安全性情報で働いていて、年収に不満を感じていませんか? ただ仕事が忙しいだけで年収が低いと、将来性に不安を感じ、仕事にやりがいを感じにくくなってしまいます。

実は、安全性情報では、高い年収が提示されている求人も珍しくありません。会社によっては、年収で1,000万円を超えるような求人を出しているところもあります。

ここでは、安全性情報の転職で、高年収の求人に転職するときの、求人の実例と探し方について紹介します。

安全性情報で年収アップを狙うときに求められる経験、スキル、資格

安全性情報で年収アップを狙うときには、どのような経験やスキルが求められるのでしょうか。また、年収アップのために保有していると有利になるような資格はあるのでしょうか。

安全性情報管理の担当者としての長い経験が必要

高い年収を勝ち取るためには、それに見合った実力が必要です。そのため、転職の際には、ある程度の年数の業務経験は必ず求められます。あまりにも仕事に従事した期間が短いと、未経験者との実力の差がほとんどないので、いきなり高年収を狙うのは難しいです。

そして、経験者として転職するときの目安は、「2年以上の業務経験」です。その理由は、多くの求人で2年以上の業務経験が必須条件として挙げられているからです。実際の求人例を、2例示します。

まず1例目は、バイオ医薬品の研究開発に強みをもっている製薬企業の、中外製薬株式会社の求人です。この求人の「対象となる方」の欄には、安全性情報(ファーマコビジランス)の2年以上の経験が、必須条件として挙げられています。

そして2例目は、会社名は非公開ですが、CRO(医薬品開発業務受託機関)の求人です。この求人の「応募資格」の欄にも、安全性情報評価の業務を2年以上経験していることが必須条件として記載されています。

もちろん求人によっては、5年以上の経験が求められるものもあれば、具体的な経験年数が示されていないものもあります。

あくまで「2年以上の経験」は、目安の1つです。そのため、経験年数が長ければ、あなたの実力を十分にアピールすることで、高い年収を勝ち取ることができるでしょう。

英語力は必須のスキル

医薬品安全性情報担当者として仕事をしていると、英語を使う場面は多いです。あなたも日常的に、治験薬の副作用情報を安全性情報管理システムに、英語で入力していると思います。そのため、転職の求人情報でも、高い英語力を求める求人は多いです。

下に示すのは、前の項で紹介したCROの求人です。この求人の「応募資格」の欄には、TOEICで650点以上の英語力が必須条件に挙げられています。

高い英語力が必要な理由としては、「海外文献を読解するため」と記載されています。海外文献は英語で記載されているので、スムーズに解読するためには、高い英語力が必要です。

そして、英語力が求められるのは、文献を読むときだけではありません。会社によっては、海外の関連会社との電話会議で英語を用いることもあります。

臨床試験の多くは、海外でも同時進行で行われているグローバル試験です。そのため、海外の担当者との電話会議が行われることも普通にあります。高い英語力が求められている理由には、会議で使用する目的もあることを覚えておく必要があります。

薬剤師、看護師、臨床検査技師の資格があれば歓迎される

安全性情報の仕事をするために、必須の資格はありません。しかし、求人によっては、医療従事者の資格を歓迎条件に挙げているものがあります。具体的には、薬剤師、看護師、臨床検査技師の資格です。

下の求人は、会社名は非公開ですが、CROのものです。この求人の「応募資格」の欄には、医療従事者資格が歓迎条件として挙げられています。

これらの資格を取得するためには、薬学部、医学部、専門学校を卒業する必要があります。そして、これらの学部では、医学に関する基礎的な知識を勉強します。

例えば薬学部では、下のような教科書を使用します。

このように、薬剤師、看護師、臨床検査技師の資格を取得するためには、医療従事者として働くための基礎知識を一通り学びます。つまり、資格の保有者は、医学の基礎知識は習得しているとみなされます。

そのため、転職によって携わるテーマが変わっても、早く仕事に慣れることが期待されます。

このように、医療従事者の資格があれば、幅広く活躍できる可能性があるので、転職の際には歓迎条件に挙げられていることがあります。あなたがいずれかの資格を保有していれば、年収の交渉の際にアピールしてもよいでしょう。

年収アップを狙うときの就職先

では、年収アップを狙うときには、どのような就職先を選択するのがよいのでしょうか。具体的な求人と年収を示しながら解説していきます。

製薬会社は高い年収を提示している求人が多い

安全性情報の求人を探すときに、製薬会社の求人を考える人が多いのではないでしょうか。実際に、製薬会社主導で臨床試験は実施させており、製薬会社の安全性情報の求人もあります。

そして、製薬会社の求人は、あとで紹介するCROの求人と比べて、年収が高いことが特徴です。

実際の求人例を、2例示します。1例目の求人は、アメリカに本社を置く、外資系製薬企業のファイザー株式会社です。ファイザー株式会社は多くの医薬品を発売しており、高血圧治療薬のノルバスクOD錠などが、代表的な商品です。

この求人の「対象となる方」の欄には、第1章で紹介した「ファーマコビジランスの業務経験」と「高い英語力」が必須条件として挙げられています。

ここで挙げられている必須条件は、前の章で紹介した経験やスキルと同程度の内容です。極端に高いレベルの経験やスキルが求められているわけではありません。

そして、「給与」の欄には、最大で1,500万円の年収が提示されています。

最大の年収を勝ち取るためには、長年の業務経験、ネイティブクラスの英語力などが求められるかもしれません。ただ、そこまでの実力がなかったとしても、ある程度高い年収は期待できる求人です。

2例目の求人は、バイオ医薬品の研究開発を主な事業としている、協和発酵キリン株式会社のものです。協和発酵キリン株式会社の医薬品で代表的なものは、腎性貧血の治療に用いられるネスプ注射液です。

そして、この求人の「対象となる方」の欄にも、ファイザー株式会社と同様の内容が必須条件に挙げられています。

なお、この求人で必須条件に挙げられている「GVP省令」とは、製造販売後の医薬品などについての安全管理に関する省令です。簡単に言うと、「製造販売後の医薬品の安全性情報について、適切に収集し、必要な措置を適切に実施しましょう」というルールです。この求人では、GVP省令に関する知識も求められます。

そして、この求人の提示年収は、500万円~1,000万円です。

ここで紹介した2例とも、比較的高い年収が提示されていることがわかります。そのため、製薬会社に転職することで、年収アップを期待できます。

ただし、製薬会社に転職を考えるときには注意しなければならないことがあります。それは、製薬会社の求人は、公開されているものが少ないことです。

大手転職サイトの「doda」で、「安全性情報」で求人を検索すると、89件の求人がヒットしました。そのうち、安全性情報管理の担当者を募集している求人は37件で、製薬会社の求人はそのなかでも5件でした。

このように、製薬会社の求人は公開されているものが少ないので、転職するためには工夫が必要になります。

CROに転職することで年収アップを狙う

前の項では、製薬会社に転職することで、高い年収が期待できることを説明しました。

しかし、安全性情報の業務は、製薬会社からのアウトソーシングが進んでおり、求人全体のうちCROが占める割合が多いです。そのため、続いてCROの求人で年収アップを狙う求人について説明します。

CROの求人で注意が必要なのは、会社によって給料が大きく異なることです。下に、実際の求人例を2例示します。

まず1例目は、東京都に本社があり、CRO事業以外にも一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査も実施している、株式会社インテージヘルスケアの求人です。この求人の「対象となる方」と「給与」の欄には、それぞれ以下のように条件が提示されています。

そして2例目は、会社名は非公開ですが、1例目と同じく安全性情報を募集しているCROの求人です。東京都と大阪府で、PV業務のスペシャリストを募集しています。この求人の「応募資格」と「年収・給与」の欄は、以下の通りです。

どちらの求人も、必須条件として挙げられている内容は、ほぼ同じです。どちらも2年または3年以上の業務経験や、英語力が条件に挙げられています。

そして、提示年収は1例目が380万円~630万円で、2例目は590万円~700万円です。後者の求人の方が、高い年収を提示しており、かなりの差があることがわかります。

このようにCROでは、会社によって条件が類似していても、提示年収が大きく異なることがあります。そのため、多くの求人情報を見て、あなたの希望年収を満足するような求人を探すようにしましょう。

・管理職クラスとして転職すると、高年収が期待できる

さきほど紹介したCROの求人は、いずれも管理職として採用される求人ではありませんでした。そこで、管理職として中途採用される求人を狙うことで、高い年収が期待できます。

下に示す求人は、会社名は非公開ですが、東京都のCROのものです。この求人では、管理職・マネージャーとしての採用になります。そのため、仕事内容は、現場の仕事よりも部下の育成や労働管理が中心です。

そして、この求人で提示されている年収は、850万円~970万円です。これまで紹介してきたCROの求人よりは、高い年収が提示されています。

このような管理職を募集している求人に応募するためには、長い経験が必要になります。この求人では、PV職として10年以上の経験が必須条件に挙げられています。

また、組織マネジメントの経験も必須条件の1つです。現在働いている組織で、マネジメントの経験があれば、このような管理職を募集することができます。

将来のキャリアパスを考えて、管理職としての採用も選択肢に入れることで、高年収を勝ち取ることができます。

年収アップを狙うときの転職活動のやり方

安全性情報の求人のなかには、高い年収を提示している求人があることを紹介しました。では、このような求人を見つけるためには、どのように転職活動をすればよいのでしょうか。

複数の転職サイトを活用する

前の章では、製薬会社が高い年収を提示していること、CROのなかにも高い年収を提示している求人があることを紹介しました。しかし、一つの転職サイトだけで検索をしても、高年収が提示されている求人は、なかなか見つけることはできません。

そこで、少しでも多くの求人を見るために、複数の転職サイトを活用することをおすすめします。その理由は、転職サイトによって、掲載されている求人が異なるからです。

大手転職サイトの「doda」「マイナビ転職」「リクナビNEXT」で、「安全性情報」で求人を検索した結果が下の図です。転職サイトごとにヒットする求人数が異なることがわかります。

このように、転職サイトによって、取り扱っている求人は異なります。複数の転職サイトを利用することで、少しでも多くの求人に触れるようにしましょう。

転職エージェントに非公開求人を紹介してもらい、年収の交渉もしてもらう

実は、転職サイトに公開されている求人は、求人全体のうちわずか10%~20%と言われています。つまり、残りの80%~90%は非公開求人であり、どんなに調べてもみつけることはできません。

転職サイトでは、エージェントサービスを受けることができます。そして、エージェントサービスでは、非公開求人を紹介してもらえます。このサービスを利用することで、あなたの転職をより成功に近づけることができます。

転職エージェントは、保有している非公開求人を含む多くの求人のなかから、あなたの希望に沿った求人を紹介してくれます。

そして、転職エージェントは、転職先と年収の交渉もしてくれます。私の知り合いで、転職エージェントを活用して製薬会社の臨床開発職に転職を成功させた人がいます。

年収の交渉は、すべて転職エージェントが行ってくれたので、満足できる条件で採用してもらうことができたと、転職活動の話を教えてくれました。

このように、転職エージェントを活用することで、年収の交渉も進めやすくなることを覚えておきましょう。

まとめ

ここでは、安全性情報の転職で年収アップを狙う方法について、求人例を示して説明しました。

高年収が提示されている求人に転職するためには、安全性情報管理の業務に携わった長い経験と、高い英語力が必須です。求人によっては、医療従事者の資格が歓迎条件に挙げられているものもあり、資格保有者は年収交渉の材料にしてもよいでしょう。

安全性情報は、製薬会社の求人が高い年収を提示していることが多いです。ただし、製薬会社の求人は、求人数自体が少ないので、見つけるのは難しいです。

CROでも、求人によっては高い年収が提示されています。また、あなたに安全性情報管理の長い経験と、組織のマネジメント経験があれば、管理職を募集している求人にエントリーすることも考慮すればよいでしょう。

高年収の求人を探すときには、複数の転職サイトを利用することで、希望に沿った求人を見つけやすくなります。

そして、転職エージェントを活用することで、非公開求人を紹介してもらえます。また、転職エージェントは、あなたに代わって転職先と年収の交渉も行ってくれることを覚えておきましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。