会社勤めをしていると、「もっと規模が大きい企業で働きたい」と思うことは自然な発想です。それは、食品業界でも同じだと思います。

そして、あなたがこれまで規模の小さい企業での業務経験があれば、その経験を活かして大手企業に転職できる可能性はあります。

あなたは大手企業にどのようなイメージを持っているでしょうか。「年収が高い」「福利厚生が充実している」などのイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。

ただし、闇雲に求人を探して応募しても、満足できる転職ができる可能性は低いです。大手の食品メーカーに転職するためには、コツを理解して転職活動を行う必要があります。

ここではまず、大手と中小規模の食品メーカーの違いについて説明します。その後、大手食品メーカーに転職するときに求められる経験・スキルについて解説します。そして最後に、大手食品メーカーでもらうことができる年収、転職成功するための方法について紹介します。

大手食品メーカーと中小規模の食品メーカーの違い

まず、大手食品メーカーとはどのような企業でしょうか。従業員数が多い企業でしょうか。実は、大手食品メーカーの明確な定義はありません。

参考までに、中小企業基本法によると「資本金の額または出資の総額が3億円以下」か「従業員数が300人以下」のいずれかを満たす企業が中小企業です。

言い換えれば、「資本金の額または出資の総額が3億円を超える」と「従業員数が300人を超える」の両方を満たせば大企業に分類されます。

私の知り合いで、自己資本100億円、従業員数が約500人の食品メーカーで働いている人がいます。さきほどの分類であれば、この人が働いている会社は大企業です。

ところが、その人は「私の会社は大手ではない」と言います。しかし会社名は出せませんが、この人が働いている会社はほとんどの人が知っていて、CMも流れている会社です。

このように、同じ食品会社でも人によっては大手と呼ぶこともあれば、中規模とみなすこともあります。

ここでは、従業員数が多い会社(おおむね1000人以上)を大手企業として解説していきます。

部署・仕事内容が細分化されている

大手の食品メーカーでは、規模が小さい企業と比べて多くの従業員が働いています。そのため、それぞれの専門職ごとに部署・仕事をセクション分けすることができます。

極端な例でいえば、従業員が1人であれば、開発、営業、製造などのすべての業務を1人で行わなければなりません。

その一方で、従業員数が1000人を超える大手企業であれば、それぞれの専門分野ごとに仕事を分けることができます。

例えば、下の求人はインスタント食品などの加工食品を製造販売している大手食品メーカーのものです。この求人では、商品開発の担当者を募集しています。この求人票に挙げられているのは、商品開発の仕事だけです。

ところが規模が小さい会社では、同じような商品開発職でも、マーケティングや営業の仕事も兼任することがあります。専門の仕事だけでなく、複数の仕事を複数の担当者で兼任するようになります。

この求人のような大手企業であれば、それぞれの専門職ごとに仕事や部署が細分化されていることが多いです。

基礎研究に注力しているのは、大手食品メーカーに限られる

あなたが研究職で活躍したいと考えているのであれば、転職先は大手企業を狙わなければなりません。その理由は、大手企業しか基礎研究を行っていないからです。

研究に従事した経験があればわかると思いますが、研究活動を行うためには多額の研究費用が必要です。研究員の人件費だけでなく、実験機器、試薬も高額なものが多いです。例えば、下の分析機器(NMR)は1,000万円を超えます。

例えば、新規の原料を研究したり、抽出物の構造解析をしたりするときには、NMRは必須の分析機器です。

また、実験機器や分析機器は維持費やメンテナンス・修繕費も必要です。一度購入したら終わりではありません。

そして、研究活動の成果が将来新製品に結びつくかは、やってみなければわかりません。多額の研究資金を投下しても、新製品に結びつく成果が得られず、研究資金を全く回収できない可能性もあります。

つまり、大手企業のように企業体力がある会社でなければ、研究活動を行うことはできません。

実際の研究職の求人例を示します。下の求人は東京都八王子市にある食品メーカーで、香料の研究開発の担当者を募集しています。この求人の仕事内容の欄には、基礎研究として「新たな香料の抽出」が挙げられています。

中小規模の食品メーカーでは研究職の募集はしていません。新たな科学的知見に基づいた斬新な商品の開発に貢献したいのであれば、大手食品メーカーへの転職を目指す必要があります。

福利厚生が充実している

大手企業で働く魅力の1つに、福利厚生の充実が挙げられます。さきほど紹介した求人の「待遇・福利厚生」の欄には、以下のように多くの項目が挙げられています。

大手食品メーカーの研究職で働いている人に福利厚生について質問をすると、以下のような話を教えてくれました。

私の会社ではディズニーリゾートと提携関係があるので、ディズニーリゾートに安く行くことができる。大手企業は有名な企業と組むことができることも強みの1つだろう。

また、交通費の支給額も大手は制度が充実している。例えば、自己都合で新幹線通勤をしようとしたら、乗車券分の交通費しか支給されない会社が多い。ただ私の会社は、乗車券だけでなく特急券分の交通費も支給される。

福利厚生にはほかにも多くの項目があります。例えば、家賃補助や資格取得時の一時金の支給なども福利厚生に含まれます。福利厚生が充実していると、仕事に対するモチベーションも上がりやすいですし、手元に残るお金も増やすことができます。

中小規模のメーカーと比べて福利厚生が充実していることも、大手食品メーカーで働く魅力です。

求人で求められる経験・スキルを理解する

大手食品メーカーに転職をするためには、どのような経験が求められるのでしょうか。また、大手食品メーカーで働くときに必須となるスキルはあるのでしょうか。これらについて順に解説していきます。

研究職も開発職もキャリア採用が基本

大手食品メーカーの求人票をみると、募集している職種での業務経験が必須条件に挙げられていることが多いです。つまり、職種未経験者が転職成功するのは難しいです。

実際の求人例を2例紹介します。まず1例目は、前の章で紹介した大手食品メーカーで調味料原料の開発の担当者を募集している求人です。この求人では、調味料素材に関する研究開発の経験が必須条件に挙げられています。

なお、この求人では「直近にて」と条件が付いているので、昔は携わっていたという人は応募が難しいです。現在進行形で研究開発に従事している即戦力になるような人が応募の対象になります。

続いて2件目の求人は、会社名は非公開ですが、即席めんの具材を開発する担当者を募集しています。この求人では、食品メーカーで商品開発に5年以上携わっている人でなければ応募することができません。

これらの求人のように、大手食品メーカーに転職するためには、募集している職種での業務経験が必須です。

仕事で英語に触れる場面が多い

日本の人口は減少傾向であり、それに伴って食品の消費も頭打ちになっています。そこで多くの食品メーカーは海外の市場を開拓するようになっています。

例えば、大手食品メーカーの日清食品などの持株会社である日清食品ホールディングス株式会社は、グローバルカンパニー化を推進しており、将来的には海外営業利益比率50%以上を目標に掲げています。

引用:中期経営計画|日清食品グループを改変

大手食品メーカーの多くは海外の市場を開拓しており、英語の重要性は年々増しています。このような背景から、大手の食品メーカーに転職を成功させようと思うと、英語ができるかどうかは大きな分岐点になります。

大手食品メーカーの求人では、英語力が必須条件として挙げられていることが多いからです。

例えば、下に示す機能性食品メーカーの求人では、冒頭に「英語を使う仕事」と記載されています。

私には大手食品メーカーで研究職として働いている知人と商品開発職で働いている知人がいます。仕事でどの程度英語を使うのか、どの程度英語力が求められるのかについて話を訊くと、以下のような話をしてくれました。

〇研究職

日常の業務で英語論文を読む。職場は日本人が多いので、仕事で英語を使ってディスカッションをすることはほとんどない。

ただ私の部署では、海外の研究拠点に出向を命じられることがある。この場合は、強制的に英語を使う環境に身を置くことになる。

〇商品開発職

商談相手が外国人であることもある。私は英語がほとんど話せないので、商談中は笑顔で「Yes,yes」と言っているだけ。

上司からは「英語ができるようになれ」と言われるが、仕事が終わるので遅いので勉強する時間がない。しかし、時間がないでは済まない状況になってきている。

私の会社では、今は新卒の就職活動でもTOEICの点数が求められるようになっている。なので、新入社員は英語ができる人がどんどん入社してきている。

なお、さきほど紹介した求人票の求める人材の欄では、英語スキルは「尚可」の位置づけです。つまり、英語力が高くなくても応募することは可能です。

ただし、実際に働き始めると、私の知り合いの話からわかるように、仕事で英語を使用する場面は多いです。

あなたに英語力があれば、転職活動のときに大いにアピールすればよいです。逆にそこまで英語力に自信がなければ、少しでも英語に抵抗がなくなるよう努力をした方が、転職を成功させやすくなります。

大手食品会社は中小規模の企業と比べて年収が高い

大手食品メーカーに転職を考える理由は何でしょうか。なかには、現在の年収に満足しておらず、より高い年収を期待して大手企業への転職を検討している人もいるかもしれません。

では、大手食品メーカーに転職すると高い年収を実現することは可能なのでしょうか。最初に紹介した香料の研究開発担当者を募集している求人では、650万円~800万円が提示されています。

ここまで大手食品メーカーの求人を4件紹介しましたが、すべての求人の提示年収を一覧にしたものが下の表です。なお、すべての求人が会社名非公開なので、紹介した順に番号を振っています。

会社名 仕事内容 提示年収

(万円)

No1 研究・開発 650~800
No2 研究・開発 600~800
No3 商品開発 500~800
No4 商品開発 400~550

No4の求人が最も提示年収が低く、500万円前後です。そのほかの求人は、いずれも最高で年収800万円を得ることができます。

続いて、これらの年収が高いかどうかを、2つの統計を基に考察してみます。

まず1つ目は、大手転職サイトのdodaを運営しているパーソルキャリア株式会社が食品メーカーの平均年収を調査したものです。この調査では、食品メーカーの平均年収は413万円です。

引用:平均年収ランキング 最新版(96業種の平均年収/生涯賃金)より

続いて2つ目は、職種別の平均年収です。パーソルキャリア株式会社が同様に、商品企画/開発、研究、研究開発の平均年収を調査した結果が下の表です。

職種 平均年収
商品企画/開発 493万円
研究 481万円
研究開発 470万円

引用:平均年収ランキング 最新版(166職種の平均年収/生涯賃金)より抜粋

いずれの職種も400万円台後半が平均年収です。

そして、いずれの調査結果と比較しても、ここで紹介した4件の求人で提示されている年収は同程度または高値であることがわかります。このように、大手企業の年収は中小規模と比べて高い傾向があります。

転職エージェントから非公開求人を紹介してもらう

では大手食品メーカーに転職を成功させるためには、どのように転職活動をすればよいのでしょうか。ここまで4件の求人を紹介しましたが、あなたの希望に合った求人を簡単に見つけることができるのでしょうか。

実は、大手食品メーカーの研究職・開発職の求人はほとんどが公開されていません。つまり、求人サイトで闇雲に求人を検索しても、そもそも大手食品メーカーの求人を見つけることも容易ではありません。

ここまで紹介してきた4件の求人は、3つの求人サイトで求人を探して見つけました。この4件は、私が見つけた多くの大手食品メーカーの求人から一部を抜粋して紹介したのではなく、ようやく見つけた4件を紹介しています。

では、なぜ大手企業の求人は公開されていないのでしょうか。それには理由があります。

大手企業の求人は、高年収や充実した福利厚生があるので人気が高いです。そのため、あなた以外にも多くの求職者が探しています。そこで求人を公開すると、募集が殺到してしまい、収拾がつかなくなる可能性があります。

そのような事態を避けるために、大手企業の求人の多くは公開されていません。つまり、大手食品メーカーの求人の多くは非公開求人であり、転職エージェントを介してのみ出会うことができるようになっています。

実は、転職サイトが取り扱っている求人は、約80%が非公開求人と言われています。20代・30代の転職支援に特化しているマイナビエージェントは、以下のように取り扱っている求人の80%が非公開求人と紹介されています。

引用:非公開求人とは? – マイナビエージェントを改変

私は化学メーカーから製薬会社に転職活動をしているときに、転職エージェントを活用しました。

そのときは5社の転職エージェントに登録をし、それぞれの担当者から多くの非公開求人を紹介してもらいました。そして、そのなかには以下のような世界の売上ランキング上位の大手製薬会社のものも含まれていました。紹介しているのは、そのときの求人票の一部です。

私は薬学部出身ですが、製薬会社での勤務経験がなかったので、製薬業界という意味では完全に業界未経験者でした。そのような私にも転職エージェントの担当者は大手企業の求人を紹介してくれたのです。

このように、大手食品メーカーへの転職を考えるのであれば、転職エージェントを利用することで、希望に合った求人に出会える可能性が一気に高まることを覚えておきましょう。

まとめ

ここでは、大手食品メーカーの特徴、転職で求められる経験・スキルなどについて解説しました。

大手食品メーカーは従業員数が多いため、仕事や部署が専門ごとに細分化されています。そして、研究職として基礎研究に従事したいのであれば、大手企業への転職を目指す必要があります。また、福利厚生が充実していることも、大手企業の魅力の1つです。

研究職であっても開発職であっても、大手企業への転職はキャリア採用が基本です。職種未経験者の転職は難しいと考えてください。

食品業界の研究・開発に携わるときに、英語を使用する頻度は増しています。転職時に英語力が求められるだけでなく、転職成功後も英語力を高める努力が求められます。そして大手食品メーカーでは、中小規模の会社と比べて提示されている年収は高めです。

大手企業の求人は、転職サイトではほとんど公開されていません。転職成功のためには、複数の転職サイトを利用する、転職エージェントを活用して非公開求人を紹介してもらうなどして、少しでも多くの求人に触れる工夫が必要です。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。