研究職として働いていると、楽しいことばかりではありません。しんどいことも多いです。

私も化学メーカーの研究職で働いていましたが、体力的にも精神的にもボロボロの状態で転職をしました。

研究職が転職を考えるときに、次も研究職を考えることが多いです。私の友人も、研究職として就職した人は、転職してもほとんどがそのまま研究職で働いています。

研究職で働いていると、専門知識以外にも多くの知識・考え方が身に付きます。そのため、研究職として働いた経験を活かして、研究職以外の職種に転職することもできます。

ここでは、「研究職の経験を活かして転職できる職種」「転職を成功させるための戦略」を私の実体験も含めて紹介します。

私が研究職を辞めた理由

さきほど紹介しましたが、私も化学メーカーで研究職として働いていました。そして、現在は研究職ではない職種で働いています。まずは、なぜ私が研究職から職種を変えて転職したのかについて紹介します。

私は新卒で化学メーカーの研究職に就職しました。そして、ちょうど私が入社したタイミングは、新製品の工業化検討が始まったときで、忙しい時期でした。

工業化検討では、とにかくトラブルの連続でした。そして、1週間に1回の実験報告会では毎回のように「じゃあ次はどうするの?」と質問されました。

正直なところ「このままやってもうまくいくわけがない。これまでとは全く違う条件でやることを考えないといけない」と感じていました。しかし、チャレンジングな条件を検討する時間はなく、その場しのぎの実験を繰り返す日々でした。

そのようななか私の先輩は、うまく時間を使っていました。日々の実験にプラスして、隙間時間を使って斬新な条件での実験を行い、失敗しても報告会ではその内容は話していませんでした。うまくいって可能性がありそうなものだけを報告し、今後の展開に繋げていました。

そんな先輩の姿を近くで見ていて、「私にはできない」と感じました。将来的には私も先輩と同じように仕事をしなければならないと考えると、「このまま働いていてもつらい想いをするだけ」と思ってしまいました。

また、残業時間は毎月少なくても60時間、多いときは100時間を超えていました。平日は家に帰っても寝るだけの日々でした。

ちょうどそのタイミングで私生活にも大きな変化があり、転職を決意しました。

最初は、研究職での転職も考えました。しかし、「うまくいかないことが続くのは精神的にしんどい。研究職に転職しても、また同じことの繰り返しになるのではないか」と考え、最終的には研究職ではない職種に転職しました。

私のように、研究職出身で研究職以外の職種に転職する人は珍しいです。周囲からも「何で研究を続けないの?」と何度も質問されました。

しかし、今の私は研究職で働いていたときと比べて、仕事でもプライベートでも充実した生活を送っています。そして、研究職で身につけた知識や考え方を活かした働き方ができており、転職には満足しています。

私は研究職だけでなく、ほかの職種にも目を向けることで満足できる転職ができました。研究職以外の職種に転職することも視野に入れて転職活動をすることで、より満足度の高い転職を実現できる可能性が高まります。

研究職の経験を活かして転職する方法

では、研究職で身につけたスキルを活かしてどのような職種に転職することができるのでしょうか。求人例を示しながら、研究職の経験を活かして転職できる職種を4種紹介します。

技術営業の求人

最初に紹介するのは、技術営業職です。下に示す富士化学工業株式会社の求人では、新規受託製造の獲得のための営業活動を担当する人材を募集しています。

富山化学工業社は、富山県に本社工場、東京に営業支店がある医薬品や医薬原薬の製造販売を行っている企業です。

そして、この求人の対象となる方の欄には、研究職の実務経験が必須条件の1つとして挙げられています。

技術営業職は、客先候補の企業を訪問して、自社製品や自社の技術力を提供し、契約にこぎつける職種です。営業職との違いは、技術営業職は技術的な内容のみを客先企業に提供することです。

研究職で身につけた専門知識や技術があれば、自社製品の技術的な特徴を客先企業に正確に提供することができます。

また、客先から出された課題を自社に持ち帰り、研究部門の担当者との打ち合わせをする場面があります。このような場面で研究部門との架け橋になり、客先からの要望に対して今後自社でどのような検討をしなければならないかも議論することができます。

技術営業ではこのような仕事を担当するので、営業の経験がなくても全く問題ありません。さきほど紹介した富士化学工業社の求人も、営業経験がなくても応募することができます。

そして、さきほど紹介した求人は化学メーカーの求人ですが、化学メーカー以外にも製品を販売している多くの企業で技術営業職は募集されています。

例えば、次に示すミネベアミツミ株式会社は、ベアリングやモーターを中心に製造している電器部品メーカーです。ミネベアミツミ社でも技術営業の担当者を募集しています。

求人の紹介は割愛しますが、ほかにもアプリケーション、アナログ回路、モーター制御など多岐に渡る専門知識を活かすことができる技術営業職が募集されています。

このように、研究職の経験を活かして技術営業職に転職することができます。

品質管理の求人

続いて紹介するのは、品質管理部門の求人です。下に紹介する東洋合成工業株式会社の求人では、製品の品質分析や製造工程の分析を担当する人材を募集しています。

東洋合成工業社は、東京都に本社があり、千葉県と兵庫県に生産拠点を置いています。感光材事業や化成品事業を中心に事業展開をしている化学メーカーです。

そして、この求人の応募条件は以下の通りです。化学メーカーの研究者が担当する一般的な仕事内容が挙げられています。

品質管理の日常業務は、定められた手順で品質の分析を行うことです。新製品を直接生み出す仕事ではありません。そのため、品質管理の仕事のほとんどはルーチンワークです。

しかしなかには、品質について他部署からの相談・業務依頼を受けることもあります。

私が働いていた化学メーカーでは、構造未知の不純物の分析は品質管理部に依頼していました。また、最終製品や製造工程での分析条件は、研究所と品質管理部門が議論して決定していました。

研究職で身につけた専門知識や、条件検討の経験は、品質管理部門でも活かすことができます。

マーケティング・販促の求人

続いて紹介するのはマーケティング・販促の求人です。求人は次の株式会社ヴェントゥーノの求人が該当します。ヴェントゥーノ社は、福岡県に本社がある化粧品や健康食品の開発・販売を行っている企業です。

この求人では、プライベートブランド商品の商品開発からマーケティング・販売促進を担当する人材を募集しています。なお、商品開発部が別部署としてあるので、主にマーケティング・販売促進を担当すると考えられます。

私の知り合いで、化粧品メーカーのマーケティング職で働いている人がいます。彼女は薬学部出身で、化粧品に含まれる成分の専門的な話になったときには学部の授業や、研究職で身につけた知識が役に立つと教えてくれました。

マーケティングでは、自社の商品の特徴を把握しておかなければなりません。また、ライバル会社の製品を調査するときも、自社製品との違いを明確にする必要があります。

これらを調査するときに、研究職で身につけた専門知識が役に立ちます。ヴェントゥーノ社の求人でも理系スキルを活かして働くことができることが記載されています

そしてこの求人の対象となる方の欄には、理系学部を卒業していることが必須条件の1つに挙げられています。理系研究職として働いた経験があれば十分に応募条件を満たします。

なお、この求人では北米・東南アジアが販売エリアなので、ビジネス英会話ができる人材が求められています。ただし、日本国内の市場をターゲットにしている企業であれば、英語を話すことができなくても全く問題ありません。

また、マーケティングや販売促進の担当者は、商品開発部門などと協調して仕事を進めていく場面が多いです。そのため、コミュニケーション能力も求められる職種です。

このように、研究職の経験があればマーケティング・販売促進を担当することもできます。

商品開発の求人

最後に紹介するのは、商品開発の担当者を募集している求人です。この求人は、健康機器や福祉用具を中心に製造しているフランスベッド株式会社のものです。

フランスベッド社の求人では、マッサージ器や福祉用具を制御するための電気回路設計やソフトウェア設計を担当する人材を募集しています。

例えば、病院や介護施設で利用されているベッドは、電動のものがほとんどです。ベッドの種類によっては、リモコンやベッド本体にソフトウェアが組み込まれており、動きを制御しています。

下の写真は、フランスベッド社から販売されているリクライニングベッドの一部です。このベッドは、リクライニングフレームが下降動作中に障害物が挟まったら、音で危険を知らせながら少し反転動作を行って動作を停止する機能を搭載しています。

そして、この求人の応募条件は以下の通りです。技術研究に携わった経験があれば応募条件を満たします。

研究職は新たな技術を見出すことが仕事内容です。その一方で製品開発は、既存の技術を組み合わせて製品を開発することが仕事内容です。

商品開発をするときには、製品で活用される要素ごとに専門家が関わります。

さきほどのベッドの開発でも、電気、ソフトウェア、メカの担当者が協力して製品を開発します。ほかにも化粧品であれば、化学や生理学の専門家だけでなく、容器の担当者も商品開発に関わります。

研究職の経験があれば、あなたの専門知識を活かして商品開発に携わることができます。

業界が変わっても専門知識を活かすことができる

私は化学メーカーで研究職をしていました。私の専門は有機化学でしたが、有機化学の知識を活かすことができるのは化学メーカー以外にも製薬メーカー、食品メーカー、化粧品メーカーなどが挙げられます。

ほかにもソフトウェアの研究職であれば、ソフトウェアが組み込まれている製品を取り扱うあらゆる企業に転職できます。私の知り合いのなかには、大手電機メーカーの東芝から国内最大手の自動車メーカーのトヨタに転職した人や、電機メーカーのSHARPから内視鏡やカメラなどの光学・精密機械を製造販売しているオリンパスに転職した人がいます。

彼らが扱っている製品は転職前後で異なりますが、仕事で必要な専門知識が共通なので、転職後も活躍しています。

このように、あなたの専門知識は業界が変わっても活かすことができます。求人を探すときには、業界にとらわれず、幅広く求人を探すことで転職を成功させやすくなります。

転職を成功させるための戦略

ここまで研究職の経験を活かして転職できる求人を5件紹介しました。あなたの職務経験で応募条件を満たす求人もあったと思います。

しかし、これらの求人に応募しても、必ず採用されるとは限りません。なぜなら、採用する企業は「なぜ研究職を辞めて職種を変えたいのか」を意識するからです。

これは、あなたが採用担当者の立場になって考えると分かりやすいです。

例えば、履歴書に「今の会社は経営状態が悪く、仕事も残業が多く大変。職種も変えて再出発したい」と書いてあった場合、採用したいと思えるでしょうか。

職種を変えるだけであれば、転職をしなくても社内の配置転換で実現することができます。会社を変えてまで研究職から他職種に変わるときには、採用担当者が納得するような理由が必要です。私も転職活動のときに、この理由を考えるのに悩みました。

このような場面で有効な手段の1つに、転職エージェントの力を借りることがあります。

私は転職活動のときに転職エージェントに登録して、担当者からさまざまな転職支援やアドバイスをもらいました。具体的には、「非公開求人の紹介」「どの職種に向いているかの相談」「志望動機を含めた履歴書の書き方」「面接対策」などです。

冒頭でも紹介しましたが、私は転職活動を始めたときは研究職への転職を中心に考えていました。

しかし、私の経験・知識を活かすことができる研究職以外の求人を多く紹介してもらいました。そして、もし転職したとすると、どのような仕事を担当することになるのか、私のどのような経験・知識を活かすことができるかを何度も質問しました。

その結果、現在働いている開発職に興味を持ち、最終的には転職を成功させることができました。

下に私が面接を受ける前に担当者からもらったアドバイスを紹介します。

このように、転職エージェントの担当者は、転職活動のスタート地点である求人の紹介から、最終段階の面接までの支援をしてくれます。

あなた一人の力で転職を成功させようとすると、うまくいかないこともあります。第三者の力も借りて、満足できる転職を実現させるようにしましょう。

まとめ

ここでは、研究職からほかの職種に転職するときの方法について解説しました。

研究職の経験を活かせる職種は「技術営業職」「品質管理」「マーケティング・販促」「商品開発」などが挙げられます。それぞれ仕事内容は大きく異なります。仕事の特徴、あなたのやりたい仕事を踏まえて職種を選ぶようにしましょう。

研究職の多くは、研究職の求人に転職します。そのため、会社だけでなく職種も変えて転職するためには、説得力のある転職理由や志望動機を転職希望先に示さなければなりません。

あなた一人で向いている仕事や転職理由を考えても視野が狭くなりがちです。転職エージェントなどの第三者の力も借りて、幅広く求人を探し、転職活動を進めることが転職成功のためには大切です。

これらのポイントを踏まえて転職活動をすることで、満足できる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。