研究職や開発職だとほとんどが資格を活かして働くわけではなく、さらには転職が盛んな職種ではありません。なかには製薬会社のCRA(臨床開発モニター)のように、転職をすることが珍しくない職種もありますが、何回も転職を経験している人はほとんどいません。

そのため、実際に転職をする場面になると分からないことがたくさん出てきます。

私は研究職として化学メーカーに就職しましたが、自分の想定外の理由で転職活動を始めました。結果的に満足できる転職ができましたが、転職のやり方を間違えると失敗して後悔していたかもしれません。

そこで、研究職・開発職がどのようなやり方で求人を探し転職すればよいのかについて、私の実体験を紹介しながらポイントを解説していきます。

研究職として化学メーカーに就職

私の地元は岡山県です。大学は地元の大学に進学しましたが、環境を変えるために、修士課程から博士課程に進学するときに上京しました。

大学院(博士課程)を修了した段階では、すぐに地元に帰るつもりはありませんでした。そこで、同級生と同じように就活をして、何とか化学メーカーに内定をもらうことができました。

約40社にエントリーをして唯一内定を出してくれた企業だったので、「この会社で定年まで頑張って働こう」と決意してサラリーマン生活を始めたことを覚えています。

ブラック企業ではないが、業務量が多すぎる

新卒で採用された会社は、医薬品原薬と化成品を製造販売している化学メーカーでした。そして私は有機合成の専門職として化成品の研究開発、スケールアップ検討、現場への技術移管までを担当する部署に配属になりました。

私が入社したタイミングが、ちょうど新製品の研究室でのスケールアップ検討が始まった時期でした。繁忙期だったこともあり、ほかの部署に配属になった同期と比べても課せられる業務量は圧倒的に多かったです。

最も大変だったのは2交代勤務です。8:00~20:00と20:00~8:00の勤務を週替わりで約1カ月行いました。申し送りや残務処理もしなければならないので、結局1日14時間くらい働いていました。

残業時間が月60時間を超える月が続くと産業医との面談がありましたが、何度も意味のない面談をしました。最も忙しい時期は、月の残業時間が100時間を超えたこともあります。

まだ20~30代で体力には自信がありましたが、週末は疲れ果てており、ほとんどの時間を休息に当てていました。残業代はすべて支給されていたのでブラック企業ではありませんでしたが、業務量が多すぎるので個人的にはホワイトとも言い難いと感じていました。

また、仕事がしんどすぎて趣味にはほとんど時間を割けませんでした。ランニングが趣味でしたが、ときどき夜の11時くらいから無理矢理走っていました。ただ、翌日の仕事のことを考えると、本格的に走ることはほとんどできませんでした。

このように体力的にも精神的にもつらい状況が続いていましたが、それでも頑張れていたのは婚約していた彼女がいたからです。学生時代から付き合っており、就職したときから遠距離になっていました。

両親同士の顔合わせや結婚式場の予約も終わっており、結納の日取りを決めようとしていたときに事態が急変することになります。

婚約していた彼女との破局でうつ病を発症

結納のスケジュール調整をしようとしていたときに、突如彼女から「今のままでは結婚できない」とメールがきました。直前まで普通にメールのやりとりをしていたので、何が起こっているのか全く理解できませんでした。結局何が原因で破談になったのかははっきり告げられないまま、別れることになりました。

そこからは精神的におかしくなってしまい、激しい動悸、過呼吸に襲われました。夜も全く寝れない日が続いたので、心療内科に通院もしました。当時は完全にうつ状態でした。

いま考えるとすぐに治療をしたおかげで、比較的早期に精神面を立て直せたと感じています。

結婚すれば近くで支えてくれる人ができるので、日頃の激務も頑張って乗り切っていけると感じていました。しかし会社で働き続ける気力が一気になくなってしまったわけです。

今後の将来を真剣に考えて転職を決意

彼女が支えてくれると信じて激務に耐えてきましたが、結婚の話が消滅してしまったので、その会社で働くモチベーションの維持が難しくなりました。

また、同時に「今の生活を続けていると、本当に幸せな生活を送ることは無理なのではないか」とも思いました。結婚願望もあったので、当時の生活では新たに女性と出会ったとしても、仕事ばかりの生活で付き合うことすら難しい状態でした。

そのため将来についていろいろと考えるうちに、「たとえ年収が下がっても、充実した生活を送りたい」と真剣に考えるようになりました。そこで精神的に落ち着いたころに、職場の先輩に「辞めたいです」と告げ、そこから本格的に転職活動を始めるようになりました。

このとき転職先を決めずに退職をして無職になると、収入や住む場所がなくて貧乏生活になってしまうので、在職中に転職先を決めることにしました。

転職サイトに登録して転職活動を始める

ただ初めての転職活動だったので、正直どのようにしたらよいのか全く分からない状態でした。まだ29歳だったので、頑張れば何とか転職先を見つけられるだろうと考え、手あたり次第転職サイトに登録しました。このとき登録したのが以下の4社です。

  • doda
  • UZUZ
  • マイナビエージェント
  • パソナキャリア

登録したときには、それぞれの転職サイトの違いは全く調べていませんでした。しかし転職活動を進めるにつれて、「20代と30代しか利用できない」「40代以上の管理職への転職もサポートしてくれる」などの違いがあることを知りました。

最初は家族が私の体調を心配してくれて、地元の岡山県への転職も考えました。しかし岡山県には研究職だけでなく、開発職の仕事もほとんどなく、満足できる仕事内容、条件での転職はできそうにありませんでした。

当時は自分の人生について冷静に考えられる精神状態ではなかったので、「今の仕事よりも楽であれば何でもよい」と投げやりな気持ちでした。そのような状態にも関わらず、転職活動中は転職エージェントの担当者が熱心に相談に乗ってくれました。

このとき、転職サイトの担当者によって実力差だけでなく、本気度の差もあると実感しました。転職エージェントのなかには、私の過去の経歴や学生時代も含めた実績、興味があることなど、熱心にヒアリングをしてくれる人がいました。もちろん、反対に的外れな求人を提示してくる担当者もいました。

そのため4社の転職サイトに登録をしましたが、合わないと感じた転職サイトは断り、途中からは2社に絞って求人の紹介を受けるようになりました。

転職エージェントを利用して大阪の製薬会社での再出発を決意

複数の担当者と電話による面談をするなかで、とある転職サイトの担当者が「研究職の経験だけでなく、学生時代の経験も活かしてメディカルライターに転職してもよいのでは」と提案してくれました。恥ずかしながら、当時の私はメディカルライターが何かもわかっていませんでした。

メディカルライターの仕事内容は多岐に渡ります。そのなかでも、製薬会社に所属するメディカルライターは、ヒトに対する臨床試験に必要な書類や、承認申請のための書類の作成が主な仕事内容です。また、メディカルライターは研究職ではなく開発職に分類されます。

私は研究職への転職を考えていたので、最初に提案されたときは「あまり興味がない」というのが正直な感想でした。ところが、担当者からの話を聞くにつれて、徐々に興味が湧いてくるようになりました。

担当者がメディカルライターへの転職を提案したのは、以下の理由からと言われました。

  • 博士号を活かすことができる
  • 論文作成経験を活かすことができる

メディカルライターは臨床試験に関する書類や承認申請のための書類を作成しますが、これらの作成には論理的思考能力が求められます。

もちろん、メディカルライターとして働くために博士号は必須ではありません。ただ博士号を取得している人は、物事を論理的に考えられる人が多いことから、実際にメディカルライターには博士号取得者が多いです。

ちなみに、以下は私の博士号の学位記です。

また、私は学生時代の研究テーマに恵まれていたこともあり、多くの論文執筆を経験させてもらいました。そのような経験もメディカルライターとして書類を作成するときに活かすことができます。

以下のような論文をいくつも執筆していたわけです。

私の場合は、業界も異なれば(化学メーカーから製薬会社へ)、職種も違う転職でした(研究職から開発職へ)。自力で求人を探していたら、間違いなく考えなかった選択肢です。

そうして研究職以外にも視野を広げた転職活動を実施し、製薬会社の開発職も含め、いくつか内定をもらうことができました。

このときはかなり迷いましたが、最終的にはメディカルライターへの転職を提案してくれた転職エージェントの助けにより、現職の「大阪にある製薬会社のメディカルライター」として働くことができています。

複数の転職サイトの活用が必須と感じた理由

私は勢いで転職を決意し、右も左もわからないまま転職活動を始めました。転職サイト4社に登録しましたが、転職サイトごとの特徴などは全く調べずに闇雲に登録しました。

いま考えると、転職が成功したのは複数の転職サイトに登録したおかげだと感じています。1社だけの利用だと、実際のところ私は転職に失敗していた可能性が高いです。

最後までお世話になった担当者は、私の強みを真剣に引き出してくれました。転職活動の途中でわかりましたが、その担当者は経験豊富な方であり、成功談や失敗談を含めて実例を交えて教えてくれました。

その一方で担当者によっては「なぜこの求人票を紹介してきたのだろう」と疑問を感じる求人ばかり紹介する人もいました。

納得できない条件で転職しても、すぐに再転職できたり、出戻りができたりするわけではありません。転職は人生の一大イベントなので、あとで悲しい想いをしないためにも慎重に決定する必要があります。

このとき転職サイトの利用が1社だけだと、ほかの担当者との比較ができません。その結果、転職に失敗してしまうリスクが高いです。私がいくつもの担当者を比較したときについても、実力差だけでなく本気度の違いを感じることが多々ありました。

納得できない転職をして後悔しないためにも、転職の際には複数の転職サイトを活用するようにするとよいです。

また、担当者は求人の紹介だけでなく、応募に必要な事務手続きのほとんどを代行してくれたり、面接に向けたアドバイス・想定質問(自己PRや転職理由など)をしてくれたりしました。退職を決意した後も前の会社では激務が続いていたので、自分がやるべき準備だけに集中でき、非常に助かりました。

なお、転職活動のときにほとんど人が気になる項目が「年収」です。これについては、私も気になりました。

私の場合はキャリア採用ではなく、全くの未経験の業界・職種への転職でした。それにもかかわらず、担当者が交渉してくれたおかげで、前職とほぼ同じ給料を出してくれることになりました。私自身が交渉しても、間違いなく同じ給料にはならなかったと思います。

私の場合、元いた会社(転職前の会社)では残業代を含めて年収650万円でした。さすがにここまでの収入は無理でしたが、それでも転職エージェントの担当者が年収交渉をしてくれたおかげで、納得できる条件で転職することができました。

このように転職エージェントのサービスを受けることで、転職で満足できる可能性が高まります。

仕事だけでなくプライベートも充実

当然ですが研究職から開発職に転職をして、最初は苦労の連続でした。そもそもメディカルライターの仕事については転職エージェントから聞いただけで、実際の経験は全くありませんでした。

仕事を覚えるのに時間がかかり、「しんどい」と感じることもありました。ただ論文や書類を作成することは嫌いではなかったので、今ではやりがいを感じながら仕事ができています。

いまだと残業は月に10~20時間しかありません。どうしても遅くなりそうなときは、自宅にパソコンを持ち帰って仕事の続きをすることもありますが、職場で時間を拘束されるよりは精神的に楽です。

それと同時に退社後の時間を趣味に当てられるようになりました。転職前は真夜中にランニングをしていましたが、いまでは明るい時間帯に走ることができており、定期的にマラソン大会にも出場できるようになりました。

以下は週末に地元のマラソン大会に出場したときの記録証です。

ちなみに仕事とは直接の関係はない話ですが、私が出場するマラソン大会に職場の気になっている女性を応援に誘ったら、それをきっかけに仲良くなりました。そこからはとんとん拍子に話が進み、マラソン大会からちょうど1年後に結婚することになりました。

仕事だけでなく、仕事の後の時間も充実しているからこそ今の生活があると感じています。転職によって激務から脱することを検討したら、結果的に転職先の会社で嫁まで見つけることができたわけです。

まとめ

私の場合、このように研究職から開発職(メディカルライター)に転職しました。最初はどのように転職活動をすればよいか全くわかりませんでしたが、最終的には満足できる転職ができ、仕事だけでなくプライベートも充実した生活を送れています。

このように実際に私が転職活動をした結果、転職を成功させるために重要なポイントとしては以下の3点があると気が付きました。

  • 3社以上の転職サイトに登録する
  • 登録した転職サイトのうち、優れた提案をする転職サイトの担当者だけと付き合う(転職サイトを絞る)
  • 本当にあなたのことを考えた提案かを見極める

転職エージェントの担当者の実力は差があります。実際、大手企業が運営する転職エージェントであっても、質の低い担当者に当たってしまうことがあります。そのため、3社以上の転職エージェントを併用することが転職に失敗しないコツです。

こうしたポイントを理解して、中途採用の求人を紹介してもらうようにしましょう。私の経験談があなたの転職活動に少しでも役立てればと思います。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。