医薬品の開発に従事するCRC(治験コーディネーター)は、医療系の資格を有している人が多いです。CRCは医療現場で働く職種なので、医療の知識は必要不可欠です。

実は、医療系の資格がない人(無資格者)でもCRCとして働くことができます。ただし、実際に無資格者が応募できる求人は限られています。

では、無資格者のあなたがCRCに転職成功させるためには、どのように転職活動をすればよいのでしょうか。闇雲に求人を探しても、なかなか転職を成功させることはできません。

ここでは、医療系の資格がない人がCRCに転職するときの転職活動の仕方について解説します。

医療系の資格がなくてもCRCに転職できる

医療系の資格がなくてもCRCとして働くことができます。この事実を示す1つのデータを紹介します。

下に示すのは、医療機関にCRCを派遣するSMO(治験施設支援機関)で働くCRCが保有している資格の割合を示したグラフです。約1/4が医療系の資格を有していないことがわかります。

引用:日本SMO協会データ2019より

CRCの仕事には、医療系の資格が必要なものはありません。実際の求人票で、仕事内容を確認してみましょう。

次に紹介するのは、SMOのノイエス株式会社から出されている求人の仕事内容の欄です。この求人では、福島県で働くCRCを募集しています。

2番目に挙げられている内容は一部切れてしまっていますが、内容は「カルテの中から、治験にご参加頂く患者さまのピックアップ、治験にご参加頂くための同意説明・同意取得の補助」です。

これらの仕事のなかに、医療系の資格が必要な被験者から採血をしたり、点滴を実施したりする内容は含まれません。被験者に治験薬の説明をするのも、薬剤師資格は必要ありません。

いずれの仕事も、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの医療系の資格がなくても従事できる仕事ばかりです。CRCの業務は、医療系の資格がないあなたでも問題なく担当できます。

SMO(治験施設支援機関)のCRC求人に転職する

CRCの求人は、ここまで紹介したSMOと、医療機関から出されています。そして、無資格者が応募できるのはSMOの求人だけです。

SMOは、CRCを医療機関に派遣する企業です。さきほど紹介したノイエス社もSMOです。

CRC業務の未経験者がSMOに就職すると、まずはCRCとして働くための研修を受けます。研修では治験の基礎知識を座学で学びます。その後実際に医療機関を見学し、治験の実務を学んでいきます。

このようなプロセスを経て、一人前のCRCとして働けるようになります。そのため、医療系の資格がないあなたでも確実に実力を身につけることができます。

医療や医薬品開発に関わった経験があれば、無資格でも応募できる求人がある

資格がなくてもCRCとして働くことができますが、どうしても有資格者と比べて応募できる求人は限られます。

CRCは医薬品の治験に関わる職種です。一緒に仕事をするのは医療スタッフなので、仕事では当然医療の知識が必要です。転職でも医療の知識や臨床現場での勤務経験があれば、有利に転職できます。

無資格者の場合は医療現場で実務の経験はありませんが、少しでも医療や医薬品開発に関わった経験があれば、応募できる求人があります。実際の求人例を3件紹介します。

まず最初の求人は、冒頭で紹介したノイエス社です。この求人の応募条件は下の通りです。

多くの医療資格が挙げられていますが、MR(医薬情報担当者)かMS(医薬品卸販売担当者)の経験があれば応募することができます。

いずれも医療機関を訪問して、自社製品や製薬会社の医薬品を宣伝・販売することが仕事です。

仕事相手は医療機関で働く主に医師や薬剤師です。これらの医療知識が豊富な専門職と医薬品の話をするためには、医療の知識が必要不可欠です。

2件目の求人は、SMOの3H CTS株式会社から出されているものです。この求人は、CRO(医薬品開発業務受託機関)での就業経験かGCP、カルテ読解、疾患、検査値などの知識があれば応募することができます。

CROは、製薬会社から医薬品の開発工程を受託する企業です。CRCは医薬品の開発工程に従事する職種なので、CROでの業務経験があれば、治験の概要や、医療の知識が身についているとみなされます。

3件目の求人は、シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社から出されている求人です。この求人は、複数の条件が挙げられれていますが、医療機器の営業経験があれば応募することができます。

医療機器の営業担当者の仕事相手は、医療機関で働く医師、看護師、臨床検査技師、放射線技師、臨床工学技士などです。このような職種と対等に仕事をするためには、医療、検査、医薬品などの知識がなければ医療機器の営業活動はできません。

求人票に直接記載がないものもありますが、いずれの求人においても医療に関する知識が求められていることは共通です。

このように、医療系の資格がなくても応募できるCRCの求人はあります。応募のためには医療や医薬品の開発に関わった経験が求められます。

医療系の学部や大学院を卒業していなくても求人に応募できる

医療系の資格がなくてもCRCとして働くことができますが、大学や大学院で医療について学んでいる必要はありません。

前の項で無資格者でも応募できる求人を3件紹介しましたが、いずれの求人も大学や大学院の学部や専攻は指定されていませんでした。

さきほど紹介した求人ではMR、MS、CRO、医療機器メーカーの営業職で働いた経験があれば、CRCの求人に応募することができました。

これらの職種や企業で働いている人には、文系出身者も多いです。理系の学部出身者でも、医学や薬学とは関係性の低い学部出身の人もいます。例えば、私の知り合いには、理学部の地球科学科出身でMRとして活躍している人もいます。

そして、CRCとして働いている人のなかには、大学で文系学部を卒業した人もいます。CRCの求人に応募するときには、出身学部を気にする必要はありません。

無資格者が応募できる求人は限られる

無資格者でもCRCの求人に応募し、採用を勝ち取ることはできます。しかし、それは狭き門です。

約10万件の公開求人を取り扱っている大手転職サイトのdodaで「CRC」「治験コーディネーター」で求人を検索すると、それぞれ217件、125件の求人がヒットします。

そして、CRCを募集している求人のほとんどは医療系の資格が必須条件に挙げられています。

さきほどの検索で、医療系の資格がなくても応募できる求人は、ここまで紹介した3件しかありませんでした。医療系の資格がなくてもCRCに転職することはできますが、応募できる求人数はかなり少ないことがわかります。

そのため、医療資格がない人がCRCに転職を成功させるためには、転職活動を工夫しなければなりません。

・転職エージェントの力を借りて、転職を成功させる

さきほど、転職サイトで求人を検索しても、医療系の資格がない人が応募できる求人は少ないことを紹介しました。転職サイトで検索して見つけることができる求人は、公開求人と呼ばれます。

実は、転職市場にある求人のなかで、公開求人は20%程度と言われています。ほとんどの求人は公開されていない非公開求人です。

そのため、転職エージェントから非公開求人を紹介してもらうだけで、あなたが出会うことができる求人数は約5倍になります。

非公開求人は、条件が優れていることが多いです。そのため、応募が集中して収拾がつかなくなることを防ぐために非公開にされています。

つまり、非公開求人には、医療系の資格がない人でも応募できる求人がある可能性が高いです。

このように、少しでも多くの求人に触れて、転職を成功するための工夫をすることが大切です。

CRCで働く魅力と無資格で苦労する点

CRCとして働くと、医療機関で働くことになります。あなたは業務未経験で、医療系の資格もない状態で働くことになります。

CRCで働く魅力は何でしょうか。逆に、無資格でCRCに転職するとどのような苦労があるのでしょうか。

新薬の開発に携わることができる

医薬品は私たちの健康にとってなくてはならないものです。若い人は日常的に医薬品を使用することはほとんどありませんが、多くの高齢者や病気になった人にとっては、なくてはならない存在です。

医薬品の種類によっては、健康寿命を劇的に改善することができるものもあります。死を待つしかない状態から健康に生活できる状態に改善できる斬新な治験薬の開発に従事できる可能性もあります。

このような、医薬品の開発に従事できることが、CRCとして働く最大の魅力です。

医療現場で働くので、医療の専門知識の習得は必須

治験は、研究計画書に従って進められます。研究計画書の内容は、医療の知識がないと読むことすらできません。

CRCとして働くとき、主な職場は医療機関です。そして、被験者、医師、薬剤師、臨床検査技師と治験薬や検査について話をしなければなりません。そのため、CRCには医療に関する深い知識が求められます。

私の知り合いで薬剤師資格をもってCRCとして働いている人がいます。その人にCRCに求められる知識について質問をすると、以下の話をしてくれました。

CRCは医療系の資格がなくても働くことができる。実際にSMO雇用のCRCで、医療系の資格を持っていない人を見ることはある。

CRCには、病気の治療に関するあらゆる知識が求められる。関わる疾患の特性は最低限知っていなければならない。ほかにも、治験薬の効果をどのように評価するかや、疾患の標準的な治療法なども把握しておく必要がある。

治験の計画書や、被験者への説明に用いる書類は、専門用語が多用されている。治験に関わるときには、かなり深い知識が必要になる。

医療現場で用いられる言葉やカルテに記載される言葉には、教科書に記載されていないような略語や言葉があります。

例えば、血液検査を実施することを「labo実施」と記載する医師がいます。これは血液検査などの検体検査を英語で「Laboratory test」と呼ぶので、それを略したものです。これは医学や看護の教科書に記載されているものではありません。

このような医療現場ならではの言葉が日常的に使用されます。医療現場での就業経験がない無資格者がCRCとして働くときには、このような環境で働くことを認識しておかなければなりません。

医療機関で雇用されるCRCには転職できない

最初の章で、CRCはSMOと医療機関で募集されていることを紹介しました。ここまで紹介してきた求人はすべてSMOから出されているものでした。

そして、医療機関から出されているCRCを募集している求人には、医療系の資格がない人は応募することができません。

例えば、次に紹介する横浜みのるクリニックは、神奈川県横浜市にある医療機関です。横浜みのるクリニックから出されている求人には「CRC業務」と「臨床検査技師業務」の両方を兼任することが記載されています。

この求人で挙げられている採血、心電図、肺機能検査は、臨床検査技師資格があれば従事することができます。資格がない人は担当することができない仕事ばかりです。

そして、この求人の応募条件は下の通りです。臨床検査技師の免許が必須条件に挙げられています。

ここでは紹介を割愛しますが、医療機関で働くCRC(院内CRC)の求人では臨床検査技師以外にも、看護師や薬剤師の有資格者を募集しているものもあります。いずれの場合も、医療系の資格がなければ応募することができません。

無資格者がCRCへの転職を目指すときには、医療機関ではなくSMOへの転職を目指すことになります。

CRCに転職したときの年収・給料を確認する

最後にCRCに転職したときの年収を確認しましょう。

ここまでSMOから出されている求人を3件紹介しました。冒頭に紹介したノイエス社の求人では、以下のように384万円~436万円が提示されていました。

ノイエス社を含む3社の求人で提示されている年収をまとめたものが、下の表です。

会社名 提示年収

(万円)

ノイエス(株) 384~436
3H CTS(株) 300~372
シミックヘルスケア・インスティテュート(株) 380~600

この3社で提示されている年収にはばらつきがありますが、未経験から転職する場合は、350万円前後の年収になると考えられます。

サラリーマン・OLの平均年収はおよそ500万円です。この数値と比較すると、無資格でCRCに転職すると転職直後は年収が下がる可能性があります。

3社目に紹介したシミックヘルスケア・インスティテュート社は、最大で600万円の年収が提示されています。つまり、CRCとしての経験を積むことで、この水準の年収になる可能性は十分にあります。

このような年収事情を把握して転職することで、転職後の後悔や転職失敗を防ぎやすくなります。

まとめ

ここでは医療系の資格がない人がCRC(治験コーディネーター)に転職するときに押さえておくべきポイントについて解説しました。

CRCは、医療機関で医薬品の治験を担当する職種です。担当する仕事に資格が必要なものはありません。そのため、資格がなくてもCRCに転職することはできます。

しかし、無資格者が応募できる求人数は限られています。少しでも多くの求人に触れるための工夫をすることが、転職を成功させるためには重要です。

CRCの求人はCRCを医療機関に派遣するSMOと医療機関から出されています。無資格者が応募できるのは、SMOから出されている求人だけです。

CRCとして働く最大の魅力は、新薬の開発に従事できることです。しかし、無資格で働き始める場合は、医療現場特有の専門用語や言葉を身につける努力をし続けなければなりません。

医療系の資格がない状態でCRCに転職すると、現在の年収よりも下がる可能性もあります。

これらの情報を基に転職活動をすることで、満足できる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。