あなたが住んでいるのは賃貸物件ですか? それとも持ち家ですか? いずれにしても物件や土地を探すときに、不動産会社に相談をして案件を紹介してもらった人がほとんどだと思います。

規模が大きい不動産会社は、100万件を超える物件数を取り扱っています。そして、これらの物件を適切に管理するためには、さまざまなシステムを活用します。

では、不動産会社で働く社内SEはどのようなシステムを取り扱うのでしょうか。また、不動産会社の社内SEに転職するときには、どのような経験が求められるのでしょうか。

ここでは、不動産会社の社内SEの仕事内容を紹介します。続いて、「転職を成功させるための経験」「不動産業界の年収」を順に紹介します。

不動産会社の社内SEの仕事内容を知る

不動産会社で働くSEは、どのような仕事を担当することになるのでしょうか。仕事内容を十分に把握して転職することで、転職の満足度を高めることができます。

自社で使用するシステムの開発

あなたはこれまでに、実家を離れて一人暮らしをしたことがありますか? 例えば、社会人になって職場の近くで一人暮らしをするときには、多くの人がアパートやマンションなどの賃貸住宅を契約します。

最終的な契約は不動産管理会社に赴いて行いますが、事前にインターネットでどのような物件があるかを調査すると思います。どのような間取りの部屋が多いか、家賃の相場などを確認して、希望の物件を絞り込んでいきます。

このときに利用する物件検索のアプリケーションを開発するのは、不動産会社のシステムエンジニアの仕事です。実際に以下の求人で、アプリケーション開発に携わる人材を募集しています。

この求人は、不動産売買、不動産賃貸仲介、リフォーム事業などを展開している株式会社ハウスドゥで、システム開発エンジニアを募集しています。この求人の仕事内容の欄には、物件検索アプリ開発が挙げられています。

ハウスドゥ社は以下のような物件検索サイトを運営しており、全国の物件を検索・閲覧することができます。

引用:ハウスドゥ.comより

また、人工知能(AI)の開発が進み、不動産のマーケティングにAIが導入されることもあります。さきほど紹介したハウスドゥ社は、自社システム開発のエンジニアだけでなく、AIなどの先端技術の開発に携わる人材も募集しています。

不動産会社を個人経営している知人にAIについて話を訊くと、以下のような話をしてくれました。

最初は問い合わせに対して毎回全力で対応していたが、無駄になることが多い。不動産の購入に興味があっても、本当に購入の見込みがありそうな人は少ない。

最近では不動産の問い合わせは、インターネットを介することが多い。ただし、手軽に問い合わせられる分、購入する可能性が低いことが多い。

不動産の売買は、一度に1,000万円~数億円のお金が動きます。そのため、購入する人は購入するかをかなり慎重に判断します。私も自宅を購入するときには、家族で何度も検討しました。

購入する可能性が高いか低いかの判断をAIに任せて、購入意思が濃厚な見込み客に対して人間が対応することで成約率を高めることができます。

このような取り扱っている物件を閲覧したり、問い合わせしたりするシステムの開発は、不動産会社の社内SEが担当します。

不動産会社の社内SEが担当するのは、顧客向けのサービス開発だけではありません。会社によっては、自社の社員が使用するシステムの開発も担当することがあります。

具体的には、次に紹介する三井不動産株式会社の求人が該当します。三井不動産社の求人では、グループウェアや事業部門の基幹システムなどの自社システムの開発をマネジメントする担当者を募集しています。

グループウェアは、日常業務を円滑に進めるために必要な情報の共有や、業務連絡のツールとして用いられます。私の職場では、グループウェアを利用して会議の議事録が配信されたり、有給消化率の管理をしたりしています。

業界が異なれば、グループウェアに求める機能は大きく異なります。病院で働く知人に話を訊くと、グループウェアで入院患者情報や病院内で取り扱う医薬品集も管理していると教えてくれました。このような機能は不動産業界では必要ありません。

自社が利用するグループウェアの要件を検討し、実際に開発することが不動産会社の社内SEには求められます。

社内インフラの管理・運用

社内SEの仕事はアプリケーションの開発だけではありません。不動産会社が事業を継続するために必要なインフラを整備・運用・保守をすることも仕事に含まれます。

具体的には、以下の求人が該当します。この求人は三井不動産社でインフラ関連の企画・推進を担当する人材を募集しています。

ただし、この求人は実装と運用の実務は外部ベンダーが担当することが求人票に挙げられています。つまり、この求人で採用されて担当するのは、主に企画の工程です。

社内インフラを管理する担当者を募集している求人をもう1例紹介します。この求人はアパートの建築・賃貸管理などを主な事業としている株式会社レオパレス21の求人です。この求人では、システム開発かインフラ管理に携わる人材を募集しています。

不動産会社に物件の相談に行くと、窓口でパソコンを見ながら物件を紹介されます。私が物件の購入を検討するために不動産会社を訪問したときには、担当者が希望エリアの地価や学区などをパソコンの画面で説明してくれました。

このようなアプリケーションを利用するためのパソコン、サーバー、セキュリティ環境を構築することも、社内SEの仕事内容です。

自社でシステムを開発するかは企業による

不動産会社の社内SEは、自社システムの開発とインフラの管理を担当します。実はこれらの仕事の中で、自社システムの開発は、ほとんどの会社でSIerに外注していることが多いです。

冒頭で紹介したハウスドゥ社の求人では、自社内で開発を行うことが求人票に記載されています。

しかし、このような求人は求人全体のなかのごく一部です。

同じく最初の項で紹介した三井不動産社の求人では、「システム開発から保守・運用までを様々なベンダーに外注している」と記載されています。

システム開発を外注すると、社内SEの仕事は要望を外注先に伝えることや外注先の仕事の進捗を管理することです。実際に社内SEが手を動かしてプログラミングをすることはありません。開発自体を外注する場合は、要望を外注先に伝えるだけです。

また、運用や保守を外注すると、自社のオフィスに外注先の担当者が常駐して仕事をすることになります。勤務形態は発注元企業と同じ形態です。このとき常駐する担当者に仕様の変更依頼をしたり、適宜仕事の進捗報告を受けたりするのが社内SEです。

あなたがシステムの開発に携わりたいのであれば、具体的な働き方をしっかりと確認するようにしましょう。採用試験の過程で企業側に「システム開発にどのように関わるのか」「SIerの管理が主の業務か」などを質問するとよいです。

直接質問しにくければ、転職エージェントを介して企業に問い合わせてもらいましょう。

このように、転職後の働き方を事前に調査しておくことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。

転職成功のために求められる経験

続いて、不動産会社の社内SEに転職するときに求められる経験について紹介します。

押さえておかなければならないのは、「転職後に携わる仕事と同様の業務の経験が求められること」です。つまり、システム開発に携わるのであればシステム開発の業務経験、インフラ管理に携わるのであればインフラ管理の業務経験が必須です。

実際の求人例で確認しましょう。まずは、冒頭で紹介したハウスドゥ社の求人です。

ハウスドゥ社では、自社でシステム開発やAI技術の開発を行うエンジニアを募集していました。この求人の対象となる方の欄には、システム開発やAIエンジニアとしての業務経験が挙げられています。

そして、この求人にはシステム開発で使用するプログラミング言語についても記載されています。

例えば、転職を検討したことがあれば、求人サイトで求人を検索・閲覧をした経験があると思います。

引用:転職ならdoda(デューダ)より

このような求人を検索するサイトは、Java、PHP、Ruby、Pythonなどのプログラミング言語を使用して開発されます。ちなみに、dodaはJavaでコーディングされたwebアプリケーションです。

不動産を検索するサイトの作成も同様のプログラミング言語を使用します。求人サイトの開発・運用の経験があれば、不動産業界でも活かすことができます。

このように、これまで不動産業界以外で働いていても、不動産業界に転職して活かすことができる経験は多いです。

不動産業界での業務経験は求められない

不動産会社の社内SEに転職するときは、もちろん不動産業界でのSEの経験があれば有利に転職活動を行うことができます。実は、不動産会社の社内SEの求人は、不動産業界未経験者でも応募できる求人が多いです。

実際、ここまで紹介した求人のなかで、不動産業界での勤務経験が求められるものはありませんでした。冒頭で紹介したハウスドゥ社の求人は、以下のように不動産業界の業務経験は不問です。

このように、不動産会社の社内SEに転職するときには、不動産業界での業務経験が求められることはほとんどありません。むしろ、業界が異なっても、システム開発やインフラ管理などの転職後に携わる業務の経験が求められることを覚えておきましょう。

不動産業界の年収は平均的な水準

最後に、不動産会社の社内SEに転職したときの年収について解説します。年収は転職の満足度に直結しやすい要素であり、年収アップを狙って転職を考えている人もいるでしょう。

ここまで紹介した求人の年収を紹介します。冒頭で紹介したハウスドゥ社の提示年収は、以下のように400万円~700万円です。

そして、ハウスドゥ社を含むここまで紹介した4社の求人で提示されている年収をまとめたものが下の表です。

会社名 提示年収

(万円)

(株)ハウスドゥ 400~700
三井不動産(株) 650~1,100
三井不動産(株) 650~1,100
(株)レオパレス21 360~580

参考までに、システムエンジニアの平均年収は、厚生労働省が毎年調査・報告している賃金構造基本統計調査によると約570万円です。

この数値と比較すると、ハウスドゥ社の提示年収はSEのなかでも平均的な水準といえます。それに対して、三井不動産社の提示年収はかなり高いです。また、レオパレス21社の年収は低めであることがわかります。

そして、社内SEは不動産会社に限らず、多くの業界で募集されています。例えば、製薬会社や銀行、病院などでも社内SEは活躍しています。

では、これらの業界と比べて不動産業界で働くと高い給料をもらうことができるのでしょうか。賃金構造基本統計調査によると、業界別の平均年収は、下の図のように業界全体の平均的な水準といえます。

引用:令和元年賃金構造基本統計調査をグラフ化

あなたがこれまで平均年収が低い業界で働いていたのであれば、不動産業界に転職することで年収を上げることができるかもしれません。

このように、不動産会社の社内SEに転職するときには、業界と職種の年収相場を把握して転職活動をするようにしましょう。求人票に記載されている年収が妥当性を判断した上で転職することで、年収面での転職失敗を防ぐことができます。

まとめ

ここでは、不動産会社の社内SEに転職するときに知っておくべき内容について紹介しました。

不動産会社の社内SEの仕事は、自社で使用するシステムやインフラ設備の開発・運用です。特に、開発の工程は外部企業に業務委託することが多いので、あなたが携わりたい仕事と転職後に携わる仕事がマッチしているかを十分に確認するようにしましょう。

転職の際には、転職後に携わる仕事内容と同じ業務の経験が求められます。不動産業界以外での社内SEとしての勤務経験や、SIerでの開発経験などがあれば、応募条件を満たす求人はあります。

不動産業界の給与水準は、全産業のなかで平均的です。現在働いている業界との年収の水準を比較して転職することで、給与面での失敗を防ぎやすくなります。

これらの点を確認しながら転職活動を行うことで、納得のできる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。