資格は、あなたが有している知識を客観的に評価できるものです。転職活動のときに保有している資格があれば、無資格者と比べて有利に転職できます。
では、システムエンジニアが転職するときには、資格をどのようにアピールすればよいのでしょうか。
資格によって取得の難易度や専門性が大きく異なります。すべての資格がどの求人に対しても強いアピールポイントになるわけではありません。資格を活かして転職するときには、資格の特徴を把握しておく必要があります。
ここでは、システムエンジニアが資格を活かして有利に転職するための方法を解説します。
もくじ
保有資格をアピールして転職活動を有利に進める
システムエンジニアとして働いていると、自己研鑽のためや、会社から取得を促されて資格を取得することがあります。システムエンジニアが取得を目指すことが多いのは、下に示すような資格です。
- 情報技術者試験(基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、高度情報処理技術者試験)
- ベンダー資格(AWS認定、シスコ技術者認定、Linux技術者認定など)
これらの資格は、転職のときにどのように活かすことができるのでしょうか。ここからは具体的な求人例を紹介しながら、保有資格をアピールする方法を解説します。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験があれば、最低限のITスキルの証明になる
最初に紹介するのは、資格がITスキルの証明になる場合です。
下に示すMKIテクノロジーズ株式会社の求人では、IT基本スキルが必須条件に挙げられています。そして、ITの基本スキルを証明する手段として、基本情報技術者試験が挙げられています。
MKIテクノロジーズ社は、東京都中野区に本社があるICTサービスを提供している企業です。この求人では、金融系の音声系システム保守・維持管理を担当する人材を募集しています。
基本情報技術者試験は、ITエンジニアの登竜門として位置づけられています。会社によりますが、基本情報技術者試験は、システムエンジニアとして働き始めて1年目や2年目までに取得することが多いです。
基本情報技術者試験では、システム開発や保守に必要な基本的な考え方や知識が問われます。資格を有していれば、IT系の仕事に携わるときに必要な知識や考え方を持っていることを資格で示すことができます。
システムエンジニアとして働いている私の友人3人に資格について話を訊いてみました。彼らはそれぞれ以下の話をしてくれました。
友人A(大手精密機器メーカーの子会社勤務)
基本情報技術者試験は、入社して1年目に取得するように会社に言われた。私の会社では、基本情報技術者試験は全員取得するように言われている。
基本情報技術者試験は、大学生でも取得できるレベル。社会人の1年目か2年目で取っていないと、「全然仕事ができないですよ」と言っているようなもの。
応用情報技術者試験は、入社3年目以上の人が取得していることが多い。
友人B(精密機器メーカー勤務)
私の会社は、基本情報技術者試験も取得していない人がいる。しかし、それで困ることもない。
私は応用情報技術者試験まで取得したが、仕事で役に立つこともないと感じる。
私は、資格を取得すると会社から報奨金がもらえるから取得した。基本情報技術者試験に合格したときには1万円、応用情報技術者試験は3万円もらえたので、少しだけ年収が上がった。
友人C(電機メーカーの子会社勤務)
周囲に資格を持っている人は多い。資格を持っている人の方がIT系の知識が豊富な人が多い気がする。
私は応用情報技術者試験まで取得した。基本情報技術者試験は、試験前に全く勉強しなかったが受かった。それっぽい選択肢を選んだら受かった。
基本情報技術者試験を持っていたら知識の担保にはなると思うが、知識をアピールできるほどのレベルではないと思う。
このように、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験に対する考え方は会社によって大きく異なります。資格の取得を全く促されない会社もあります。
ここで挙げた基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、転職時に履歴書に記載することはできますが、強いアピールポイントにはなりにくいことを覚えておきましょう。
・会社によって資格に対する考え方は異なる
冒頭で紹介したシステムエンジニアが取得を目指すことが多い資格は、すべてシステムエンジニアの仕事をするために必須ではありません。資格なしでも、システムエンジニアの仕事はできます。
しかし、珍しいケースですが、資格が必須条件に挙げられている求人もあります。
次に紹介する株式会社日立ソリューションズ・クリエイトから出されている求人は、基本情報技術者試験が必須条件の1つに挙げられています。日立ソリューションズ・クリエイト社は、日立グループのシステムインテグレーターです。
さきほども述べましたが、基本情報技術者試験を含むIT資格は、保有していなくてもシステムエンジニアの仕事に従事することはできます。では、なぜ資格が必須条件に挙げられているのでしょうか。
それは、最低限のIT系の知識・スキルを持っている人材を求めているからです。基本情報技術者試験と応用情報技術者試験では、領域や試験の難易度に違いはありますが、いずれも下の図のようなシステム開発やシステム運用に必要な基礎知識が問われます。
このように、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験を持っていれば、システムエンジニアとして最低限の知識を持っていることが証明できます。
高度資格があれば、強いアピールポイントになる
ここまで紹介した基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、システムエンジニアが取得を目指すことが多い資格です。
さらに、高度情報処理技術者試験(以下、高度資格)を取得していれば、専門性に特化した知識を有していることを証明することができます。高度資格は、以下の9種類です。
- ITストラテジスト試験
- システムアーキテクト試験
- プロジェクトマネージャ試験
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- ITサービスマネージャ試験
- システム監査技術者試験
- 情報処理安全確保支援士試験
これらの資格は、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験と比べて取得している人は少ないです。さきほど資格の話を訊いた友人3人は、いずれもシステムエンジニアとして10年以上働いていますが、高度資格は誰も取得していません。
実際に高度資格が応募条件に挙げられている求人を2件紹介します。
1件目の求人は、SCSK株式会社から出されているものです。SCSK社は、東京都江東区に本社がある住友商事グループのシステムインテグレーターです。この求人では、不動産向けシステムの開発・保守を担当するシステムエンジニアを募集しています。
この求人では、サービスの上流工程から保守工程までの幅広い工程を担う人材を募集しています。また、経験・スキルに応じてプロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャー(PM)を転職後短期間で任せられる可能性もあります。
そして、SCSK社の求人の応募条件は以下の通りです。歓迎条件の1つに複数の高度資格が挙げられています。
例えば、プロジェクトマネージャ試験を取得していれば、PLやPMに抜擢される可能性があります。キャリアアップを目的に転職をする場合には、プロジェクトマネージャ試験は有利に働きます。
さきほど紹介した私の友人が働く会社のなかには、PMはプロジェクトマネージャ試験を取得している人しかいない会社もあります。「資格をもっていなくてもPMの仕事はできるが、私の会社でPMのポジションの人は全員プロジェクトマネージャ試験を取得している」と教えてくれました。
また、この求人では不動産向けのシステム開発が仕事の1つです。求人票に挙げられているシステムアーキテクトを取得していれば、上流工程に携われる可能性が上がります。ほかにも、データベーススペシャリストを取得していれば、インフラ寄りの仕事を任されるかもしれません。
高度資格は、ITの基礎だけでなく、より専門に特化した知識が求められます。高度資格を取得していれば、転職時に強いアピールポイントになります。
2件目の求人は、NECネッツエスアイ株式会社から出されている求人です。この求人では、ネットワーク構築や仮想化・自動化に取り組む人材を募集しています。
そして、この求人の応募条件には、ネットワークスペシャリストなどの国家資格が必須条件に挙げられています。
ネットワークスペシャリスト試験では、ネットワーク固有の技術からサービス動向まで問われます。システムエンジニアのなかでも、ネットワークエンジニアやインフラエンジニアが取得を目指すことが多い資格です。
NECネッツエスアイ社では、ネットワーク設計のプロフェッショナルとして働くことになります。
ネットワークスペシャリスト試験が必須条件に挙げられているのは、担当する仕事でネットワークに特化した知識が必要だからです。ネットワークの知識・技術を担保するために、資格を必須条件に設定されていると考えられます。
このように、高度資格は専門に特化した知識・スキルを証明することができます。
ベンダー資格は、それぞれの技術に特化した知識・スキルをアピールできる
ここまで紹介した資格は、経済産業省が実施している試験で、いずれも国家資格でした。システムエンジニアが取得を目指す資格は、これらの国家資格だけではありません。
民間企業が実施しているベンダー資格も、取得していれば転職のときにアピールすることができます。システムエンジニアが取得することが多いのは、以下に示す資格です。
資格名 | 実施団体 | 資格概要・求められる知識 |
AWS認定 | Amazon | クラウドの専門知識 |
シスコ技術者認定(CCNA) | Ciscoシステムズ | ネットワークのスキル |
マイクロソフト認定プロフェッショナル(MCP) | Microsoft | Microsoft社製品の実践的スキルや技術的知識 |
オラクルマスター | 日本オラクル | Oracle Databaseの管理スキルを証明する資格 |
Linux技術者認定(LPIC) | LPI | Linux技術者の技術力を3段階のレベルで証明できる。 |
Linux技術者認定(LinuC) | LPI-Japan | Linux技術者の技術力を3段階のレベルで証明できる。LPICの日本国内版。 |
さきほど紹介したNECネッツエスアイ社の求人では、国家資格だけでなくベンダー資格(Cisco)も必須条件の1つに挙げられていました。
ここで記載されているCisco社が実施しているベンダー資格は、CCNA(Cisco Certified Network Associate:シスコ技術者認定)です。CCNAは、ネットワークエンジニアの技能やネットワーク技術の基礎を持つことの証明になる資格です。
NECネッツエスアイ社の求人では、単純なネットワーク構築だけでなく、新たな技術領域にチャレンジする人材を募集しています。シスコ技術者認定を取得していれば、このような仕事に従事できる知識・スキルを有していることの証明になります。
ベンダー資格は、資格試験を実施している民間企業が提供している技術レベルの指標になるものです。仕事内容と資格取得に必要な知識がマッチすれば、転職時にアピールすることができます。
成長意欲があることをアピールする
資格でアピールできるのは、IT系の知識・技術だけではありません。成長意欲があることもアピールできます。
例えば、下に紹介する株式会社システム情報から出されている求人では、IT関連の資格を活かすことができることが記載されています。システム情報社は、東京都中央区に本社があるシステムインテグレーターです。
私の友人に資格取得について話を訊くと、以下のような話をしてくれました。
技術レベルが同じ人材が応募してきたときに、資格を取得していれば書類上のアピールになります。例えば、以下の2人が同時に応募してきた場合、あなたはどちらを採用しますか? 私なら資格を持っている人を採用する可能性が高いです。
資格を取得していれば、「資格取得のために努力できる人」「コツコツ努力できる人」という印象を与えることができます。その結果、採用される可能性は高まります。
このように、資格があれば知識だけでなく成長意欲があることもアピールでき、転職活動を有利に進めることができます。
資格取得よりも転職活動を優先するべき
ここまで取得した資格が、どのように評価され、どのようにアピールできるかを解説しました。
資格を取得していることは、必ずプラスに評価されます。マイナス評価されることはありません。
しかし、転職活動のために資格の取得を目指すべきではありません。なぜなら、資格の取得を目指している間に、あなたに合った優れた求人を逃してしまう可能性があるからです。
下に示すのは、情報処理推進機構のホームページにあげられている試験の実施時期です。特に高度資格は、1年に1回しか試験が開催されません。
勉強期間も含めると、資格を取得するには、1年以上かかる可能性もあります。
そして、転職は早い者勝ちです。企業が望む人材を確保できたら、応募するだけでなく、求人を見ることすらできなくなります。
これから初めて資格を取得しようとする人や、高度資格にチャレンジしようとする人は、資格取得を最優先に考えてはいけません。転職活動を始めることを優先させましょう。
すでに資格を取得していれば、履歴書に取得資格を書くことができます。すぐに転職活動を始めて、企業にアピールするとよいです。
まとめ
ここでは、システムエンジニアが資格を活かして転職活動をするときのポイントを解説しました。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、IT系の知識を証明できる資格です。企業によっては転職時に必須条件に挙げられることもあり、最低限のIT系知識を有していることを示すことができます。しかし、アピールポイントとしては弱いです。
高度資格は、それぞれの専門に特化した知識を証明できます。仕事内容やポジションがマッチすれば強いアピールポイントになります。
ベンダー資格は、民間企業が提供している技術の知識やスキルを証明できます。企業が扱っている技術とマッチすれば、高度資格と同様に有利に転職活動を進めることができます。
また、資格を取得していることで、成長意欲があることを示すこともできます。
これから資格取得を目指す人は、転職活動よりも資格取得を優先するべきではありません。転職活動は早い者勝ちなので、まずは転職の成功を最優先に考えるようにしましょう。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。