製薬会社は、医薬品の研究開発、製造販売を主な事業としています。規模が大きい企業では1,000人以上の従業員がおり、さまざまな職種が活躍しています。

そのため、製薬会社では多くのシステムが導入され稼動しています。これらを運用するために、社内SEの求人も募集されています。

では、製薬会社の社内SEは具体的にどのような仕事に従事することになるのでしょうか。医薬品の研究開発や製造販売にどのように関わるのでしょうか。

ここでは、製薬会社の社内SEに転職するときのポイントを解説します。まずは、社内SEの仕事内容を整理します。そして、転職で求められる経験や、ほかの業界と比べた製薬会社求人の特徴を紹介します。

製薬会社のシステム部門で社内SEとして働く

まずは、製薬会社で働くシステムエンジニア(社内SE)がどのような仕事を担当することになるのかを確認しましょう。

実際に、製薬会社の社内SEを募集している求人を1例紹介します。この求人は、東京都中央区に本社を置く日本製薬株式会社のものです。日本製薬社は、血漿分画製剤が主力製品としており、武田薬品工業グループの製薬会社です。

仕事内容の欄には、「業務システム、インフラ等の導入・運用・保守」「企画、マネジメント業務」が挙げられています。日本製薬社の求人で挙げられている仕事内容について具体的な内容を順に紹介します。

システムの導入・運用・保守

製薬会社ではさまざまなシステムを導入・稼働させて、事業活動を展開しています。製薬業界以外でも用いられるシステムや、製薬業界に特有のシステムもあります。

例えば、昔はタイムカードで勤怠を管理していました。しかし、最近はシステムで勤務時間を申請したり、社員証で出退勤の管理をしたりする企業が多いです。

勤怠のシステムは、一度導入すると半永久的に同じシステムを利用し続けることはありません。例えば、開発元がアップデート版をリリースした場合に、バグが含まれる可能性があります。そのため、アップデート版を購入するのではなく、新しい別のシステムを導入することもあります。

このような企業が事業を展開するために必要な基幹システムの導入・運用・保守を社内SEが担当します。

また、製薬会社が行っている最新の研究内容は、機密情報ばかりです。そのため、外部への情報漏洩を防ぐために徹底したセキュリティ対策を実施しなければなりません。具体的には、シンクライアントシステムを導入したり、USBメモリーの使用を制限したりしています。

社員に支給される端末には最小限の機能だけを付与し、業務データやアプリケーションをサーバーで一括管理することで、端末には重要データは保存されません。このようなシンクライアントシステムを導入することで、万が一端末を紛失してしまっても機密情報を守ることができます。

また、会社から支給されるパソコンで使用できるUSBメモリーを制限することで、ウイルス感染を防いだり、情報の漏洩を防いだりする必要があります。

これらの設定を行い、それぞれのITインフラの管理することが製薬会社の社内SEの仕事内容です。

医薬品の研究・臨床開発で利用するシステムの開発は外注が基本

製薬会社は、医薬品の研究開発・製造販売を生業としています。医薬品の研究開発・製造販売には汎用のシステムでは対応できないことが多いため、製薬会社特有のシステムもあります。

例えば、新薬が発売される前には医療機関で臨床試験を行う必要があります。このときには、臨床試験の進捗を管理するシステムを利用します。

ただし、これらのシステムを自社で開発することはありません。ほとんどの場合、SIerに外注します。

製薬会社の社内SEが担当するのは、外注先のSIerとの折衝です。具体的なシステムの仕様や、運用のノウハウなどを開発先のSIerと打ち合わせます。

また、医薬品開発は成功確率が非常に低く、その確率は3万分の1と言われています。これは、3万個の化合物のなかからようやく1個の医薬品ができるということです。

そして、この確率を少しでも上げるために、デジタル技術を導入する企業が増えています。

具体的には、次に紹介する大日本住友製薬株式会社の求人が該当します。この求人の仕事内容の欄には、AIなどを利用した戦略策定が挙げられています。

この求人でも、システム開発に関する実作業のほとんどは外部に委託しています。担当するのは主にIT戦略の策定や企画です。

ただし、外部委託先のSIerとの打ち合わせを実施するので、どのようなシステムを導入したいのかをSIerに説明する場面はあります。

このように、製薬会社の社内SEは、基幹システムや医薬品の研究開発に関わるシステムの開発、導入、運用に関わる業務を担当します。

転職成功のために求められる経験

前の章では、製薬会社の社内SEが担当する仕事の具体的な内容を紹介しました。

では、製薬会社の社内SEに転職するときには、どのような経験が求められるのでしょうか。製薬会社での業務経験は求められるのでしょうか。

システムの運用・保守経験は必須

まず、ほとんどの求人で求められるのは、システムの運用・保守の経験です。多くの求人で必須条件の1つとして挙げられています。

次に紹介する求人は、医薬品の受託製造を主な事業としているニプロファーマ株式会社の求人です。この求人ではITインフラを担当する社内SEを募集しており、ITインフラの導入、運用の経験が必須条件として挙げられています。

また、冒頭で紹介した日本製薬社の求人では、以下のようにITに関する実務経験が求められています。そして、システムベンダーでの実務経験があれば応募することができます。

製薬会社が利用しているほとんどのシステムは、外部企業が開発したものです。そのため、開発元(システムベンダー)の進捗管理や、導入後のサポートを受ける場面では、システムベンダーでの業務経験があれば活かすことができます。

製薬業界での社内SEの経験は必要ない

社内システムの運用・保守は、社内SEの主な業務です。では、製薬業界での勤務経験がなくても、製薬会社の社内SEに転職できるのでしょうか。

実は、製薬会社の社内SEは製薬業界での勤務経験がなくても応募できる求人が多いです。前の項で紹介した2件の求人も、製薬業界での勤務経験は求められていませんでした。

また、次に紹介するアロエ製薬株式会社の求人では、製薬会社(医薬品メーカー)での勤務経験は歓迎条件の1つです。

アロエ製薬社は、スキンケア商品を中心に事業展開している小林製薬グループの企業です。

製薬会社の社内SEが管理するシステムは、製薬会社以外でも導入されているものが多いです。私がかつて働いていた化学メーカーでも勤怠システム、イントラネットを利用しており、メールアドレスも割り振られていました。

そして、製薬会社でも同様の基幹システムを利用しています。つまり、製薬企業以外の社内SEの経験があれば、その経験を活かして製薬会社の社内SEとして働くことができます。

製薬会社の社内SE求人の特徴を理解する

製薬会社と一言でいっても、規模や出資企業(日系または外資)などの違いがあります。では、製薬会社ごとに仕事内容に違いはあるのでしょうか。

また、製薬企業とほかの業界の社内SEの違いはどのようなものがあるのでしょうか。製薬会社で働くことでメリットはあるのでしょうか。

外資系製薬会社は求人が少なく、ヘルプデスク業務が中心

ここまで紹介してきた求人は、すべて日系の製薬会社の求人でした。外資系の製薬会社では社内SEを募集していないのでしょうか。

実は、外資系製薬会社の求人は少ないです。私が大手転職サイト数社で検索した限りでは、公開求人を見つけることはできませんでした。

また、外資系製薬会社の社内SEは、仕事内容はヘルプデスクが中心になります。外資系製薬企業で働いている人に訊くと、以下のような話をしてくれました。

社内のSEと話をするのは、パソコンの入れ替えや、ソフトウェアをインストールしてもらうときくらい。システムにトラブルが発生しても、自社内のSEを呼ぶことはない。自分で海外の問い合わせ先に連絡して対応している。

外資系企業は出資元が海外にあります。社内のシステムを管轄している部門も海外にあることが多いので、日本の企業は出資元が定めたシステムを利用するだけです。

このように、外資系の製薬会社の社内SE求人は求人数が少なく、仕事内容は自社内のヘルプデスク業務が中心になります。外資系製薬会社への転職を希望するのであれば、求人数が少ないので、転職エージェントを利用して非公開求人を紹介してもらうなどの工夫が必要です。

製薬会社は福利厚生が充実している

最後に、製薬会社の社内SEに転職するメリットについて紹介します。実は、製薬会社は福利厚生が充実している企業が多いです。

さきほど紹介した大日本住友製薬社の求人では、福利厚生の欄には以下のように記載されています。

これらの制度を活用しても、直接収入が増えるわけではありませんが、日常生活や自己啓発で支出を減らすことができます。

例えば、休日やアフターファイブにスポーツ施設を利用するときの施設利用料の一部を負担してくれる制度があります。

また、子供を保育園や託児所に預けるときの利用料も負担してくれます。

これらの制度を有効活用することで、生活を充実させることができ、支出を減らすことも可能です。製薬会社で働くと、手厚い福利厚生の恩恵を受けられることを覚えておきましょう。

まとめ

ここでは、製薬会社の社内SEに転職するときのポイントについて解説しました。

製薬会社の社内SEは、社内の基幹システムの導入・運用・保守を担当します。基幹システムに限らず、医薬品の研究開発や臨床開発に関わるシステムは自社内で開発することはありません。

転職の際には、システムの運用・保守は必須の経験です。未経験者の転職成功は難しいです。ただし、製薬業界での業務経験は求められないので、社内SEやシステム開発・運用の経験があれば応募できる求人が多いです。

製薬会社のなかでも、外資系製薬会社はヘルプデスク業務が中心です。そして、求人数が少ないので、転職エージェントを活用するなどの工夫をする必要があります。

また、製薬会社は福利厚生が充実している企業が多いです。多くの制度が整備されているので、十分に活用することで生活を豊かにすることができます。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。