システムエンジニアが転職をするとき、多くの場合はすでに身につけているスキルや知識を活かせる会社に転職を考えます。
システムエンジニアと一言で言っても、その仕事内容は非常に幅広いです。そのため、求人によって求められるスキルは全く異なります。
せっかく高い技術力があっても、適切に評価されなければ転職を成功させることはできません。闇雲に求人を探すのではなく、あなたの知識や技術力にマッチする企業・求人を探す必要があります。
ここでは、システムエンジニアが転職をするときにどのようなスキルが求められるのか、求人でどのように募集されているのかについて解説します。
もくじ
IT業界の中にもさまざまな分野があり、それぞれ必要なスキルは異なる
システムエンジニアは、以下の表のように分類することができます。会社によって名称が違ったり、より細かく分類したりしていることもあります。
名称 | 扱うもの |
Webエンジニア | Webサイトで使われるシステム
(例)ECサイト |
組み込み系エンジニア | 独立した機械の中に組み込まれたコンピュータを制御するシステム
(例)洗濯機のマイコン |
インフラエンジニア | ITインフラやネットワーク機器
(例)サーバー、ルーターなど |
セキュリティエンジニア | セキュリティ製品を扱ったり、ITインフラがサイバー攻撃を防ぐための調査や対策を行ったりする
(例)アンチウイルスソフト |
それぞれのエンジニアで仕事に必要な知識やスキルは異なります。
例えば、webエンジニアは下の写真のようなwebサイトの設計・構築・運用を担当します。
このサイトは、私の友人が働く会社が運営しており、PHPで作られています。PHPは、サーバーサイドで動的なwebサイトを作成するための機能を多く備えているプログラミング言語です。
また、webサイトを運用するときには、サーバーやネットワークの知識もある程度求められます。
一方で組み込み系エンジニアは、下の写真のような家電や電気製品を制御するためのソフトウェアを設計・構築する職種です。
組み込み系のソフトウェアを設計するときに、さきほど紹介したPHPを用いることはほとんどありません。組み込み系ソフトウェアを設計するときの汎用のプログラミング言語は、C言語やC+などです。
また、組み込み系のシステムエンジニアにサーバーやネットワークの知識はほとんど必要ありません。商品によってはサーバーからデータを取り込んだり、そこから新たなデータを生成させたりすることもありますが、「サーバーが何をするものか」がわかっていれば十分仕事はできます。
このように、システムエンジニアの種類が変われば、仕事で必要な知識や扱うプログラミング言語は大きく変わります。
ピンポイントで特定のスキルが求められる求人
続いて、実際の求人でスキルがどのように記載されているのかを確認してみましょう。システムエンジニアを募集している求人は、転職サイトで検索すると簡単に見つけることができます。
最初に紹介するのは、特定のスキルが求められている求人例です。
下に紹介する株式会社カヤックボンドの求人では、PHPエンジニアを募集しています。カヤックボンド社は、東京都千代田区にオフィスがある、スマートフォンやパソコンにおけるゲームなどのエンタメ系サービスを開発している企業です。
PHPはさきほど少し紹介したように、webエンジニアが利用することが多いプログラミング言語です。
カヤックボンド社の求人では、PHPを用いたゲーム開発や企業向けシステムの開発を担当する人材を募集しています。
あなたがこれまでwebエンジニアとして働いていて、PHPでのwebサイトの構築・運用を担当していれば、即戦力として採用される可能性があります。
このように、PHPに限らず特定のプログラミング言語や特定の技術を習得していて、その技術が求められる求人を見つけることができれば転職しやすいです。
スキルに応じたプロジェクトを担当する求人
続いて紹介するのは、応募条件が幅広い求人です。具体的には、下に紹介する株式会社LeoITコンサルティングの求人が該当します。求められる人材は、何らかのシステム開発やインフラ保守・運用の経験者です。
LeoITコンサルティング社は、愛知県名古屋市にオフィスを構えるITコンサルティング企業です。LeoITコンサルティング社の事業内容は、以下の通りです。複数の事業を展開していることがわかります。
冒頭で述べたように、システムエンジニアの専門領域は細かく分類できます。システムエンジニアとして働いている人のほとんどが、この求人で挙げられていた応募条件を満たすのではないでしょうか。
採用された後は、あなたのスキル・経験を活かせる仕事を任せられることになります。例えば、ITインフラの構築・運用に関わった経験があれば、インフラやネットワーク関連の業務を任されるでしょう。
転職を考えるときには、まずあなたが身につけた知識やスキルを棚卸しましょう。そして、その知識やスキルを活かせる求人を幅広く探すことで、転職しやすくなります。
システムエンジニア転職で求められたりアピールできたりするスキル
冒頭で解説したように、システムエンジニアの仕事は多岐に渡るので、企業・仕事内容によって求められるスキルは大きく異なります。
しかし、どのように働くとしても活かすことができる共通のスキルも存在しています。続いてこれらのスキルを紹介します。
取得資格をアピールする
システムエンジニアとして働いていると、自己研鑽や企業から取得を促されて資格を取得している人もいると思います。資格は、あなたの知識・スキルを客観的に評価できる指標です。
システムエンジニアが取得を目指すことが多い資格の一覧は、以下の通りです。
- 情報技術者試験(基本情報技術者試験、応用情報技術者試験、高度情報処理技術者試験)
- ベンダー資格(AWS認定、シスコ技術者認定、Linux技術者認定など)
実際に求人票でも、応募条件に資格が挙げられているものがあります。求人例を2件紹介します。
1例目は、日立グループの株式会社日立ソリューションズ・クリエイトから出されている求人です。この求人では、基本情報技術者試験が必須条件に挙げられています。
基本情報技術者試験は、システムエンジニアが働き始めて最初に取得することが多い資格です。私の友人が働く会社では、入社2年目までに基本情報技術者試験を取得することが、ほぼ義務になっていると教えてくれました。
2例目の求人は、より難易度の高い専門資格が応募条件に挙げられているものです。下に紹介するSCSK株式会社の求人には、応用情報技術者試験と高度情報処理技術者が挙げられています。
ここで挙げられている高度情報処理技術者試験は、応用情報技術者試験で求められる知識に加えて、より専門領域に特化した知識も問われます。
あなたがすでにIT系の資格を取得していれば、履歴書に書いてアピールするとよいです。
マネジメントの経験があればキャリアアップを目指せる
システム開発は、一人だけで行うものではありません。少なくても5人程度、多い場合は100人以上のプロジェクトチームでシステム開発を行います。
このようにチームでシステムを開発するなかで、後輩や部下を指導・管理した経験があれば、その経験をアピールすることができます。
例えば、次に示すアルプスシステムインテグレーション株式会社の求人では、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャー(PM)の経験が条件に挙げられています。PLやPMの候補になる人材を募集しています。
例えば、PLとしてシステム開発に従事した経験があれば、以下のように履歴書でアピールできます。
これまでプロジェクトリーダーとして10人のチームをまとめてきました。顧客との対応も任されており、1件ではありますが、顧客からの満足度の高い製品を開発できました。
御社では、これまでのマネジメント経験を活かして、さらにスキルアップ・キャリアアップを目指したいと考えています。
役職がなくても、先輩社員として後輩社員の指導経験があれば、そのときに工夫したことや、うまくいった経験をアピールしましょう。例えば、以下のようなアピールができます。
私は入社3年目から後輩社員の指導を任されました。最初は私も一緒に調べながらの指導でしたが、根気強く継続することで後輩も着実に実力をつけ、今ではチームの生産性が大きく高まっています。
これらの経験を活かして、今後はチームの中心となりプロジェクトを管理する立場で活躍したいと考えています。
このようなチームのマネジメントや後輩の指導経験は、どの企業に転職しても活かすことができます。
コミュニケーションスキルは必ず活かすことができる
さきほども述べましたが、システムエンジニアは一人で仕事ができるわけではありません。会社に所属して働いている場合は、必ず複数人でプロジェクトを進めます。
設計したシステムを自社内の製品で利用する場合は、自社内の他部署とのやり取りが必要になります。例えば、下の写真のようなスマートフォンのシステム設計を行う場合は、回路部門や企画部門などと共同で製品開発をします。
システム開発を他社から依頼される場合も、依頼元の企業の要望を打ち合わせでくみ取らなければなりません。当たり前ですが、適切にコミュニケーションを取りながらシステム開発を行わなければ、顧客満足度の高い製品やシステムを生み出すことはできません。
求人によっては、コミュニケーションスキルが応募条件に挙げられているものもあります。次の株式会社朝日ネットの求人では、コミュニケーションスキルが必須条件の1つに挙げられています。
朝日ネット社は、東京都中央区にオフィスを構える、インターネット接続サービスの「ASAHIネット」を運用している企業です。
前の項で紹介したマネジメントもコミュニケーションの1つです。マネジメント以外にも、部署内、部署間、顧客など、システムエンジニアがコミュニケーションをとらなければならない場面は多いです。
転職を考えているあなたは、何かしらのシステム開発をチームで担っていると思います。そのときに、密にコミュニケーションを取りながらプロジェクトを成功させたり、仕事をうまく進められたりした経験があれば、細かいことでもよいのでアピールするとよいです。
スキルに自信がなくても応募できるシステムエンジニア求人はある
「どの企業に転職しても活躍できるスキルがあるから、自信をもって転職活動ができます」という人は少ないです。特に、経験年数が浅い20代などは、「自分のスキルで転職成功できるだろうか」と不安になると思います。
実は、そのような技術力が十分でないシステムエンジニアでも、転職を成功させている事例は多いです。では、技術力に自信がないシステムエンジニアは、どのように転職を成功させ、どのように活躍できるようになるのでしょうか。
転職後に研修を受けてスキルを磨く
スキル不足で転職すると、転職直後から即戦力として働くことができないこともあります。そのような場合は、転職後に研修を受けて、実力をつけることもあります。
例えば、次に紹介する株式会社グリーンウェイズの求人では、スキルや知識に不安がある人は、研修を受けることが記載されています。
グリーンウェイズ社は、ITスクール事業、ソフトウェア開発事業、自社サービスサイト開発事業を展開している企業です。この求人では、幅広い案件の中からあなたの経験や希望を考慮して配属されるプロジェクトが決まります。
なお、この求人は経験が浅い人だけでなく、未経験者でも応募することができます。応募条件は、以下の通りです。
私の知り合いには、営業職から未経験でwebエンジニアに転職した人がいます。彼は、転職後に下の写真のようなテキストを使った研修を受けて、基礎から学んだと言っていました。
グリーンウェイズ社の求人のように、未経験者やスキルに自信のない人材でも応募できるシステムエンジニアの求人は多いです。このような求人を探して応募することで、転職自体は比較的容易に成功できます。
ただし、注意しなければならないのは、「どの企業でも転職者に対して研修をしているわけではないこと」です。
大手精密機器メーカーで組み込み系のシステムエンジニアとして働いている友人に話を訊くと、転職者の研修について以下の話をしてくれました。
私の会社では、転職者に対して研修はやっていない。転職者は2日くらい簡単なオリエンテーションを受けるだけ。それが終わると、すぐに現場で仕事を任せられている。
そもそも私の会社では、システムエンジニアの経験が2,3年の経験が浅い人は採用していない。短くても5年くらいは経験がある人を採用している。
このように、転職後の研修の有無は、会社によって違います。あなたがスキルに自信がない場合は、転職後に研修を受けられるか、どのタイミングで責任ある仕事を任せられるかなどをしっかりと調査して転職するようにしましょう。
まとめ
ここでは、システムエンジニアが転職をするときにどのようなスキルが求められるのかについて解説しました。
システムエンジニアは、仕事内容によって職種が細かく分類できます。職種が違えば、求められる知識・スキルは大きく異なります。まずは、あなたの経験・知識を棚卸して把握するようにしましょう。
求人によって、応募に必要なスキルの記載方法が異なります。特定のスキルを求めている求人や、幅広く募集している求人もあります。
これまでにIT系の資格を取得していれば、必ずプラスに評価されます。特に高度情報処理技術者試験は強いアピールポイントになります。
チームをマネジメントした経験やコミュニケーションスキルは、どの会社でも役に立ちます。
あなたのスキルに自信がない場合は、転職後に研修を受けられる企業を探すとよいです。そして、転職後に一人前として働き始めるタイミングも調査しておくことをおすすめします。そうすることで、転職後の後悔を防ぐことができます。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。