介護食は、咀嚼(そしゃく)能力や嚥下(えんげ)能力が低下した人が食べる食事です。普通食とは作り方だけでなく、食材の選定にも工夫が必要です。

では、介護食の開発に携わるためにはどのような会社に転職する必要があるのでしょうか。転職を成功させるために必要な資格や業務経験はあるのでしょうか。

ここでは、「介護食の開発を行っている会社」「転職で有利になる経験・資格」「会社ごとの年収の違い」について解説します。

介護食を開発している会社を理解する

料理を提供したり、献立を開発したりしている会社は数多く存在しています。そこには、喫茶店やレストランも含まれます。

しかし、喫茶店では介護食は開発していません。スーパーでも弁当や総菜は売られていますが、介護食は売られていません。

では、どのような会社で介護食は開発されているのでしょうか。

高齢者施設や医療機関に介護食の献立を提供する会社

最初に紹介するのは、高齢者施設や医療機関に介護食の献立を提供する会社です。具体的には、下の北進産業株式会社が該当します。北進産業社の求人では、セントラルキッチンで調理も担当しながら介護食を開発する人材を募集しています。

このような企業の顧客は、高齢者施設や医療機関などの企業です。

これらの施設には、嚥下機能や咀嚼能力が低下した人や、基礎疾患を抱える高齢者が多いです。そのような利用者に向けた介護食を開発し提供するのが仕事内容です。

例えば、下の写真は野菜のお浸しです。左は普通食で野菜の形もはっきりとわかります。そして、右の写真は同じメニューを軟菜食にしたものです。

このように軟らかく仕上げることで、咀嚼能力が低下した人でも食事を楽しむことができます。

ほかにもムース食やきざみ食など、介護食には多くの種類があります。このような食事を開発するのが介護食開発の仕事です。

また、この求人では介護食の開発だけでなく、セントラルキッチンで調理も行っています。企業によっては、調理は行わず、施設に献立や食材だけを提供するだけの企業もあります。

次に紹介するタイヘイ株式会社が提供しているクッキングデポは、食材の宅配システムです。タイヘイ社では、高齢者向けの献立と食材を提供しています。

このサービスを利用している施設は、届いた食材を調理師スタッフが調理し、利用者に食事を提供しています。

このように、企業によって調理まで行う企業と、献立や食材を提供する企業に分かれます。

宅配サービスを提供する会社

続いて紹介するのは、宅配サービスを提供している企業の求人です。

前の項で紹介したのは、高齢者施設や医療機関に介護食を提供する求人でした。ここで紹介するのは、施設ではなく自宅に介護食を提供している企業の求人です。

具体的には、次に紹介する株式会社GLUGの求人が介護食を含む高齢者向けのメニュー開発を担う人材を募集しています。

宅配サービスを利用するのは、高齢者が多いです。20代30代の若年層が利用することはほとんどありません。

そのため、宅配サービスを利用する高齢者が食べやすい食事を提供しなければなりません。そのためのメニュー開発をする人材を募集しています。

例えば、下の写真は高齢者向けの宅配サービスを提供している会社のパンフレットです。この会社では、制限食だけでなく、おかゆやきざみ食にも対応しています。

このように、自宅に食事を提供する企業でも介護食の開発は行われています。

転職で有利になる資格や業務経験

介護食の開発に携わるために必要な資格はあるのでしょうか。また、資格がなくても、転職で評価される業務経験はあるのでしょうか。これらについて順に解説します。

栄養士または管理栄養士資格を求められることが多い

介護食は、高齢者や基礎疾患をもつ人を対象にしています。つまり、介護食を開発するときに、栄養学や食品学の知識は必須です。

そのため、これらの知識を有していることを担保できる栄養士や管理栄養士の資格が求められることが多いです。

冒頭で紹介した北進産業社の求人では、以下のように栄養士資格が必須条件の1つに挙げられています。

2件目のGLUG社の求人では、管理栄養士資格を有していることが必須条件です

介護食を開発するときは、栄養バランスだけでなく、食べやすさも求められます。

例えば、繊維質のものや硬い食材は、細かくしようとしても形が残りやすいです。そのため、ゴボウのような食材は使用しないことが多いです。

また、肉を用いるときも、硬いものは避けて、ひき肉を使用した方が作りやすいです。

管理栄養士や栄養士として医療機関や高齢者施設で働いていると、このように用いる食材を検討する作業は日常的にあります。

介護食を開発するときには、栄養価だけでなく、食べやすさや作りやすさも求められます。管理栄養士や栄養士の資格を持っていて、介護食の提供に携わったことがあれば、開発の仕事に就くときに強いアピールポイントになります。

調理も担当する場合は調理師資格が求められることがある

冒頭で紹介した北進産業社の求人では、セントラルキッチンで業務を行います。そのため、介護食のメニューを考えるだけでなく、調理も任されます。

北進産業社のように調理も担当する場合は、調理師免許があれば強みになります。なお、北進産業社の求人では、以下のように調理師免許が必須条件の1つに挙げられています。

同じ献立で調理をする場合でも、調理師免許を有する人が調理をするのと、免許がない人が調理をするのでは、完成品の味が大きく変わることがあります。

調理師免許を有していると、調理の技術・知識があるので、野菜の切り方や加熱の方法でも免許がない人と比べて差が出ます。

例えば、砂糖と醤油を入れる場合も、入れる順番によって味のしみ込みやすさが変わります。

調理師免許があれば、技術と知識に裏打ちされた調理ができます。そのため、介護食の開発だけでなく調理も担当するような求人に応募するときには、調理師免許があれば有利になります。

資格がなくても応募できる求人はある

ここまで介護食の開発求人に応募するときに求められる資格を紹介しました。では、これらの資格を保有していない人は転職することができないのでしょうか。

実は、資格がなくても応募できる求人はあります。

下に紹介する株式会社大和は、高齢者施設や個人宅に健康食、介護食、医療食などを提供している企業です。

そして、この求人の応募条件は以下のとおりです。調理経験が必須ですが、資格は求められていません。

介護食の献立を作成するのは、栄養士や管理栄養士資格がなくてもできます。また、調理師免許がなくても、介護食を調理して提供することはできます。

そのため、資格がない人でも介護食の開発に携わることができます。しかし、資格がない人が応募できる求人数は非常に少ないです。

介護食を開発したり調理したりするときには、これらの資格取得で身につけられる知識やスキルが必要です。

管理栄養士として病院で働いている友人に介護食の開発・調理について質問すると、以下の話をしてくれました。

栄養士や管理栄養士の資格がなくても介護食のメニュー開発はできるが、実際は資格がないと難しいと思う。

メニューはソフトを利用して作成することが多い。食材の種類と量を入力していくが、専門の知識がないとメニューを組立てることはできないだろう。

調理師免許がなくても料理を上手に作れる人はいる。ただ、調理師免許がある人は、調理の技術・知識が資格がない人と全然違う。食材の切り方や加熱の方法でも、調理師免許の有無で変わってくる。

私が働く病院では、調理師免許を持っている人だけが調理を担当している。調理師免許がない人は、盛り付けやご飯をよそうなど、調理ではない部分を担当している。

使用する食材を組み合わせたものは、下の写真のようなレシピになります。このレシピを作成するソフトを正しく使いこなすためには、栄養学の知識が必須です。

このように、資格なしで転職をしても、仕事の難易度は高いことが分かります。

そのため、資格なしで転職した場合は、栄養学や調理の知識・技術を習得する姿勢が求められることを覚えておきましょう。

年収は企業によってまちまち

最後に、介護食の開発をしている会社に転職したときの年収を紹介します。

冒頭で紹介した北進産業社では、以下のように300万円~360万円が提示されていました。

ここまで3件の求人を紹介しましたが、3件の求人で提示されている年収をまとめたものが下の表です。なお、大和社の求人は月給しか提示されていなかったので、月給+固定残業代+賞与(月給の4カ月分を想定)で計算したものを載せています。

企業名 提示年収

(万円)

応募条件
北進産業(株) 300~360 栄養士と調理師が必須
(株)GLUG 400~500 管理栄養士必須

商品開発、調理経験なども必要

(株)大和 498~658 調理経験必須

資格不要

企業によって提示している年収は大きく異なります。また、応募条件が厳しい求人でも、応募のハードルが低い求人よりも提示年収が低いことがあります。

そのため、年収面でも満足できる求人を見つけるためには、より多くの求人に触れて優れた求人を見つけなければなりません。

ちなみに私が転職をしたときには、転職エージェントのサービスを利用しました。高い年収が提示されている非公開求人を紹介してもらったり、企業と年収交渉をしてもらったりすることで、満足できる転職を実現することができました。

このような工夫をすることで、年収面でも納得できる転職を成功させることができます。

まとめ

ここでは、介護食の開発に携わる求人に応募・転職するときのポイントを解説しました。

介護食の開発を行っている企業は、高齢者施設や医療機関に献立を提供している企業と、宅配サービスを行っている企業です。

介護食のメニュー開発には栄養学の知識が必須です。そのため、栄養士や管理栄養士資格が求められることが多いです。

また、調理まで担当する求人であれば、調理師免許が必要なこともあります。

なかにはこれらの資格がなくても応募できる求人はあります。しかし、転職後に栄養学や調理について学び続ける覚悟が求められます。

介護食を開発している企業が提示している年収は、求人によって大きく異なります。転職エージェントのサービスを利用するなど、年収面でも満足できる転職を実現するための工夫が必要です。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。