微生物やウイルスは、ヒトに危害を加えるだけではありません。有効活用することで医薬品や食品になり、ヒトの健康に役立たせることができます。

微生物やウイルスの研究分野は幅広いです。微生物やウイルスをどのように扱うかによって、仕事内容も変わります。そのため、あなたのやりたい仕事を明確にして、希望とマッチする求人に応募しなければ、納得できる転職を実現できません。

ここまでは最初に、微生物やウイルスの研究に携わる求人の仕事内容を紹介します。そのあと実際の求人例を示しながら、転職で求められる経験やスキルを確認します。

製薬企業で感染症治療薬の研究開発を行う

微生物・ウイルスと聞いて「感染症」を連想する人は多いと思います。

例えば、毎年冬に大流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。

また、高齢者の死因の上位である肺炎は、様々な細菌・微生物によって引き起こされます。

このような感染症に対する治療薬開発は、微生物やウイルスの研究が含まれます。そして感染症治療薬の研究開発は、多くの場合製薬会社で行われています。

例えば、次に示す大塚製薬株式会社の求人では、生物系の研究員を募集しています。大塚製薬社は、医療用医薬品だけでなく健康食品も研究開発・販売している製薬会社です。そして大塚製薬社は、いくつかの重点領域を設定しており、その中に感染症も含まれています。

大塚製薬社の求人では、以下のように感染症領域の経験が歓迎条件として挙げられています。あなたがこれまで感染症に関する研究に従事したことがあれば、このような求人に応募するときには強いアピールポイントになります。

ただし注意しなければならないのは、このような求人で採用されても、必ず感染症の研究に携わることができるかはわからないことです。

この求人の仕事内容の欄には、以下のように感染症に関する具体的な記載はありません。挙げられているのは、生物系の仕事内容だけです。

製薬会社の求人では、採用後に携わる具体的な研究テーマが求人票に記載されていないことは珍しくありません。

具体的な研究テーマを求人票に記載すると、そのテーマに従事したい求職者が応募しやすくなります。つまり、求職者と企業の希望がマッチしやすくなります。

しかしその一方で、ライバル会社にどのテーマに注力しているかを知られる可能性があります。このようなデメリットがあるので、多くの場合は求人票にすべての情報を記載していません。

そのため応募のときには、先方企業に「感染症研究に携わりたいが可能か」を確認しておく必要があります。企業と直接やりとりをするのが不安であれば、転職エージェントを介して確認してもらってもよいです。

感染症治療薬の研究開発は工程ごとに仕事内容や必要な経験が異なる

なおこの求人では、生物系の研究員を募集していました。しかし、医薬品の研究開発の工程は、生物系の実験だけではありません。

医薬品の研究開発の流れは以下の通りです。この図のなかの左半分が研究職の仕事で、いずれの工程においても研究者が活躍できます。

それぞれの工程で異なる研究を行います。もちろん、求められる専門知識や実験内容も工程ごとに異なります。あなたの専門知識・経験を活かせる職種の求人を探さなければなりません。

例えば、次に紹介する大正製薬株式会社も、先ほどの大塚製薬社と同様に感染症を重点領域に指定しています。そして、大正製薬社の求人では、低分子技術を用いた創薬研究の担当者を募集しています。

ここで挙げられている仕事内容は、主に有機合成です。以下のような実験機器を用いて新規の小分子化合物を合成するのが、有機合成の仕事内容です。

つまり、先ほど紹介した生物系の研究とは、仕事内容が大きく異なります。そして、この求人の対象となる方の欄では、有機合成の経験が必須条件に挙げられています。

このように、感染症治療薬の研究開発は多くの工程に分かれています。あなたの経験を活かせる求人を見つけるようにしましょう。

医薬品を使用するのはヒトだけではない

ここまで紹介した求人はいずれも製薬会社の求人で、ヒトが使用する医薬品を研究開発するものでした。

医薬品を使用するのはヒトだけではありません。ヒト以外の動物に対して使用する医薬品もあります。

つまり、動物に対する医薬品の研究開発でも、微生物やウイルスの研究に携わることができます。

次に紹介するバイオ科学株式会社は、水産や畜産用の医薬品や栄養剤を研究開発しているベンチャー企業です。バイオ科学社の求人では、水産や畜産向けのワクチン・抗菌剤・動物用医薬品などの研究開発を担当する人材を募集しています。

例えば、犬を飼うと毎年狂犬病の予防接種が義務付けられます。狂犬病は狂犬病ウイルスが原因で起きる感染症です。

そして狂犬病のワクチンは、以下のように狂犬病ウイルスを不活化したものです。

動物の病気に対する治療薬やワクチンを研究開発するのがバイオ科学社の仕事内容です。その仕事には、微生物やウイルスが深く関わります。

このように感染症治療薬の開発は、動物に対して用いるものも含まれます。

微生物やウイルスを医薬品開発・食品開発に用いる

微生物やウイルスは、ヒトに対して感染症などの悪影響を及ぼすだけではありません。有効活用することで、ヒトの健康を増進することもできます。

具体的には、医薬品や食品の開発に微生物やウイルスを用いることがあります。このような仕事を担当する求人を2件紹介します。

1件目の求人は、機能性食品素材や栄養剤の研究開発を行っているNexgenNutrient日本株式会社のものです。NexgenNutrient日本社は、大阪府に研究センターがある機能性食品素材の研究開発を行っている企業です。

この求人では、有用微生物を用いて健康食品における食品添加物を研究開発する担当者を募集しています。

NexgenNutrient日本社のホームページには、有用微生物の基礎研究から疫学研究までを通して食品と健康の関係を目指していくことが紹介されています。

あなたの身近にある食品のなかにも、微生物を利用して開発されているものはあります。

例えば、ヨーグルトは牛乳を発酵させたものです。発酵の工程では乳酸菌が働きます。

ほかにも、日本酒やキムチも製造でも微生物による発酵が必要です。このように、微生物を有効活用することで、食品を開発することができます。

2件目の求人は、大手製薬会社のアステラス製薬株式会社から出させている求人です。この求人では、バイオ医薬品のプロセス開発を担当する人材を募集しています。バイオ医薬品のなかには、遺伝子治療用のウイルス製剤も含まれています。

遺伝子治療では、治療上有効なタンパク質をコードした遺伝子を患者に投与し、目的のタンパク質を体内で発現させます。ただし遺伝子はそのまま投与しても体内や細胞内に移行しないので、遺伝子を目的地である核内に移行させるためにウイルスを活用します。

このように、微生物やウイルスを用いて食品や医薬品を開発することができます。

転職成功のためには医薬品や食品の研究開発経験が必須

そして、これらの求人に応募するときには、研究開発に従事した経験が求められることが多いです。

NexgenNutrient日本社の求人では、以下のように食品の研究開発や商品開発に従事した経験が必須条件に挙げられています。なおこの求人では部長クラスを募集しているため、研究開発や商品開発の経験だけでなく、研究所のマネジメント経験も求められています。

そしてアステラス製薬社の求人では、転職後に担当するバイオ医薬品のプロセス開発業務経験が必須条件に挙げられています。

医薬品や食品の研究開発職に中途採用されるには、ただ研究経験があるだけでなく、転職後に関わる仕事と同様の研究経験が求められることが多いです。

微生物やウイルスを分析対象として研究する

最後に紹介するのは、微生物やウイルスを分析対象として研究する求人です。このような求人は、分析研究の仕事として募集されています。

ここで紹介するのは、医薬品以外にも食品や化粧品の研究開発を行っている大正製薬株式会社から出されている求人です。大塚製薬社の求人では、食品研究の過程のなかで微生物などの分析方法の開発や品質評価を担当する人材を募集しています。

微生物の種類によって分析方法は異なります。製品の研究段階で微生物の分析方法を検討するのが、この求人の仕事内容です。

分析経験は必須で、転職後は微生物やウイルス以外の分析も担当する

そして分析研究の求人に応募するときには、分析を担当した経験が求められます。

大正製薬社の求人では、食品に関する専門知識だけでなく、分析法の開発経験が必須条件に挙げられています。複数挙げられている経験のなかに、微生物の分析法の開発も含まれています。

分析研究で担当するのは、微生物の分析だけではありません。微生物以外にも有効成分の分析や物性の分析も担当します。微生物の分析だけを担当するのではなく、担当する複数の検査のなかに微生物の検査もあるイメージです。

言い換えれば、これまで微生物の分析に携わったことがなくても、分析のスペシャリストとして働いていた経験があれば、分析研究の求人に採用される可能性は十分あります。

まとめ

ここでは、微生物やウイルスの研究に従事する仕事と、転職で求められる経験を紹介しました。

仕事内容は大きく下の3つに分かれます。

  • 感染症治療薬の開発
  • 微生物やウイルスを医薬品や食品の開発に用いる
  • 分析の対象として微生物やウイルスを扱う

感染症治療薬の開発は主に製薬会社で行われています。医薬品の研究開発はさまざまな専門領域に分かれます。

医薬品や食品の開発でも微生物やウイルスが利用されます。求人に応募するときには、医薬品や食品の研究開発に従事した経験が求められることが多いです。

微生物やウイルスを分析の対象として取り扱うこともできます。転職では分析業務に従事した経験が求められます。仕事では、微生物やウイルスの分析以外の分析も担当します。

これらの仕事内容は大きく異なり、転職で求められる経験も違います。あなたのやりたい仕事とこれまでの経験を整理し、どの求人に応募できるかを見極めなければなりません。


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