あなたは、「住み慣れた地元で働きたい」「満員電車で通勤するのが嫌だ」などの理由で、地方都市で働きたいと感じていると思います。

しかし、システムエンジニアの求人は都市部に集中しています。地方都市でシステムエンジニアを募集している求人は、都市部と比べて圧倒的に少ないです。

そのため、あなたが地方都市のシステムエンジニアの求人を見つけるためには、戦略的に求人を探さなければいけません。

ここでは、地方都市で働くシステムエンジニア求人を探すときのポイントについてくわしく解説します。

地方都市でシステムエンジニアとして働くときに探すべき求人

まずは、地方都市でシステムエンジニアとして働くときに、どのような会社の求人を探さなければならないかについて解説します。

地方のシステム開発をしている企業に転職する

最初に紹介するのは、地方に拠点を置くシステム開発を行っている企業です。

下に示す株式会社テクノプロジェクトは、島根県に拠点があるIT企業です。この求人で採用されると、あなたの実務経験や希望に合わせて、ソリューション提供、パッケージ提供、クラウドサービスの提供などの業務を担当することになります。

テクノプロジェクト社は、本社が島根県松江市にあります。下に会社ホームページの内容を示していますが、本社以外の拠点もすべて島根県内です。

このように地方だけに拠点がある企業の場合は、顧客の多くは拠点がある地域の企業です。テクノプロジェクト社も、島根県内の企業を中心にソリューションを提供しています。

地方企業の社内SEに転職する

続いて紹介するのは、社内SEとして働く例です。

下に紹介する新潟太陽誘電株式会社は、新潟県上越市に拠点がある電子部品を製造している企業です。この求人では、社内のIT化を推進する社内SEを募集しています。

具体的には、IT推進課で働く人材を募集しており、製造工程の自動化や、社内業務の合理化を目指すIT人材が求められています。

システムエンジニアの多くは、ものづくりをしている製造業か、SIerのようなソリューション提供をしている情報通信業で働いています。ここで紹介した新潟太陽誘電社は製造業に分類され、前の項で紹介したテクノプロジェクト社は情報通信業に分類されます。

一方で、社内SEはこれらの業種に限らず、あらゆる業種から求人が出されています。

例を挙げると、銀行(金融業)、病院(医療業)、不動産取引業者(不動産業)、ホテル(宿泊業)などです。いずれも都市部に限らず、地方都市でも募集しています。

下に示しているのは、金融業の伊予銀行から出されている社内SEを募集している求人です。この求人では、社内のシステム企画開発、自社webアプリ開発を担当する人材を募集しています。

伊予銀行は、愛媛県松山市に本社がある地方銀行です。この求人では、本社オフィスで働く人材を募集しています。

このように、地方都市の企業で社内SEとして働くことで、地方都市で働くことを実現できます。

全国にシステムエンジニアを派遣する企業に転職する

最後に紹介するのは、システムエンジニアを全国各地に派遣している企業に転職する例です。

下に紹介するトーテックアメニティ株式会社は、多くの分野の技術者をかかえる企業です。配属先は、首都圏、愛知県、大阪府、石川県、福岡県などの各地から選択できます。

このような企業に転職すると、ここまで紹介してきた求人と異なり、勤務地は地方都市だけでなく、首都圏を含む全国の可能性があります。

・都市部にも拠点がある場合は、転勤の有無を確認しておく

その地域にしか拠点がない企業に転職すれば、転職の可能性はありません。しかし、拠点が複数ある場合は注意が必要です。せっかく希望の地域で働くことができても、転勤になってしまうと意味がありません。

さきほど紹介したトーテックアメニティ社は、首都圏を含む全国各地が勤務地になる可能性がありますが、本人が希望しない限り転勤はないことが求人票に明記されています。

このような求人であれば、安心して応募することができます。

しかし、求人によっては、拠点が複数の都道府県にあり、転勤の可能性が残り続ける場合もあります。

会社名は伏せますが、下の求人は広島県が本社の企業から出されている求人です。勤務地は広島県の本社です。転勤については、「当面想定していません」と記載されています。

一方で、この会社のホームページを見ると、広島県以外に、東京都や大阪府などの都市部にもオフィスを構えていることが紹介されていました。

ちなみにこの求人票には、広島県の本社以外に拠点を構えていることすら紹介されていませんでした。ホームページを見てようやく知ることができます。

このような企業に転職すると、転勤になる可能性が残り続けます。万が一転勤を命じられると、あなたが希望する地域で働くことができなくなります。

希望の地域でシステムエンジニアを募集している求人を見つけた場合は、転勤の有無や、ホームページで拠点がほかにないかを十分確認するようにしましょう。

地方都市でシステムエンジニアとして働くメリット

続いて、地方都市でシステムエンジニアとして働くメリットを確認しましょう。

地方都市出身者は住み慣れた地元で暮らすことができる

私には、東京都、大阪府、愛知県などの都市部で働いているシステムエンジニアの友人が何人かいますが、彼らは全員地方都市出身です。具体的には、中国地方、四国地方の出身者が多いです。

彼らと話をすると、都市部で働きたいから都市部で働いているわけではないといいます。新卒で就職した企業のオフィスが東京にあったり、愛知県の開発拠点への異動を命じられたりして、「仕方なく」都市部で働いていると話してくれました。

前の章では、島根県、新潟県、愛媛県に拠点がある企業から出されている求人を紹介しました。

仮にあなたが島根県出身者であれば、島根県に拠点がある企業に転職すれば、地元の島根県内で働き続けることができます。

地元で働くことで、昔からの友人と頻繁に会うことができたり、実家に帰りやすかったりします。住み慣れた地元で暮らすことができることは、地方都市で働くメリットの1つです。

家賃を含む物価が安い

地方都市で働く2つ目のメリットは、物価が安いことです。

総務省が毎年調査している消費者物価指数は、以下の表の通りです。この表は、とある年の上位5位と下位5位の結果を抜粋したものです。全国平均が100です。

順位 都道府県名 物価指数 順位 都道府県名 物価指数
1位 東京都 105.2 43位 福岡県 97.4
2位 神奈川県 103.2 44位 奈良県 97.3
3位 京都府 101.6 45位 鹿児島県 97.2
4位 千葉県 101.0 46位 群馬県 96.7
5位 埼玉県 100.6 47位 宮崎県 95.9

上位はすべて都市部の都府県ばかりです。

私は地元が岡山県で、学生時代に東京に住んでいたことがあります。また、新卒で就職したときは大分県に住みました。

今まで住んだ地域の中で、東京に住んでいた時が家賃、食費、交通費などが一番かかっていました。都市部で生活するのに比べて地方都市であれば、物価が安く、出費を低く抑えることができます。

満員電車や長時間かけて出勤するストレスがない

都市部で働くシステムエンジニアは、電車通勤であることがほとんどです。

一方で、地方都市で働く場合は、車で通勤することが多いです。職場が自宅から近ければ、自転車や徒歩で通勤することも可能です。電車で通勤するケースでも、下の写真のような満員電車ですし詰め状態で通勤することは、ほとんどありません。

私の友人で広島県の田舎でシステムエンジニアとして働いている人がいます。彼は職場まで約3kmのところに住んでいるので、自転車で通勤しています。通勤時間は10分ちょっとだそうです。

都会だと通勤時間が1時間ほどかかることは普通です。家を出て駅まで歩き、電車に乗り、必要であれば乗り換えをし、また駅から会社まで歩かなければなりません。

地方都市で働けば、長時間の通勤や満員電車のストレスはありません。

地方都市でシステムエンジニアとして働くデメリットはある?

ここまで地方都市でシステムエンジニアとして働くメリットを紹介しました。一方で、デメリットはないのでしょうか。

当然、メリットもあればデメリットもあります。このことを理解して転職しなければ、転職後に「こんなはずではなかった」と後悔してしまいます。

都市部の企業と比べて年収が低くなる可能性がある

1つ目のデメリットは、都市部と比べて給料が低い可能性がある点です。

最初の章で紹介したトーテックアメニティ社は、都市部や地方都市で働くシステムエンジニアを募集していました。

実は、トーテックアメニティ社の求人は、働く地域が違えば、給料も違います。求人票の年収欄が下の図です。

都市部と比べて地方都市で働くと年収が下がる要因としては、地方都市の企業の方が、企業規模が小さい傾向があることが挙げられます。

大手企業や、企業規模の大きい企業は、オフィスが都市部に集中しています。そして、システムエンジニアの年収は、企業規模が大きくなるほど高くなる傾向があります。

その根拠となるデータが、下に示す厚生労働省が毎年調査・報告している賃金構造基本統計調査です。下に示しているのは、調査結果をグラフ化したものです。

引用:厚生労働省 賃金構造基本統計調査より

このように、地方都市で働くことで、都市部で働く場合と比べて年収が下がる可能性があることを覚えておきましょう。

求人数が少ないので、転職先の選択肢が少ない

2つ目のデメリットは、転職先の選択肢が少ないことです。これは、地方勤務の求人数が少ないからです。

実際に大手の転職サイトのdodaで「システムエンジニア」で求人を検索すると、以下のように4000件以上の求人がヒットします。

この4000件以上の求人をエリア別に分類したものが以下のグラフです。半分以上の求人が関東から出ていて、次いで関西と東海エリアが多いです。これらのエリアで約9割を占めます。

地方都市で働きたいと考えているあなたは、「地方であればどこでもいい」というわけではないと思います。「地元で働きたい」「実家から近いところで働きたい」など、特定の都道府県や市町村での勤務を希望しているのではないでしょうか。

そうなると、あなたが希望する地域から出されているわずかな求人の中から希望の求人を探さなければなりません。

・出会う求人数を高めるための工夫をして、満足できる転職を実現させる

地方都市でシステムエンジニアとして働くためには、少しでも多くの求人に触れなければ、満足できる転職は実現できません。

具体的には、以下の方法であなたが触れる求人数は大きく変わります。

  • 複数の転職サイトを利用する
  • 転職エージェントから非公開求人を紹介してもらう

ここまで紹介した求人は、大手転職サイトのdodaで掲載されていたものです。dodaには10万件を超える求人が掲載されています。

システムエンジニアの求人を掲載している転職サイトはdoda以外にもたくさんあります。そして、転職サイトによって掲載されている求人は異なります。

1つの転職サイトの利用だけでは、あなたが応募できる求人を取りこぼしてしまう可能性が高いです。

また、転職エージェントから非公開求人を紹介してもらう方法も有効な手段です。

実は、転職市場にある求人の約8割は非公開求人と言われています。非公開求人は、一般には公開されておらず、転職エージェントからのみ紹介を受けることができます。

つまり、非公開求人を紹介してもらうことで、あなたが出会うことができる求人数は、約4倍になります。

これらの方法を駆使して、あなたが望む地域で働くことができる求人を見つけるようにしましょう。

まとめ

ここでは、地方都市で働くシステムエンジニアに転職するときのポイントについて解説しました。

地方都市でシステムエンジニアとして働くときには、「地方でシステム開発をしている企業」「地方企業の社内SE」「地方都市にシステムエンジニアを派遣している企業」の求人を探さなければなりません。

求人を探すときには、求人票や会社のホームページで転勤の可能性の有無も確認するようにしましょう。

また、地方都市で働くメリットとデメリットを把握しておきましょう。仕事内容だけでなく、生活スタイルがあなたの希望にマッチするかも、転職の満足度につながります。

地方都市でシステムエンジニアを募集している求人は、数が非常に少ないです。少しでも多くの求人に触れるための工夫をして、満足できる転職を実現させましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。