化学メーカーなどの研究職へ転職を考えているあなたは、就職すると遅くまで残業をさせられて大変なのではと感じていないでしょうか。

研究職は、新しい知見を求めて実験を繰り返す職種です。そして、実験はやってみないとうまくいくかはわかりません。さまざまな要因で、予想した通りに実験が進まないこともあります。

そのため、中途半端に切り上げることができず、遅くまで働かなければならないこともあるでしょう。

ここでは、化学メーカーや製薬会社などの理系研究職の残業時間について、求人例を紹介しながら解説します。

研究職の残業時間は多いのか

あなたは、研究職の仕事にどのようなイメージを持っているでしょうか。

大学時代に理系の学部に所属していれば、夜遅くまで実験をしていた人もいると思います。もし文系出身者であれば、なかなかイメージが湧かないかもしれません。

研究職として会社で働く場合、どのくらいの残業をすることになるのでしょうか。

厚生労働省が、産業ごとに残業時間を調査している結果を下に示します。

引用:毎月勤労統計調査 – 平成30年10月分結果速報、第2表 月刊実労働時間及び出勤日数をグラフ化

残業時間の平均値は14.8時間です。そして、研究に関する職種の残業時間は、15.4時間です。

このように、研究職は、ほかの職種と比べても、課せられる残業時間はほぼ同じくらいといえます。

学生時代に、夜遅くまで実験をしていた人は意外に思うかもしれません。

私はかつて、医薬原薬や化成品を製造する化学系メーカーで、研究開発職として働いていました。

そして、私が入社したときは、ちょうど化成品の新商品の候補をプラントで製造しようとしていた時期でした。

そのため、研究所に配属になって数カ月経った頃からは、毎月の残業時間が50時間を超えるのは当たり前になっていました。勤務時間外に会議が開かれることも、頻繁にありました。

最終的に、製造を実際に行う時期は、残業時間が月100時間を超えていました。体力的にも、精神的にもつらい生活だったのを覚えています。

私がその会社を退職して5年ほど経ったときに、元同期に職場の現状を訊きました。すると、残業時間はどんなに多くても月に40時間以内にするよう指示されており、定時に退社できることが多いとのことでした。

そして、「昔と今では、会社の雰囲気が変わって、残業を減らさないといけないという上司からの指示がある」と話してくれました。

このように、研究職の残業時間は、ほかの職種とほぼ同じ水準であることを覚えておきましょう。

残業時間が求人情報に載っているものもある

当然、すべての会社で残業時間が少ないわけではありません。テレビのニュースで、残業時間が異常に長かったり、残業代が支給されなかったりするケースが取り上げられることも珍しくありません。

では、残業時間がどのくらいになるかを、入社前に知る方法はあるでしょうか。実は、求人情報に残業時間が記載されている場合があります。

下で紹介する求人は、塗料や合成ゴムなどを開発製造している株式会社トウペのものです。この求人で採用されると、三重県か茨城県の工場に勤務することになります。

そして、この求人の「勤務時間」の欄には、以下のように残業時間の目安が記載されています。

1カ月の残業時間の目安は10時間なので、1カ月に20日勤務するとすれば、1日あたり30分の残業です。

もちろん、実験の都合で遅くなる日もあります。しかし、基本的にはほぼ定時に退社できると考えてよいでしょう。

このように、残業時間の目安が求人情報に記載されているものはいくつもあります。エントリーするときに、1つの判断材料にしてもよいでしょう。

繁忙期は残業時間が多いこともある

次に紹介する求人は、広島県尾道市に本社がある、健康食品やスキンケア商品の研究開発をしている万田発酵株式会社のものです。

この求人の「勤務時間」の欄には、以下のように記載されています。

繁閑によって残業時間が変わることが示されています。想定残業時間は1カ月に30時間ですが、繁忙期は残業時間が30時間を大きく超えるかもしれません。

逆に、忙しくない時期は1カ月の残業時間が30時間よりもかなり少ないこともあるでしょう。

私も化学メーカーで働いていたときは、すでに製造スケジュールは、何カ月も前に決められていました。製造には、所属していた研究所だけでなく、製造部、購買部、営業担当者なども関わるので、簡単にはスケジュールを変えることはできません。

そうなると、何としてもスケジュールに間に合うように、実験データを揃える必要があります。そのため、実際に製造する直前は、1日当たりの実験のノルマが多くなり、残業時間が極端に多くなっていました。

しかし、一度製造が成功すると、その後は検討する内容が激減しました。それに伴い、残業時間も大幅に減りました。

このように、繁忙期と閑散期によって残業時間が大きく変わることもあります。

企業から残業代が支給されないと違法

ここまでは、研究職として働く場合の残業時間の特徴について説明しました。

では、残業代が支給されないことはあるのでしょうか。実は、残業代を払う必要があることは、労働基準法で定められています。そのため、残業代が支払われないことは違法です。

残業代について記されている、労働基準法第37条の内容を下に示します。

労働基準法第37条

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない

このように、会社は従業員が働いた分だけ残業代を支給する義務があります。そして、残業代が適切に支払われなければ、それは違法扱いになります。

求人情報を見てみると、ほとんどの求人情報で残業手当は支給されることが謳われています。

下の求人は、化学素材メーカーのポリプラスチックス株式会社のものです。この求人情報の「給与」の欄には、下記のように記されています。

このように、残業代は基本的に支給されると考えてよいです。

労働制度による残業時間と残業代の考え方の違い

ここまで紹介してきた求人は、1日の勤務時間が決められており、その時間を超えて働くと残業代が支給されるものです。おそらく、最もイメージしやすい雇用形態だと思います。

その一方で、労働制度によって残業時間や残業代の支払われ方が変わることがあります。

続いて、具体的な求人例を示しながら、さまざまな労働制度と、残業時間と残業代の考え方について紹介します。

なお、ここではわかりやすさを優先するために、簡潔に説明する都合で詳細の説明を割愛していることをご了承ください。

固定残業制

前章で説明したように、残業代は払われる必要があります。しかし、残業をしてもしなくても、一定額の残業代を基本給に上乗せして支払う制度があります。これが「固定残業制」です。同じ意味で、「みなし残業代制」や「定額残業代制」という言葉も使われます。

実際の求人例を、下に示します。本社が東京都港区と大阪府大阪市にあり、有機合成品、合成樹脂などを研究開発している化学会社の、株式会社ダイセルのものです。

続いて、この求人の「給与」の欄を示します。

月20時間分の残業代を含むことが記されています。これは、月の残業時間が0時間でも20時間でも、同額の残業代が支給されることを意味します。

もちろん、月の残業時間が20時間を超える場合は、超過分の残業代が支給されます。

固定残業制で働く場合の残業代のイメージを、下の図で示します。なお、20時間分の固定残業手当が支給されると仮定しています。

この制度は、残業時間が少ない人にとってはメリットが大きい制度です。全く残業をしなくても、基本給に一定額の残業代が上乗せされるので、必然的に手取りの給料は多くなります。

変形労働時間制

ここまで紹介してきた例では、1日の勤務時間が法定労働時間(8時間)を超える場合に、超えた時間が残業時間としてカウントされます。

ところが、1日8時間以上勤務しても、残業とみなされない労働制度があります。その1つが「変形労働時間制」です。

変形労働時間制は、労働基準法第三十二条に基づいて、厚生労働省により以下のように定められています。

繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑や特殊性に応じて、労使が工夫しながら労働時間の配分等を行い、これによって全体としての労働時間の短縮を図ろうとするもの

引用:厚生労働省 長野労働局 ホームページより

変形労働時間制で働くと、日によって勤務時間が異なります。そして、一定期間(1週間または1カ月間または1年間など)で、労働時間の配分をします。

このときに必ず守らないといけないのが、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間を40時間以下に設定する必要があることです。

例えば、月の後半に仕事量が極端に多い職場を想定します。勤務表の例を下に示します。

この場合、月の前半は仕事量が少ないので、勤務時間は1日8時間未満です。一方で、月の後半は仕事量が増えるので、勤務時間が8時間を超える日が設定されています。

1週間あたりの労働時間が35時間の週もあれば、50時間の週もあります。しかし、1カ月を平均すると、1週間当たりの労働時間は法定労働時間の40時間以内に設定されているので、全く問題ありません。

したがって、この勤務表通りに働き、毎日定時に退社すると残業代はゼロになります。10時間働く日があっても、あらかじめ勤務時間が10時間に設定されているので、10時間以上働かなければ残業代は発生しません。

そして、研究職の求人でも、変形労働時間制が採用されているものがあります。

下の求人は、愛媛県大洲市にあり、調味料や機能性食品素材を研究開発している仙味エキス株式会社のものです。

この求人情報の「勤務時間」の欄には、以下のように変形労働時間制が採用されていることが記載されています。

この会社では、さきほど例を示した1カ月単位ではなく、1年単位で労働時間を配分しています。

そのため、夏場は仕事量が少ないが、冬場は繁忙期で勤務時間が長いなどの調整をしていることが予想されます。

実際に生じる残業時間は、月平均5時間と示されており、ほぼ残業がないことがわかります。

この労働制度は、従業員と会社の双方にメリットがあります。

従業員にとっては、繁閑を予め把握しておくことで、プライベートの予定を立てやすくなるなどのメリットがあります。

また会社は、毎日の勤務時間を調整することで、無駄のない労働時間の配分ができます。

このような労働制度が、変形労働時間制です。

専門業務型裁量労働制

最後に、残業代が支払われない「専門業務型裁量労働制」を紹介します。

専門業務型裁量労働制は、労働基準法第38条の3に基づいて以下のように定められている制度です。

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度。

引用:厚生労働省 労働基準局監督課 専門業務型裁量労働制より

端的に言えば、労働時間の調整を労働者に一任し、どれだけ働いても一定時間働いたことにするという労働制度です。仕事の進め方は、労働者に任されます。

つまり、専門業務型裁量労働制では、遅刻、早退、残業という概念がありません。残業代が支払われないのは、そのためです。

なお、専門業務型裁量労働制はすべての職種で適応できるわけではありません。「対象となる業務」が19種定められています。そして、そのなかに、研究職も含まれます。

この制度を採用している求人例を、下に示します。大手製薬会社の大日本住友製薬株式会社の求人です。

この求人で採用されると、兵庫県神戸市にある神戸再生・細胞医薬センターで、iPS細胞を用いたin vitro、in vivo、工業化などの研究に携わることになります。

そして、この求人情報の「勤務時間」の欄には、専門業務型裁量労働制を採用していることが記されています。

所定労働時間(みなし労働時間)は、労使であらかじめ定めた労働時間のことです。この求人では、1日に何時間働いても、7時間50分働いたとみなされます。

標準的な労働時間は、あくまで目安として示されています。そのため、例えば10時に出社して、16時に退社しても問題ありません。

専門業務型裁量労働制では、勤務時間ではなく、最終的な成果が評価の対象となります。成果さえ出すことができれば、始業時間や終業時間は労働者の裁量で決めることができます。

なお、この求人の「給与」の欄には、残業手当がないことが明記されています。

そのため、どれだけ働いても残業代は支払われないことに注意する必要があります。

まとめ

化学メーカー、製薬会社などの理系研究職の残業時間について、求人例を紹介しながら解説しました。

研究職の残業時間は多いと思われているかもしれませんが、実際はほかの職種と差はありません。私の周囲の人から話を聞いた印象でも、残業時間は短くなる傾向にあると言えます。

求人情報のなかに、目安となる残業時間が記載されているものもあります。特に、残業時間を気にする場合は、確認しておくとよいでしょう。

また、研究職の残業時間は、繁忙期や閑散期によって大きく変わることもあります。

そして、労働制度によって、残業代の支払われ方や、日々の勤務時間が異なることがあります。残業代が支払われない労働制度もあるので、エントリーする段階で確認しておくとよいでしょう。

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