医療機器の技術は日進月歩で進化しています。新たな技術を用いた医療機器が臨床現場で利用されることにより、診断・治療の質は格段に向上しています。

このような技術革新を担うのが、医療機器メーカーの研究職の仕事です。

では、具体的にはどのような仕事を担当するのでしょうか。そして、医療機器メーカーの研究職として働くと、どのくらいの年収をもらうことができるのでしょうか。

ここではまず、医療機器メーカーの研究職がどのような仕事を担当するのかを紹介します。続いて、研究職の求人の特徴、年収の相場を順に解説します。

研究職の使命は新規技術の開発

研究職は研究開発職と呼ばれることもありますが、開発職と研究職は仕事内容が明確に異なります。

開発職は既存の技術を駆使して、新たな製品を生み出し、世に出すことです。それに対して研究職は、これまで世の中にない技術を生み出すことが仕事内容です。

実際の求人でも、このことが明記されているものもあります。

下に示す大手医療機器メーカーのテルモ株式会社の求人では、未来技術の探索を行うことが仕事内容として挙げられています。なおこの求人には、具体的にどの医療機器の研究に携わるかは記載されていません。

続いて、具体的な仕事内容が記載されている求人を1例紹介します。

下に紹介するのは、株式会社リコーの求人です。リコー社というと、プリンターのイメージを持っている人もいるかもしれません。

リコー社はトナーやインクの開発で培った技術をヘルスケア事業に展開し、DNA標準プレートの技術開発を行っています。下に紹介する求人は、DNA標準プレートの製品・技術開発の担当者を募集しています。

DNA標準プレートとは、遺伝子検査に使用するプレートであり、感染症や遺伝子組み換え食品の検査に使用されます。

プレートのウェルにターゲット配列を挿入した細胞を注入しますが、ターゲット配列を挿入するためには遺伝子組み換えが必要になります。この求人では、遺伝子組み換え技術の開発だけでなく、DNAプレート技術を活かした次世代のサービスの立案も担当します。

このように、医療機器メーカーの研究職では、既存の技術を活かして商品開発をするのではなく、これまでにない技術を開発することが仕事内容になります。

転職で求められるのは即戦力になれる経験と実力

続いて、医療機器メーカーの研究職に転職するときにどのようなスキル・経験が求められるのかについて説明します。

さきほど紹介した株式会社リコーの求人の「対象となる方」の欄を下に示します。この求人では、バイオの知識と実務経験が必須条件に挙げられています。

この求人で採用されると、DNAプレート技術の開発に携わることになります。そして、技術開発をするためには、遺伝子組み換え実験の経験や分子生物学(Molecular biology)の知識が必要です。

研究職として働くときには、経験や専門知識がないと仕事になりません。新しいアイデアを出すためにも、基礎知識がなければ、アイデアを考えることもできないでしょう。

研究職では新たな技術を開発することが使命です。そのような仕事に携わるためには、技術開発のために必要な知識や実験経験があり、即戦力として活躍できる実力が求められます。

医療機器メーカーでの経験は問われない

さきほどの求人では、バイオの知識とバイオテクノロジー分野などでの実務経験が必須条件として求められていました。そして、これらの知識や経験がある人材は、医療機器メーカー以外にもいます。

例えば、製薬会社における生物学的製剤の研究開発においても、これらの知識が必要です。目的のタンパク質を発現させるための遺伝子組み換えDNAを細胞にトランスフェクションさせ、大量の目的タンパク質を発現させています。

実は、医療機器メーカーの研究職に転職するときには、医療機器メーカー以外の企業からの転職も可能です。このことは、求人票にも記載されています。

次に東京都港区に本社がある川澄化学工業株式会社の求人を紹介します。この求人では、ステントに用いる金属の加工技術の開発を担当する人材を募集しています。

そして、この求人の「対象となる方」の欄には、技術開発の業務経験が必須条件に挙げられていますが、医療機器に関する業務経験は不問です。

金属加工の技術開発は、医療機器メーカー以外でも行っています。例えば、部品メーカーや自動車メーカーなどでも金属加工技術の開発は盛んに行われています。

このように、ほかの業界での経験を活かして医療機器メーカーの研究職に転職することができます。

製品開発経験や製品の上市経験があれば転職しやすい

繰り返しになりますが、研究職の仕事は新しい技術の開発です。これまで世の中にない技術を生み出すために日々実験を行うことになります。

ところが、開発する技術は新しければ何でもよいわけではありません。メーカーの研究職で働くので、最終的に製品に活かせるような技術を開発しなければ意味がありません。

そのため、研究職として働くときに最終製品の開発経験があれば、どのような技術が製品につながるかがわかりやすいです。実際の求人票でも、研究職の経験だけでなく、製品の開発経験の経験も求められることがあります。

実際の求人例を2例紹介します。1例目は、株式会社日立製作所でDNAシーケンサーの基礎技術の研究開発を担当する人材を募集しています。

日立製作所社は大手の総合電機メーカーですが、バイオ・ヘルスケア事業として医療機器の研究開発も展開しています。

そして、この求人の「対象となる方」の欄には、分子生物学に関する研究経験と装置の開発経験の両方が必須条件として挙げられています。

続いて紹介するのは、冒頭で紹介したテルモ株式会社の求人です。この求人の「対象となる方」の欄には、製品開発の経験が必須条件の1つとして挙げられています。また、製品の上市経験があれば好ましいとも記載されています。

私は化学メーカーで研究職として働いていましたが、何でも自由に検討できるわけではありませんでした。事業部には定期的に検討結果を報告しなければなりませんでしたし、今後どのような検討をするかも逐一報告していました。

そして、いつも言われていたのが「コストはどのくらいかかるか」でした。目標原価を超えることが明らかな条件の検討をしていると「それ意味あるの?」と言われたことを覚えています。

つまり、研究者としての知的好奇心を満足させるための研究ではなく、最終製品を生み出すための研究をしなければなりません。そのために、最終製品の開発経験があれば、どのような実験・検討をすべきかを理解できているとみられ、アピールポイントになります。

このように、研究の経験だけでなく、製品開発の経験があれば有利に転職活動を進めることができます。

研究のスペシャリストであることをアピールする

研究職として働いて、実力がある人とない人の差は大きいと感じることがあると思います。難関大学を卒業・修了していても、実力がない人はいくらでもいます。

このように、研究の実力を証明するのは難しいですが、実力をアピールする1つの方法として博士号(Ph.D.)を取得していることが挙げられます。

そして、医療機器メーカーの研究職の求人のなかには、博士号が歓迎条件に挙げられているものもあります。

この求人は、この章で紹介した株式会社リコーの求人です。この求人では、博士号の取得は歓迎条件の1つです。

もちろん、博士号取得者のすべての人が研究者としての実力があるわけではありません。

私が大学院時代に、指導教員が「〇〇君は明らかに実験量が足りてないし、研究もできていない」と愚痴をこぼしていたのを聞いたことがあります。そのような状況だったにも関わらず、その人は3年で博士号を取得していました。

博士号を取得していれば、研究のスペシャリストとして見られやすいです。求人によっては、博士号を取得していると有利に転職活動を進めることができます。

研究職の求人は少ない

大手転職サイトのdodaで「医療機器メーカー 研究職」で検索すると、9件の求人しかヒットしません。そして、これらの求人は派遣会社の求人ばかりであり、実は研究職の求人でもありません。

そして、「医療機器メーカー 研究」で検索すれば、247件の求人がヒットします。

しかし、この247件の求人の中身も研究職以外の求人がほとんどです。具体的には、設計開発職や営業職の求人が多いです。そして、研究職を募集している求人はこのうち6件でした。

あなたの専門分野や勤務地を考慮すると、希望に沿った求人に出会える可能性はかなり低いことがわかります。

そこで、満足できる転職を実現するためには、少しでも多くの求人に出会うための工夫をする必要があります。その方法で最も効果的なのは、転職エージェントに非公開求人を紹介してもらう方法です。

実は、転職サイトで公開されている求人は、転職サイト運営会社が取り扱っている求人の20%程度と言われています。つまり、残りの80%は公開されておらず、どんなに検索しても閲覧することはできません。

転職エージェントを利用して非公開求人を紹介してもらうことで、あなたが出会うことができる求人は4倍に増えることを覚えておきましょう。

医療機器メーカーの研究職の年収相場を理解する

最後に、医療機器メーカーの研究職でもらうことができる給料について解説します。

ここまで4件の求人を紹介しました。最初に紹介したテルモ株式会社の求人では、600万円~850万円が提示されています。

そのほか3件の求人も含めて、提示年収と仕事内容をまとめたものが下の表です。

企業名 提示年収

(万円)

仕事内容
テルモ(株) 600~850 詳細な記載なし
(株)リコー 427~750 DNA標準プレート技術・遺伝子組み換え技術の開発
川澄化学工業(株) 350~720 加工技術の開発
(株)日立製作所 600~1000 分子生物学の知識に基づいた研究

求人によって、提示年収が大きく異なることがわかります。最も高い年収を提示している日立製作所社の求人では、最高で1000万円の年収を勝ち取ることができます。

そしていずれも求人も、最低額と最高額の間に1.5倍程度の差があります。できるだけ高い年収を得るためには、あなたの経験と募集している仕事内容が合致していなければなりません。

実は、転職エージェントを利用していると、非公開求人の紹介だけでなく、年収の交渉や職務経歴書の添削をしてくれます。

求職者が年収の交渉を企業と直接するのは、悪い印象を与えるのではないかと考えてしまい、なかなかできるものではありません。

私が利用した転職エージェントは、年収交渉で「できるだけ頑張ります」と言ってくれて、実際に転職により大幅な年収アップを成功させました。

また、職務経歴書を熱心に添削をしてくれて、「実際に携わった仕事内容をより具体的に記載してください」「学生時代の経験も盛り込みましょう」と電話でアドバイスをくれたことを覚えています。

研究職は求人票で提示されている年収の幅が広いです。転職エージェントに年収交渉をしてもらったり、あなたの経歴をしっかりアピールできるようなアドバイスをもらうことで、年収面で満足できる転職を実現しやすくなります。

まとめ

医療機器メーカーの研究職には、新製品のための技術開発が求められます。設計・開発職とは仕事内容が異なります。

研究職に転職するためには、携わる領域の専門知識、研究の実務経験が必ず求められます。このときの経験は、医療機器メーカー以外の企業での経験でも問題ありません。

研究活動は、最終的に製品に結びつくものでなければなりません。あなたに研究だけでなく、製品開発の業務経験もあれば転職活動でアピールできます。

また、研究職を募集している求人は、ほかの職種と比べて求人数が非常に少ないです。そのため、あなたの経験を活かせる求人を見つけるためには、工夫が必要です。

医療機器メーカーの研究職の年収は、企業によってまちまちであり、提示額の幅が大きいです。年収面で転職に成功するためには、転職エージェントのサービスを利用し、年収交渉を代行してもらうとよいです。

これらの点を理解して転職活動を行うことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。