バイオ系・生物系の研究は、業務内容が多岐に渡ります。実験動物を用いて研究をすることもあれば、細胞を用いて研究することもあります。扱う対象が異なれば、実験の手技や必要な専門知識も変わります。

そのため、バイオ系の研究職に転職するときには、あなたの専門知識や実験技術を活かせる求人を見つけて応募しなければなりません。

転職を成功させるためには、求人に挙げられている条件とあなたの経験がマッチしなければなりません。これまでのあなたの経験をしっかりと整理し、どの求人に応募できるのかを見極める必要があります。

ここでは、バイオ系・生物系の研究職求人に転職するときのポイントを紹介します。具体的には、「バイオ研究者が従事する仕事」「転職で求められるスキル・経験」「生物系の経験を活かしたキャリアチェンジ」「バイオ系研究職の年収」について解説します。

バイオ研究者は、医薬品・化粧品・食品の研究開発に従事する

企業で行われるバイオ系の研究は、基本的にはヒトの健康に直結する内容が行われます。そして最終的には、医薬品、化粧品、食品などの商品の開発につながります。

つまり、バイオ系の研究職の求人を探すときには、これらの商品の研究開発を行っている企業を中心に探すことになります。

例えば、下に示すAxcelead Drug Discovery Partners株式会社は、国内外の製薬会社、バイオベンチャー企業、大学と共同で医薬品の研究開発を行っている企業です。この求人では、医薬品開発のための薬物動態の研究者を募集しています。

薬物動態の研究では、実験動物を用いて、化合物がどの程度体内に吸収されるか、どのくらいの時間で排泄されるかなどを試験します。そのような試験を繰り返し、薬物動態特性が優れる医薬品候補化合物を選定していきます。

また、次の会社名非公開の求人は、化粧品原料の研究開発に強みがある会社から出されているものです。この求人では、原料開発業務を担当する研究者を募集しています。

化粧品では、バイオ技術を利用したスキンケア化粧品、入浴剤、ヘアケア製品などが開発されています。

ほかにも身近なものでは、味噌や日本酒はバイオ技術のうち「発酵技術」を駆使して開発されています。

このように、化粧品や食品の研究開発でも、バイオ技術が用いられます。バイオ系の研究職で求人を探すときには、医薬品、化粧品、食品を研究開発している企業を中心に探すことになります。

転職で求められるスキル・経験を確認する

バイオ系の仕事は多岐に渡ります。そして求人によっては、特定の専門知識や、業務内容・対象疾患の経験が応募条件に挙げられていることがあります。

続いて、求人票の応募条件を示しながら、転職のときに求められる経験やスキルを確認していきます。

実験内容・専門知識による分類

最初に紹介したAxcelead Drug Discovery Partners社の求人では、以下のように薬物動態の実験に従事することが記載されていました。

そして、この求人の対象となる方の欄には、薬物動態の専門知識を有していることが必須条件の1つに挙げられています。

薬物動態の研究では実験動物を取り扱います。そのため薬物動態に携わるときに、マウスやラットを取り扱った経験は必須といえます。

同様に、バイオ研究の知識・実験経験が条件に挙げられている求人をもう1件紹介します。

この求人は、大手製薬メーカーの中外製薬株式会社のものです。中外製薬社は、抗体医薬品を中心に多くの医薬品を発売している製薬メーカーです。

そして中外製薬社の求人では、バイオ原薬の製法開発を担当する研究者を募集しています。

そして、この求人の応募条件は以下の通りです。タンパク質の精製か培養の経験が必須条件に挙げられています。

バイオ原薬は、微生物や細胞を用いて製造します。研究室で行う実験で用いるのは、下の写真のようなシャーレやマイクロプレートで、実験動物を用いることはありません。

バイオ原薬の製法開発では、目的の原薬を作るための遺伝子組み換え技術や、最終的に原薬を精製するための手技が求められます。

この2件の求人で挙げられている仕事内容はいずれもバイオ系ですが、内容は大きく異なることがわかります。

バイオ系の研究職の求人では、転職後に携わる仕事で必要な実験手技や知識が求められることが多いです。

対象疾患による分類

さきほどは、研究で行う実験内容・手技で求められるものを紹介しました。

企業で実施するバイオ系の研究は、最終的に医薬品などの商品開発のために実施されます。そして求人によっては、実験内容の経験ではなく、対象疾患が応募の条件に挙げられていることがあります。

具体的な求人例を2件紹介します。

1件目の求人は、冒頭で紹介したAxcelead Drug Discovery Partners社のものです。さきほどの求人とは異なり、この求人では薬効薬理試験を担当することになります。そして仕事内容には、免疫疾患領域の研究に従事することが記載されています。

そしてこの求人では、免疫、炎症領域における前臨床研究の実務経験6年以上の経験が求められています。

例えば、アトピー性皮膚炎や関節リウマチは免疫が関わる炎症性疾患の代表例です。そして疾患の研究は、新規標的分子の探索や新規治療薬候補物質の創生など、さまざまな関わり方があります。

免疫・炎症性疾患領域におけるこれらのような研究開発経験があれば、Axcelead Drug Discovery Partners社の求人に応募することができます。

2件目の求人は、バイオ製剤に強みがある協和キリン株式会社のものです。この求人では、中枢神経研究所で研究員として働く人材を募集しています。

そして、この求人では、中枢神経創薬の経験が必須条件に挙げられています。

中枢神経系の疾患には、認知症、パーキンソン病、てんかんなどが含まれます。さきほどの求人で挙げられていた免疫・炎症性疾患とは、疾患の特性が大きく異なるので、研究・実験内容も変わってきます。

このように求人によっては、特定の疾患の研究に携わった経験が求められることがあります。

大学院卒以上の学歴が求められる求人が多い

研究職で働いている人は、大学院を修了している人が多いです。大学院卒であることが研究者にとって最低限の条件として考えている企業もあります。

そのため、バイオ系の研究職に転職するときも、大学院卒以上が条件になっている求人が多いです。

次に紹介する株式会社坪田ラボは、近視、老眼、ドライアイに重点をおいて研究を展開しているベンチャー企業です。坪田ラボ社の研究職を募集している以下の求人では、大学院卒以上が学歴の条件として挙げられています。

大学院卒以上なので、学部卒では応募条件を満たしません。修士課程か博士課程を修了していなければ、このような求人に応募することはできません。

そして求人によっては、学歴に加えて学位や研究経験が求められるものもあります。

次に紹介するのは会社名非公開の求人で、生物環境科学領域の研究員を募集しています。この求人では、理系の博士号の学位を有していることが必須条件です。

また次に紹介するノイルイミューン・バイオテック株式会社の求人では、「ポスドク研究員も歓迎」と記載されています。

ノイルイミューン・バイオテック社はがん治療の研究を行っているバイオベンチャー企業です。この求人では、免疫療法の研究者を募集しています。

これらの求人のようにバイオ系の研究職では、大学院卒以上の学歴だけでなく学位や研究経験が求められることもあります。

私の知り合いが働く大手製薬会社でも、研究職の採用は新卒も中途採用者も博士卒の人材が多いと教えてくれました。

では、大学院を修了していない人はバイオ系の研究職に転職できないのでしょうか。実は、求人を根気強く探せば、大学卒でも応募できる求人を見つけることはできます。

例えば、次に紹介する株式会社ワイ・ビー・ケイ工業の求人は、大学卒でも応募条件を満たします。

ただし、注意しなければならないのは、挙げられている仕事内容に研究開発業務の「補助」が含まれることです。つまり、ほかの研究員が行う仕事の手伝いを任されることもあります。

研究職では、大学院を修了することが最低限の条件と考える風潮があります。そして人によっては、博士号取得を研究者としての交通手形のように考える人もいます。私の知り合いが働く製薬会社の研究員の多くが博士号を取得しているのも、その流れに沿ったものです。

大学院を修了していなくても応募できるバイオ系の研究職の求人はありますが、その場合は研究の補助業務も担当する可能性があることを認識しておく必要があります。

バイオ系研究者の年収

最後に、バイオ系の研究職に転職したときの年収を紹介します。

冒頭で紹介したAxcelead Drug Discovery Partners社の求人では、以下のように600万円〜900万円が提示されていました。

ここまで計9件の求人を紹介してきました。9件すべての求人で提示されている年収を一覧にしたものが下の表です。なお、協和キリン社は提示年収が非公開でした。

企業名 提示年収

(万円)

仕事内容
Axcelead Drug Discovery Partners(株) 600〜900 薬物動態試験
非公開 600〜700 化粧品・医薬品・食品の原料開発
中外製薬(株) 600〜900 バイオ原薬の製法開発
Axcelead Drug Discovery Partners(株) 600〜900 薬効薬理試験
協和キリン(株) 非公開 中枢神経研究所での研究業務
(株)坪田ラボ 400〜800 近視・脳・老眼研究
非公開 800〜1,000 ライフサイエンス分野での新製品の研究開発
ノイルイミューン・バイオテック(株) 400〜700 がん免疫療法の研究
(株)ワイ・ビー・ケイ工業 270〜320 研究開発補助、既存品の改良など

企業によって違いはありますが、600万円~700万円がボリュームゾーンになっています。

この中で社名非公開の求人では、800万円〜1,000万円という非常に高い年収が提示されています。この求人は、博士号を取得していることが必須条件に挙げられていた求人です。

その一方で、ワイ・ビー・ケイ工業社の求人はほかの求人と比べて提示されている年収が低めです。これは、大学卒でも応募することができ、仕事内容に研究開発の補助業務も含まれることも影響していると考えられます。

つまり、一人前の研究者として認められる博士号を取得していて、研究業務の中心を担当するような求人で採用されれば、より高い年収が期待できます。

ただし最初の章で紹介したように、バイオ系の研究職の求人では、あなたの経験と企業が求めるものがマッチしなければ採用されません。年収だけでなく、仕事内容や経験があなたにマッチするかを十分に見極めて求人に応募するようにしましょう。

まとめ

ここでは、バイオ系・生物系の研究職に転職成功させるためのポイントを解説しました。

バイオ研究者を募集しているのは、医薬品・化粧品・食品を研究開発している企業です。これらを研究開発している企業を中心に求人を探しましょう。

バイオ系研究者を募集している求人では、これまで経験した実験内容や専門知識が合致するか、これまで研究対象とした疾患が合致するかが求められます。あなたの経験を整理し、応募できる求人を見つけなければなりません。

多くの求人で、大学院卒以上の学歴が求められます。大学卒でも応募できる求人もありますが、研究の補助業務も任されることがあります。

バイオ系の研究職に転職したときの年収は、600万円~700万円が提示されていることが多いです。そして、学歴が高いほど高年収を実現できる可能性が高いです。

これらの内容を把握して転職活動をすることで、納得できる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

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