管理栄養士は、食事・栄養学のプロフェッショナルです。医療機関で患者さんや高齢者に栄養指導できる国家資格です。

管理栄養士は、医療機関で働いている人が多いです。しかし、管理栄養士資格を活かして食事に関する商品の開発に従事することができます。

そして、管理栄養士の資格を活かすことができるのは食品やメニューの開発だけではありません。資格を活かすことができる仕事を幅広く知ることで、より納得のできる転職を実現しやすくなります。

ここでは、管理栄養士資格を活かして転職できる開発職の求人を、実際の求人例を示しながら解説します。また、企業ごとの年収の違いについても紹介します。

管理栄養士資格を活かした開発職の仕事内容を知る

開発職と一言で言っても、管理栄養士が開発に携われるものは複数あります。具体的には以下の3点が挙げられます。

  • メニュー開発
  • 商品開発、食品開発
  • 医薬品開発

これらは仕事内容だけなく、企業の業態も大きく異なります。これらについて順に解説していきます。

医療機関や高齢者施設のメニュー開発を担当する

最初に紹介するのは、メニュー開発の求人です。実際の求人は、次に紹介する株式会社マックトレスが該当します。

マックトレス社は、栃木県小山市に拠点があるフードサービスや配食サービスなどを主な事業にしている企業です。この求人では、病院、診療所、介護老人保健施設などの献立作成を担当する人材を募集しています。

病院や施設では、患者さんや利用者さんの病態や嚥下機能などに応じたメニューを考えなければなりません。

例えば、アレルギーがある人に対しては、ほかの人とは別の食材を使用しなければなりません。ほかにも、糖尿病食ではイモやカボチャのように糖質の多い食材を避けて、大根などの糖質が少ない食材を用いることもあります。

下に示すのは、糖尿病食の献立表です。このような献立を、専用のソフトを利用して作成します。

また、考慮するのは栄養バランスだけではありません。季節感も考慮したメニューを考えなければなりません。

私の知り合いが働く病院では、正月はおせちメニュー、2月は巻きずしのように、その季節に合ったメニューも提供していると教えてくれました。

そして、マックトレス社の求人では、管理栄養士として勤務した経験が必須条件に挙げられています。

管理栄養士が行う栄養指導では、指導対象の高齢者や患者さんに献立案を紹介したり、食材ごとの適切な使用量を説明したりする場面があります。このような経験をメニュー開発に直接活かすことができます。

このように、患者さんや施設利用者さんのメニューを開発するのが、マックトレス社の仕事内容です。

なお、マックトレス社のような業務形態の企業では、メニュー開発は行いますが、調理は行いません。実際の食事や商品を作るのは、次に紹介する商品開発の求人です。

食品メーカーや食品を扱う企業で商品開発、食品開発に携わる

管理栄養士は、食品・栄養のプロです。その専門知識を活かして、商品開発に携わることもできます。

実際に商品開発の担当者を募集している求人を2件紹介します。

最初に紹介するのは、東京都に本社がある三栄フーズ株式会社の求人です。三栄フーズ社の求人では、食品調味料の企画・開発業務を担当する人材を募集しています。

三栄フーズ社は、ラーメンスープや焼肉のたれなどの調味料を製造販売している企業です。

例えば、焼肉のたれは、甘口・中辛・辛口のように同じメーカーでも異なる辛さの商品が発売されています。辛さ以外にも、減塩、味噌醤油、ニンニク味など、さまざまな味の種類の商品が発売されています。

このように、味・香り・色・粘度などを調節しながら、新製品を開発していきます。

2件目の求人は、東京都港区にオフィスを構える株式会社GLUGのものです。GLUG社の求人では、高齢者向け宅配弁当のメニュー開発を担当する人材を募集しています。

宅配弁当は、高齢者が利用することが多いです。そして、基礎疾患をもつ人も多いので、普通食だけでなく、さまざまな制限食が開発・利用されています。

下の写真は、高齢者向けの宅配サービスを実施している企業のパンフレットです。この企業では、普通食以外に糖尿病食、透析食、減塩食、腎臓食を提供しています。

ほかにも、嚥下能力が低下した人に向けたおかゆや、歯茎で潰せる硬さの軟菜食など、バリエーションに富んだ食事形態が開発されています。

例えば、下の写真は野菜のお浸しです。左側は普通食で、軟菜の形態にしたものが右の写真です。同じ食材を使用していますが、食材を細かく刻んであることがわかります。

購入者の要望に合わせて食事形態を検討することも、食品開発の仕事内容です。

・商品開発業務が未経験でも応募できる求人はある

商品開発の求人に応募するときに、これまでに商品開発の経験があれば、経験を存分に活かすことができます。では、商品開発の未経験の場合でも応募可能なのでしょうか。

実は、求人によっては、管理栄養士の資格があれば応募できたり、調理場での業務経験があれば応募できたりします。さきほど紹介した2件の求人も、これらの条件があれば応募できる求人です。

三栄フーズ社が出している求人の対象となる方の欄は、下図のとおりです。食品関連の専門学校を卒業していれば応募条件を満たします。

GLUG社の求人では、以下のように管理栄養士資格の保有が必須条件の一つです。そして、商品開発の経験がなくても、介護施設・医療施設・学校などで調理経験があれば応募することができます。

これらの施設で、調理をメインで行うのは調理師です。しかし多くの場合、調理師だけが調理をするのでなく、管理栄養士が調理の一部を担うことがあります。

私の知り合いで病院に勤務する管理栄養士が、直営の形態をとっている別の病院で働いているときのことを話してくれました。その管理栄養士によると、栄養指導やメニュー作成だけでなく、調理や洗いものもしていたと教えてくれました。

これらの経験をアピールすることで、商品開発の担当者を募集している求人に応募することができます。

臨床経験を活かして、CRC(治験コーディネーター)として医薬品開発に関わる

最後に紹介するのは、医薬品の開発に従事する求人です。ここで紹介するのは、CRC(治験コーディネーター)の求人です。

医薬品は医療機関で臨床試験(治験)を実施し、有効性と安全性が認められたものが医薬品として発売されます。

治験は1)治験に参加する被験者、2)製薬会社のモニター、3)治験を実施する医療機関の医師、4)治験を実施する医療機関の関連部署(看護部、薬剤部、検査部など)が協力して進められます。

そしてCRCの仕事内容は、治験に関わる1)~4)の調整することです。1)~4)の関係性は、下の図で示す通りです。

治験は、大学病院のように規模が大きい医療機関だけでなく、町のクリニックでも実施されます。

規模が大きい医療機関であれば、CRCを自前で確保できます。一方で、スタッフ数が少ないクリニックでは治験に人材を割くことができないので、CRCが派遣されて治験のサポートを行うことがあります。

実際の求人は、下に示す株式会社EP綜合の求人が該当します。EP綜合社は、日本全国の医療機関で実施されている治験をサポートしている企業です。

EP綜合社の求人では、担当する業務が以下のように記載されています。

治験では、被験者に治験薬(医薬品候補物質)を使用します。そこで得られる結果は、カルテに記載されていたり、検査結果としてカルテに保管されていたりします。

これらの内容に触れるときに、臨床での経験を活かすことができます。

この求人の対象となる方の欄には、複数の医療専門職が必須条件に挙げられています。そのなかに管理栄養士も含まれています。

そして、管理栄養士資格を有しているだけでなく、臨床経験2年以上も条件として挙げられています。あなたが、医療機関で管理栄養士として勤務した経験があれば、応募条件を十分満たします。

ただし、管理栄養士の有資格者がCRCとして働くと、栄養指導を行うことはありません。臨床試験は医薬品開発のために実施するので、栄養指導は必要ないためです。

そのため、栄養指導に関わりたいのであればCRCに転職しても不満を感じてしまうでしょう。

管理栄養士がCRCとして働くときに活かすことができるのは、主に医療知識です。

CRCは、カルテに記載されている内容や、検査の内容を理解しなければなりません。例えば、下のような検査結果を見たときに、どのような副作用が現れているか、効果は得られているかを判断できる必要があります。

そのため、EP綜合社の求人では管理栄養士資格だけでなく、臨床経験も求められています。

また、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの医療専門職と、治験薬の有効性や安全性の試験結果について議論・相談する場面もあります。

そのため、CRCとして働くときには医療専門職や被験者と円滑にコミュニケーションをとらなければなりません。これは、医療機関で多職種が連携して患者さんに関わるのと似ています。

CRCとして働くときには、医療知識だけでなく、コミュニケーション能力も求められます。

同じ「開発」の仕事でも、求人ごとに仕事内容や活かせる経験は異なる

ここまで、管理栄養士資格を活かして関われる開発の求人を紹介しました。開発するものによって仕事内容が大きく異なることがわかります。

メニュー開発、商品開発、医薬品開発の仕事内容と、求人の特徴をまとめたものが下の表です。

仕事内容 求人の特徴
メニュー開発 食事・栄養の知識を活かせる

調理はしない

商品開発 食事・栄養の知識を活かせる

調理をすることもある

医薬品開発 臨床経験を活かせる

栄養指導をすることはない

転職後に担当する仕事は、開発するものによって大きく異なります。そのため、あなたがやりたい仕事とマッチするかを十分確認してから転職しなければなりません。

例えば、栄養学の専門知識を活かしたいと考えている人が医薬品の開発に携わっても、その知識を十分に活かすことはできません。ほかにも、臨床経験を活かしたい人が、商品開発に携わっても満足はできません。

転職を納得できるものにするために、まずは転職後に携わりたい仕事内容を十分に確認するようにしましょう。そして、あなたが活かしたい知識・経験と照らし合わせて、応募する求人を選びましょう。

年収は求人によって差がある

最後に、求人ごとの年収の違いを解説します。年収も転職の満足度に大きく影響する項目です。

最初に紹介したマックトレス社の求人では、300万円~450万円が提示されていました。

そして、ここまで紹介してきた4件の求人で提示されている年収をまとめたものが下の表です。

企業名 提示年収

(万円)

仕事内容
(株)マックトレス 300~450 献立開発、メニュー開発
三栄フーズ(株) 250~360 商品開発
(株)GLUG 400~500 商品開発
(株)EP綜合 350~480 医薬品開発(CRC)

提示されている年収は、企業によってまちまちです。同じように商品開発をする企業でも、年収に大きく差があることが分かります。

そのため、少しでも多くの求人に触れて、年収面でも満足できる転職を実現する工夫が必要です。

また、前の章までに紹介したように、開発するものが変われば、仕事内容は全く違います。仮に高い年収を得ることができても、やりたいことができなければ転職成功とは言えません。

第三者の力を借りて、納得できる転職を実現する

仕事内容と年収面の両方で満足できる転職が実現できれば、それに越したことはありません。

しかし、企業によって提示している年収はまちまちです。仕事内容も確認しながら、好条件を提示している求人を見つけるのは大変な作業です。

そこで、あなただけの力で転職活動をするのではなく、第三者の力を借りることで、効率的に優れた求人に出会いやすくなります。私は転職活動のときに、転職エージェントのサービスを利用しました。

転職エージェントを活用するメリットは多いですが、そのなかの1つに「非公開求人を紹介してもらえること」があります。

ここまで紹介した求人は、すべてインターネット上に公開されている求人でした。実は、転職市場にある求人のほとんどは公開されていない非公開求人と言われています。

大手転職サイトのdodaでは、求人を公開できない場合も多いと記載されています。

実際に公開されている求人は、取り扱っている求人全体の20%程度です。この割合は、どの転職エージェントでも同じくらいです。つまり、ほとんどの求人は公開されていない非公開求人です。

また、転職エージェントの担当者は、仕事内容だけでなく、希望の年収を満たす求人を積極的に紹介してくれます。

私が転職活動をしたときも、希望年収を大きく上回る求人も複数紹介してもらいました。その結果、仕事内容も年収面も満足できる転職を実現することができました。

このように、あなたの努力だけでなく、第三者の力を借りることで、魅力的な求人に出会える可能性は大きく高まります。

まとめ

ここでは、管理栄養士が開発職に転職するときのポイントについて解説しました。

管理栄養士資格を活かして携わることができるのは、メニュー開発、商品開発、医薬品開発です。

開発するものによって、仕事内容が大きく異なります。あなたがやりたい仕事、活かしたい知識・経験を整理して転職活動をしなければなりません。

そして、企業によって提示されている年収には差があります。少しでも多くの求人に触れ、年収面でも満足できる転職を実現するようにしましょう。

これらを踏まえて転職活動をすることで、満足できる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。