研究職では、男性と比べて数は少ないものの、一定数の女性研究者が活躍しています。

あなたの職場は働きやすいですか? 多くの女性は、結婚・妊娠・出産・育児と、ライフステージが変わるたびに、働き方も変わります。

転職のときには、女性ならではの気になるポイントを押さえておくことで、仕事だけでなく、プライベートも充実したものになります。

ここでは、女性の研究者が働きやすい会社に転職するときに、どのような点を意識すべきかについて、私や私の知人の実体験も含めて紹介します。

従業員の女性比率や職場環境を確認する

あなたは、職場に女性がいた方が働きやすいですか? 男性ばかりの職場の方がいいですか?

求人によっては、男性社員と女性社員の比率や具体的な人数が紹介されているものがあります。

下に示すケミコスクリエイションズ株式会社の求人では、研究職が10名で、男性8人、女性2人で構成されていることが挙げられています。

ケミコスクリエイションズ社は、東京都に拠点がある化粧品や化粧品原料の研究開発・製造販売を主な事業にしている企業です。

研究職では、ケミコスクリエイションズ社のように、ほとんどの職場で男性社員の方が多いです。

私が働いていた化学メーカーでは、研究職は8名が在籍していました。そのうち女性は1名だけでした。研究職で働く友人に男女の比率を訊いてみましたが、どの職場でも男性の方が多かったです。

女性でも、「同性の人が多い方が働きやすい人」と、「異性が多い方が働きやすい人」に分かれます。あなたが、働きやすい企業に転職するためには、事前に男性研究員と女性研究員の比率を確認しておくとよいです。

なお、女性の研究者が少なくても、職場の環境で困ることはほとんどありません。私の友人で、製薬会社で働く女性研究者がいます。彼女の職場では、女性だからと言って職場環境的に困ることはないと教えてくれました。

実際に、下の写真のような建物内に研究所があれば、仕事中に困ることはありません。

しかし、会社によっては苦労することもあります。私がかつて働いていた化学メーカーは、下の写真のような工場の中に研究所がありました。

工場内で働く女性のほとんどは、品質管理部か業務部に所属していました。そして、さきほど紹介したように、研究所には1名しか女性がいませんでした。

そのため、研究所には女性用トイレがありませんでした。それぞれの部署の建物は離れており、研究所の女性社員は、100mほど離れた品質管理部の近くにあるトイレを利用していました。

このようなケースは稀かもしれません。しかし、事前に職場環境も確認しておくことで、転職後の後悔を防ぐことができます。

管理職への昇進を考える

就職して在籍期間が長くなり、会社に研究者としての実力が認められると、管理職に昇進することがあります。女性であっても、管理職に登用されることはあります。

最近では、女性の就業環境を向上させていることをアピールしている企業も増えています。

例えば、次に示すJSR株式会社は、女性の活躍を推進する取り組みを積極的に行っている企業です。JSR社は、東京都に本社がある化学メーカーです。

JSR社の求人には、経済産業省と株式会社東京証券取引所が共同で女性活躍推進に優れた上場企業を選定・表彰する「なでしこ銘柄」を受賞していることが紹介されています。

将来的に、管理職としてバリバリ働きたいのであれば、このような企業を選んで応募するとよいです。

ただし、管理職として働いていると、苦労することもあります。

まず、必ず定時に退社できるわけではありません。また、会議がコアタイム以降に開かれることもあります。

私が働いていた化学メーカーでは、17時までの勤務でしたが、17時から開催される会議が毎週のようにありました。企業の事業展開によっては、海外との打ち合わせが夜に入ることもあります。

将来的に家庭をもつ場合は、仕事だけでなく家庭との両立を図らなければなりません。

管理職を目指すのであれば、このような状況になりうることを考慮しておく必要があります。

結婚・出産後も研究職で働き続ける

家庭の経済的な理由や、研究に従事し続けたい気持ちなどで、出産後も研究職で働き続けることを希望する女性は多いです。ちなみに、私の知り合いで研究職で働いている女性は、全員出産後も復職して研究職で働いています。

そして、実際の求人票にも、出産後に復職しやすい会社であることを紹介しているものもあります。

下に示すAGC株式会社は、復職率がほぼ100%であることが求人票に紹介されています。AGC社は大手ガラスメーカーで、この求人では神奈川県横浜市の研究所で働く人材を募集しています。

私が働いていた化学メーカーでも、女性の先輩は出産後に子供を保育園に預けて復職していました。

そして復職後は、研究テーマは同じですが、業務内容や業務量を定時に退社できるように上司が調節していました。どちらかというと、テーマの核になるような実験ではなく、サブの実験を任されていました。

このような働き方を実現するためには、職場の風土が大きく影響します。

「仕事と家庭の両立をしやすいか」「女性に優しい風土か」などを先方企業に確認しておくことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。企業に直接質問しにくければ、転職エージェントを介して問い合わせてもらってもよいです。

また、企業によっては、フレックスタイム制を導入していることもあります。前の章で紹介したJSR社は、完全フレックスタイム制を導入している企業の1つです。

フレックスタイム制の企業であれば、早めに出社し、その分早めに退社することが可能です。

私の知人が働く製薬会社もフレックスタイム制を導入しています。その会社では、保育園の迎えのために出社時間・退社時間を調節している女性が多いと教えてくれました。

このような、会社の勤務体系を事前に確認しておくことで、その会社で長く働くことができるかを考える材料になります。

転勤の有無を事前に確認しておく

事業所や関連会社が複数ある企業で働くと、転勤になる可能性があります。転勤は企業で働くときの宿命の1つです。

会社によっては、求人票に転勤の有無が記載されていることもあります。次に紹介する日本電気株式会社(NEC)の求人では、将来的に転勤の可能性があることが求人票に記載されています。

家庭があると、勤務地が変わるのは大きな影響が出ることもあります。

逆に、転職後しばらくは転職の可能性が低いことが記載されている求人もあります。冒頭で紹介したケミコスクリエイションズ社の求人では、以下のように当面は転職の予定がないことが記載されています。

ケミコスクリエイションズ社には複数の関連会社があります。研究所は東京都台東区にありますが、関連会社のなかには埼玉県に拠点を構えている会社もあります。

なお、求人によっては、転勤の有無について触れられていないものもあります。また、本人が希望をしない限りは転勤にはならない会社もあります。

会社によって、転勤に対する考え方は異なります。あなたが将来的に転勤をしたくないのであれば、求人票や事前の確認で情報を収集しておかなければなりません。

研究職にはパートの求人はない

正社員で働くと、基本的には1日8時間、1週間に5日は出勤しなければなりません。

家庭の事情で、「午前中だけ」や「週に3日だけ」のような勤務を望む人もいます。パートとして働けば、上記のような勤務形態も実現できます。

残念ながら、研究職で働くのであれば、上記のような勤務形態を実現できることはありません。

求人数は少ないですが、時給で給料が支払われるような雇用形態で募集している求人はあります。しかし、勤務時間は正社員とほぼ同じです。

例えば、次に紹介する国立研究開発法人 国立がん研究センターの求人は、給料が時給で支払われることが記載されています。雇用形態は、パートの契約社員です。

勤務時間は週に30~40時間であり、正社員の勤務時間とほとんど変わりません。

なお、このような求人は、研究職と言うよりは「研究助手」の位置づけです。実験を担当しますが、補助員として研究に携わることになります。

この求人は助手のポジションなので、研究をするというよりは、研究の手伝いが仕事です。基本的には、正社員の研究員から振られた仕事を行います。

このような位置づけなので、研究を引っ張っていくようなポジションではありません。また、プレゼン資料の作成や発表を担当することもありません。

あなたは研究にどのように携わりたいですか? プロジェクトの中心で活躍したいのであれば、さきほどのような求人では実現できません。

一方で、「何らかの形で研究に関わりたい」「実験や解析の経験を活かしたい」という希望であれば、研究補助員の求人も選択肢になります。

まとめ

ここでは、女性が研究職求人に転職するときに、働きやすい会社に転職成功させるためのポイントを解説しました。

研究職は、ほとんどの会社で女性社員が男性社員よりも少ないです。仕事をするときに困ることがないよう、転職活動を通して職場環境の確認をするとよいです。

福利厚生が充実している企業が増えており、出産後も復職しやすい会社が多いです。復職後の仕事内容まで考慮してもらえるかは会社の風土によります。

会社の規模によっては、将来的に転勤を命じられることがあります。仕事と家庭の両立をするためにも、事前に転勤の有無を確認しておきましょう。

研究職の求人でパートの求人はありません。研究助手として働くとしても、フルタイムで働く正社員と同等の勤務時間です。あなたが研究にどのように関わりたいかで、求人を選ぶとよいです。

これらのポイントを押さえて転職活動をすることで、転職の失敗を防ぎやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。