製薬会社への転職を考えるときに、その会社が外資系か内資系を意識するでしょうか。全く気にしない人もいるでしょうか。なかにはあえて外資系企業への転職を希望する人もいます。

外資系製薬会社は、「年収が高い」「クビになりやすい(リストラされやすい)」「実力主義」などの噂や評判が挙げられることがあります。では、実態はどうなっているのでしょうか。

また、職種による違いもあり、そもそも外資系企業では求人がほとんどない職種もあります。そのため、外資系企業への転職を考えているのであれば、内資系企業との違いや外資系企業ならではの特徴を十分に理解しておく必要があります。

ここでは、外資系製薬企業の特徴を、求人票や経験談を基に紹介していきます。

転職できる職種は限られている

世界を見渡せば多くの外資系製薬会社がありますが、日本に進出している外資系製薬会社のうち代表的なものを下に一覧で示します。

  • アストラゼネカ
  • アッヴィ合同会社
  • MSD
  • ギリアドサイエンシズ
  • グラクソ・スミスクライン
  • サノフィ
  • 中外製薬
  • 日本イーライリリー
  • 日本ベーリンガーインゲルハイム
  • ノバルティス
  • ノボ ノルディスク
  • バイエル薬品
  • バイオジェン・ジャパン
  • ファイザー
  • マイラン製薬

日本法人として設立されている会社は日本国内に本社がありますが、親会社の本社はアメリカ、スイス、ドイツなどの海外にあります。なかには中外製薬のように、元々は内資系企業でしたが、スイスの製薬メーカーのロシュとの戦略的アライアンスをスタートし、外資系企業となったような会社もあります。

そして、日本国内の外資系企業に転職しようとしても、すべての職種で求人があるわけではありません。そもそも職種によっては、日本国内で全く活動していない職種もあります。

研究職の求人は日本国内にはない

外資系製薬会社の研究部隊は、日本国内で研究活動をしているわけではありません。そのため、日本国内で外資系製薬会社の研究職の求人はありません。

転職サイトの「ミドルの転職」で「製薬 外資」で求人を検索すると、862件の求人がヒットしました。多くの求人がヒットしますが、このなかに研究職の求人は1件もありませんでした。

かつては外資系の製薬会社の研究所も日本国内にありました。しかし、ほぼすべての外資系製薬会社の研究所が日本から撤退してしまったので、日本では研究活動を行っていないのが現状です。

研究職で製薬企業に転職する場合は、内資系企業しか募集をしていないことに注意しなければなりません。

臨床開発職の求人は豊富にある

創薬研究や薬理研究を行う研究職の求人は日本国内にありませんが、臨床試験に携わる臨床開発職の求人は多くあります。下に示しているのは、東京都で薬事担当者を募集している外資系製薬会社の求人です。

以降の項で実際の求人例を紹介しますが、外資系製薬会社では薬事担当者以外にもメディカルライター、ファーマコビジランス(PV)なども募集しています。臨床開発職の求人は内資系と同じように募集しているので、臨床開発職への転職は内資系企業でも外資系企業でも同じようにできます。

MRは外資系製薬会社の求人とコントラクトMRの求人がある

外資系製薬会社が研究開発し、日本国内で承認申請を受けた医薬品は、実際に医療機関で使用されています。例えば、糖尿病患者さんに使用されるインスリン注射の1つであるヒューマログ注ミリオペンは、外資系製薬会社の日本イーライリリー株式会社より発売されています。

そのため、外資系製薬会社のMRも日本国内で活動しています。下に示すのは、会社名は非公開ですが、大手外資系製薬会社のオンコロジー専任MRを募集している求人です。

MRも臨床開発職と同様に、内資系・外資系問わず日本国内で多くの求人があります。

・コントラクトMRはCSO(医薬品販売業務受託機関)の人事制度が適応される

外資系製薬会社のMRの求人を探すときには、雇用先に注意する必要があります。具体的には、製薬会社のMRとしての雇用か、コントラクトMRとしての雇用かという違いがあります。

さきほど紹介したMRの求人は、製薬会社に就職し、製薬会社の社員としてMR活動を行うものでした。つまり、給与形態や福利厚生は製薬会社の人事制度が適応されます。

その一方で、コントラクトMRとして外資系企業で働く場合は、就職先はCSOです。そのため、コントラクトMRとして働く場合は、所属しているCSOの人事制度が適応されることになります。

下の求人は、外資系製薬会社のプロジェクトにコントラクトMRとして参画するものです。

あくまでコントラクトMRの求人なので、就職先は製薬会社ではなくCSOです。仕事内容としては外資系製薬会社の仕事を担当することになりますが、給与体系や福利厚生などの人事制度はCSOのものが適応されることに注意しなければなりません。

MSL(メディカルサイエンスリエゾン)も募集している

これまで臨床開発職での勤務経験があれば、MSLに転職できる可能性があります。MSLとは主に医師に対して学術的な情報提供を行ったり、講演会や学会発表を企画したりする職種です。

下に示しているのは、希少疾病を担当するMSLを募集している外資系製薬メーカーの求人です。

外資系企業から発売されている医薬品を用いた臨床研究を行う場合は、その企業のMSLが学術情報を医師に提供しています。そのため、外資系企業でもMSLの募集は積極的に行っています。

外資系製薬会社の特徴

続いて、外資系製薬会社と内資系製薬会社の違いについて紹介していきます。

まず把握しておかなければならないことは、「外資系でも内資系でも、仕事内容は同じ」ということです。外資系会社だからといって、特別なことをするわけではありません。

外資系製薬会社の方が高年収

外資系製薬会社の年収が高いことは、噂レベルで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。もちろん、外資系製薬会社で働く人すべてが高い年収をもらっているわけではありません。

しかし、一般的には外資系製薬会社の方が内資系製薬会社に比べて高い年収をもらっていることが多いです。その理由として外資系製薬会社の方が、売上高が多いことが挙げられます。

下に示すのは、製薬会社の世界売上高ランキングです。上位10社の売上高を示していますが、すべて外資系製薬会社です。

社名 本社所在地 売上高

(億ドル)

ロシュ スイス 579.83
ファイザー アメリカ 536.47
ノバルティス スイス 519.00
メルク アメリカ 422.94
グラクソ・スミスクライン イギリス 413.00
ジョンソン&ジョンソン アメリカ 407.34
サノフィ フランス 406.66
アッヴィ アメリカ 327.53
イーライリリー アメリカ 245.56
アムジェン アメリカ 237.47

引用:【2019年版】製薬会社世界ランキングより

この結果から、外資系企業の売り上げが多いことがわかると思います。売り上げが多いということは、それだけ社員の給料も高くなります。なお、内資系製薬企業のトップは武田薬品工業で16位(売上高:190.85億ドル)でした。

また、外資系製薬会社のなかには、賞与(ボーナス)が年3回もらえる会社もあります。下に示す求人は、安全性情報(ファーマコビジランス)の担当者を募集しているものです。この求人の「年収・給与」の欄には、賞与が年3回であることが記載されています。

製薬会社に限らず、多くの会社の賞与は年に2回(夏・冬)です。ボーナスの支給回数が多いと、その分年収は高くなります。

・同じ会社でも年収の差が大きいことがある

一般的には、外資系製薬会社で働くと高い年収をもらえやすいですが、当然すべての人が高年収なわけではありません。外資系製薬会社では同じ会社、同じ職種で働いていても、年収の格差があることが知られています。

このことは、求人票の提示年収からも確認することができます。下に2つの求人例を示します。

1例目は、大手外資系製薬会社のCMC薬事を募集している求人です。この求人の提示年収は800万円~1549万円で、最低額と最高額の間に約2倍の開きがあります。

2例目は、転職サイト「Answers」でメディカルライターを募集している求人です。提示年収は500万円~1,400万円で、この求人では最低額と最高額の差は約3倍です。

提示年収の最低額と最高額の間に差があるということは、採用時の実力、経験値によって年収が大きく異なるということです。このことは、同じポジションでも、仕事の成果次第で給料に差ができることの裏返しともいえます。

私の知り合いで外資系製薬会社のMRで働いている人に年収について伺うと、以下のような話をしてくれました。

外資系の方が内資系と比べて、業績による年収の差が大きいと思う。

年3回のボーナスをもらっているところであれば、夏と冬は基本給の約2カ月分ずつで、春は成果によって決まる。春のボーナスはほとんどもらえない人もいれば、基本給の6ヵ月分くらいもらえる人もいる。

もちろん、この話はすべての外資系製薬会社に当てはまるわけではありません。ただ、外資系企業であれば、同じ職種で働いていてももらえる給料に差があることは珍しいことではないことを覚えておきましょう。

外国人と一緒に仕事をするので、高い英語力が求められる

外資系の製薬会社について「外国人が多く、仕事で英語を使う場面が多いのではないか」とイメージしている人もいるのではないでしょうか。

実は外資系製薬企業であっても、内資系企業と比べて外国人社員の数が極端に多いわけではありません。外資系製薬企業は外国企業が出資しているだけで、社員のほとんどがは日本人であり、外国人の割合は内資系企業と大きくは違いません。

しかし、外資系企業では仕事で英語を使用しなければならない場面は多いです。それは外資系企業で働くと、海外の支店とのやり取りもしなければならないからです。そのため、求人でも高い英語力を求めるものが多いです。

下に示すのは、メディカルライティングを募集している求人です。応募資格の欄には、日本語と英語の高いライティングスキルが必須条件に挙げられています。

また、次の安全性情報の担当者を募集している求人では、TOEICで700点以上か同等の英語スキルが必須条件に挙げられています。

私の知り合いの外資系製薬会社のプロジェクトマネージャーとして働いている人に話を訊くと、以下のような話をしてくれました。

海外の担当者と電話やメールでやり取りすることは日常的にある。電話でのやり取りは、時差を考慮して、あえて夜帰宅してから電話をすることもある。

社内にも外国人がいるので、英語を話すことはある。私は英語がそこまでできるわけではないが、やるしかないから何とか乗り切っている。

このように、外資系の企業では社内の外国人だけでなく海外の支店とのやり取りも必要になってきます。そのため、高い英語力を求めている求人は多いです。

内資系と外資系の違いは少なくなっている

ここまで、内資系と外資系の違いについて紹介してきましたが、実はこれらの違いは徐々に少なくなっている傾向にあります。

例えば、内資系の製薬会社で外資系と同じ水準の給料を支給している会社もあります。

下に実際の求人例を2例示します。いずれも内資系製薬会社の安全性情報の担当者を募集している求人です。提示年収はそれぞれ800万円~1,000万円、800万円~1,100万円です。

そして、ここまで紹介してきた外資系製薬会社の提示年収と比較したものが以下の表です。すべて安全性情報(ファーマコビジランス)の担当者を募集しているものですが、内資系と外資系による提示年収の違いはほとんどありません。

社名 外資または内資 提示年収
非公開 外資 1,100万円~1,300万円

※マネージャーを募集

非公開 外資 500万円~1,000万円
非公開 内資 800万円~1,000万円
非公開 内資 800万円~1,100万円

管理職を募集している求人は高い年収が提示されています。また、この会社はボーナスが年3回支給されるので、管理職でなくてもやや高い年収がもらえる可能性があります。

管理職手当がどの程度かはわかりませんが、管理職手当を差し引いて考えると、それぞれの提示年収の最高額には極端な差はないことがわかります。

また、高い英語力が求められるのも、外資系企業に限ったことではありません。内資系の製薬会社でも高い英語力が求められる求人は多いです。

下の求人は、内資系製薬会社で臨床試験のプロトコルを立案するクリニカルサイエンスを募集しています。この求人の「応募資格」の欄には、高い英語力が求められています。

内資系企業が新薬を発売するのは、日本国内だけではありません。海外での発売も目指すので、海外での臨床試験も同時に行われることが多いです。

そのため、内資系製薬会社でも海外とのやり取りは発生するので、仕事で英語を使用する場面は多いです。

そして、内資系企業でも外国人の社員は在籍しています。そのため、「内資系企業であれば外国人と一緒に仕事をしなくてもよい」というわけではありません。

外資系製薬会社で働く私の友人は以下のように話してくれました。

外資系と内資系で違いはほとんどないと思う。

外資系は「すぐにクビになりやすい」といわれることがあるが、そこまで極端なことをすることはない。希望退職者を募ることはあるが、それは内資系企業でも同じことをやっている。

年収の高さや、職場の雰囲気などは、「内資系か外資系か」よりも「どの会社か」の方が影響を受けやすいだろう。

このように、内資系製薬会社と外資系製薬会社の違いはほとんどなくなってきています。むしろ、内資系か外資系かではなく、「どの会社に所属しているか」によって人事制度や求められるもの、風土は変わってきます。

転職エージェントを活用して、外資系製薬会社に転職する

外資系の製薬会社のなかには、ここまで紹介してきた特徴が残っている会社もあります。また、そもそも募集していない職種もあるので、転職可能な職種を見極めて転職活動をすることが大切です。

そして、転職活動をするときには、転職サイトに登録して、転職エージェントのサービスを利用するとよいです。

転職エージェントを活用するメリットは、年収の交渉やエントリーに必要な手続きの代行、非公開求人の紹介など多くあります。そして、これら以外にも、「会社の人事制度や雰囲気」について教えてもらえることもメリットとして挙げられます。

転職エージェントは、担当する会社の人事担当者と連絡を取り合っているので、会社の社風や人事制度に精通しています。

前の章で説明したように、外資系企業と内資系企業の違いは少なくなってきています。しかし、なかには良くも悪くも外資系の特徴が残っている会社もあります。

転職しようとしている会社にたまたま知り合いがいれば、社内の雰囲気を訊くことができますが、そのようなケースは稀です。そこで、転職エージェントから会社の情報を教えてもらうとよいです。

社内の雰囲気や人事制度を入社する前に確認しておいた方が、転職で失敗する確率を下げることができます。

なお、「外資系企業専門の転職エージェント」のようなものは存在しません。内資系製薬会社に転職するときと同じ転職エージェントを活用して外資系製薬会社に転職できます。

まとめ

ここでは、外資系製薬会社の特徴について求人票や経験談を基に紹介しました。

まずは、日本国内で募集していない職種があるので注意が必要です。外資系製薬会社は日本国内で研究活動を行っていないので、研究職の募集はありません。そのほかの開発職、営業職(MR)、MSLは内資系企業と同様に募集があります。

一般的には、外資系製薬企業の方が内資系と比べて年収が高いといわれます。これは外資系の方が、売上高が多いことに由来します。しかし、すべての社員の年収が高いわけではなく、同じ職種、同じ役職でも年収に差があることも外資系企業の特徴の1つです。

海外とのやり取りも頻繁にあるので、高い英語力が求められる場面は多いです。メールだけでなく電話で仕事の打ち合わせをすることもあります。

そして、このような内資系企業と外資系企業の差は徐々に少なくなる傾向にあります。むしろ、「内資系か外資系か」よりも「どの会社か」によって特徴が異なります。

転職するときには、転職エージェントのサービスを利用して、会社の特徴を確認しておくとよいです。事前に社内の人事制度、入社後に求められるものを確認しておくことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。