転職活動をするときに、履歴書に必ず書かなければならないのが「志望動機」です。

志望動機を書くときに、「立派な文章を書かないといけない」と思い、ほとんどの人は筆が止まってしまいます。私も新卒の就活のときや、転職活動をしているときに、志望動機には悩みました。

研究職として働くことで身につけたスキルを活かして転職するためには、適切に志望動機を書く必要があります。同じ経験をしていても、志望動機の書き方によっては、志望する企業に悪い印象を与えてしまうこともあります。

ここでは、研究職での経験を活かして転職するときの、志望動機の書き方について解説します。

転職の志望動機でNGになる表現

あなたは転職をしようとしているので、新卒で就職活動をしているときとは、状況が異なります。中途採用の場合は、あなたのこれまでの経験を活かした即戦力としての働きを期待されていると、意識しなければなりません。

嘘を書く

志望動機に嘘を書いてはいけないことは、いうまでもありません。ところが、自分をよく見せようとして、嘘を書いてしまいがちです。

例えば、携わったテーマが商品化された経験がなくても、「商品化の経験がある」と書いて自己PRをしてしまうことなどです。

これまでの実績を載せることで、あなたの能力は高く評価されます。しかし、書面上では立派に見えても、選考が進んで面接になると、その嘘はばれてしまう可能性が高いです。

面接担当者は、あなたの志望動機について、よりくわしく質問してきます。製薬会社で採用面接を担当したことがある人に話を訊くと、以下のような話をしてくれました。

面接では、興味がある人にはいろいろ質問をする。なぜそう思ったのか、なぜそのような行動をとったのかなど、その人のことをより知ろうとする。だから、面接が終わったときには「かなり厳しく質問されたから不採用かな」と感じるかもしれないが、むしろ逆のことが多い。

嘘をつくのと同様に、インターネット上にある例文をコピペするのもダメです。例文には、あなたの経験ややりたいことが反映されていないので、面接のときに、本心でないことがばれる可能性が高いです。

面接担当者は、あなたを本気で採用しようと思うと、いろいろな質問をしてきます。くわしく質問されても答えられないような内容は、志望動機には書かないようにしましょう。

貴社の企業理念に惹かれた

転職の際に、企業理念を確認し、共感することは大切です。しかし、そのまま履歴書に記述するのは避けるようにしましょう。なぜなら、企業理念は抽象的であり、他社との違いが現れにくいからです。

実際の企業理念を比較してみると、よくわかります。下に示すのは、大手製薬会社3社の企業理念です。

  • A社:世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する
  • B社:革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する
  • C社:人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する

どの会社の企業理念もすばらしく、実際に世界の人々の健康に貢献している会社ばかりです。しかし、よく見ると、内容は似ていることがわかります。

したがって、企業理念に惹かれるというのは、「その会社を志望する理由」にはなりません。

学生時代から興味があった業界

転職をする業界に興味関心があることは大切です。しかし、「学生時代から興味があった」「昔から携わりたかった」と志望動機に書くのはよくないです。なぜなら、「なぜ新卒のときにこの業界に就職しなかったのだろうか」と思われるからです。

例えば、現在化学メーカーで化学分析の研究職として働いている人が、「昔から新薬の開発をしたかったので、製薬会社の探索合成を希望します」と言っても、説得力がありません。

このような表現は、新卒で就職活動をするのであれば、問題ありません。しかし、転職活動のときには避けるようにしましょう。

退職理由をネガティブな表現にしない

あなたが転職する理由は、何でしょうか。「給料や福利厚生に不満がある」「人間関係がしんどい」「家から遠い」など、現在の会社に何かしら不満を持っているから転職を考えているはずです。

しかし、これらの理由をそのまま志望動機に書くと、悪い印象しか与えません。これは、採用担当者の立場になって考えるとわかります。

例えば、「今の会社は給料が安い。貴社は給料がいいから志望した」と志望動機に書かれていて、採用しようとは思わないはずです。

そこで、ネガティブな表現をポジティブな表現に変えるようにしましょう。具体例を下に示します。

ネガティブ:同じ業務の繰り返しで、仕事に飽きた

ポジティブ:身につけたスキルを活かして、新たな分野に挑戦したい

ネガティブ:仕事量が多すぎて、与えられたものをこなすだけで精一杯

ポジティブ:1つ1つの業務としっかり向き合える環境で仕事がしたい

採用担当者は、あなたが100%ポジティブな理由で転職をしようとしているとは思いません。ネガティブな状態を、どうすればポジティブな状態に変換できるかも見ています。

ネガティブな理由をそのまま志望動機に書くのではなく、ポジティブな(前向きな)表現に変えて書くようにしましょう。そうすることで、少しでも印象をよくすることができます。

転職の志望動機を作成するポイント

ここまで、志望動機を考えるときに避けるべき表現について紹介しました。では、採用担当者に好印象を与える志望動機は、どのようにすれば書けるのでしょうか。

続いて、志望動機を考えるときのポイントについて順に解説します。

社会人になって身につけた技術、経験、実績を整理する

あなたがこれまで研究職として働いてきたのであれば、何かしらの実績があるはずです。

もちろん、大きな業績があれば、胸を張ってアピールできます。例えば、下に示すような実績があれば、悩むようなことはないでしょう。

  • 10年間新製品の研究開発に携わり、3品目の製品化を経験した
  • もともと英語は苦手だったが、研究職として働き始めてから英会話教室に通うようになり、TOEICで800点を達成した。その結果、海外の関連会社とのメールのやり取りや、海外出張を任されるようになった。

しかし、アピールできるような大きな実績がある人は、ごく一握りです。ほとんどの人は、「特にアピールできるようなものはない」と考えているでしょう。

このときの技術、経験、実績は、誰もが認めるような、圧倒的なものである必要はありません。例えば、下に示すような実績でも、あなたが必死に努力をして、考えて行動した結果得られたものであれば、構いません。

  • 有機溶媒の再利用を可能にすることで、コストダウンを達成した
  • 開発職や営業職とも頻繁にコミュニケーションをとる職場だったので、他職種と協力して仕事を進める力が身についた

あなたがこれまで研究職として働いてきて、どのような技術、経験、実績があるのかについて整理してみましょう。

志望する企業を調査する

採用の担当者は、あなたのことを「本当にこの人は自分の会社に入社して、活躍してくれるか」という視点で見ています。例えば、採用担当者に「わが社のどこに惹かれましたか」と質問されて、「何となく条件がいいから」と返答すると、採用されるのは難しいでしょう。

そのため、企業について調査をすることで、「私はこれだけ御社に興味があります」というのをアピールできます。具体的には、以下の点を調べる必要があります。

  • 力を入れている分野
  • 行動指針
  • 研修制度、教育制度

このような情報を集めるためには、以下の方法を活用しましょう。

・ホームページ

ほとんどの企業は、ホームページを持っています。ホームページを見ると、企業理念だけでなく、どのような分野に注力しているかがわかることがあります。

例えば、大手製薬会社の大日本住友製薬株式会社のホームページには、得意としている分野、疾患について掲載されています。

引用:大日本住友製薬 医療情報サイト 医療関係者さまサイトより

会社のホームページは、誰でも見ることができます。ホームページからの情報収集は、最も簡単にできる方法でしょう。

・求人情報

求人情報に、企業の特色について記載されていることもあります。

下の求人は、化学メーカーの金剛化学株式会社のものです。この求人の「待遇・福利厚生」の欄には、研修制度や通信講座について紹介されています。

あなたが、教育制度が整備されておらず、知識や資格の取得が難しい会社で働いていれば、このような求人情報に記載されている内容を志望動機としてもよいでしょう。

・転職エージェント

転職エージェントを活用することも、企業の調査する効果的な方法です。気になった求人案件があれば、転職エージェントに質問をしてみるとよいです。

企業は求人情報を転職サイトへ掲載するにあたって、どのような人材を求めるかを転職エージェントに伝えます。転職エージェントはその情報を基に、求職者に求人案件を紹介します。

そして、転職エージェントは、企業の情報に精通しています。なぜなら、どのような企業かを把握していないと、求人を紹介できないからです。

また、上で紹介したホームページと求人情報は、誰でも見ることができます。そのため、ライバル会社も見ることができるので、すべての情報を公開していないことが多いです。

あなたが志望する企業について転職エージェントに質問することで、くわしい情報を得ることができます。

あなたのスキルと企業が求めるものをつなげる

あなたの技術、経験、実績と、企業が求めるものの調査が終わると、それらがつながっているかを確認しましょう。もしつながっていなければ、再度考え直す必要があります。

例えば、以下のような内容であればどうでしょうか。

あなたの技術:製薬会社でプロセス開発に携わり、多種多様な有機合成反応を経験した

企業が求めるもの:動物を用いた薬理試験(活性評価)ができる研究者

多くの有機合成の経験を薬理試験に活かすことは難しいです。そのため、「求めている人材ではない」と判断され、採用されるのは難しいでしょう。

これまで未経験の異なる業種に転職する場合でも、あなたの経験を転職先で活かすことができるようにアピールする必要があります。

履歴書に書く

志望動機は、下のような履歴書に書きます。

履歴書の志望動機の欄は、スペースが限られています。文字数が少なすぎても多すぎても、印象が悪いです。

上の履歴書であれば、200文字弱が文字数として適当です。実際に記入したものが下の写真です。この文章であれば183文字です。

文字数が多いと、文字が小さくて読みにくいですし、文字数が少ないと、スペースが多くなり、内容が薄く感じられます。

履歴書に書くときには、文字数も意識するようにしましょう。そのためには、志望動機を適切な文字数になるように作文する必要があります。

志望動機の例文

ここまで紹介した注意点を意識しながら、志望動機を組立てるようにしましょう。では、実際にどのような志望動機を書くと、転職希望先に好印象を与えることができるのでしょうか。

続いて、前章で紹介した内容を踏まえた志望動機の例文を紹介します。

同じ業界の研究職に転職する

これまでA製薬会社で、主に生活習慣病治療薬のプロセス開発を行ってきました。そして、仕事をするなかで、既存の治療法がある疾患だけでなく、治療法が存在しない疾患の治療法の確立に興味をもつようになりました。

貴社は、アンメットメディカルニーズにも積極的に挑戦されていると伺いました。これまでの経験を活かして、私も新たな治療法の開発に挑戦したいと思い、貴社を志望いたしました。(183文字)

同じ業界に転職する場合は、あなたの経験を転職先でもそのまま活かすことができます。

製薬会社から食品メーカーに転職する

B製薬会社で糖尿病治療薬の薬理試験に従事してきました。糖尿病治療について深く学ぶにつれて、薬物療法だけでなく、食事療法が基本になることを知りました。そして、貴社はカロリーを制限した健康食品の研究開発に力を入れていると、ホームページで拝見いたしました。

私のこれまでに身につけた糖尿病の知識、研究の経験を活かして、糖尿病患者さんのためになるような、新たな健康食品を開発したいと考え、応募いたしました。(198文字)

これまで経験した業界とは異なる業界に転職しようとする場合は、あなたに「どのような知識、経験」があり、「入社後にどう貢献できるか」について記載する必要があります。

化粧品メーカーから製薬会社に転職する

化粧品メーカーCで入浴剤の基礎研究を行っています。仕事のなかで利用者の声を聞く機会があり、多くの方が肩こりや腰痛に対するOTC薬を使用していることを知りました。

貴社は医療用医薬品だけでなく、OTC医薬品の研究開発にも注力されていると伺っております。また、貴社は充実した研修制度が整備されていると求人情報で拝見しました。身につけた研究のノウハウも活かして、新商品の開発に挑戦したいと思い、志望いたしました。(202文字)

現職で経験したことを、転職後にどのように活かそうと考えているかについて記載しています。またこの例では、研修制度や教育制度が整備されていることについても触れています。

食品メーカーから化粧品メーカーに転職する

私はこれまで、食品会社Dでサプリメントを中心に研究開発を行ってきました。そのなかで、お客様の声を商品に反映させたサプリメントの商品化を経験しました。

貴社は化粧品開発でも、肌年齢の改善も目指した商品の開発に力を入れていると、転職エージェントを介して伺いました。私のサプリメント開発での経験を活かして、お客様の声を訊きながら、新たな商品を開発したいと考え、貴社を志望いたしました。(188文字)

あなたの実績と、その実績を活かして入社後にどのような仕事をしたいのかについて記載しています。

まとめ

ここでは、理系研究職としての経験を活かして転職するときの、志望動機の書き方について解説しました。転職のときの志望動機は、新卒のときとは異なることを意識しなければなりません。

退職理由をネガティブな表現にすると、印象が悪くなります。同じ理由でも、ポジティブな表現に変えることで、いい印象を与えることができます。

あなたはこれまでに、多くの経験を積んでいるはずです。身につけたスキルや実績を整理してみましょう。

希望する企業についても、しっかりと調査する必要があります。調べる方法は、企業のホームページ、求人情報、転職エージェントの利用などがあります。

そして、あなたのスキルや経験と、企業が求めるものがつながるかを確認しましょう。ここがずれていると、企業は採用してくれません。

志望動機は、どの企業に転職するときでも必要になります。あなたの強みを活かして、転職先でどのように活躍したいかをイメージできるような志望動機を作成するよう心がけましょう。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。