サラリーマンやOLとして働いていると、一度は「大手企業で働きたい」と考えたことがあると思います。

私も大手企業への憧れがあったので、新卒で就職活動をするときには、知名度がある大手企業を中心に採用試験を受けました。しかし、すべて不採用だったので、未だに大手企業で働いている人の話を聞くと「うらやましい」と感じます。

大手企業の求人は魅力的なものが多いです。そして、経営基盤がしっかりしていて、将来性もあります。大手企業に転職をしようとするときに、周囲の人から「やめとけ」と反対されることはまずないでしょう。

ただし、企業によって働き方が大きく異なるので、しっかりと求人を読み込んで応募しなければ、納得できる転職は実現できません。

ここでは、webエンジニアが大手企業に転職するときに押さえておくべきポイントについて解説します。具体的には「大手企業の分類」「転職で求められる経験・スキル」「福利厚生の違い」「大手企業の年収」について順に紹介します。

なお、大手企業の明確な定義はありません。そのため、求人票に「大手企業」と謳われている企業を大手企業として解説します。

企業の特徴を理解して、転職失敗を防ぐ

webエンジニアが働く企業は、さまざまな業界に分類されます。業界が異なれば、webエンジニアの働き方にも違いがあります。

そこでまずは、業界ごとの企業の特徴を確認しましょう。

情報通信業の企業でシステム開発を担当する

システム開発を主な事業としている企業の多くは、情報通信業に分類されます。このような企業には、多くのwebエンジニアが在籍しています。

実際の求人例を紹介します。下に示すのは、会社名は非公開ですが、東京都にオフィスがある大手企業の求人です。この求人では順番待ち・予約システムの開発に携わるwebエンジニアを募集しています。

なお、挙げられている仕事内容はシステム開発の上流工程で、開発業務は外部企業に外注しています。この企業では、要件定義は自社内で行い、プログラミングや単体テスト、実装テストなどの下流工程はSIerに外注しています。

企業の規模が大きくなっても、すべての業務を自社内で完結させることは稀です。仕事の一部をSIerに外注し、複数の会社で協力して1つのシステムを開発します。

この図では、大手企業が直接開発依頼をする企業は1社ですが、webアプリケーションによっては複数の企業に開発依頼をすることもあります。また、SIerの社員が発注元の企業に常駐して作業を行うこともあります。

そして、さきほどの図で示した大手企業は、開発したwebアプリケーションを発注元の企業に販売することで利益を得ています。このように、情報通信業の企業では、開発したwebアプリケーションを販売して会社の利益に貢献することになります。

情報通信業以外の企業で自社のシステム開発を担当する

webアプリケーションは、多くの企業で事業に活用されています。

例えば、私は最近インターネットで寿司の持ち帰りを注文しました。このとき、以下のwebサイトから注文しました。

引用:持ち帰り(テイクアウト)|回転寿司スシローより

また、会社のホームページを作成し、会社情報を公開している企業も多いです。例えば、大手転職サイトのdodaを運営しているパーソルキャリア株式会社は、以下のようなホームページを作成しています。

引用:パーソルキャリア – PERSOL CAREER(旧インテリジェンス)より

ホームページから企業の事業内容を確認したり、活動拠点を調べたりすることができます。あなたも転職活動のときに企業のホームページを閲覧したことがあると思います。

これらの会社は、webアプリケーションを事業に活用していますが、webアプリケーションを販売して利益を得ているわけではありません。ちなみにパーソルキャリア社は、サービス業に分類される企業です。

会社の規模が大きくなると、このようなwebアプリケーションも自社内で開発します。実際に自社で利用するwebアプリケーションを開発するためのwebエンジニアが募集されていることがあるので、求人例を紹介します。

下に紹介する企業は、広島に本社がある大手自動車メーカーです。会社のオフィシャルサイトの企画・開発、運用に携わるwebエンジニアを募集しています。

自動車メーカーは、製造業に分類される企業で、自動車を製造・販売して利益を得ています。しかし、自動車メーカーの従業員は、自動車の製造・販売だけをすればよいわけではありません。

下に、マツダ株式会社のwebサイトを示します。このwebサイトでは、マツダ自動車が製造販売している車種の紹介だけでなく、キャンペーンの案内をされていたり、カタログ請求ができたりします。

引用:マツダ株式会社 企業サイトより

このように、自社製品をプロモーションするためのwebアプリケーションの開発も、利益を支える大切な仕事です。

また、自社内のwebアプリケーションを開発する場合は、開発依頼主は自社の社員です。そのため、社外からの開発依頼と比べて締め切りのプレッシャーや、「きつい」と感じる頻度は少ないです。

webエンジニアとして大手企業への転職を目指すときには、情報通信業以外の企業も転職先の選択肢に入れることで、転職の幅を広げることができます。

大手企業は分業制でシステム開発を進める

では、大手企業とその他の企業では、仕事の進め方に違いはあるのでしょうか。

大手企業は、人材を多く抱えています。そのため、仕事を分業制で進めることができます。

次に紹介するトランスコスモス株式会社の求人には、求職者のスキル・志向性に合ったポジションを担当することが記載されています。

トランスコスモス社は、デジタル技術を活用したサービスを提供している企業です。東京都以外にも名古屋、福岡、京都などにオフィスを構えており、この求人は大阪本部でwebエンジニアとして働く人材を募集しています。

webアプリケーションの開発は上流工程から下流工程に分かれます。また、開発の後の運用・メンテナンスもwebエンジニアの仕事の1つです。

その一方で、企業の規模が小さいと、webエンジニアの数が少なく、1人で幅広い業務を担当することになります。

私の知り合いでwebエンジニアとして働いている人がいますが、その人の会社は社内にシステムエンジニアが2人しかいません。その2人で、ホームページの更新、社内で使用するシステムのメンテナンス、外部ベンダーとのやり取りなどをすべて行っていると教えてくれました。

このように多岐に渡るwebエンジニアの仕事を分業制で仕上げていくことが、大手企業の特徴です。

転職で求められる経験・スキル

では、大手の企業に転職しようと思うと、どのようなスキルが求められるのでしょうか。あなたのこれまでの経験をどのようにアピールすることで転職成功に繋げることができるのかを解説します。

何かしらのwebアプリケーションの開発経験は必須

大手企業に転職するためには、これまでwebエンジニアとしてwebアプリケーションの開発に携わった経験が必須です。

私が複数の転職サイトで求人票を検索しても、未経験者や開発経験がほとんどない求職者が応募できる求人はありませんでした。

冒頭で紹介した求人では、応募のためには以下のようにLAMP環境で3年以上の開発経験が必須です。

LAMP環境は、webアプリケーション開発の基本となるLinux、Apache、MySQL、PHPを利用する環境を指します。

多くのwebアプリケーションはLAMP環境で作成・運用されています。これまでwebアプリケーション開発に長年従事していれば、このような求人に応募することができます。

大手企業に転職するときには、webアプリケーションの開発経験は最低限求められるものと考えてください。

得意分野を活かして転職する

前の章で、大手企業は分業制で仕事を進めることを紹介しました。このことは、それぞれのwebエンジニアが得意な技術を活かして開発に携わることを意味します。

前の章で紹介した大手自動車メーカーの求人では、フロントエンドかバックエンドに担当が分かれることが記載されています。

例えば、あなたがこれまでHTMLやCSSでアプリケーションのレイアウトの設計をメインで担当していたのであれば、フロントサイドのエンジニアとしての実力をアピールすることができるでしょう。

このように、大手企業は1つのプロジェクトに多くの担当者を配置できるので、仕事を分業で進めることが多いです。そのため、あなたに専門特化した技術や知識があればアピールするとよいです。

業界ごとに福利厚生に特徴がある

システム開発を主な事業としているか否かで、会社の業界が異なります。そして、業界が異なれば、福利厚生に特徴が現れます。

例えば、自動車メーカーの求人では、社員販売制度が求人票に挙げられています。

自動車メーカーに勤めていれば、自社の車に限っては大幅な社員割引が適応されて、格安で車を購入することができます。

ほかにも、ドラッグストアで勤務していれば、化粧品や日用品を社員割引価格で購入することができます。私が学生時代にアルバイトをしていたドラッグストアでは、女性社員は積極的に化粧品を社員割引で購入していました。

また、金融機関に勤めていれば、1年に1回、1週間の休暇を必ず取得することができます。この制度は、金融機関に特有のものです。

福利厚生を上手に活用することで、仕事の時間だけでなく、日常生活も充実したものにできます。もちろん、転職先の企業を福利厚生の充実度を最優先で選ぶことはおすすめしません。

業界が異なれば、給料以外に受けられる福利厚生も異なります。このことを踏まえて転職活動を行うことで、転職の満足度を高められる可能性があることを覚えておきましょう。

大手企業の年収を知り、転職失敗を防ぐ

大手企業への転職を考えるときに、年収アップを狙って転職を目指す人もいると思います。続いて、webエンジニアが大手企業でもらうことができる年収について解説します。

企業規模が大きくなるとweb系エンジニアの年収は高くなる

大手企業の明確な定義はありませんが、ほとんどの大手企業は多くの従業員が働いています。従業員数が10人程の企業を大手企業とは呼びません。

では、従業員数が多い企業では、高い年収をもらうことができるのでしょうか。これは、厚生労働省が毎年調査している賃金構造基本統計調査で確認することができます。

システムエンジニアの年収を、企業規模ごとにまとめたものが下の表です。

企業規模 年収
10~99人 536万円
100~999人 532万円
1,000人以上 627万円
企業全体 568万円

引用:令和元年賃金構造基本統計調査 職種別第1表より

従業員数が10~99人と100~999人では、年収はほぼ同じです。しかし、従業員数が1,000人以上になると、年収が大幅に増えることがわかります。なお、システムエンジニアの平均年収は、568万円です。

この統計からは、企業規模が大きい企業であれば、高年収を勝ち取りやすいことがわかります。

大手企業=高年収とは限らない

企業規模が大きい企業に転職すれば、高年収を勝ち取れる可能性が高いことを説明しました。では、大手企業は高年収を提示している求人が多いのでしょうか。

実は、大手企業の年収は一概に高いとは言えません。ここまで4件の求人を紹介しました。最初に紹介した求人の年収は下図に示す通り600万円~799万円です。

この求人を含む3件の求人の年収と業界を一覧にしたものが、下の表です。

企業名 年収

(万円)

業界
非公開 600~799 情報通信業
非公開 400~800 製造業
トランスコスモス(株) 350~600 情報通信業

システムエンジニアの平均年収568万円と比較すると、すべての求人で高い年収が提示されているわけではありません。なかには、システムエンジニアの平均年収を下回る求人もあります。

このように、大手企業が必ずしも高年収を提示しているわけではないことを認識しておく必要があります。

業界によって年収は大きく異なる

最初の章で、webエンジニアは情報通信業以外の企業でも募集していることを紹介しました。

実は、業界が異なると年収が大きく異なります。賃金構造基本統計調査では、産業別の年収も調査・公開されています。その結果をグラフにしたものが下の図です。

引用:令和元年賃金構造基本統計調査 職種別第1表より

システム開発を主な事業としている情報通信業の企業は、全産業のなかでも年収が高いことがわかります。

そして、年収が高い業界と低い業界では、年収に2倍近い差があります。つまり、このグラフの左側の業界で働くwebエンジニアに転職すれば、高年収を狙いやすいです。

しかし、このグラフはすべての職種の年収をまとめたものです。求人によっては、グラフの右側の業界でも、高年収が提示されている求人もあります。

実際に、製造業に含まれる自動車メーカーの求人は、年収が400~800万円が提示されています。この求人で採用されれば、システムエンジニアの平均年収568万円よりも高い年収をもらえる可能性もあります。

業界と求人の年収を個別に確認することで、年収面での失敗を防ぐようにしましょう。

まとめ

ここでは、webエンジニアが大手企業に転職活動するときのポイントについて解説しました。

webエンジニアとして転職するときには、作成したwebアプリケーションを販売する会社(情報通信業)と、自社の基幹システムを開発する会社(情報通信業以外)のどちらかを選択することになります。

大手企業は多くのwebエンジニアを人材として保有しているので、プロジェクトを分業制で進めることができます。

大手企業に転職するときには、webアプリケーション開発に携わった経験は必須です。未経験者や開発経験が浅い人の転職成功は難しいです。

また、分業制で仕事を進めることから、幅広い知識よりも、専門に特化した知識や技術が求められることが多いことも大手企業の特徴です。

企業の規模が大きくなれば、年収が高くなる傾向はあります。しかし、大手企業のなかには、システムエンジニアの平均年収を下回る年収を提示している企業もあることに注意が必要です。

求人を出している企業の業種と、求人ごとの年収を十分に確認しながら応募することで、年収面での転職失敗を防ぐようにしましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。