企業の研究職に転職しようとしているあなたは、「何歳までなら転職できるのか」気になっていませんか?

これまでの研究職としての経験を活かして転職をしようとしていれば、どうしても新卒や第二新卒と比べて年齢が高くなります。

ここでは、研究職へ転職するときに年齢制限があるかについて、求人情報を紹介しながら、実際の採用の実情を解説します。

年齢制限は法律で禁止されている

まず、求人の年齢制限について実情を解説します。

求人情報をみると、「年齢不問」と書かれているものもあります。例えば下の求人のようなものです。

この求人は派遣会社のもので、研究職を募集しています。

このように書かれていれば、安心できます。しかし、求人情報に「年齢不問」と書かれている求人は多くありません。

では、「年齢不問」と書かれていない求人は、年齢制限があるということでしょうか。

結論を言うと、年齢制限を設けることは法律で禁止されているので、心配しなくても大丈夫です。

実際の法律が下の内容です。

雇用対策法第10条

事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要と認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない

このように、どのような年齢であっても、就職のチャンスを与えなければならないのです。したがって、転職するときも基本的には年齢を気にする必要はありません。

転職成功者の年齢割合を調査した結果があるので紹介します。この統計データは、転職サイトdodaを運営しているパーソルキャリア株式会社が調査したものです。

2018年上半期の結果では、以下のようになっています。

引用:転職成功者の年齢調査(2018年上半期)を円グラフ化

20代が最も多いのは誰もが予想できる結果ですが、40代以上が14%も占めています。

この調査は研究職だけでなくすべての職種に対するものです。雇用対策法によって年齢制限が禁止されていることも含めて考えると、40代以上の研究職でも転職は可能と考えてよいです。

特別な都合がある年齢制限

では、すべての求人が年齢制限をしていないのでしょうか。実は例外が認められています。

以下のような例外事由の場合は、年齢制限を設けることができます。

1)定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

(例)60歳未満の方を募集(定年が60歳のため)

2)長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

(例)35歳未満の方を募集(職務経験不問)

3)技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合

(例)30~39歳の方を募集

実際の研究職の求人にも、これらの理由で年齢制限が設けられているものがあります。

一方で、「今の職場の平均年齢が低く、若い人が多いので、40代以上は不可」や「若い女性しかいない職場なので、中年女性は不可」のような理由は認められません。

では、実際の求人例を確認してみましょう。

次に紹介する求人は、大手製薬会社のものです。勤務地は兵庫県神戸市で、iPS細胞を用いた再生医療製品の研究開発のテーマリーダーを任されることになります。

この求人の「応募資格」の欄には、以下のように募集年齢が記載されています。

募集をかけるときは、そのときの会社の景気や、それぞれの部署の状況を考慮します。

景気が良ければ、多く募集をかけることができます。また、今後の会社の成長のために必要な人材を探します。

また、人材育成が予定通りいけばいいですが、途中退職する人もいます。

そうなると、部署の構成員のバランスが極端に悪くなってしまうこともあります。

この求人は、そのような事態を改善するための求人なので、年齢制限をしています。

続いて紹介する求人は、大阪府にある空調事業を展開しているグローバルメーカーのものです。

この求人の「応募資格」の欄には、以下のように記載されています。

研究職の仕事は、誰がやっても同じ仕事になるわけではありません。それは、決められた実験をやるわけではないからです。

どうすればより効果があり(性能がよく)、便利で、安いものが作れるかを考えるのが、理系研究職の仕事です。

そのため、せっかく会社の戦力として採用しても、数年後には定年退職になる人を積極的に採用しません。

このような求人では、できるだけ長く会社に貢献してくれる人を採用するために、年齢制限を設けています。

研究職への転職の現実

基本的には、求人に年齢制限がないことを説明しました。では、研究職への転職の実情はどうなっているのでしょうか。

年齢よりも経験を重要視される

第1章で説明したように、基本的には求人で年齢制限をすることはできません。そのため、会社が求める人材であれば、年齢は気にする必要はありません。

そして、むしろ中途採用のとき企業は、年齢よりもこれまでの経験を重視することが多いです。

下の求人は、医薬品原薬や中間体の合成をコア事業としている株式会社片山製薬所のものです。この求人で採用されると、大阪府牧方市にある工場で、研究開発職として、プロセス開発を担当することになります。

この求人情報の「対象となる方」の欄には、以下のように記載されています。

必須条件に、有機合成の実験や合成プロセス開発の知識・経験が挙げられています。もちろん、どんなに若くてもこれらの経験が全くないと入社することはできないでしょう。

そして、歓迎条件に若手研究員の指導育成ができる方が挙げられています。

この条件を満たすためには、ある程度の年数を経験している必要があります。リーダーや管理職として後輩の指導をしているのであれば、十分にアピールできます。

なお、この求人には年齢制限に関する記載は何もありませんでした。したがって、40代や50代でも応募できます。

私の知り合いで、製薬会社の研究職で働いている人に話を聞くと、以下のような話をしてくれました。

研究職で中途採用になる人は、年齢よりもこれまでの経験が重視されているように感じる。会社が力を入れていく分野に精通している人を募集している。ごくまれに、管理職として製薬会社から入社する人もいる。

もちろん、この例がすべてではありません。しかし、研究職への転職では、これまで身に付けた知識、経験、技術が大切であることは言えるでしょう。

35歳を越えると、研究職への転職は厳しい

基本的には年齢制限は禁止されています。しかし、実際の転職では年齢がネックになることはあります。

第1章では、会社の都合で年齢制限を設けている求人を紹介しました。

某転職エージェントの方に、研究職への転職について話を聞いたときの内容を下に記します。なお、これは私が35歳のときに、転職エージェントに登録したときに聞いたものです。

今の年齢(35歳)が、研究職で転職するのであればリミットギリギリです。これ以上年齢が上がると、年々転職するのが難しくなります。

前の項では、年齢に関係なく採用される例を紹介しました。意見が完全に逆ですが、どちらも真実と言えるでしょう。

企業としては、可能であれば若い人材に入社してもらいたい。そして、即戦力として活躍してもらうために、専門分野が企業の求めるものと合致していてほしい。このように考えるのは当然のことでしょう。

そのため、年齢が上がるについて、研究職への転職は難しくなることは覚悟しておくべきです。

派遣会社に就職する

研究職として働くときに、特定の製薬会社や化学メーカーに就職しないといけないと考えていますか? 実は、派遣会社に就職することで、研究職として働くこともできます。

転職サイトで「研究職」で検索すると、派遣会社の求人が多くヒットします。実際に、大手転職サイトのdodaで「研究職」で検索をすると89件がヒットしました。

このなかに、派遣会社の求人は26件あり、そのうち研究職は19件ありました。研究職の求人で、派遣会社のものが多いことがわかると思います。

派遣会社に就職すると、派遣会社の従業員として、契約先の企業や研究機関で働くことになります。また、研究を受託して、派遣会社の研究所で研究活動をすることもあります。

そして、派遣会社が契約している企業や研究機関は分野が広いので、研究分野も多岐に渡っています。

また、研究が未経験の人や、元々研究職を志望していたがほかの職種で働いており、研究職が諦められない人なども入社例があります。

下の図は、総合人材派遣会社の1つの株式会社ワールドインテックの求人例です。「仕事内容」の欄を載せています。

このように、多くの分野の派遣先があることがわかります。あなたの専門分野と合致するものもあるかもしれません。

研究職への転職では、年齢がネックになることがあるので、選択肢は少しでも多い方がいいです。派遣会社に就職することで、研究職として働くことができることも覚えておきましょう。

複数の転職サイトや転職エージェントを利用するのが必須

研究職へ転職するときには、経験がないと難しいですが、年齢によって制限されることもあります。では、希望に沿った転職を成功させるにはどうすればよいのでしょうか。

より多くの求人に触れる

インターネットで求人を探す人は多いと思います。転職サイトを検索すると、多くの職種の求人を見ることができます。

このとき、転職サイトを利用するのであれば、複数のサイトを利用するのがよいです。その理由は、転職サイトによって扱っている求人が異なるからです。

例えば、あなたが製薬会社の研究職に転職したい場合を考えます。転職サイトの検索窓に「製薬会社 研究職」と入力して、求人を検索するでしょう。

実際に、汎用されている転職サイト(doda、マイナビ転職、リクナビNEXT)で、上記の検索キーワードで検索した結果が、下記のとおりです。

同じ検索キーワードでも、転職サイトによって、ヒットする求人数は異なります。

このなかで、実際にヒットした求人を紹介します。下の求人は、dodaで検索してヒットした、大手製薬会社の第一三共株式会社のものです。

この求人で採用されると、バイオ医薬品のプロセス開発やスケールアップ検討に携わることになります。

この求人は、ほかの2つの転職サイトではヒットしませんでした。1つの転職サイトだけの利用では、見ることができる求人が限られることがわかります。

また、転職エージェントを活用することで、より多くの求人に触れることができます。その理由は、非公開求人を扱っているからです。

転職エージェントの1つであるリクルートエージェントのホームページには、公開求人の約6倍の非公開求人があることが謳われています。

非公開求人はインターネットで検索しても、求人サイト内を探しても紹介されていません。非公開求人の内容を知るためには、転職エージェントを利用するしかありません。

あなたの経験を企業にアピールしてくれる

転職エージェントを活用するメリットは、ほかにもあります。それは、あなたに代わって転職希望先に、あなたの経験や知識をアピールしてもらえることです。

研究職の転職であれば、過去に経験や知識が重要視されることを説明しました。そのため、あなたも企業もミスマッチは防ぎたいところです。就職してからミスマッチが発覚するとお互いに悲劇です。

転職エージェントを利用すると、あなたの強みやこれまでの経験を、転職エージェントから企業に伝えてもらえます。その時点で合わなければ、エントリーする必要もありません。

また、表向きは年齢制限をしていなくても、「〇〇歳くらいまでが対象」と考えているかもしれません。そのような事情を知らずに闇雲にエントリーしても、なかなか内定を勝ち取ることはできません。

ましてや仕事をしながら、企業調査をしつつ、転職活動をするのは大変です。年齢についても会社が求めている人材とのすり合わせをしてくれます。

あなたが内定を勝ち取れそうな企業を転職エージェントに選定してもらい、転職活動をするのがよいでしょう。

まとめ

ここでは、研究職へ転職するときに年齢制限があるかについて、求人情報を紹介しながら、実際の採用の実情を解説しました。

雇用対策法で年齢制限は禁止されています。そのため、基本的には年齢制限はないと考えてよいです。

しかし、会社の都合での年齢制限が一部認められていることもあるので注意が必要です。

研究職への転職では、年齢、経験の両方を判断材料として用います。会社によっては、長期的に活躍してもらうために、年齢制限を設けている場合もあります。

そのため、年齢制限はありませんが、年齢が上がるにつれて研究職への転職は難しくなることを認識しなければなりません。

そして、特定の企業への就職だけでなく、派遣会社への就職も選択肢に入れるとよいです。

また、転職サイトを複数利用したり、転職エージェントを活用したりするなど、少しでも多くの求人に触れるよう工夫する必要があります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。