インフラエンジニアとしての勤務経験があれば、社内SEには比較的転職しやすいです。社内インフラはあらゆる企業で構築・運用されており、あなたのスキルや経験を活かすことができます。

実は、社内SEの求人は仕事内容や業種が多種多様です。会社によってはあなたが期待した仕事がなく、不満を感じてしまうかもしれません。そのため、戦略的に求人を探さなければ、納得できる転職を実現することはできません。

ここではまず、インフラエンジニア経験を活かして転職できる社内SEの求人・仕事内容を紹介します。そのあと、「社内SEを募集している業界」「業界ごとの年収の違い」「社内SEに転職するときの志望動機の考え方」について順に解説します。

インフラエンジニアから社内SEには転職しやすい

社内SEは、所属している会社の社内インフラを企画・設計・運用することが主な業務です。社内インフラとは、自社の事業に必要なインフラ設備を指します。

そのため社内SEは、インフラエンジニアの経験を活かして、即戦力として働きやすい職種です。社内SEは、社内インフラエンジニアと呼ばれることもあります。

実際に求人票に挙げられている仕事内容を確認してみましょう。転職サイトで検索すると、比較的容易に社内SEの求人を見つけることができます。下に紹介するのは、神奈川県横浜市に拠点があるマンパワーグループ株式会社の求人です。

マンパワーグループ社は、人材派遣、採用代行などを中心に事業展開している企業です。この求人で採用されると、自社のネットワーク、サーバーなどの構築、運用保守を担当することになります。

これらの業務は、インフラエンジニアとして働いていれば、経験したことがある業務ではないでしょうか。

例えば、ほとんどの企業で運用されているシステムの1つに、勤怠の管理システムがあります。

最近ではほとんど見かけませんが、昔はタイムカードを利用して出勤時間、退勤時間の管理をしていました。

勤怠の管理システムは様々です。社員証を以下のような機器にかざして、出勤・退勤を認証するものもあります。

また、私がかつてアルバイトをしていた会社では、ウェブブラウザでアプリケーションを開いて出勤時間と退勤時間を入力していました。

このような勤怠システムの導入・運用管理は、社内SEが担当します。

また、ネットワークシステムで言えば、社内のネットワークを有線LANから無線LANに構成を変えることも社内SEが担当します。

実際の機器の設置作業はベンダー企業が行うことが多いですが、ベンダー企業の選定、見積もりの手配、運用開始後の簡単なトラブル対応は社内SEが担当します。

そして、社内のインフラ設備にトラブルが生じると、社内SEが対応します。私の会社でも、通信障害が生じたり、業務システムにエラーが表示されたりすると、社内SEに連絡をして応急対応をしてもらっています。

このように、自社が事業展開をするにあたり必要なインフラ設備の企画・構築・運用を行うのが社内SEです。

そして、マンパワーグループ社の求人では、以下のようにインフラエンジニアの実務経験があれば応募できます。社内SEの業務経験は求められないので、社内SEの未経験者でも応募できます。

例えば、顧客のネットワークが通信障害を起こしたときに、顧客を訪問してメンテナンスをした経験があるかもしれません。

ほかにも、インフラエンジニアの業務経験があれば、サーバーの構築や設定変更を任せられたことがあると思います。このような経験は、社内SEとして顧客情報を管理するサーバーの構築やメンテナンスにも活かすことができます。

このように、インフラエンジニアとして勤務経験があれば、社内SE求人に応募する条件を満たすことが多いです。

仕事の開発要素は求人によって異なる

社内SEは自社のシステムの企画・開発・運用を担当しますが、仕事の開発要素は求人によってまちまちです。

例えば、下に紹介する株式会社エレクトロニック・ライブラリーでは、社内SEが自社プロダクトの開発と社内システムの管理の両方を担当します。

エレクトロニック・ライブラリー社は、全社内で共有すべき新聞・WEBニュースの記事情報を配信するサービス「モーニングクリッピング」を提供しています。

システム開発の下流工程は外注していますが、開発会社を交えて要件定義に携わったり、開発スケジュールの管理業務を担当したりします。

そして、エレクトロニック・ライブラリー社の求人で採用されると、自社内で使用する業務システムの開発・運用保守も担当します。

このような求人であれば、自社だけでなく顧客が利用するインフラの企画・開発にも携わることができます。

続いて紹介する求人は、化学メーカーの稲畑産業株式会社のものです。稲畑産業社の社内SE求人では、自社内の基幹および周辺システムの企画・開発・運用を担当する人材を募集しています。

稲畑産業社は化学メーカーであり、パネルディスプレイ、合成樹脂、化成品などを開発・製造している企業です。そのため、社内SEが自社製品の開発に直接関わることはありません。

製造業の企業にも、さまざまな基幹システム・業務システムがあります。

私が化学メーカーで働いていたときは、原料の発注はwebアプリケーションを利用していました。メールや掲示板のシステムも、外部の制作会社から導入したものを使用していました。

稲畑産業社では、これらの事業展開するために必要なシステムは、ほとんどをベンダー企業に開発依頼しています。仕事に占める自社開発の割合はわずかで、主な仕事はベンダー企業のマネージメントです。

ほかにも会社によっては、インフラ設備以外の機器の運用にも関わることもあります。

私の知人が働いている会社の社内SEは、プリンタやコピー機の動きがおかしくても社内SEが呼ばれると教えてくれました。

プリンタのメンテナンスは、エンジニアでなくてもできる仕事です。しかし、会社によっては家電に疎い人が多いこともあります。そのような場合は、インフラ設備に限らず、電化製品全般の管理を依頼される可能性もあります。

このように、企業によって担当する仕事の開発要素はまちまちです。しかし、多くの企業で基幹システムの開発はベンダー企業に外注しています。そのため、社内SEに転職すると、開発に関わる機会は少ないことを認識しておきましょう。

自社勤務が多く、転勤・出張はほとんどない

インフラエンジニアは、自社だけでなく客先のインフラ設備の企画・開発・運用も担当します。そのため、職場は自社内に限りません。

客先のインフラ設備にトラブルが生じると、緊急訪問して対応することもあります。また客先に常駐して、インフラ設備の監視を担当することもあります。

その一方で、社内SEが担当するのは、自社内のインフラ設備の企画・開発・運用です。開発工程もベンダー企業に大部分を委託することが多いので、仕事内容は企画・運用工程の占める割合が多いのが特徴です。

つまり、社内SEの仕事場は自社内であることが多いです。

冒頭で紹介したマンパワーグループ社の求人では、勤務地は横浜市の本社です。

仕事内容もシステム企画やプロジェクトの管理が主なので、本社のオフィス内での仕事が中心です。

また、転勤についても「当面なし」と記載されています。これは、担当する機器が自社内に設置されているからです。

ただし、会社の規模が大きくなってくると、オフィスごとに社内SEが配置されることがあります。

前の項で紹介した稲畑産業社の求人は、東京本社で働く社内SEを募集していました。

そして、稲畑産業社は東京だけでなく大阪にも本社があります。また、名古屋支店、浜松営業所、九州営業所など、全国に拠点があります。

そのため、稲畑産業社は東京だけでなく、大阪本社への転勤の可能性が求人票に挙げられています。

なお、事業所が複数あっても、すべてのオフィスに社内SEが配置されるわけではありません。

私がかつて働いていた化学メーカーは東京に本社があり、福島県、神奈川県と福岡県内に2カ所の活動拠点がありました。全部で5カ所拠点がありましたが、社内SEは東京本社にしかいませんでした。

会社によって社内SEの配置は異なるので、特に会社の規模が大きい場合は、転勤の有無を確認するとよいでしょう。

社内SEは幅広い業界で募集している

インフラエンジニアは、情報通信業に分類される企業で働くことが多いです。その一方で、社内SEの求人は情報通信業以外の多くの業界で人材を募集しています。

例えば、前の章で紹介した稲畑産業社は製造業の企業です。会社のホームページを見ても、以下のようにシステムの開発・運用は事業内容に含まれていません。なお、ここで挙げられている「情報電子」は、液晶用のディスプレイや半導体・電子部品などの開発・販売事業を指します。

ほかにも、社内SEの求人は幅広い業界で出されています。

次に紹介する株式会社一蔵は、埼玉県と東京都に本社がある和装事業とウエディング事業を展開している企業です。一蔵社の社内SEは、以下のように自社内のIT機器の運用管理や、各種トラブル対応を担当します。

社員の業務管理システムや顧客の予約状況を管理するシステムなど、事業展開に必要なさまざまなシステムが安定稼働するために管理をします。

そして、一蔵社の求人で示されている応募条件は以下の通りです。インフラエンジニアとしての業務経験があれば、経験したことがある業務が多いのではないでしょうか。

ほかにも、医療機関でも社内SEは募集しています。次に紹介する医療法人偕行会は、愛知県名古屋市で病院、介護福祉施設、透析専門施設を複数展開している医療法人です。

偕行会の求人では、グループ内のインフラ系業務全般を担当する人材を募集しています。

病院のなかにも多くのシステムが稼働しています。病院を受診したときに、下の写真のような電子カルテに医師が診察内容を入力しているのを見たことがある人もいると思います。

病院で働くSEは、診察・治療で利用するシステムが安定稼働するための管理・メンテナンスを担当します。

ほかにも、病院に行ったときに、以下の写真のような診察案内やお知らせを紹介する情報表示ディスプレイを見たことがあると思います。ディスプレイに表示する内容を作成・設定するのも社内SEが担当します。

そして、この求人で挙げられている応募条件は、以下の内容です。インフラエンジニアの業務経験があれば、応募条件を十分満たしています。

このように、社内SEの求人はあらゆる業界から出されています。そして、どの業界に転職しても、インフラエンジニアの経験を業務に活かすことができます。

業界によって年収は大きく異なる

社内SEの求人はさまざまな業界で出ています。そのため、多くの選択肢の中から求人を選ばなければなりません。

では、社内SEの求人ではどのくらいの年収が提示されているのでしょうか。

冒頭で紹介したマンパワーグループ社の求人では、以下のように450万円~750万円が提示されています。

ここまで、5件の求人を紹介しましたが、すべての求人の提示年収を下の表にまとめています。400万円から500万円の年収を提示している企業が多いですが、年収の幅がかなりあることがわかります。

企業名 提示年収

(万円)

マンパワーグループ(株) 450~750
(株)エレクトロニック・ライブラリー 370~500
稲畑産業(株) 500~650
(株)一蔵 400~500
(医)偕行会 360~400

実は、業界が異なれば年収も大きく変わることが知られています。

業界ごとの平均年収は、厚生労働省が賃金構造基本統計調査として毎年調査・報告しています。この調査内容をグラフ化したものが下の図です。

引用:賃金構造基本統計調査より

最も年収が高い業界と最も低い業界では、2倍ほどの差があることがわかります。つまり、業界によっては、長く働いても年収アップが期待できないこともあります。

このような国の統計も活用し、年収面での転職失敗を防ぐようにしましょう。

業界ごとに学ぶべき知識は変わる

社内SEとして働き始めると、多くの時間を自社内で過ごすことになります。つまり、一緒に仕事をするのは自社の社員です。

私は転職で働く業界が変わりました。その経験からすると、仕事で使用する言葉は、業界が変わると全く違います。どの業界でも業界特有の言葉があります。

そのため、業界ごとに仕事をする上で求められる知識は変わります。

私の知り合いで、人材派遣の会社でwebアプリケーションの運用・インフラ設備の管理を担当している人がいます。

彼はエンジニアに必要な知識だけでなく、転職市場に関する情報も収集する必要があると教えてくれました。

また、病院で社内SEとして働く場合は、医療従事者とシステムの話をすることになります。このとき会話のなかに医療用語が含まれることは多々あります。

仕事を円滑に進めるためには、業界特有の専門用語や業界ごとの最新情報を知る姿勢が求められます。

インフラエンジニアから社内SEに転職するときの志望動機

最後に、インフラエンジニアから社内SEに転職するときの志望動機について解説します。

履歴書を作成するときや、面接のときに志望動機は必ず問われます。書き方次第で、あなたの印象を良くも悪くもできます。

せっかくインフラエンジニアとして高いスキルがあっても、適切にアピールしなければ採用する側に好印象を与えることはできません。また、なぜその企業に転職したいのかを強調しなければ、採用者は「本当にうちに入社したいの?」と感じてしまいます。

まずは、あなたのスキル、企業が求めているスキル、転職後にやりたいことを明確にしなければなりません。

そして、履歴書のスペースには限りがあります。だいたい200文字弱にまとめると読みやすい字の大きさになり、見栄えもよいです。

続いて、いくつかのパターンを想定して、インフラエンジニアから社内SEに転職するときの志望動機例を示します。

・あなたのスキルと転職後に担当する仕事を関連付ける

1例目は、インフラエンジニアの技術力をアピールして社内SEへの転職を目指す場合です。

私はクラウドサービスの導入支援をする企業で、顧客サーバーのオンプレミス型からクラウド型への移行を担当してきました。

担当した企業はクラウドの拡張性に拘りがある企業が多かったので、特に将来の事業計画、アクセス数の予測をヒアリングしながら仕事を進めることを意識してきました。

御社が今後の事業拡大を見越したインフラ設備の刷新を計画していることを求人票で知り、私の経験・技術力を活かせると感じ応募させていただきました。(204文字)

あなたが身につけた強みと、企業が求めている技術がマッチしていれば、採用担当者に好印象を与えやすくなります。

・実家に近い企業への転職を目指す場合

2例目は、実家近くの企業に転職を目指す場合です。この場合は、「家から近いから志望しました」と採用担当者にアピールしても、いい印象は与えられません。

そこで、企業が「採用したい」と思うようなあなたの技術も伝える必要があります。

私はグループ会社のITインフラ設備の企画・構築・運用を5年間担当し、すべての工程を経験しています。

家庭の事情で東京から実家に戻ることになり、私の経験を活かせる企業を探していたところ、御社の求人を見つけました。御社はITインフラの多くを自社で構築・運用していることに魅力を感じています。

御社の業務システムの運用や今後のITインフラの導入・拡張に貢献できると感じ、志望いたしました。(186文字)

立地だけでなく、仕事内容に魅力を感じていることもアピールしなければなりません。

これらの例文を参考にしながら、あなたの言葉で志望動機を構築するようにしましょう。

まとめ

ここでは、インフラエンジニアから社内SEに転職するときのポイントについて解説しました。

インフラエンジニアの経験・スキルがあれば、社内SEへの転職は比較的容易です。仕事内容の開発要素はさまざまです。開発に直接関わることは少なく、ほとんどの仕事が社内の機器の運用・保守です。

社内SEは自社内の機器を管理することから、転勤や出張はほとんどありません。ただし、規模が大きい会社の場合は、複数の拠点に社内SEが配置されることもあります。

社内SEの求人は、あらゆる業界から出されています。業界ごとに年収が異なるので、事前の情報収集が転職失敗を防ぐポイントです。

また、業界ごとに仕事中の会話で用いられる用語も変わります。業界特有の専門用語もあるので、それらを学ぶ姿勢も社内SEには求められます。

志望動機を書くときには、あなたのスキルと企業が求めるスキルが合致しなければなりません。転職後にやりたい仕事を明確にし、志望動機に組み込むとよいです。

以上のことを意識しながら転職活動をすると、納得のできる転職を実現しやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。