする案件です。

その一方で、システム開発は1社だけですべて完結するものばかりではありません。なかには、開発を受託したSIer(一次請け)が、さらに別のSIer(二次請け)に開発の一部を依頼することもあります。

次に紹介する株式会社アローズ・システムズの求人には、「SIerに向けたシステム開発」が仕事内容に挙げられています。

アローズ・システムズ社は神奈川県横浜市にオフィスがあり、webインテグレーション事業とシステムインテグレーション事業を展開している会社です。

二次請けのSIerは、一次請けのSIerから開発工程の一部を受託します。そして、開発した商品を一次請けのSIerに納品します。

そして、一般的には一次請けよりも二次請けの方が、納期が厳しく年収が低くなりやすいです。

このようなピラミッド構造は、IT業界では多く見られます。SIerに転職するときには、業界の構造を理解した上で求人を探すことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。

将来的にwebエンジニア以外の職種へのキャリアチェンジがありうる

SIerは多くのシステム開発のプロジェクトを抱えています。webエンジニア以外のエンジニアが活躍する仕事もあります。

そして、あなたの希望によっては、将来的にwebアプリケーション以外の開発に携わることもできます。

冒頭で紹介したアイティーシェルパ社の求人では、自身の経験を活かしてスマートフォンのアプリ開発に携わることもできます。

webアプリケーションとスマートフォンのアプリケーション開発では、開発環境が異なります。プログラミング言語も異なります。

もちろんアプリケーションの開発という意味では、共通する部分もあり、あなたの経験を活かすことはできます。システム開発に全く携わった経験がない人よりはスムーズに技術を身につけることができるでしょう。

私の知り合いでSIerで働いている人は、入社直後はメールサービスの開発を担当していましたが、何度か仕事内容が変わっています。私が話を訊いた時は、セキュリティエンジニアとして働いていると教えてくれました。

このように、SIerはwebエンジニアとして転職しても、あなたの希望や会社都合で将来的に仕事内容が変わる可能性があります。

webエンジニアとしての業務経験が求められることが多い

続いて、SIerのwebエンジニアに転職するときに求められるスキルについて紹介します。

冒頭で紹介したアイティーシェルパ社の求人では、以下のようにPHPでの開発経験が必須条件に挙げられています。

PHPは、多くのwebアプリケーションで用いられているプログラミング言語です。例えば、ホームページ作成ソフトのWordPressは、PHPで開発されたソフトウェアです。

多くのSIerは、未経験者ではなく、これまでwebエンジニアとして働いた経験がある人材を求めています。あなたにwebエンジニアの業務経験があれば、応募できる求人も多く、採用されやすいです。

SEでシステム開発の経験があれば応募可能な求人もある

アイティーシェルパ社の求人では、PHPでの開発経験が必須でした。しかし、SIerの求人のなかには、webエンジニアとしての業務経験がなくても応募できる求人があります。

次に紹介する株式会社アピリッツの求人は、何らかのシステム開発経験があれば応募できます。アピリッツ社は、東京都渋谷区にオフィスがあり、webサービスシステムやオンラインゲームの企画開発・運営を中心に事業展開している企業です。

求人票には具体的なプログラミング言語が挙げられていますが、これらのプログラミング言語はweb系システム以外にも幅広く用いられています。

例えば、医療系システムや金融系システムはJavaが用いられることがあります。また、人工知能分野では、Pythonを用いられることが多いです。

このような、webアプリケーション以外の開発経験があれば、応募できる求人もあることを覚えておきましょう。

自社開発型と常駐型の違いを理解する

SIerで働くと、働き方は大きく2つに分かれます。それは「自社開発型」と「常駐型」です。

自社開発型は、所属している会社のオフィスで開発業務を行うスタイルです。その一方で、常駐型は開発依頼元の企業が主な職場になります。

自社開発型の企業の求人は、次に紹介する株式会社アピリッツの求人が該当します。アピリッツ社の求人には「100%自社開発」と謳われており、他社に常駐することはありません。

そして、常駐型でwebアプリケーション開発をする企業は、冒頭で紹介したアローズ・システムズが該当します。アローズ・システムズ社の求人票には、以下のように自社開発が50%、常駐が50%であることが記載されています。

つまり、あなたが従事する案件によって自社開発型が常駐型かが異なります。

常駐型であれば、仕事場が開発依頼元の会社なので、関わるプロジェクトによって勤務地が変わります。アローズ・システムズ社の求人の場合は、本社がある横浜か東京都内が勤務地の候補になります。

勤務時間も常駐先によって若干変わります。例えば、所属している会社は9時半始業でも、常駐先の会社が9時始業であれば、常駐先の始業時間に従わなければなりません。

そして、常駐型は開発依頼元のオフィスで働くので、自社の社員よりも開発依頼元の社員と一緒に仕事をする時間が長くなります。

このように、「自社開発型」と「常駐型」の違いで、働き方は大きく異なることを理解しておきましょう。

SIerのwebエンジニアはきついのか

私の周囲のIT業界で働く人に話を訊くと、「SIerはやめとけ」「SIerで働くのはきつい」という話を何度も聞きました。あなたもこのような話を一度は聞いたことがあると思います。

では、現実はどうなのでしょうか。いわゆるブラック企業が多いのでしょうか。この疑問に対する答えは「企業によって異なる」です。

たしかにSIerは他社から開発依頼を受けるので、納期に追われることが多いです。そのため、納期が迫ってくると仕事は激務になりがちです。

しかし、企業によっては残業時間も少なく、労働環境がよいSIerもあります。

例えば、ここまで何度も紹介しているアイティーシェルパ社の求人では、残業時間が月に20時間前後と記載されています。

月の残業時間が20時間であれば、1日あたり1時間程度です。この残業時間であれば、決して多くはないでしょう。

また、最初の章で紹介したアローズ・システムズ社の求人票では、「よこはまグッドバランス賞」に認定された企業であることが紹介されています。

よこはまグッドバランス賞とは、女性の活躍やワーク・ライフ・バランスを推進するために、男女がともに働きやすい職場環境づくりを積極的に進める中小企業を横浜市が認定しているものです。

このように行政から優良企業と認定されるようなSIerもあります。

また、私はかつて転職フェアに参加したときに、数社のSIerの担当者と話をしたことがあります。そのとき、どこの企業も「うちの会社は残業時間が少ないです」「ほとんどの社員が定時に退社しています」とアピールしていたのが印象的でした。

その際に、とある企業から受け取ったパンフレットが下の写真です。この企業はweb系システムの開発だけでなく、業務系システム、制御系システムなど幅広く手掛けているSIerです。

転職フェアに行けば、担当者と直接話ができ、業務環境について質問することができます。ほかにも、転職エージェントを利用しているのであれば、転職エージェントを介して気になった企業に「残業時間はどのくらいか」「有給は取得しやすいか」など、気になる項目を質問するとよいです。

転職を希望する企業の業務環境を転職準備の段階でしっかり確認しておくことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。

まとめ

ここでは、SIerのwebエンジニアに転職するときに押さえておくべきポイントについて解説しました。

SIerで働くwebエンジニアは、他社が事業を展開するために利用するwebアプリケーションを設計・開発・運用することが仕事になります。

また、SIerはwebアプリケーションの開発以外にも多くのプロジェクトを請け負います。そのため、会社都合やあなたの希望によっては、担当するシステムが変わる可能性はあります。

SIerのwebエンジニア求人に転職するときには、webアプリケーションの開発経験が求められる求人が多いです。ただし、何らかのシステム開発に携わった経験があれば応募できる求人もあります。

SIerで働くと、自社開発型か常駐型のいずれかで働くことになります。それぞれに特徴があるので、あなたが希望する働き方を事前に考えておく必要があります。

SIerは二次請け、三次請けになれば、納期が厳しくなり、年収も下がることが多いです。ただ、残業時間が少なく、有休を取得しやすい企業も増えてきています。求人票を確認したり、転職エージェントを介して企業に直接質問したりすることで、事前の情報収集をしっかり行うようにしましょう。

これらのポイントを押さえて転職活動をすることで、転職失敗を防ぎやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。