循環器領域は、心筋梗塞などの心疾患や、脳梗塞などの脳血管疾患などに分類されます。これらの疾患は日本人の死因の上位であり、循環器領域の研究は盛んにおこなわれています。

そして、循環器領域の研究は仕事内容が幅広いです。一言で研究といっても、求人によって仕事内容が大きく異なります。転職で求められる経験や資格も異なります。

循環器領域で満足のできる転職を実現するためには、求人ごとの仕事内容の違いを十分に把握して転職活動をしなければなりません。そうすることで、転職後にあなたの経験を活かすことができて、やりたい仕事に就くことができます。

ここでは、循環器領域の研究に従事するための転職方法を紹介します。具体的には、「循環器領域の研究の仕事内容」「転職で求められる経験・資格」を順に解説します。

製薬会社で循環器分野の治療薬開発に従事する

最初に紹介するのは、循環器分野の疾患に対する治療薬を開発する仕事です。つまり、医薬品開発です。

医薬品の研究開発には複数の工程があります。下の図が研究開発の流れですが、循環器領域の研究はこの図の左側の工程で行うことができます。

実際に循環器領域の医薬品開発を担当する研究者を募集している求人を、2例紹介します。

1件目の求人は、社名非公開で薬効薬理試験を受託しているベンチャー企業から出されているものです。この求人では、薬理試験や新規病態モデルの開発を担当する研究者を募集しています。

この求人では仕事内容では循環器領域について触れられていませんが、応募条件の1つに循環器系の薬理研究の経験が挙げられています。そのため、循環器疾患を担当できる可能性がある求人です。

創薬研究を行うときに、病態モデル動物は有用なツールです。

循環器系であれば、心筋梗塞や大動脈瘤などが代表的な疾患です。このような病態のモデルを開発し、薬理試験に活用することで、新薬の研究開発を加速することができます。

2件目の求人は、協和キリン株式会社から出されているものです。協和キリン社はバイオテクノロジーや抗体医薬に強みがある製薬会社です。

そして協和キリン社の求人では、研究開発の戦略を立案する研究開発本部で働く人材を募集しています。複数の疾患領域が挙げられていますが、そのなかに循環器も含まれています。

研究開発の戦略立案では、これまでに治療薬がない疾患や、治療薬があっても効果が不十分な疾患に対する斬新な治療法開発を目指します。

この求人では、プロジェクトの企画だけでなく、開始・実行も担うことになります。そのため、プロジェクトチームの一員として研究開発業務も担当することになります。

これらの求人に採用されると、循環器領域の研究に従事することができます。

転職後に従事する研究工程の経験は必須

では、これらの求人に応募するためには、どのような経験が求められるのでしょうか。これまで循環器領域の研究に携わった経験がないと応募することができないのでしょうか。

実際に求人票を確認すると、必ず条件に挙げられているのは「転職後に従事する研究工程の経験」です。薬理研究者を募集している求人であれば薬理研究の経験、研究開発の戦略立案を担当する求人であれば戦略立案の経験が求められます。

実際にさきほど紹介した求人のうち、社名非公開の求人では製薬会社や研究機関などで薬理経験者としての経験が必須条件に挙げられています。

複数の領域が挙げられていますが、そのなかに循環器系も含まれています。そのため、循環器系の薬理研究の経験があればアピールポイントになり、転職活動を有利に進めることができます。

一方で、循環器領域の経験がなくても、そのほかの疾患領域での研究経験があればこの求人に応募することができます。その場合は、薬理研究で培った経験を今後どのように循環器領域に活かすことができるかをアピールするとよいです。

また、さきほど紹介した協和キリン社の求人では、プロジェクトリーダーの経験が応募するためには必須です。これは、転職後にプロジェクトの企画だけでなく、プロジェクトの開始・実行も担当することから求められていると考えられます。

協和キリン社の求人でも、循環器領域以外の疾患でのプロジェクトリーダーの経験があれば応募条件を満たします。

医薬品開発に従事していれば、研究の領域が変わることは珍しくありません。むしろ1つの領域の研究をずっと行うことはまずありません。多くの研究者は在職中に研究テーマが変わります。

そのため、これまであなたが循環器領域以外でプロジェクトリーダーの経験があれば、その経験をアピールして循環器領域への転職活動を進めるとよいです。

このように、転職後の業務内容と同じ経験を求められ、循環器領域の研究経験がなくても応募できる求人が多いです。

高い英語力が求められる求人が多い

循環器領域の研究職への転職で求められるのは研究経験だけではありません。多くの求人で、高い英語力が求められます。

ここで必要な英語力とは、研究を推し進めるために必要な英語力です。

実際にこれまで紹介した2つの求人でも、必須条件に英語力が挙げられています。最初に紹介した社名非公開の求人では、学術論文執筆レベルの英語力が条件です。

学術論文を執筆するときに必要な英語力とは、専門用語をある程度把握していることを指します。例えば、下に紹介するような循環器領域の英語論文を読むときにスラスラ読めることが求められます。

また協和キリン社の求人では、読み書きに不自由しないレベルの英語力が求められ、TOEICで730点以上が挙げられています。

医学論文が読み書きできることと、TOEICで高得点を出せることは直結しません。私も学生時代に英語で論文の執筆を何度か経験しましたが、TOEICは400点くらいでした。決して高得点とは言えません。

TOEICで高得点が出せるということは、英語でのコミュニケーションがとれるとみられます。協和キリンの求人では、グローバルな体制構築に関わることが記載されており、海外の研究者とのやりとりを行うことが予想されます。

国内に限らずグローバルな体制で研究を行うときには、研究業務の一環として海外の研究者と英語でコミュニケーションをとる必要が出てきます。

このように、循環器領域の研究職を募集している求人では、高い英語力が求められることが多いです。

医療機関で循環器領域の臨床研究を行う

さきほど紹介したのは、循環器領域の医薬品を研究開発する求人でした。そして、研究は新規の医薬品を開発するだけではありません。医療機関で行われる臨床研究も研究の1つです。

そして臨床研究は医療機関で実施されるので、臨床研究の求人は医療機関から出されることが多いです。医療機関で働く医師、看護師、薬剤師が患者さんに医療行為を行って、その結果から新たな知見を生み出します。

仕事内容は医薬品の開発とは異なり、実験室で実験機器を使って仕事をするわけではありません。

例えば、次に紹介する医療法人美﨑会国分中央病院の求人では、仕事内容に学会発表や院内での研究発表を実施していることが挙げられています。

臨床研究では、患者さんに医薬品を使用したときの薬効、副作用を調査するだけではありません。循環器領域では、ステントやペースメーカーなどの医療機器を治療に用いる場面があります。

医薬品以外にも医療機器の有効性や安全性を調査・研究することも、循環器領域の臨床研究です。

いずれの研究内容も、最終的には医薬品および医療機器や循環器疾患の治療をよりよいものにするために行われます。

医療機関の規模によっては臨床研究を行っていないこともある

さきほど紹介した国分中央病院は、循環器内科を標榜しています。ここで注意しなければならないのは、大病院以外は循環器領域の診療科を標榜していても、診療枠が少なく、循環器領域の常勤医がいないこともあります。

私の知り合いが働く医療機関では、循環器内科の診察枠は金曜日の午後しかなく、医師は少し離れた大学病院から非常勤として来ていると教えてくれました。下の写真は、その医療機関の外来表の一部です。

このような医療機関では、循環器領域の臨床研究は行っていない可能性が高く、実際にその医療機関では循環器領域の臨床研究は行っていません。

循環器領域の診療科を標榜していても、「転職後に循環器領域の臨床研究に携わりたいが可能か」を先方に確認しておくことが大切です。

また、確実に循環器領域の臨床研究に携わるためには、循環器領域に特化した医療機関に転職すれば希望を叶えることができます。

例えば、次に紹介する心臓血管研究所付属病院は、循環器内科、心臓血管外科、心臓リハビリテーション科を標榜している、循環器領域に特化した医療機関です。

そして心臓血管研究所付属病院の求人票にも、研究発表を行っていることが記載されています。

このような医療機関であれば、常勤の循環器専門医が複数在籍しています。医療専門職も循環器領域に精通した人材が多く在籍しており、循環器領域の臨床研究に携わることができる可能性が高いです。

臨床研究では医療専門職の資格が必須

医療機関で臨床研究を行うときには、製薬企業などで医薬品の研究開発を行うときとは求められるものが異なります。

さきほど紹介した2つの病院では、いずれも看護師を募集していました。つまり、転職するためには看護師資格が必須です。実際に国分中央病院の求人では、以下のように看護師資格を有していることが応募のための必須条件です。

臨床研究に携わるのは、多くの場合医師、看護師、薬剤師です。ここで紹介したのは看護師を募集しているものでしたが、看護師以外にも医師や薬剤師の資格があれば、臨床研究に従事することができます。

臨床研究では、医薬品や医療機器を患者さんに使用し、よりよい医療を提供することを目的に実施されます。医療資格を有していることが必須ですが、資格を保有していて、このような仕事に関心があれば臨床研究も転職の選択肢になります。

臨床研究をサポートするMSL(メディカルサイエンスリエゾン)に転職する

最後に紹介するのは、MSLです。MSLは医療機関で実施される臨床研究をサポートする職種で、主に製薬会社で募集しています。

次に紹介する求人は会社名非公開ですが、製薬会社から出されている求人です。この求人では、糖尿病か循環器疾患を担当するMSLを募集しています。

MSLは医療機関を訪問して、臨床研究を行うために必要な最新の医学情報を提供したり、研究結果を発表するための支援をしたりします。

またMSLは、学術情報に詳しい人材が担当します。そのため医療機関だけでなく、自社内に医学情報を提供し、社内の学術面のサポートも担当します。

このようにMSLは医学情報を基に臨床研究をサポートしたり、社内の学術面の教育を担当したりする職種です。

循環器の知識だけでなく、高い学位と英語力が求められる

MSLは、その疾患領域で影響力の高い医師の臨床研究をサポートします。そのため、循環器疾患に関する知識は転職の時に必ず求められます。

さきほど紹介した求人でも、以下のように循環器疾患領域で2年以上の経験が必須条件の1つとして挙げられています。

そして、MSLの求人では高い学位と英語力も求められることが多いです。さきほど紹介した求人でもこれらは必須条件として挙げられています。

高い学位とは、具体的には博士号(Ph.D.)を取得を指します。博士号を取得していれば、研究を推し進める力があることの証明になります。

また臨床現場では専門用語や検査項目で日常的に英語に触れることになります。下の図は、実際に病院で血液検査を受けた結果です。英語の略語で表記されている項目が多いことがわかります。

そして、最新の医学情報は日本語ばかりではありません。海外の英語論文を解読しなければならないことも頻繁にあります。

このようにMSLに転職するときには、循環器領域の経験だけでなく、学位や英語力も求められることが多いです。

まとめ

ここでは循環器領域の研究に従事するための転職方法を紹介しました。循環器領域の研究は大きく次の3つに分かれます。

  • 医薬品の研究開発
  • 医療機関で行われる臨床研究
  • 臨床研究をサポートするMSL

医薬品の研究開発は製薬会社で行われています。転職のためには研究経験が必須ですが、循環器領域の経験がなくても応募できることが多いです。

臨床研究は医療機関で行われるので、医師、看護師、薬剤師のいずれかの資格が必須です。医薬品や医療機器を患者さんに使用し、効果や副作用を評価し、よりよい医療を提供するために行われます。

MSLは製薬会社で働き、医師の臨床研究をサポートする職種です。転職するときには、循環器領域の知識・経験だけでなく、大学院修了以上の学位や高い英語力が求められます。

循環器領域では、求人によって仕事内容や転職で求められる経験・資格は大きく異なります。あなたがやりたい仕事や活かせる経験を明確にし、転職活動を進めましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

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これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。