ものづくりを事業としている「メーカー」には、多くのシステムエンジニアが在籍し活躍しています。私の友人にも「ものづくりをしたい」という想いが、システムエンジニアになるきっかけになった人が多いです。

しかし、メーカーで働くシステムエンジニアが担当するのは、自社製品のシステム開発だけではありません。同じメーカーで働くシステムエンジニアでも、扱う製品や対象物が異なると、仕事内容が大きく変わります。

ここでは、メーカーのシステムエンジニアに転職するときの考え方について解説します。

メーカーで働くシステムエンジニアの仕事内容

まずは、メーカーで働くシステムエンジニアが担当する仕事内容を確認しましょう。

販売する製品の開発

メーカーは、何かしらの製品を研究開発、製造販売している会社です。製品に搭載されているシステムを開発するのが、メーカーで働くシステムエンジニアの仕事内容の1つです。「メーカーで働くシステムエンジニア」と聞いて、最初にイメージする仕事ではないでしょうか。

例えば、下に紹介する日本電気株式会社(NEC)は、大手電機メーカーです。ここに示す求人では、ヘルスケア・医療機器の製品開発を担当するシステムエンジニアを募集しています。NECでは、ICTを活用して社会インフラを高度化する「社会ソリューション事業」に注力しています。

NECのヘルスケア領域の製品で代表的なものは、電子カルテです。あなたは病院に行ったときに、下の写真のように医師がパソコンの画面に向かって診断内容や患者の情報を入力しているのを見たことがあると思います。このときに利用しているのが電子カルテです。

私たちの身の回りには、メーカーが開発・販売している製品で溢れています。

私の友人で、メーカーのシステムエンジニアとして働いている人はたくさんいます。彼らの仕事内容の一部は、以下の通りです。

  • カメラのシステム開発(電子機器メーカー勤務)
  • スマートフォンのシステム開発(電機メーカー勤務)
  • 自動車のシステム開発(自動車メーカー勤務)
  • プリンタのシステム開発(電機メーカー勤務)

このようなメーカーが開発する製品に搭載されているシステムを開発するのが、メーカーで働くシステムエンジニアの仕事内容です。

社内のシステムを開発・管理するシステムエンジニア

メーカーのシステムエンジニアが開発を担当するのは、製造販売する製品だけではありません。続いて紹介するのは、事業のために必要なシステムを企画・開発するシステムエンジニアです。このような仕事を担当するシステムエンジニアは、「社内システムエンジニア」「社内SE」とも呼ばれます。

次に紹介する求人は、京都府に本社を置く大手電子部品・電気機器メーカーの京セラ株式会社から出されているものです。この求人では、各本部の生産管理システムの共通化、統一プラットフォーム化を担当する社内システムエンジニアを募集しています。

生産管理システムは、生産日程、作業計画、実績管理、ロット管理などを一括管理できるシステムです。

そして京セラ社は、自社開発した生産管理システムを他社に導入・販売しているわけではありません。開発したシステムは、自社の生産性向上のために自社内で活用します。

また、メーカーで働く社内システムエンジニアが担当するのは、生産に関するシステム開発だけではありません。

次に紹介するプレス工業株式会社の求人では、生産だけでなく、人事給与、勤怠などに関わる社内システムの開発を担当する人材を募集しています。

例えば、出勤時間や退勤時間は、昔は紙のタイムカードで管理していました。最近ではデジタル化されて、下の写真のような勤怠管理システムを導入している企業が多いです。

ほかにも、出張をするときの出張申請や、出張後の経費の報告も社内のイントラネットで行う企業が増えています。かつて紙の申請書を提出していて、今はシステム上から申請している人もいると思います。

勤怠管理や出張申請のシステムは、製品の製造に直接関係ありません。メーカーが事業を展開するために必要なシステムです。

このように、販売する製品ではなく、自社内のみで使用するシステムの開発もメーカーで働くシステムエンジニアの仕事です。

工場の産業機器・計装機器のシステム開発は外部企業に委託している

メーカーの製品は、ほとんどの場合工場で製造されます。職人が手作りで一つ一つ作っていることはほとんどありません。

例えば、下の写真は自動車メーカーの工場の外観です。工場内では、生産用の機械を利用して、自動車が生産されています。

このような製品を作るための機械を制御するシステムの開発は、自社で行うことはほとんどありません。企業によっては自社内にエンジニアリング部門があることもありますが、ほとんどの場合は開発・導入業務を外部企業に委託します。

私はかつて化学メーカーに勤務しており、下の写真のような化学工場内の研究所で仕事をしていました。

工場内に新たな製造ラインを導入するときには、自社内のシステムエンジニアではなく、産業用機器を専門に扱う外部企業に導入を委託していました。

メーカーの工場には、システム制御されている多くの機器があります。しかし、それらの機器の開発や導入を自社で行うことは稀で、ほとんどの場合外部企業に委託します。

メーカーで募集されるシステムエンジニア求人の特徴を理解する

では、メーカーのシステムエンジニアに転職するときには、どのような経験を活かすことができるのでしょうか。

扱う製品の種類が変わっても、身につけた技術を活かせる

転職前後で、開発対象の製品が変わることは珍しくありません。そのため、応募条件で転職後に扱う製品の開発経験が必須条件になることはほとんどありません。

実際に求人票の応募条件を確認してみましょう。冒頭で紹介してNEC社の求人の応募条件は、以下の通りです。

OSとプログラミング言語の種類が必須条件に挙げられていますが、この求人で担当するヘルスケア・医療機器の開発経験は歓迎条件です。つまり、ヘルスケア領域の医療機器の開発は未経験でも問題ありません。

私の友人に、電機メーカーで組み込み系エンジニアとして働いていた人がいます。彼が電機メーカーで担当していたのはスマートフォンのシステム開発で、主にJavaを扱っていました。

そして、彼は働き始めて5年で自動車メーカーに転職しました。転職先の自動車メーカーでも、組み込み系エンジニアとしてシステム開発を担当しています。

スマートフォン→自動車のように、扱う製品が変わっても身につけた技術や知識を活かして働くことができます。

製品開発を担当する求人は英語力が求められることが多い

製品の開発をすべて自社内だけで完結することは、ほとんどありません。グループ企業や外部企業と協同で研究開発を行ったり、業務の一部を外部の企業に委託したりすることは一般的です。

その共同開発先や業務委託先が日本国内だけでなく、海外の企業であることも珍しくありません。そのような場合は、英語を用いて海外の担当者とやり取りをする必要があります。

例えば、次に紹介する株式会社トプコンは、眼科領域の医療機器に特化したメーカーです。トプコン社の求人では、システム開発や画像処理の経験だけでなく、中級レベルの英語力も必須の条件として挙げられています。

トプコン社は、日本国内だけでなく欧米に開発拠点を構えています。これらの拠点と連携しながら開発を進めていくために、英語力が必須のスキルとして求められています。

また、システム開発の一部を、人件費の安い途上国のプログラマーに業務委託することもあります。スマートフォンのシステム開発を担当していた私の友人も、東南アジアの開発担当者と進捗確認や業務委託の連絡をするときに英語を使っていたと教えてくれました。

このように、製品開発を担当するときには、海外企業と連携をすることがあるので、求人で英語力が求められることが多いです。

企業規模による仕事の違い

メーカーの企業規模はさまざまです。誰もが知っているような巨大企業もあれば、少人数で事業を続けているメーカーもあります。

そして、企業の規模が違えば、システムエンジニアの働き方も変わることがあります。

規模が小さい企業は、人員が少ないので、1人のシステムエンジニアの業務範囲は広くなりやすいです。

例えば、要件定義から設計、プログラミング、導入までのすべての工程をプロジェクトチーム全員で協力してやります。

一方で、企業の規模が大きいと、要件定義や設計などの上流工程を担当することが多くなります。下流の工程は、外部企業に委託することもあります。

企業規模ごとの働き方の違いや傾向を理解しつつ、あなたが望む仕事内容と実際の仕事内容がマッチするかを個別に確認するようにしましょう。そうすることで、転職後の後悔を防ぐことができます。

まとめ

ここでは、メーカーで働くシステムエンジニアに転職するときのポイントについて解説しました。

メーカー勤務のシステムエンジニアの仕事は、自社製品と自社内のシステム開発です。メーカーの製造用機器のシステム開発は、専門の外部企業に委託することが多いです。

転職前後の仕事で、扱う製品が変わることは珍しくありません。あなたが習得している知識やスキルを活かせるシステム開発であれば、問題なく採用され、転職後も活躍できます。

メーカーのシステム開発は、自社内だけで完結することはほとんどありません。海外の会社と関わることもあるので、英語力があれば強いアピールポイントになります。

メーカーの規模によって、働き方の違いがあります。企業規模ごとの働き方の違いを踏まえて、あなたが望む働き方ができるかをしっかりと確認をしてから求人に応募するようにしましょう。


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