医療機器は1つの製品に多くの基本特許が存在します。医療機器メーカーの知財部門は、自社の発明発掘、特許申請、知的財産権の維持管理を担当する仕事です。
知財戦略は、会社の事業展開に深くかかわります。知財戦略のやり方次第で、事業展開や利益に大きな影響が出ます。
では、医療機器メーカーの知的財産部門に転職するためには、どのような経験が求められるのでしょうか。転職活動を有利に進めることができる資格やスキルは存在するのでしょうか。また、未経験者でも転職できるのでしょうか。
ここでは、医療機器メーカーの知財部門への転職を目指すときの考え方を解説します。具体的には、「知財部門の仕事内容」「転職で求められる経験、スキル、資格」について紹介します。
もくじ
医療機器の基礎知識が仕事で求められる
知的財産部門は、会社の知的財産に関わる業務全般を担う立場です。自社の発明を権利化したり、権利を維持したりすることが主な仕事です。
これらの仕事を担当するためには、知的財産に関する専門知識はもちろん必要ですが、製品に関する専門知識も求められます。
知財部門は、研究や開発の担当者と情報共有をしながら仕事を進めます。そのときのやり取りでは、製品の基礎知識がないと仕事になりません。
自社の知的財産を保護するためには、他社の知的財産を調査することは日常業務です。このとき、ライバル企業の特許を読む機会もあり、専門用語を解読しなければなりません。
転職活動を有利に進めるための経験、スキル、資格
続いて、医療機器メーカーの知的財産部門に転職するときに、どのような経験、スキル、経験があれば有利に転職活動ができるかについて解説します。
弁理士資格があれば、転職は圧倒的に有利になる
知的財産権を専門に扱う資格に弁理士があります。弁理士は知的財産の専門家です。そのため、弁理士資格があれば、転職活動を有利に進めることができます。
弁理士は特許、商標などの出願、申請を担当する専門家です。弁理士資格があれば有利に転職できるのは当たり前です。
実際の求人でも弁理士資格が条件の1つに挙げられているものがあります。下に紹介する求人は、大阪府に拠点がある医療機器メーカーの求人です。この求人では、弁理士資格が歓迎条件の1つとして挙げられています。
なお、弁理士資格は合格率が10%未満の難関資格です。そう簡単に取得できる資格ではありません。
ちなみに、弁理士資格が必須条件に挙げられている求人はありません。なぜなら、知的財産業務は弁理士資格がなくても担うことができるからです。
私の知人でメーカーの知的財産部で働いている人がいます。研究部隊との連携を密に行っており、仕事もできる人ですが、弁理士資格はもっていません。
私の知人は「弁理士資格がなくても、企業で知的財産に関わる仕事はできる。私は弁理士資格を持っていないが、今後も取得する予定はない」と話してくれました。
弁理士資格を保有していれば、知的財産の専門家として見られます。そのため、弁理士資格を有していれば、大いにアピールすることができ、転職活動を有利に進めることができます。
英語力が必須の求人もある
医療機器の研究開発は日本国内だけではなく、世界中で展開されています。日本国内に外資系の医療機器メーカーも拠点を構えていますし、商社が海外の医療機器を国内に輸入して販売していることもあります。
そのため、海外の知的財産に触れる機会は多く、英語の書類を見る場面も多いです。
さきほど紹介した大阪の医療機器メーカーの求人でも、英語力が必須条件の1つとして挙げられています。
特許事務所での業務経験があれば応募できる求人もある
メーカーでの知財業務経験があれば、経験を活かして転職することができます。実際の求人でも、メーカーだけでなく、特許事務所での業務経験があれば応募できる求人はあります。
例えば、以下のような川澄化学工業株式会社の求人が該当します。この求人は、特許事務所か機械系メーカーでの特許出願や特許調査業務経験があれば応募することができます。
川澄化学工業社は、血液および血管内関連や体外循環関連の医療機器の開発・製造販売を行っているメーカーです。
知財業務の未経験者が応募できる求人数は少ない
知的財産に関わる人材には、特許の知識と製品の知識の両方が求められます。そのため、さきほど紹介した求人でも知的財産業務の経験が必須で、物理、電気、機械のバックグラウンドが歓迎条件として挙げられていました。
知的財産を扱うという専門性の高い仕事を担当するので、知的財産業務の経験者を募集していることが多いです。
では、知的財産業務の未経験者が転職を成功させることは不可能なのでしょうか。実は、求人数はかなり少ないですが、未経験者でも応募できる求人は存在します。
次に紹介する求人は、会社名は非公開ですが、愛知県にある医療機器メーカーの求人です。この求人の「応募資格」の欄には、知的財産業務の経験は歓迎条件として挙げられています。
高専卒・大卒以上の学歴と理系の素養があれば応募できます。つまり、理系の高専または大学を卒業していれば、応募条件を満たし、業務未経験者でも応募することができます。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。