あなたは、就職して1~2年が経ち、「このまま今の会社で働き続けて大丈夫だろうか」「この会社で働き続けるのは、体力的にしんどいから無理」という想いを抱いていないでしょうか。

そして、転職をするなら早い方が有利になると考えているのではないでしょうか。

遅かれ早かれ転職するのであれば、少しでも早く転職した方が、転職先で長いキャリアを積むことができます。

実は、新卒で就職してあまり期間が経っていない「第二新卒」での転職は、多くの人が経験しています。そして、第二新卒で転職活動をするときには、大切なポイントがいくつかあります。

ここでは、第二新卒で研究職に転職するときの、求人の探し方や、エントリーするときの注意点について解説します。

第二新卒は転職しやすいのか

一般的には、「新卒で就職して3年未満の人」のことを第二新卒と呼びます。これは理系院卒で企業に就職した人だけでなく、ポスドクも同じように3年未満であれば、基本的には第二新卒の扱いになります。

そのため第二新卒の年齢は、比較的若いことが多いです。大学卒業後に就職した人であれば22歳~25歳、大学院卒であっても30歳未満であることがほとんどです。

第二新卒は転職市場に多い

厚生労働省の調査では、新卒の就職後3年未満の離職率は、約30%と報告されています。この数値は、何年間もほぼ横ばいで推移しています。

引用:厚生労働省 新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況をグラフ化

そして退職の理由は、人それぞれ違います。

下の図は、2017年に株式会社マイナビが、第二新卒に対して「転職理由」を質問した結果をランキング形式で表しています。

引用:マイナビニュース 第二新卒の転職理由、1位は?を一部改変

あなたも、同じような理由で転職を考えているのではないでしょうか。第二新卒の人は、このような理由で転職活動を始めることが多いです。

20代は最も転職しやすい

続いて、転職成功者の年齢割合を調査した結果があるので紹介します。この統計は、転職サイトdodaを運営しているパーソルキャリア株式会社が調査したものです。

2018年上半期の結果は、以下の円グラフのようになっており、20代が約50%を占めています。

引用:転職成功者の年齢調査(2018年上半期)を円グラフ化

この結果は、ある程度予想しやすい結果だと思います。

採用する側も、入社後はできるだけ長く会社で活躍してほしいと考えます。例えば、20代と50代であれば、20代の人に入社してもらい、定年までしっかり働いてもらいたいと考えるのが普通です。

第二新卒のほとんどは20代です。つまり、第二新卒は、転職を成功させやすい年齢と言えるでしょう。

新卒と比べた第二新卒の強み

転職を成功させている人の多くが、20代であることを説明しました。

では、すでに1~2年の社会人経験があるあなたは、新卒と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

社会人経験がある

新卒で企業に入社すると、多くの場合最初の1~2週間は社会人としての研修を受けます。この研修を受けているか否かは、新卒と第二新卒の大きな違いです。

学生時代にアルバイトの経験があって、多少の社会経験がある人はいます。それでもほとんどの場合は、ビジネスマナーを一から丁寧に習うことはありません。

そして研修では、ビジネスマナーだけでなく、実務に関わる基礎知識も教わります。

私が新卒で入社した会社は、医薬原薬や化成品を製造する化学メーカーでした。そのため研修は、ビジネスマナーだけでなく、工場で製造業に携わるために必要な安全に関する内容も多かったです。

私の場合は、最初の10日くらいはホテルの会議室にこもって、プレゼンテーションの仕方、名刺の渡し方、電話の取り方、仕事の基本的な進め方などの研修を受けました。

その後は工場内で3週間ほど、製造に必要な化学工学の基礎知識、安全に仕事を進めるために注意すべきこと、火災を防ぐ方法などを学びました。

研究職で就職した人は、私が受けたものと同じような研修を受けた経験があると思います。

そしてその後は、研修で学んだことを活かしながら仕事をします。第二新卒のあなたは、このような経験をしているので、社会人として立派に成長しているでしょう。

私は新卒で入社した化学メーカーを2年4カ月で退職し、研究職から全く異なる医療系の職種に転職しました。そして、転職先の職場で新人研修はありませんでした。

それでも、前職の研修で学んだことや、身に付けた仕事を推し進める力などは、異なる職種でも活かすことができています。

このように、第二新卒で転職すると、最低限の社会人としてのマナーや実力は身に付いています。そのため、新しい職場でも仕事をできるようになるのが早く、戦力になるのも新卒よりは早いです。

実験スキルや他部署との折衝の経験がある

新卒で入社した直後は、初めて経験する実務が多く、すぐに活躍するのは難しいです。それでも1年、2年と経験を積むにつれて、少しずつできることが増えてきます。

そして徐々に、難易度が低い仕事だけでなく、難易度の高い責任ある仕事も任されるようになります。

また、多くの仕事は自分の部署だけで完結することはありません。特に研究職であれば、製造部門、分析部門、開発部門、営業部門などとやりとりをすることになるでしょう。

このような仕事は、新人がいきなり任されることはありません。ある程度の実力がついてきたときに、先輩社員から促されて、他部署との折衝を経験するようになります。

私も入社して2年くらいたった頃には、共同で実験をしていた生産技術部門や、プラントでの製造でお世話になる製造部の方と頻繁に連絡を取り合いながら仕事をしていました。

第二新卒であれば、このような経験もしている人も増えてきます。

第二新卒を対象とした求人の特徴

では、第二新卒を対象とした求人はどのようなものがあるのでしょうか。実際の求人例を基に、その特徴を説明していきます。

必須条件のハードルは低い

あなたが第二新卒で求人を探すとき、まずは求人情報に「第二新卒歓迎」と記載されている求人を探すのではないでしょうか。

確かに、このように書かれていれば、第二新卒で採用されやすいと考えられます。

実際の求人例を2つ紹介します。

まず1例目は、東京都港区と山口県宇部市に本社がある、大手化学メーカーの宇部興産株式会社の求人です。

この求人で採用されると、製薬会社から製造依頼を受けた低分子医薬品原薬や中間体の製造プロセス開発・研究に携わることになります。

この求人情報の「対象となる方」の欄には、以下のように記載されています。

求められるのは、大学院(修士)卒以上と、有機合成か核酸合成に関する研究に従事していたことがあるかです。

研究職を志す人の多くは、大学院を修了していると思います。私が新卒で入社した化学メーカーでも、研究職の人は全員大学院卒でした。

もう一点の必須条件の研究内容についても、大学および大学院の研究で有機合成か核酸合成に関する研究をしていれば問題ありません。

合成と一言で言っても、ジャンルは広いです。全合成、触媒開発、高分子合成、生理活性物質の創出など、多くの分野に分けることができます。これらのなかのどれかの経験があれば、必須条件を満たすことになります。

2例目の求人は、静岡県に本社があり、金属・鉄鋼製品の研究開発を行っているアドバンスコンポジット株式会社のものです。

この求人の「対象となる方」の欄には、以下のように記載されています。

この求人で求められるのは、理工系の大学を卒業していることだけです。研究職への転職を考えている人の多くは、この条件を満たしているでしょう。

なお、いずれの求人にも「第二新卒歓迎」と記載されています。

このように、「第二新卒歓迎」の求人は、応募するためのハードルは比較的低いです。

「第二新卒歓迎」と謳われている求人は少ない

求人情報に「第二新卒歓迎」と記載されていれば、第二新卒で採用されやすいと考えられます。

しかし、求人情報に「第二新卒歓迎」と記載されている研究職の求人は、非常に少ないです。

多くの職業の求人を取り扱っている、大手転職サイトのdodaで「研究職」で検索すると、97件の求人がヒットします。

その一方で、同じ転職サイトで「研究職 第二新卒」で検索すると、14件のヒットでした。

なお、このうち1件は塾講師の求人で、12件は次の項で詳細を説明する派遣会社の求人でした。派遣会社を除くと、研究職の求人は1件しかヒットしませんでした。

この結果から、「第二新卒歓迎」と求人情報に明記されている求人は、研究職の求人のなかでも少ないことがわかります。

第二新卒だけを対象としている求人は、基本的にはありません。そして、ここまで説明したように、第二新卒歓迎の求人は多くありません。

そのため求人を探すときは、「第二新卒」のキーワードを使用しないで検索して、選択肢を広げた方がよいです。

例えば、次の株式会社新日本科学の求人も、研究職を募集しています。そして、求人情報には、「第二新卒」について何も記載されていません。

この求人で採用されるための必須条件は、高等専門学校卒業以上の学歴です。これを満たしている人は、誰でも採用される可能性があります。もちろん、第二新卒のあなたも採用対象です。

なお、この求人では細胞培養の実務経験があれば歓迎されるとも記載されています。現在の仕事で細胞を扱っていれば、アピールできるポイントになるでしょう。

このように、第二新卒に関する記載がない求人でも、条件を満たしていれば採用される可能性は十分あります。

派遣会社に就職する

前項では、「第二新卒」をキーワードに含めて求人を検索すると、その多くが派遣会社だったことを紹介しました。

派遣会社は、さまざまな経験をしている研究者を募集しています。求人によっては、未経験者でも歓迎されるようなものもあります。

次に紹介する求人は、化学やバイオ系の研究職の人材派遣サービスを行っているWDB株式会社のものです。

WDB株式会社は、関東や関西だけでなく、北海道から九州まで、全国各地に研究職として社員を派遣しています。

そして、この求人の「対象となる方」の欄を下に示します。

第二新卒も歓迎されますが、研究開発が全くの未経験でも問題ないと謳われています。もしあなたが、すでに研究職として1~2年の実務経験があれば、歓迎条件を満たしています。

派遣会社で働いたことがない人は、どのような雇用形態なのか、給与はどこから支払われるかなど、わからないことが多いと思います。

そこで、派遣会社に就職したときの働き方について解説します。

派遣会社に入社すると、派遣会社の従業員として働くことになります。そして、提携先の企業や、研究機関に派遣され、派遣先の職員と一緒に研究活動をします。

提携先の企業には、研究機関、製薬会社、化粧品メーカー、食品メーカー、バイオベンチャーなど多くの業界があります。

そして扱っている研究分野も、有機化学系、化学分析、細胞培養、バイオインフォマティクスなど多岐に渡ります。

また、派遣会社によっては、派遣会社が受託した研究に携わることもあります。その場合は、派遣会社の研究設備を用いて研究を行うことになります。

そして、派遣会社から派遣先のメーカーや研究機関に転籍できることもあります。

さきほど紹介した求人の「仕事内容」の欄には、以下のように記されています。

転籍とは、一度会社を退職して、新しい会社に籍を移すことです。つまり、派遣会社の従業員から、化学メーカーや研究機関の従業員になるということです。

なお、転籍はWDB株式会社だけでなく、ほかの人材派遣サービスを行っている会社でも可能です。

このように、派遣会社も就職先の選択肢に入れることで、転職の幅が広がります。

エントリーするときに意識すべきこと

第二新卒は年齢も比較的若いので、30代や40代と比べると、転職しやすいです。しかし、エントリーするときにやり方を誤ると、せっかく気に入った求人案件が見つかっても、内定を勝ち取ることができません。

続いて、第二新卒で転職活動するときに、意識すべきことについて解説します。

志望動機で「入社後にどのような仕事をしたいか」を伝える

このタイトルをみて、「それは当たり前だろう」と思う人は多いでしょう。しかし、これがきちんとできる人は少ないです。

例えば志望動機が、「今の会社よりも想定年収がいいから」では、「この人はお金のことはしか考えていない。仕事はきちんとやってくれるのだろうか」と思われる可能性が高いです。

採用する側も、一緒に仕事をしたいと思う人を採用します。これは、逆の立場になって考えると理解できるでしょう。

また、次の求人のように、具体的な選考ポイントを求人情報に記載している求人もあります。

この求人は、エレクトロニクス事業や音楽事業などでよく知られているソニー株式会社のものです。あなたの身の回りにも、「SONY」のロゴが入っている電気機器があるのではないでしょうか。

この求人の「対象となる方」と「選考のポイント」の欄には、以下のように記載されています。

これまでの経験を活かして、入社後にどのような仕事をしたいかをアピールする必要があります。

この求人では、上記のようにはっきりと明記されていますが、ほとんどの求人では「入社後に何をしたいかを問う」とは書かれていません。

しかし、面接では当然この質問はされます。新卒のときの就職活動でも、同じ質問をされたと思います。

第二新卒として転職活動をするときも、学生時代や前職での経験を活かして、どのような仕事に携わって活躍をしたいかを整理しておかなければなりません。

第二新卒であれば、現在の職場での経験は1~2年程度です。しかし、その短い期間でも、多くの経験をしているはずです。それらを活かしてどのような仕事をしたいのかを考える必要があります。

そして、「私には〇〇〇の経験があります。御社ではその経験を活かして、△△△の仕事に携わり、×××のような成果を出したい」とアピールしましょう。

複数の転職サイトや転職エージェントを活用する

前章で説明したように、「第二新卒歓迎」と明記されている求人は少ないです。そのため、少しでも多くの求人に触れるためには、1つの転職サイトだけで求人を探すのはオススメできません。

そこで、求人を探すときは、複数の転職サイトで求人を探すのがよいです。なぜなら、転職サイトによって扱っている求人が異なるからです。

大手転職サイト3社(doda、マイナビ転職、リクナビNEXT)で、「研究職」で求人を検索したときの結果を下に示します。

上から順に「doda」「マイナビ転職」「リクナビNEXT」の結果です。

このように、同じキーワードで求人を検索しても、ヒットする求人数に差があります。

そして、転職エージェントも活用するようにしましょう。その理由は、以下の通りです。

まず、転職エージェントを活用することで、必須条件に挙げられている項目を満たしていなくても、内定を勝ち取ることが可能です。もちろんこれは、絶対ではありません。

私の知り合いにも、これまでの経験と、入社後に関する意気込みなどを転職エージェントから会社に伝えてもらい、必須条件を満たしていなくても内定をもらえた人はいます。

また、前項で志望動機が重要であることを説明しました。そして、転職エージェントは、志望動機の添削もしてくれます。

あなたの学生時代の経験や、現在の職場での経験を転職エージェントに伝えると、どのように転職希望先にアピールすればよいかを提案してくれます。

転職エージェントは、転職希望先の事業内容、業務内容などを把握しているので、適切なアドバイスをもらえます。その結果、必須条件を満たしていなくても、内定を勝ち取れることがあるのです。

以上のように、第二新卒で転職活動をするときには、複数の転職サイトを活用したり、転職エージェントを活用したりすることで、希望に沿った転職ができる可能性が高まります。

まとめ

ここでは、第二新卒で研究職に転職するときの、求人の探し方について解説しました。

第二新卒で転職する人は、新卒で就職した人の約30%であり、比較的多いです。

そして、第二新卒は、年齢が若いだけでなく、社会人経験や実際の実務経験があります。そのため、新卒で入社した人よりも会社の戦力になれるのは早いです。

第二新卒で応募できる求人は多いです。しかし、「第二新卒」を検索キーワードに含めると、ヒットする求人数が減るので注意しましょう。

気になった求人が見つかれば、志望動機をしっかりと固める必要があります。これまでの経験を活かして、入社後どのように活躍するかを会社に伝える必要があります。

そして、求人を探すときは複数の転職サイトを利用するようにするとよいです。また、転職エージェントを活用することで、あなたの希望に合った求人を紹介してもらえたり、志望動機の添削を受けたりすることもできます。

これらを積極的に活用することで、後悔しないような転職活動をするようにしましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。