CRAは、英語で書かれた書類に触れたり、英語で文章を作成したりすることがあります。そのため、転職のときにも応募条件に英語力が提示されているものも多いです。

では、実際に転職活動をするときには、具体的にどのような英語力が求められるのでしょうか。英語力に自信がない人は転職することが難しいのでしょうか。

実は、会社によって英語力が求められるかは大きく異なります。そして、英語力がなくても応募できる求人は存在しています。

ここでは、CRAが転職をするときに英語力がどのように求められるのかについて実際の求人例を示しながら解説します。

CRAに必要な英語力を理解する

英語力と一言でいっても、そのスキルは細かく分けることができます。具体的には、「リーディング」「ライティング」「リスニング」「スピーキング」です。

しかし、これらのスキルをすべて有している日本人は、非常に少ないです。

もちろんすべてできて、英語がペラペラに話せると自信をもってアピールできます。

実は、英語力が求められる頻度は、会社によって大きく異なります。会社によってはほとんど英語に触れることがない場合もあります。

まずは実際の求人例と私の知り合いの実例を交えて、CRAが仕事で必要な英語力を確認しましょう。

内資系の製薬会社は、国際臨床試験を担当するときに英語力が必要

英語力が求められると聞いたときに、「外資系はわかるけど、内資系でも必要なの?」と考える人もいると思います。

実際に、内資系製薬会社での英語力の必要性は、会社によって変わります。具体的には、「国際臨床試験」を多く実施しているかどうかが、英語に触れる頻度に関わります。

次に示す協和キリン株式会社は、準大手の内資系製薬会社です。東京都に本社があり、抗体技術に強みがある製薬会社です。

協和キリン社の求人では、海外企業や海外関係会社とのコミュニケーションがとれるレベルの英語力が求められます。

そして、協和キリン社の求人票には、国際共同試験の実行・支援が挙げられています。また、海外対応を強力に推し進めていることも紹介されています。

このように海外にも積極的に医薬品を販売している内資系製薬会社では、国際臨床試験に携わることが多いです。

協和キリン社の臨床開発拠点は、日本国内だけではありません。会社のホームページには、欧米やアジアにも活動拠点を設けていることが紹介されています。

引用:研究開発について|研究開発|協和キリンより

このような内資系の製薬会社に転職するときには、英語力が必要です。

一方で、内資系の製薬会社でも、国際臨床試験をほとんど実施していない会社であれば、英語に触れる場面は非常に少ないです。

私の友人で、実施する臨床試験のほとんどが国内のみの製薬会社でCRAとして働いた経験がある人に話を訊くと、以下のような話を教えてくれました。

私が働く会社では、国際臨床試験はほぼやらない。やり取りをするのは日本国内の医療機関やCRO(医薬品開発業務受託機関)だけなので、英語の文章に触れることはない。もちろん、英語を話す場面もない。

強いて言えば、医師と医学・薬学に関する話をするために、医学論文を読むときくらい。

ただし、毎年TOEICを受けさせられるし、私はオンラインでの英会話を受講している。英語に触れる機会はほとんどないが、英語力を高めるための努力はしなければならない雰囲気が社内にある。

このように、内資系の製薬企業では国際臨床試験に関わるかどうかで、英語力の必要性が変わります。そして、仕事で英語力が求められない場合でも、英語力を高める努力が求められることを知っておかなければなりません。

外資系の製薬企業ではリーディングとライティングが必須のスキル

外資系の製薬会社の場合は、内資系の製薬会社と状況が異なります。

外資系製薬会社では、医薬品の研究開発の中心は海外です。そのため、関わる臨床試験はほぼすべて国際臨床試験です。

そのため、臨床試験における多くの書類が英語で作成されています。書類の解読をするだけでなく、内容の解釈の確認のためにはメールなどで海外に問い合わせなければなりません。

外資系製薬会社でCRAとして働く友人に話を訊くと、以下のように話してくれました。

私が入った会社は、新卒の採用の段階で英語ができる人が多かった。

TOEICだと800点以上が普通で、満点の人もいた。私はあまり英語ができなかったから、履歴書で英語力をアピールすることはできなかった。

周りには英会話のレッスンを受けている人が多い。1回2時間7,000円とかの英会話を受講している。

外資系の製薬会社に転職するとそのような人たちと一緒に仕事をすることになるから、転職のときに英語はできないといけないと思う。

外資の場合は、書類はほとんど英語で書かれている。手順書や検体の処理方法などが記載されている書類もすべて英語。

なので、リーディングのスキルは絶対に必須。英語が読めることを前提に仕事の話をされる。海外の拠点にメールをすることもあるから、ライティングのスキルも必要。

海外の拠点とは多くの場合時差があるので、電話での会議は頻繁にあるわけではない。なので、英会話をする場面は多くない。本当はできた方がいいんだろうけど、できなくても何とかなる。

このように、外資系の製薬企業では、リーディングとライティングのスキルが求められます。

CROは国際臨床試験を受託することが多く、英語力が求められる企業が多い

CRAを募集しているのは製薬会社だけではありません。製薬会社から臨床試験を受託するCROからも、CRAの求人は出されています。

CROで働くCRAも、製薬会社で働くCRAと同じ仕事を担当します。

CROの場合は、どの製薬会社からどのような臨床試験を受託するかで、英語に触れる頻度が大きく変わります。具体的には下の表のように、英語に触れる頻度が変わります。

さきほど紹介したように、国際臨床試験をほとんど行わない内資系の製薬会社からの受託であれば、英語に触れる機会はほとんどありません。

その一方で、国際臨床試験を行う内資系の製薬会社や、外資系の製薬会社からの受託であれば、英語で書かれた文章の読解や、英語を用いたメールでのやり取りができる必要があります。

私の知り合いで、CROでCRAとして働いている人に話を訊くと、以下のことを教えてくれました。

CROで働くCRAが英語に触れる機会は、どの製薬会社からの案件かによる影響が大きい。

CROは製薬会社の代わりに臨床試験を実施するので、製薬会社の望む形式で臨床試験を実施しなければならない。そのときに、書類の作成が日本語でもよいか、英語でなければならないかも製薬会社に指定される。

このように、CROで働くCRAは、どの製薬会社から臨床試験を受託するかによって英語を使用する場面が多いかが決まります。

そして、CROが受託する臨床試験は、海外との国際共同試験が多いです。

例えば、次に紹介するイーピーエス株式会社は、東京、大阪、名古屋にオフィスを構えるCROです。この求人では東京オフィスで働くCRAを募集しています。

求人票には、保有する案件の6割以上がグローバルスタディであることが謳われています。つまり、転職後に関わるのは国際臨床試験である可能性が高いです。

そして、この求人の「対象となる方」の欄には、以下のように英語力が歓迎条件に挙げられています。

このように、CROが製薬会社から受託する臨床試験には、国際臨床試験が多く含まれます。そのため、CROでCRAとして働く場合は、仕事で英語を使用する場面があります。

転職時に英語力は必要?

ここまで紹介したように、CRAが働くときに英語力は必要なスキルの1つと言えます。特に国際臨床試験に関わる場合は、リーディングとライティングのスキルが求められます。

では、実際に転職をしようとしたときに、求人票で英語力はどのように扱われているのでしょうか。英語力がない人は転職することができないのでしょうか。

転職で英語力が求められる求人が多い

転職活動をするときには、求人票を見て、あなたが応募できるかを確認すると思います。

魅力的な求人があっても、応募条件を満たしていなければ、応募を断念せざるを得ないこともあります。

では、CRAの転職で英語力が条件に挙げられている求人は多いのでしょうか。

大手転職サイトのdodaで「CRA」のキーワードで求人を検索すると、下の図のように444件の求人がヒットします。

これらの求人を1つずつ確認すると、CRAを募集している求人は444件のうち79件でした。

そして、必須条件や歓迎条件に英語力が挙げられている求人は、79件のうち37件でした。およそ半数の求人は、英語力がなければ応募できない、または、英語力があれば転職しやすいです。

このように、英語力があれば応募できる求人の選択肢が増え、転職活動を有利に進めることができます。

応募条件に記載がなくても、転職後に英語を使用する場面はある

ここまでいくつか求人を紹介しましたが、いずれも英語力が応募条件に挙げられていました。このような求人であれば、仕事で英語を使用する場面があることは予想しやすいです。

しかし、求人票に英語に関する記載がなかったとしても、転職してみると英語に触れる場面があることもあります。

続いて紹介する株式会社メディサイエンスプラニングの求人では、応募条件に英語力は求められていません。CRAの業務経験が3年以上あれば応募することができます。

メディサイエンスプラニング社は、東京以外に大阪と福岡にオフィスがあるCROです。

この応募条件だけを見ると、英語ができなくても転職後に問題なく仕事ができるように感じます。しかし、実際の仕事では英語を使用する場面があります。

具体的には、最初の章で紹介した国際臨床試験に関わる場面で、英語を使用しなければなりません。

メディサイエンスプラニング社の求人では、英語を使用する必要がある国際共同治験が多いことが記載されています。

このように、応募条件だけでなく、仕事内容からも英語に触れる機会があるかを読み解かなければなりません。

転職時に英語力がなくても応募できる求人はある

英語力があれば自信をもってそのスキルをアピールすることができます。しかし、英語力に自信がある人は少数です。

では、英語力をアピールできない人は、転職を実現することはできないのでしょうか。

実は、転職時点で英語力が求められない求人も転職市場にあります。実際の求人例を2件紹介します。

1例目は、東京都に本社があるIQVIAサービシーズジャパン株式会社の求人です。IQVIAサービシーズジャパン社は外資系CROで、東京以外に大阪、福岡、札幌にオフィスを構えています。

IQVIAサービシーズジャパン社の求人では、入社時に英語力は求められないことが明記されています。

この求人ではビジネスレベルの英語力が歓迎条件に挙げられているので、英語力がある人の方が採用されやすいです。しかし、応募の時点で英語力がなくても、問題ありません。

IQVIAサービシーズジャパン社は、英語の研修制度を整備しています。これらの制度を活用することで、仕事に必要な英語力を身につけることができます。

2件目の求人は、PRAヘルスサイエンス株式会社から出されているものです。PRAヘルスサイエンス社は、大阪に本社があるCROです。

PRAヘルスサイエンス社の求人では、「英語にアレルギーがなく今後力をつけていけること」が必須条件です。

つまり、PRAヘルスサイエンス社の求人も、応募の時点では英語ができなくても問題ありません。英語に対して抵抗がなく、英語力を身につける意欲があれば十分に応募条件を満たします。

このように、英語力がなくても応募できるCRAの求人はあります。しかし、転職後は会社の制度を活用したり、自分自身で努力したりすることで、英語力を高める必要があります。

まとめ

ここでは、CRAが転職するときに英語力がどのように求められるかを解説しました。

CRAとして働くときには、国際臨床試験に関わるかどうかで、英語に触れる頻度が大きく変わります。

内資系の製薬会社であれば、国際臨床試験をほとんど実施しない会社もあります。一方で、外資系の製薬会社やCROは国際臨床試験を多く実施しているので、英語に触れる機会は多いです。

また、英語をほとんど使用しない会社でも、会社の方針として英語を学ばせることもあります。

実際に仕事で必要なのは、リーディングとライティングのスキルです。一方で、英会話をする場面は少ないです。

転職時点で英語力があれば、そのスキルを大いにアピールするとよいです。英語力に自信がない人は、少なくとも英語に抵抗がないことが大切です。

英語力に自信がない人でもCRAに転職することはできます。その場合は、転職後に研修を受けたり、独学で勉強したりすることで英語力を高めていく必要があります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。