研究補助者は、研究職の仕事を補助・支援する仕事を担当します。ものづくりに参加することができ、プロジェクトが成功したときには、研究職の人と一緒に喜びを分かち合うことができます。
研究職に未経験で転職成功することは難しいですが、研究補助者は未経験者でも応募できる求人が多く、転職成功しやすいです。専門知識や研究経験が全くなくても、研究補助者に転職することができます。
また、研究補助者の求人は、研究職の求人とは出される企業や働き方の特徴が異なります。あなたの生活環境やライフスタイルに合った働き方ができる求人・会社が見つかる可能性もあります。
ここでは、研究職の補助を担当する求人に転職するときのポイントや求人の特徴を解説します。
もくじ
勤務地は大学や研究機関が多い
研究は、大学などの教育機関や、研究に特化した研究機関、民間企業で実施されています。
そのなかでも、研究補助者を募集しているのは、大学と研究機関が多いです。実際の求人例を2件紹介します。
1件目の求人は、福岡県にある国立大学の九州工業大学から出されているものです。この求人では、機器分析センターで分析装置の維持・管理・代理操作を担当する業務支援職員を募集しています。
九州工業大学の機器分析センターには、各種の高性能大型分析機器が設置されています。大学生や大学所属の教員・研究員が分析機器を利用して、研究活動を行っています。
例えば、下に示すような化合物の構造を解析するために用いるNMRも、機器分析センターに設置されている機器の1つです。
この求人で採用されると、このような分析機器の維持・管理・代理操作を担当します。
2件目の求人は、国立研究開発法人物質・材料研究機構から出されている求人です。物質・材料研究機構は、茨城県つくば市にある研究機関で、エネルギーや資源に関する物質や材料の研究を行っています。
この求人では、研究者から作成依頼された硝子機器や装置の設計・試作など幅広い作業の技術支援を担当する研究業務員を募集しています。
このように、研究補助者を募集している求人は大学や研究機関から出されることが多いです。
なお、研究を補助する人は、「研究補助者」「研究助手」「テクニシャン」「研究アシスタント」「研究技術員」など、職場によって呼ばれ方が変わります。いずれも研究職ではなく、研究職のサポート業務を担当します。
派遣会社から研究機関や企業に派遣されて働く
研究補助者が働くのは、大学や研究機関が多いです。そしてそれらの求人は、勤務先の会社・組織から出されているものばかりではありません。
派遣会社に雇用されて、派遣先の企業で働くこともあります。
次に示す求人は、埼玉県和光市にある学術研究機関で研究開発の補助業務を担当する人材を募集しています。
派遣会社に採用されると、派遣会社から研究補助者を募集している会社に派遣されて働きます。つまり、籍は派遣会社にあり、職場は派遣先の会社という働き方です。
あとでくわしく紹介しますが、私はかつて化学メーカーで研究職として働いていました。そのときに、女性の研究補助者の方2人と一緒に仕事をしたことがあります。この2人は両者とも派遣会社に所属していました。
派遣会社から出されている求人も含めて探すことで、あなたの希望に合った働き方ができる求人・会社に出会いやすくなります。
研究補助者の具体的な仕事内容と働き方
では、研究補助者は具体的にどのような仕事を任されるのでしょうか。働き方は研究職の人とはどのように違うのでしょうか。
あなたは今の仕事探しの時点で、「なんとなくこんな仕事・作業がしたいなあ」とイメージしているかもしれません。
実は、勤務先や職場の状況によって、実験補助者の仕事内容も働き方も大きく変わります。
私がかつて一緒に仕事をした研究補助者2人の仕事内容は、同じ部署でしたが内容が全然違っていました。その2人が担当していた実際の仕事内容も含めて、研究補助者の仕事を紹介します。
希望の仕事を担当できると「楽しい」と感じながら仕事をすることができます。
研究職の業務を支援する
研究補助者はその名の通り、研究の補助を担当します。あくまで補助なので、基本的には研究職の人が担当している業務の一部をサポートすることが仕事内容です。
私が一緒に仕事をしていた研究補助者のうち1人は、私の上司であるプロジェクトリーダーから実験の内容・条件を指示されて、指示された通りに作業を行い、実験結果を上司に報告していました。
私たちが行っていたのは、感熱紙の研究でした。感熱紙は、熱をかけることで色がつく紙で、下の写真のようなレシートやJRの切符など、私たちの身の回りで多く利用されています。
感熱紙のサンプルを作成して、その性能を評価することを日々繰り返していました。この業務の一部を研究補助者に担当してもらっていました。
実際の求人票に記載されている仕事内容も、同様の補助業務です。前の章で紹介した物質・材料研究機構から出されている求人の担当業務は、以下の通りです。
この図からわかるように、研究者から指示された業務をそのまま行うことが、主な仕事です。
実は、研究補助者の仕事は実験や技術検討の補助だけではありません。私が一緒に仕事をした研究補助者のもう1人は、このような仕事はほとんどしていませんでした。
実際に担当していた業務は、研究所内の伝票や書類の整理や、会議のセッティングなどです。実験の実務は担当していませんでした。
ここで紹介した2人は、同じ職場で、同じ研究補助者の立場ですが、任せられる仕事内容は全く違うことがわかります。
後悔しない転職を実現するためには、求人票の仕事内容の欄を十分に読み込んで、あなたがやりたい仕事とマッチしているかを確認するようにしましょう。
・サポート業務だけを担当するので、重い責任は伴わない
研究補助者は、研究職で働く正社員から指示された仕事を行います。自ら考えて研究を展開する必要はありません。
さきほど紹介した、かつて一緒に働いていた研究補助者は、私の上司が指示した通りの条件で実験を行い、得られた結果をそのまま報告していました。そして、その結果を受けた上司は、次に検討する条件の指示を出していました。
このように、表現は悪いですが、研究補助者は「言われたことをそのままやればよい」です。それ以上の業務を求められることはありません。
例えば、研究職で働く場合は、研究成果を社内や社外でプレゼンテーションしたり、技術会議に参加したりすることがあります。
私が働いていた化学メーカーでは、毎週報告会がありました。また、3カ月に1回は、研究所と事業部で合同の報告会がありました。このような場面で、研究補助者が発表をすることはありませんでした。
あくまで、研究のサポートをすることが研究補助者の仕事です。
出勤日が週5日より少ない求人もある
企業に雇用されて働く場合、ほとんどの人が週5日出勤して働いています。実は、研究補助者の求人のなかには、出勤日が週5日よりも少ない求人もあります。
最初の章で紹介した、学術研究機関に派遣されて働く求人では、勤務日が週に3日であることが記載されています。
このように研究補助者は、フルタイムではなく、パートで働くこともできます。
研究補助者を目指す人のなかには、家庭の都合や個人的な都合で、毎日働くことができない人もいます。そのような人は、連日出勤するのではなく、出勤日を調節できる求人を探すことで、希望に沿った働き方ができます。
雇用期間が定められている求人が多い
研究補助の求人に転職するときには、注意しなければならないことがあります。それは、雇用期間が定められている求人が多いことです。
つまり、せっかく働き始めても、何年かすると契約を打ち切られてしまう可能性があります。
冒頭で紹介した九州工業大学の求人では、雇用期間について以下のように記載されています。基本は1年間の雇用で、予算の都合や業務の必要性で、3年までは契約が延長される可能性があります。
研究補助者の仕事は、あくまで研究職の補助です。研究職だけで研究を推し進めることができるのであれば、会社に必須のポジションではありません。
私が一緒に働いていた研究補助者のうち、事務作業をメインで担当していた方は主婦の方でした。私が入社した時点で何年も働いていました。
契約更新は3月でした。私は年明けに上司と話しているときに、人件費の都合で来年度はその方との契約を延長しない方針であることを知らされました。
その方は家庭があり3人のお子さんがいたので、ずっとその会社で働き続けたいと思っていました。その方は会社にも働き続けたいことを伝えましたが、結局その年の3月で契約が終了することになりました。
このように、ほとんどの研究補助者は、採用されても同じ会社・組織で定年まで働き続けることができるわけではありません。契約期間が定められており、会社都合で働き続けられなくなる可能性があることを知っておく必要があります。
正社員募集の求人は少ない
研究補助者は、会社の予算に余裕がなければ募集されることはありません。
会社は正社員を雇用すると、特別な事情がない限り定年まで雇用し続け、給料を払い続けなければなりません。そのため、正社員として研究補助者を募集することはほとんどありません。
私が求人サイトで公開されている求人を探しましたが、正社員で研究補助者を募集している求人はほとんどありませんでした。
数少ない正社員を募集している求人例を1件紹介します。この求人は、神奈川県にある株式会社ジオデザインから出されている求人です。
ジオデザイン社は、神奈川県や東京都の研究機関や民間企業に社員を派遣して、地盤防災に関わる実験や解析業務を行っています。つまり、事業形態としては派遣会社と同じです。
研究補助者へ転職するときには、正社員を募集している求人はかなり求人数が少ないです。
研究を支援する求人に転職で求められるもの
続いて、研究補助者に転職するときに求められることを確認しましょう。
冒頭でも少し触れましたが、研究者は専門知識や研究に従事した経験が求められることが多いです。未経験者の転職は狭き門です。
実は、研究補助者に転職するときのハードルは、研究職と比べてはるかに低いです。未経験者でも応募できる求人も多いです。
少しでも仕事に関係する作業・実験を経験していれば有利
研究補助者に限らず、転職では転職後に担当する業務と同じ仕事や作業の経験があれば有利になります。
前の章で紹介した派遣会社から出されている求人の応募条件は、以下の通りです。
この求人では、再生医療のベンチャー企業に派遣されて働く人材を募集していました。再生医療の研究では、下の写真のような実験機器(ピペットマン)を日常的に使用します。
研究補助者は、研究職の人から依頼された実験を担当します。その実験で取り扱う実験機器や分析機器の使用経験があれば、強いアピールポイントになります。
未経験で学歴がなくても転職できる求人もある
研究に従事する人は、大学院を修了している人が多いです。実際に私の周りでも、研究職で働いている人は全員修士課程か博士課程を修了している人です。
しかし、研究補助者は、このような学歴がなくても転職できます。
研究機関の物質・材料研究機構から出されている求人には、以下のように記載されています。
高卒で応募条件を満たします。そして、この求人で採用されて従事する硝子関係の知識や研究経験も求められていません。
私が一緒に仕事をした研究補助者も、大学を卒業していましたが、文系の学部出身でした。もちろん私たちが研究していた感熱紙や、感熱紙に含まれる化学物質の知識は全くありませんでした。
それでも、上司の指示に従い確実に実験結果を出していました。そして、仕事に慣れてくると「先輩、この条件はいい結果が出ない気がします。〇〇が△△%くらい含まれる条件がいいと思います」と、実験条件を提案するまでになっていました。
このように、研究補助者は業務未経験でも、学歴がなくても転職し、活躍することができます。
年齢を気にしなくてもよく、中高年でも採用される
そもそも求人を出すときに、年齢制限をすることは禁止されています。例えば、求人票に「30歳以下限定」という年齢を制限する記載をすることはできません。
では、何歳であってもどの求人に応募しても転職できるのでしょうか。現実は違います。採用する企業は、少しでも若い人材を採用して、会社に長く貢献してもらいたいと考えます。
しかし、研究補助者の求人は、何歳であっても応募でき、現実的に採用される可能性が十分あります。その背景には、契約期間が限られていることも影響しています。
例えば、冒頭で紹介した九州工業大学の求人では、年齢について求人票に以下のように記載されています。
研究補助者は、最短で1年、契約期間が長い求人でも3年~5年で契約が終わる求人が多いです。その期間内に定年を迎えなければ、採用される可能性が十分あります。
研究助手で働くときの年収・給与の実態を知る
研究補助者は主にサポート業務を担当し、重い責任を伴うことはありません。そのような仕事を担当する研究補助者の年収・給料はどのくらいもらえるのでしょうか。
冒頭で紹介した九州工業大学から出されている求人の年収は、以下の通りです。
なお、この求人の雇用形態は、契約社員です。賞与は支給されない可能性もあります。仮に賞与が月給4カ月分とすると、この求人の年収は344万円です。
ここまで5件の求人を紹介しました。すべての求人で提示されている給料・年収をまとめたものが、下の表です。
企業名・勤務先 | 給料 |
(大)九州工業大学 | 月給21.5万円 |
(国研)物質・材料研究機構 | 機構の規定に基づき決定
(詳細は非公開) |
非公開 | 時給1,300~1,500円 |
(株)ジオデザイン | 300万円~(20代のモデル年収)
450万円~(30代のモデル年収) |
非公開 | 時給1,600円 |
月給・年収が提示されている求人は2件ありました。サラリーマン・OLの平均年収は約500万円です。この数値と比較すると、研究補助者の年収は一般のサラリーマン・OLと比べて低いと言えます。
そして、研究補助者の給料の特徴は、時給で支払われることが多いことです。会社名非公開の求人2件は、いずれもシフト制で、給料は時給で支払われます。
時給1,600円の求人で月給の概算を計算してみます。この時給で1日6時間、週5日働くと、月給は以下の通りです。
・1,600円/時間 × 6時間/日 × 5日/週 × 4週 = 192,000円
あなたは、研究補助者としてどのように働きたいですか?
研究職の正社員と同じくらいバリバリ実験をしたい人もいると思います。一方で、毎日ではなく、週に3,4日手を動かしてお金を稼ぎたいと思っている人もいるかもしれません。
研究補助者はどちらの働き方も実現できます。そして、その働き方によって、応募すべき会社・求人は変わりますし、もらえる給料も大きく変わります。
研究補助者・アシスタントの求人に応募するときの志望動機の考え方
転職をするときに、やらなければならないことは多いです。そのなかで頭を悩ませるものの1つに「志望動機の作成」があります。私も転職を経験していますが、志望動機を考えるときには、かなりの時間を割きました。
志望動機では、転職希望先の企業に、あなたの経験やスキルを適切にアピールしなければなりません。
もしあなたに求人票に挙げられている仕事内容と同様の経験があれば、その経験をアピールするとよいです。例えば、生物系の実験経験がある場合には、以下のような志望動機が考えられます。
私は学生時代に生物系の研究室に所属していました。細胞内のタンパク質の機能解析が研究テーマでした。そのため、細胞の継代やピペットマンの操作は日常的に行っていました。
家庭の都合で週4日の勤務を希望しますが、学生時代の経験を活かして御社の研究業務の役に立ちたいと考えています。
また、研究補助者には全くの未経験者でも転職できます。未経験者が研究補助者に転職するときには、これまでの生活でアピールできることを探しましょう。
私はこれまで内職作業のアルバイトを2年していました。仕事は細かい作業が多かったですが、2年間ほとんど不適合品を出すことなかったです。
実験の経験はありませんが、手先の器用さを活かして少しでも早く技術を習得して、御社の力になりたいと考えています。
このように、あなたがこれまで経験した仕事や日常生活でのアピールポイントを探して、志望動機を作成しましょう。
まとめ
ここでは、研究補助者の求人に転職するときに押さえておくべきポイントについて解説しました。研究補助者は、研究職の補助業務を担当する職種です。
研究補助者の求人は、大学や研究機関から出されている求人が多いです。民間企業からも出されていますが、その求人数は少ないです。派遣会社に雇用されて働くこともできます。
研究補助者に転職するときには、仕事内容と同じ業務経験があれば有利になります。しかし、全くの未経験でも応募できる求人もあります。
研究補助者の年収は、サラリーマン・OLの平均年収よりも低いです。シフト制で給料が支給される場合もあります。あなたが希望する働き方に応じて、給料・年収も変わります。
志望動機を考えるときには、これまでのあなたの経験、身につけたスキルのなかで、アピールできるものを探しましょう。そのアピールポイントを仕事にどのように活かせるかを考えるとよいです。
これらのポイントを押さえて転職活動をすることで、研究補助者への転職を実現しやすくなります。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。