ゲノム研究では、遺伝情報から生命の健康を研究したり、医薬品の研究開発に応用を目指したりします。分析機器の発展により、より多くの情報を短時間で解析できるようになっており、ゲノム研究は今後も発展していく分野です。

実はゲノム研究の仕事は大きく2つに分かれます。それぞれの仕事内容は全く違います。転職で求められる経験も異なります。

あなたの経験を活かせる求人に応募することで、転職の満足度は高まります。ゲノム研究の求人に応募するときには、求人の特徴を十分に理解しておく必要があります。

ここでは、ゲノム研究に転職するときのポイントを紹介します。具体的には、「ゲノム研究の仕事内容の違い」「ゲノム研究を行っている企業」「転職を有利に進めるための方法」について解説します。

仕事内容は生物系とシステム開発に分かれる

まずは、ゲノム研究の求人の仕事内容を解説します。冒頭でも述べましたが、ゲノム研究の仕事は大きく2つに分かれます。具体的には「生物系の研究」と「システム開発」です。

それぞれの仕事内容について、求人例を示しながら順に解説していきます。

生物系研究の仕事内容と求人例

ゲノムの研究では、遺伝子が研究対象です。そのため、遺伝子や遺伝子から発現するタンパク質機能を解析することが仕事になります。

最初に紹介するのは、田辺三菱製薬株式会社の求人です。田辺三菱製薬社は、大阪府に本社がある日本の大手製薬会社の1つです。

田辺三菱製薬社の求人では、難病の原因遺伝子の同定や、遺伝子と病態の関連性をin vitro、in vivoで検証することが挙げられています。

田辺三菱製薬社の求人では細胞を対象としたin vitroの実験だけでなく、実験動物を対象としたin vivoの実験も担当します。これらの仕事は生物系に分類されます。

ゲノムDNAはタンパク質を作るための設計図です。細胞や実験動物を用いてゲノムDNAと病気の関係性を解析することで、治療薬開発のための標的を見つけることができます。

生物系の研究では、ゲノムDNAを直接取り扱う仕事を担当します。

システム開発の仕事内容と求人例

ゲノム研究ではDNAや遺伝子を取り扱うだけでなく、システム開発の仕事もあります。

続いて紹介する求人は、日本電気株式会社(NEC)から出されているものです。この求人では、AI事業部でゲノム解析技術や機械学習技術を駆使した研究開発を担当する人材を募集しています。

DNAの塩基配列を解析するときには「シーケンサー」と呼ばれる分析機器を使用します。シーケンサーにAI技術を組み合わせることで、ゲノム情報の解析をより正確かつ効率的に行えるようになります。

シーケンサーを取り扱うときには、さきほど紹介した生物系の実験が必要です。細胞や実験動物から遺伝子を抽出したり、分析できるように修飾したりするのは生物系研究者の仕事です。

ただし、NEC社の求人で担当するのは、シーケンサーを利用したゲノム解析ではなく、解析のためのAI技術の開発です。

シーケンサーによるゲノム解析の結果は、膨大なデータ量です。その解析結果だけを見ても何もわかりません。

多くの実験サンプルや被験者の解析結果を比較することで、初めて疾患に関連する遺伝子やたんぱく質が明らかになります。AI技術は、これらの解析を正確・効率的に行うために用いられます。

このようなゲノム解析のためのAI技術の研究開発を担当するのが、NEC社の仕事内容です。

ここまで2社の求人を紹介しましたが、仕事内容は大きく異なります。最初に紹介した田辺三菱製薬社の求人は、細胞や実験動物のゲノムDNAを取り扱うことが主な仕事でした。続いて紹介したNEC社の求人では、ゲノム解析を行うためのAI技術の開発を担当します。

ゲノム研究の仕事は、生物系の研究とシステム開発に分かれることを認識しましょう。

転職で求められるのはゲノム解析の経験かシステムエンジニアの経験

では、ゲノム研究の求人に応募するときには、どのような経験が求められるのでしょうか。

さきほどゲノム研究は、生物系の仕事とシステム開発の仕事に分かれることを解説しました。そして、仕事内容と同様に転職のときには生物系の研究経験やシステムエンジニアの経験が求められます。

生物系の研究ではゲノム解析の経験が必要

最初に紹介した田辺三菱製薬社の求人では、以下のようにゲノム解析やin vitroやin vivoでの遺伝子機能の解析経験が必須条件に挙げられています。

ゲノム研究では細胞や実験動物を取り扱う生物系の実験を行いますが、そのなかでも遺伝子を扱った経験が必要です。

ゲノムDNAを解析するときには、ゲノムDNAを細胞から抽出しなければなりません。また、抽出したゲノムDNAはそのままでは解析できないので、制限酵素などを利用して切断したり、ベクターDNAと結合させたりする必要があります。

このような実験経験があれば、ゲノム研究の求人に応募することができます。

・創薬プロセスの基礎知識を有していれば優遇される

ゲノムの研究は、最終的には医薬品を開発するために行われることが多いです。そのため、創薬プロセスを経験していれば転職のときにアピールポイントになります。

例えば、次に紹介するアステラス製薬株式会社の求人では、仕事内容に創薬研究の推進も含まれています。

この求人の対象となる方の欄には、以下のように「創薬プロセスの基礎知識を有していれば尚可」と記載されています。

ゲノム解析は、遺伝情報から病気の治療薬の標的を探索したり、バイオマーカーを探索したりするために行われます。ゲノム解析で見つかった標的は、創薬ターゲット候補になる可能性があります。

そして創薬研究では、新たな医薬品候補化合物の創製や薬効薬理試験が行われます。ゲノム解析の結果を創薬に結びつけるためには、創薬研究の基礎知識が必要になります。

あなたが創薬研究の基礎知識を有していれば、生物系のゲノム研究に従事するときに重宝されます。

システム開発の求人ではAI技術の研究開発の経験が必要

続いて、システム開発の求人に応募するときに求められるものを紹介します。

前の章で紹介したNECの求人では、機械学習の研究か開発の経験が条件に挙げられています。具体的なプログラミング言語も記載されており、Pythonでの開発経験があれば応募要件を満たします。

Pythonは、機械学習やAI開発によく用いられる汎用プログラミング言語です。ゲノム解析に限らず、そのほかの領域でも利用されています。具体的には、以下の分野でPythonが使われています。

  • 株価の予測:株価の変動を予測し、株価が上昇する可能性が高い銘柄を紹介する
  • 画像認識:検品工程での不良品の判定や、病気の診断に用いられる
  • テキストマイニング:大量の文字データから必要なデータを取り出す。スパムメールの判別などに用いられる

Pythonでこのような技術の開発に従事した経験があれば、NEC社の求人に応募することができます。

なお、生物系の研究もシステム開発も、専門性が非常に高い仕事です。そのため、どちらの業務も経験していない場合は、ゲノム研究の求人に転職するのは難しいと考えてください。

逆に、あなたの経験と仕事内容がマッチしていれば採用されやすく、転職後も即戦力として活躍できる可能性が高いです

求人を出している企業を把握する

企業によって事業内容が異なるので、仕事内容も変わります。ゲノム研究であなたの専門性を活かすためには、どのような企業の求人を見つけなければならないのかを確認しましょう。

医薬品の研究開発を行っている製薬会社

冒頭でも触れましたが、ゲノム研究はヒトの健康や医薬品開発のために行われます。これらの活動を行っている企業の代表は製薬企業です。

前の章で紹介した田辺三菱製薬も、日本国内の大手製薬会社の1つです。

説明するまでもありませんが、製薬会社は新しい医薬品を研究開発することを生業としています。ゲノム解析により創薬ターゲットを探索したり、病態解析に発展させたりします。

なお、製薬会社では創薬研究を行っています。そのため、生物系の研究を希望する場合は製薬会社の求人を探すことになります。

遺伝子解析のシステム開発を行っている企業

ゲノム解析とAI技術を組み合わせることで、ゲノム研究を推し進めることができます。そのため、AI技術の開発を行っている企業からも求人が出されます。

さきほど紹介したNEC社のホームページにも、AI技術を活用して課題解決に貢献していくことが記載されています。

また、次に紹介するコニカミノルタ株式会社の求人では、遺伝子検査サービスのためのソフトウェア開発を担当する人材を募集しています。

コニカミノルタ社は複合機に強みがある企業ですが、ヘルスケア事業にも力を入れています。遺伝子検査を通じて、個別化医療や予防医療に貢献することを目指しています。

NEC社もコニカミノルタ社も、いずれも遺伝子解析のためのシステム開発を行っている企業です。AI技術やソフトウェアの開発に携わるためには、製薬会社ではなくシステム開発を行っている企業への転職を目指す必要があります。

規模が小さいベンチャー企業から求人が出ることもある

ここまで紹介した3社は、ほとんどの人が知っている規模が大きい有名企業でした。

実は、ゲノム研究を行っているのは誰でも知っているような大手企業や有名企業だけではありません。少人数で事業を行っているベンチャー企業でも求人が出されることがあります。

次に紹介する株式会社VEQTAは、大阪府に拠点があるベンチャー企業です。求人票には従業員数が10名と紹介されています。

ここまで紹介したほかの企業は、理系の研究職でなくてもほとんどの人が会社名を知っている有名企業でした。いずれの企業も多くの従業員が在籍しています。

それに対してVEQTA社は従業員数が圧倒的に少ないです。

VEQTA社の求人では、遺伝子事業におけるデータ解析やソフトウェア開発を担当する人材を募集しています。

これまで紹介した規模の大きい企業で働くと、1人の研究者は研究全体の一部だけを担います。

一方で、規模の小さいベンチャー企業では、少人数で事業を進めるため、それぞれの従業員が担う仕事内容も幅広くなります。

つまり、プロジェクトの全体に関わりながらゲノム研究を進めたい人には、小規模のベンチャー企業が向いています。

仕事内容とあなたの経験がマッチしていることは、転職を成功させるために重要なポイントです。しかしそれ以外にも、働き方があなたに合っているかは転職の満足度に大きく関わります。

企業の規模や、転職後に携わる仕事の範囲も事前にしっかりと確認して、満足できる転職を実現するようにしましょう。

まとめ

ここではゲノム研究に関わる求人への転職方法、転職で求められる経験について解説しました。

ゲノム研究の仕事は、「生物系の研究」と「システム開発」に分かれます。生物系の研究では、細胞や実験動物を取り扱います。システム開発ではゲノム情報の解析をするためのAI技術の開発を担います。

転職で求められるものもそれぞれの仕事で異なります。生物系の研究では、ゲノム解析に従事した経験が求められます。システム開発では、AI技術の研究開発に従事した経験が必要です。

ゲノム研究を行っているのは、製薬会社、システム開発を行っている企業、ベンチャー企業です。それぞれの企業で仕事内容や働き方が異なります。

あなたの専門知識を活かせて、希望の働き方を実現できる求人を探し、満足できる転職を成功させましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。