30代のシステムエンジニアとして働いているあなたは、今後の働き方に悩んで転職を考えていると思います。

転職を成功させるためには、「なぜあなたが転職しようとしているのか」「転職によってあなたの不満は解消できるのか」を冷静に見極めなければなりません。

30代のシステムエンジニアは、転職の選択肢が多いです。「キャリアアップ」「別業界への転職」「システムエンジニア以外への転職」など、さまざまな可能性があります。あなたの考える理想的な働き方を実現できる転職をするためには、これらの情報を踏まえて転職活動をすることが大切です。

ここでは、30代のシステムエンジニアが転職をするときの考え方について解説します。

30代のシステムエンジニアの転職理由

システムエンジニアが、転職を考える理由はさまざまです。あなたが感じている不満を解消できる求人でなければ、転職をしても満足して働くことはできません。

転職活動を始める前に、「今何に対して不満があるか」を明確にしましょう。

仕事内容がつまらない

システムエンジニアとして30代まで働いていると、仕事にはある程度慣れていると思います。その一方で、会社が扱っているプロジェクトによっては、「同じ内容ばかりでつまらない」と感じているかもしれません。

私の友人のなかにもそのような経験をしている人がいます。彼は、大手精密機器メーカーの子会社で、カメラのシステム開発を担当しています。現状について以下のように話してくれました。

私は入社して約10年カメラのシステム開発だけを担当しているが、正直飽きている。上司に違うプロジェクトを担当したいと2,3年言い続けているが、全然話を聞いてくれない。

扱う製品が変わると、同じプログラミング言語でもプログラムが大きく異なります。製品によってシステムの課題も違います。

社内のプロジェクトの種類が少なかったり、なかなか異動させてもらえなかったりすると、今在籍している会社では不満を解消することが難しいです。

「同じような仕事ばかりでつまらない」「もっと違うプロジェクトをやってみたい」と感じていたら、転職して環境を変えることも考慮しましょう。

仕事が忙しすぎる

システムエンジニアとして働いていると、常に自分の裁量で仕事量や仕事の順序をコントロールできるわけではありません。

突発的なトラブルに対応するために、仕事のスケジュールが変わることもあります。どうしても締め切りまでに仕事が終わらない場合は、残業が続いてしまうこともあります。

そのような状態は、システムエンジニアとして働いていると必ずあります。しかし、そのような状態が常態化してしまっているのはよくないです。

例えば、上司のプロジェクトマネジメントが不十分だと、顧客や他部署の言いなりになってしまい、業務量が増える一方です。

また、業務量の調整だけでなく、精神面のケアも大切です。どうしても残業が続いてしまうときに、上司から残業していることを責められると、「この会社で働き続けるのは無理」と感じてしまいます。

業務量の過多が常態化して、残業時間が多すぎることに不満を感じている場合は、残業時間が少ない会社への転職を考えましょう。

年収に不満がある

30代になると家庭をもったり、住宅ローンを組んだりしているのではないでしょうか。今後のライフプランを考えると、お金の心配が尽きることはありません。

男性女性関係なく、今もらっている給料だけでなく、今後もらう給料も考えて将来設計をする必要があります。

さまざまな職種の年収は、賃金構造基本統計調査として厚生労働省が結果を公開しています。システムエンジニアの年代別の平均年収は、以下の通りです。

引用:賃金構造基本統計調査より

このグラフとあなたの現在と将来の年収を比べて、このまま現在の会社で働き続けるべきかを考えてください。当たり前ですが、給料が多くなって不満を感じる人はいません。

今働いている会社でもらうことができる年収が明らかに上のグラフと比べて低いのであれば、年齢相応の年収をもらうことができる企業への転職を検討してもよいです。

30代のシステムエンジニアの転職方法

ここまで紹介したように、30代のシステムエンジニアが転職を考える理由はさまざまです。ほかの人にとって魅力的な求人でも、その求人があなたにとっても魅力的な求人とは限りません。

続いて、転職理由ごとにどのような求人を探せばよいかについて、実際の求人例を紹介しながら解説していきます。

新しいことにチャレンジできる求人

会社の規模やプロジェクトによっては、入社してからずっと同じテーマを担当している人もいます。

さきほど紹介した私の友人のように、約10年同じ製品を担当することもあります。新しい技術や、これまで経験したことのないプロジェクトにどんどん挑戦していきたい人にとっては、そのような働き方では満足できません。

例えば、下に紹介する株式会社HALでは、豊富にプロジェクトがあり、入社後にもスキルチェンジが可能であることが求人票に記載されています。例えば、アプリ開発のエンジニアからインフラエンジニアへのキャリアチェンジも可能です。

ほかにも、私の知り合いが働くSIerでは、扱えるプログラミング言語が増えると、職能の評価が上がります。その企業では、業務系システム、web系システム、制御系システム、インフラなどのシステム開発を幅広く受託しています。

新しいことにどんどんチャレンジしたい人は、このような企業の求人を探すとよいです。

残業時間が少ない求人

残業時間が増えれば、最終的な年収は増えます。しかし、その分プライベートに割ける時間は減ります。

あなたが、「残業代が減ってもいいから、趣味に割ける時間を増やしたい」「早く家に帰って、家族と過ごす時間を増やしたい」と考えているのであれば、残業時間が少ない会社への転職を考えましょう。

例えば、次に紹介するSaze株式会社は、求人票に残業時間が記載されています。Saze社は、情報システム構築に関わる業務全般を行っており、システム構築の提案からテストの下流工程まで幅広く事業を展開しています。

また、この求人では、みなし残業や裁量労働制もないことが謳われています。つまり、残業が発生したら、働いた時間の残業代はすべて支給されます。

かつては、「システムエンジニアの労働環境はブラック」と言われました。しかし、法整備が進み、今となっては労務環境が劇的に改善しています。

残業時間に不満がある人は、このように残業時間が少ない会社への転職を検討しましょう。

希望の年収を手にできる求人を探す

前の章で、システムエンジニアの年代別の平均年収を紹介しました。30代のシステムエンジニアが現実的にもらうことのできる年収相場と、将来的にもらうことのできる年収をイメージできたと思います。

システムエンジニアを募集している求人の中には、社員の年収例が記載されているものもあります。

例えば、次に紹介する株式会社JCBCの求人では、30歳と45歳の年収例が紹介されています。JCBC社は、東京都台東区にオフィスを構えるSIerです。

さきほどの賃金構造基本統計調査の結果とこの年収例を比べると、30歳の年収例は平均的、45歳の年収はやや高い水準です。

このように、将来の年収推移も確認することで、年収面でも満足して長期的に働くことができます。

異業種への転職

システムエンジニアが働いている業種と聞いて、どの業種をイメージしますか?

下の写真のような電気製品を製造・販売している製造業でしょうか。このテレビは、大手電機メーカーのSHARPから製造販売されている製品です。

それとも、目に見える商品ではなく、ソフトウェアやネットワークを設計・提供している情報通信業でしょうか。例えば、SIerは情報通信業に分類されます。

私の大学時代の友人には、工学部卒業でシステムエンジニアになった人が何人もいますが、全員いずれかの業界で活躍しています。

実は、システムエンジニアが活躍している業界は、製造業と情報通信業だけではありません。ほぼすべての業界で活躍できるといっても、過言ではないです。

ここでは、金融業に分類される銀行でシステムエンジニアを募集している求人を紹介します。

下の求人は、愛媛県松山市に本店を置く株式会社伊予銀行から出されている求人です。この求人では、銀行の基幹システムを設計開発するシステムエンジニアを募集しています。

私が利用している銀行では、下の写真のようなweb通帳やスマートフォンアプリでの残高確認ができます。このようなエンドユーザー向けシステムの企画開発・運用も、銀行で働くシステムエンジニアの仕事に含まれます。

そして、伊予銀行の求人の応募条件は、以下の通りです。システムエンジニアとして働いていれば、いずれかの条件を満たすのではないでしょうか。

ここでは金融業の求人を紹介しましたが、ほかにも医療業に分類される病院や、不動産業に分類される不動産取引業者など、システムエンジニアは幅広い業界で活躍できます。

このように、30代のシステムエンジニアはIT業界から転職することもできます。特定の業界だけに囚われるのではなく、幅広く求人を探すことで、あなたに合った求人を見つけやすくなります。

別職種への転職

あなたはシステムエンジニアとして働き続けることにストレスを感じていませんか?

実は、これまでシステムエンジニアとして働いた経験を活かして、ほかの職種にキャリアチェンジすることもできます。

・システムコンサルタントへの転職

1例目は、システムコンサルタントへの転職です。

システムコンサルタントは、顧客のシステムの企画から携わる職種です。顧客のシステムにおける課題を解決するためのシステム企画・開発を担います。

下に示す株式会社メソドロジックの求人では、企業のシステム課題のヒアリングから要件定義、SIer選定のアドバイスを担当するシステムコンサルタントを募集しています。

そして、この求人の応募条件は、以下の通りです。「オープン系基幹業務システム開発」か「webアプリケーションシステム開発」のいずれかの経験があれば応募条件を満たします。

システムコンサルタントは、企業が抱える社内システムの課題を解決する職種です。システムコンサルタントの仕事の具体例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 新たなシステムの導入を支援して、売り上げ向上や人件費削減を達成する
  • 既存の社内システムの改良
  • 開発環境の改善提案

システムコンサルタントはこのような仕事を担当します。そのため、システムコンサルタントに転職するときには、システム開発の経験は必ず求められます。

また、システムコンサルタントの1つの特徴は、システムエンジニアと比べて年収が高いことが挙げられます。

賃金構造基本統計調査のシステムエンジニアとシステムコンサルタントの年収を比較したものが、下のグラフです。ソフトウェア作成者とその他の情報処理・通信技術者がシステムエンジニアです。60歳までで比較すると、システムコンサルタントの年収の方が100万円~200万円高いことがわかります。

引用:賃金構造基本統計調査より

30代でシステム開発経験を積んでいれば、システムエンジニアからシステムコンサルタントへキャリアアップすることもできます。

・IT事務への転職

2例目はIT事務への転職です。

下に紹介する株式会社リクルートスタッフィング情報サービスでは、ヘルプデスク業務、サーバーやネットワークの保守、IT事務などのITに関わるサポート業務を担当する人材を募集しています。

IT事務は、受付や業務管理などのいわゆる事務職ではありません。ヘルプデスク業務やサーバーやネットワークの保守も担当するので、システムエンジニアとして身につけた知識・スキルを活かせる職種です。

そして、この求人の応募条件は以下の通りです。IT事務未経験でも応募することができます。

IT事務は、システム開発の上流工程を任されることはありません。あなたが「設計やプログラミングを続ける自信がない」「システムエンジニアで身につけたITの知識を活かしたい」と感じていれば、IT事務は転職の選択肢に入ります。

・営業職への転職

3例目は営業職への転職です。システムエンジニアの経験を活かせるのは、何かしらのシステムやシステムを搭載した製品を販売している企業の営業職です。

実際の求人例は、下の東京メディコムホールディングス株式会社の求人が該当します。この求人では、病院や診療所で利用する電子カルテなどの医療システムの営業職を募集しています。

あなたは病院に行ったときに、下の写真のように医師が診察内容をパソコンで入力している場面を見たことがあるでしょうか? このときに利用しているのが電子カルテです。

そして、東京メディコムホールディングス社の求人の応募条件は、以下の通りです。営業職の経験がなくても応募できます。

営業職なので、顧客に対して自社の製品・システムをわかりやすく説明するスキルが求められます。システムの開発や保守を任されるわけではありません。

「顧客と直接関わりながら仕事がしたい」「システムや製品を開発するのではなく、間接的にシステムに関わる仕事がしたい」と感じていれば、営業職への転職を検討してみる価値はあります。

年齢がネックになることがあるので、転職活動は早く始めた方がよい

ここまで30代のシステムエンジニアは、さまざまな求人に応募できることを紹介しました。

最後に述べるのは、年齢に関する注意点です。30代のシステムエンジニアが転職しようとしたときには、年齢がネックになることがあります。

実際に求人によっては、年齢制限を設けているものもあります。例えば、下に示す株式会社ユーシスの求人では、「35歳未満」が応募の条件になっています。この求人は、30代後半のシステムエンジニアが応募することはできません。

実は、募集・採用において、年齢制限は法律で禁止されています。つまり、年齢制限をすることは違法です。

しかし、この法律には、例外的に年齢制限を設けることが認められる場合があります。それは、「長期キャリア形成を目的とした場合」です。

さきほど紹介した求人にも、同じ文言が記載されています。そのため、この求人の年齢制限は違法ではありません。

この求人に限らず、同じような年齢制限が記載されているシステムエンジニアの求人はあります。

あなたが採用する立場になった場合、25歳と35歳の2人が同時に応募してきた場合、どちらを採用しますか? 採用する企業が求めている条件と応募者の経験が完全に合致すれば、35歳の人材を採用するかもしれません。しかし、応募者の年齢を考えると、「できればもう少し若い人材を採用したい」と思うのではないでしょうか。

求人票に年齢制限の記載がなくても、求人を出している企業は、少しでも若い人材を求めています。

30代のシステムエンジニアは応募できる求人の選択肢は多いですが、どの求人でも採用されるわけではありません。年齢がネックになって、当たり障りのない理由で採用を断られる可能性も十分あり得ます。

あなたがやるべきことは、少しでも早く転職活動を始めることです。「今のプロジェクトが落ち着いたら転職活動を始めよう」「今は部署の人数がギリギリだから、補填があってから転職しよう」と考えてはいけません。少しでも若い方が転職しやすいです。

不採用通知をもらって悲しい想いをする可能性を減らすためには、転職活動を早く始めるようにしましょう。

まとめ

ここでは、30代のシステムエンジニアが転職するときの考え方や、どのような求人が選択肢になるかを紹介しました。

30代のシステムエンジニアが転職を考える理由はさまざまです。あなたが仕事で感じている不満を解消できる求人を探しましょう。

今働いている業界とは別の業界にも目を向けることで、あなたに合った求人を見つけやすくなります。30代のSE転職は、さまざまな求人が応募の選択肢になります。

30代のシステムエンジニアは、そのままシステムエンジニアとして働き続けるだけが選択肢ではありません。あなたの理想とする働き方によっては、システムコンサルタントにキャリアアップしたり、ほかの職種に転職したりしてもよいです。

採用する企業は少しでも若い人材を求めています。30代のあなたは、年齢制限の対象になる可能性があります。そのため、少しでも早く転職活動を始めることが、転職成功のためには大切です。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。