製薬会社への転職を考えたときに「大手の製薬会社に転職したい」と思う人は多いです。新卒の就職活動のときにも、大手製薬企業にエントリーした人もいると思います。中小規模の製薬会社で働いていると、大手製薬会社で働くことにあこがれを抱くこともあるでしょう。

大手の製薬会社は「給料が高い」「福利厚生が充実している」などの特徴があります。その一方で、転職の際に求められる条件が厳しく、転職のハードルが高いことが多いです。

大手製薬会社への転職活動をするときには、中小規模の製薬会社との違いを認識したうえで活動する必要があります。そして、求められるものを認識したうえで転職活動をしなければ、内定を勝ち取ることはできません。

ここでは、大手製薬会社に転職するときに転職活動にやり方について、求人例を示しながら紹介します。

大手製薬会社と中小の製薬会社の違い

「大手製薬会社に転職したい」といっても、実は「大手製薬会社」の明確な定義はありません。同じ製薬企業を指すときに大手と呼ぶこともあれば、中規模とみなされるときもあります。

参考までに、中小企業基本法によると「資本金の額または出資の総額が3億円以下」か「従業員数が300人以下」のいずれかを満たす企業が中小企業です。多くの製薬会社はどちらも満たさないので、分類上は中小企業ではない、つまり大手の会社に分類されてしまいます。

ここでは、従業員数が多い会社(おおむね1000人以上)を大手として解説していきます。

仕事は専門ごとに細分化されている

大手の製薬会社は、中小規模の製薬会社と比較して従業員が多いです。下に国内最大手の製薬会社の1つである武田薬品工業株式会社と、社名は伏せますが規模が小さい製薬会社の従業員数を比較しています。

従業員数が多いということは、それだけ1つのプロジェクトに人数を割り振ることができ、それぞれの専門職の専門分野や強みを活かした人員配置ができます。

そのため、大手製薬会社への転職では、特定の分野に特化した経験が求められることがあります。

下に示す製薬会社の求人は、埼玉県にある研究所で製剤研究の担当者を募集しています。この求人では製剤設計と製剤製造の経験が必須条件に挙げられていますが、なかでも貼付剤か一般外用剤の製剤設計と製造の経験が求められています。

医薬品には、下の写真のように貼付剤、外用剤以外にも錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、注射剤などさまざまな剤形が存在します。

例えば規模が小さい会社では、1つの職種が社内に10人程度しかいないこともあります。そのため、1つのプロジェクトに対して同じ職種の人を1人しか割り当てられないことも珍しくありません。

私の知り合いが働いている製薬会社では、探索合成の担当者は10人しかいません。このような場合は、専門分野と異なる内容を任されても1人でやるしかありません。よくいえば「いろいろな経験ができる」と捉えることができるかもしれません。

その一方で、大手製薬会社では探索合成の担当者だけでも100人を超えることもあります。大手製薬会社では1つのプロジェクトに複数の担当者が関わり、それぞれの得意分野、専門性を活かして、協力しながら研究を進めることができます。

このように、大手製薬会社ではそれぞれの専門分野、得意分野がある担当者が多く在籍しており、仕事が細分化されています。

新薬を発売し続けており、経営が安定している

製薬会社は医薬品を販売して利益を生み出しています。そのため、経営を安定化させるためには、新薬を発売し続けなければなりません。

下のグラフは、2018年4月から2019年3月までの間に、3品目以上が新医薬品として承認された製薬メーカーをまとめたものです。

ほとんどの会社は名前を聞いたことがある、いわゆる大手製薬会社だと思います。もちろん規模が小さい製薬会社も含まれますが、その数は少ないです。

大手の製薬会社は研究開発に関わる人員を多く確保しているので、開発パイプラインも多いです。そのため、新薬が生み出される可能性は、中小の製薬会社よりも大手の方が高いといえます。

小規模の製薬会社で研究職として働いている友人に話を訊くと、以下のような話をしてくれました。

私の会社では、1つのプロジェクトで合成担当者が1人で、薬理担当者も1人ということもある。それぞれのテーマに携わる人が大手と比べて少ないので、研究開発のスピード感も大手に劣る。環境的には新薬を生み出すのは難しい。

当然ですが、大手製薬会社も新薬が発売にならなければ、経営は厳しくなり、将来性がなくなってきます。ただ、研究開発に避ける人員数、開発パイプラインの数は規模が大きい会社の方が多いので、新薬が発売される可能性は高いといえます。

大手製薬会社の方が高年収

大手の製薬会社は新薬を発売し続けている会社が多く、その分売上高が多いです。下に示す表は、国内製薬会社の2018年4月から2019年3月の売上高ランキングです。

順位 社名 売上高

(百万円)

1 武田薬品工業 2,097,224
2 アステラス製薬 1,306,348
3 大塚ホールディングス 1,291,981
4 第一三共 929,717
5 エーザイ 642,834
6 中外製薬 579,787
7 大日本住友製薬 459,267
8 田辺三菱製薬 424,767
9 塩野義製薬 363,721
10 協和発酵キリン 346,531

引用:【2019年版】国内製薬会社ランキングより

ランキング上位の企業は、どれも大手製薬企業といわれる企業です。売上高が多いということは、その分給料も多く支払われることにつながります。

下に大手製薬企業の給料例を示します。この求人は臨床開発職のクリニカルサイエンティストを募集しています。提示年収は最大で1,000万円を超えていますが、大手製薬会社では珍しいことではありません。

また、下のグラフは、事業所の規模別の男性平均給与を示したものです。会社の規模が大きくなるにつれて、平均給与は高くなる傾向があることがわかります。

引用:平成29年 民間給与実態統計調査結果 第5表の一部をグラフ化

大手製薬会社では従業員数が5000人を超えている会社もあります。その一方で、規模が小さい製薬会社は従業員数が500人に満たないこともあります。

このように、会社の規模の違いが年収に影響し、大手製薬企業では中小規模の製薬会社と比べて年収が高い傾向があります。

福利厚生が充実している

製薬会社の福利厚生に魅力を感じている人は多いのではないでしょうか。そして、大手の製薬会社は福利厚生が充実しており、仕事以外の日常生活でも恩恵を受けることができます。

下の求人は、大手製薬会社で合成プロセス開発研究者を募集しています。この求人の「待遇・福利厚生」の欄には、以下のように記載されています。

大手の製薬会社の研究職や開発職は、関東や関西などの都市部に集中しています。そのため、地方に住むときと比べて家賃は跳ね上がります。

私の知り合いの大手外資系製薬会社で働く友人は、賃貸のときは30万円の家賃のうち20万円を会社が負担してくれていたそうです。そして、マンションの一室を購入したときも月々5万円の補助があります。

また、テニスコートやリゾート施設の割引制度があり、休日の過ごし方も充実したものになります。

これらの福利厚生は規模が小さい製薬会社でも同じような項目が設けられています。しかし、大手製薬会社の方がより充実した内容の福利厚生であることが多いです。

大手製薬会社に転職するために求められるもの

前章では大手製薬会社と規模の小さい製薬会社の違いについて紹介しました。では、大手製薬会社に転職を成功させるためには、どのようなキャリアや経験が求められるのでしょうか。

ほとんどがキャリア採用であり、業務経験が必須

大手製薬会社に限らず、製薬業界の求人はキャリア採用が多いです。下の求人は大手製薬会社でCMC薬事の担当者を募集しています。

そして、この求人の「応募資格」の欄には、バイオ医薬品またはワクチンのCMC薬事担当者を5年以上経験していることが必須条件の1つに挙げられています。

CMC薬事は医薬品の承認申請資料のうち、製造方法、規格、試験方法、安定性などのパートを作成します。これらの項目は医薬品の種類によって、内容が大きく異なります。

例えばバイオ医薬品やワクチンは、製造に細胞や動物の卵を使用します。そして、精製工程では製造に使用した動物細胞を除去しなければなりません。

その一方で、低分子医薬品の多くは原薬の精製工程では再結晶を行います。製造の工程で動物細胞は使用することはありません。

このようにバイオ医薬品やワクチンと低分子医薬品は精製工程が全く異なるので、承認申請書類の記載内容も大きく変わってきます。

大手製薬会社の仕事は、担当者ごとに細分化されていることを前の章で紹介しました。その影響もあり、中途採用を募集するときも、前述の求人のように特定の仕事の経験が必須条件に挙げられることは珍しくありません。そのため業務未経験者が応募できる求人はほとんどないと考えてよいです。

大手製薬会社に転職するときには、業務経験が必須条件に挙げられることが多いことは覚えておきましょう。

・臨床開発職ではCROから大手製薬会社に転職できる

大手製薬会社への転職で求められる業務経験は、必ずしも製薬会社に在籍していなくてもよいこともあります。臨床開発職は製薬会社だけでなく、CRO(医薬品開発業務受託機関)でも同様の業務経験をします。

CROに在籍すると、製薬会社に派遣されて、派遣先の製薬会社の開発業務を行います。そして、CROでの臨床開発職の業務経験を活かして、大手製薬会社に転職することができます。

下の求人は東京に本社がある大手製薬会社で、統計解析の担当者を募集しています。そして、この求人の「応募資格」の欄には、製薬会社だけでなく、CROでの業務経験でも応募できることが記載されています。

CROに在籍していても製薬会社に在籍していても、行う業務は基本的には同じです。

求人の紹介は割愛しますが、統計解析だけでなく、CRA(臨床開発モニター)、安全性情報(ファーマコビジランス, PV)などの職種も、CROでの業務経験があれば大手製薬会社に転職できる可能性があります。

・営業職(MR)や学術職(MSL)はCSOから大手製薬会社に転職できる

臨床開発職はCROでの業務経験を活かして大手製薬会社に転職できますが、同様に営業職や学術職はCSO(医薬品販売業務受託機関)での業務経験を活かして大手製薬会社に転職できます。

下に2つの求人例を示します。1例目はオンコロジー領域のMRを募集している求人です。そして2例目はオンコロジー領域のMSLを募集している求人です。いずれもCSOでの業務経験があれば応募することができます。

CSOに在籍してMRやMSLの経験を積み、その経験を活かして大手製薬会社に転職することができます。

研究職と開発職は高い英語力が求められる

大手製薬会社は国内だけでなく、世界中の関連会社と共同研究を行ったり、グローバル試験を展開したりします。そのため、海外の担当者とのやりとりをしなければならず、そのようなときは英語を使用しなければなりません。

下の求人は開発薬事の担当者を募集していますが、海外のコンサルタントや当局とメールや打ち合わせが可能なレベルの英語力が必須条件として挙げられています。

また、次の薬物動態の研究者を募集している求人では、TOEICで700点以上の英語力が求められています。

このように、大手の製薬会社への転職では高い英語力が求められることが多いです。

・採用試験で英語面接を実施することもある

会社によっては、転職の面接を英語で行う会社もあります。下の求人は会社名を公開できませんが、大手製薬会社のデータマネジメント職を募集しているものです。この求人に応募すると、選考過程で英語面接があります。

英語で面接をすることで、英語力がどの程度あるかをみられます。そして実際に入社すると、電話会議で英語を話したり、実験のレポートを英語で書いたりすることは頻繁にあります。

実際に英語面接をする製薬企業は少ないですが、大手製薬会社では高い英語力が求められることは覚えておきましょう。

大手製薬会社へ転職するためのポイント

では、大手製薬会社に転職を成功させるためには、どのような点に注意して転職活動をすればよいのでしょうか。続いて、転職を成功させるためのポイントを紹介していきます。

転職の理由や志望動機を明確にする

前の章では、大手製薬会社に転職するために求められる経験、スキルについて紹介しましたが、それらを有していても必ずしも大手製薬会社に転職できるわけではありません。

転職を成功させるためには、あなたのスキルと製薬会社が求めるものが合致する必要があります。そこで、就職希望先の会社でどのような仕事をしたいのかを明確にする必要があります。具体的には以下の点について自分の考えをまとめておかなければなりません。

  • なぜその会社に応募したのか
  • 入社後どのような仕事をしたいか

そしてこれらの質問をされたときに「福利厚生が充実しているから」と答えるとどのような印象を与えるでしょうか。私なら「この人は仕事をやる気はあるのか。採用しても会社に貢献してくれないのではないか」と考えてしまいます。

採用担当者に「この人に入社してほしい」「この人を採用すれば会社に貢献してくれる」と思ってもらわなければ、採用されることはありません。

・大手製薬会社は面接回数が多いこともある

多くの会社は2回の面接をパスすると、内定をもらうことができます。しかし大手製薬会社のなかには、下に示すように内定までに3回以上の面接を受けなければならないことがあります。

面接の担当者は毎回変わりますが、「なぜその会社に転職しようとしているのか」「入社後にどのような仕事をしたいか」は毎回同じように質問されます。そのため、面接を受ける前に転職の理由や志望動機を明確にしておかなければ、必ず途中でボロが出てしまいます。

転職エージェントを活用して、大手製薬会社に転職成功させる

大手の製薬会社は転職を希望する人が多いので、応募条件が厳しく、正社員としての採用の難易度は高いです。そこで、大手製薬会社に転職成功させるために、転職エージェントを活用することをおすすめします。

転職エージェントは多くの求人を取り扱っていますが、実はそのうちの約8割は非公開求人といわれています。非公開求人には会社名だけが非公開になっていて、仕事内容や応募資格などは閲覧できるものもありますが、求人自体が非公開のものも多いです。

つまり、あなたが転職エージェントを活用せずに転職活動をすると、出会える求人は世の中の求人の2割程度です。

また、大手製薬会社への転職には業務経験が必須のものがほとんどですが、非公開求人のなかには業界未経験でも応募できる求人も存在します。

下の求人は、前の章で紹介した大手製薬会社のデータマネジメントの担当者を募集しているものです。必須条件には業務経験は挙げられておらず、業務経験は歓迎条件です。つまり、未経験者でも応募し、採用される可能性がある求人です。

ほかにも、転職エージェントが推薦してくれることで、必須条件を満たしていなくても応募でき、採用されることもあります。私も転職活動のときに必須条件を満たしていない求人を紹介してもらい、エントリーしたことがあります。

そして、転職エージェントは職務経歴書の添削や、面接対策なども行ってくれます。ほとんどの人は転職経験が少ないので、これらのサービスは重宝すると思います。

転職エージェントはあなたの味方になって、転職成功のための支援をしてくれます。最大限に有効活用して、納得できる転職をするようにしましょう。

まとめ

ここでは大手製薬会社に転職するときに求められるもの、規模が小さい製薬会社との違いなどについて紹介しました。

大手の製薬会社は、従業員数が多いので、それぞれの専門職ごとに仕事が細分化されています。そして、規模が小さい製薬会社と比べて新薬の発売も毎年のようにあり、経営が安定している会社が多いです。また、福利厚生が充実しており、年収も高いことが多いです。

大手製薬会社への転職では、キャリア採用が多く、その職種での業務経験が必須になります。国内だけでなく海外とのやり取りも多いので、高い英語力も必須のスキルといえます。

大手製薬会社には小規模の製薬会社にはない魅力が多いですが、転職の際には転職理由や志望動機をしっかりと考えなければなりません。これまでの経験を活かして入社後にどのような活躍ができるのかについてアピールしなければ、内定を勝ち取ることはできません。

そして、転職活動をするときには、転職エージェントのサービスを利用するようにするとよいです。非公開求人の紹介だけでなく、職務経歴書の添削や面接対策なども行ってくれるので、転職を成功させやすくなります。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。