インフラエンジニアに転職をしようとしたときに、資格がないと転職できないのでしょうか。
もちろん資格があって採用に不利になることはありません。しかし、資格取得にばかり意識がいくと、転職活動がうまくいかないこともあります。
転職前に資格取得を目指す場合は、メリットとデメリットをしっかりと理解した上で転職活動を進めなければなりません。
ここでは、インフラエンジニアに転職するときの資格の位置づけについて解説します。具体的には、「インフラエンジニアの資格の必要性」「転職が有利になる資格」「転職前に資格取得をするメリットとデメリット」について順に説明します。
もくじ
インフラエンジニアが働くときに資格はいらない
最初に結論を言うと、インフラエンジニアとして働くときに資格は必要ありません。つまり、IT関係の資格が全くなくても、インフラエンジニアに転職することはできます。
実際にインフラエンジニアを募集している求人で、資格について記載されているものを紹介します。
この求人は、愛知県名古屋市にオフィスがあるいちえん株式会社のもので、未経験者も応募できます。求人の「対象となる方」の欄には複数の資格が活かせる経験・スキルとして挙げられていますが、「必須ではありません」と記載されています。
いちえん社は、インフラ導入支援、システム運用・保守、web制作を事業の軸にしている企業です。
もちろんこの求人票に挙げられている資格を取得していれば、履歴書に書いてアピールできます。しかし、取得していなくても応募はできますし、内定を勝ち取ることも十分可能です。
これは、キャリア採用の求人でも同様です。次に紹介する株式会社グロップエスシーの求人では、インフラ設計・構築の経験がある人材を募集しています。そして、この求人でもIT関連の資格が挙げられていますが、いずれも応募に必須ではありません。
グロップエスシー社は、岡山県岡山市に本社がある、製造請負事業とICT(情報通信技術)事業を中心に事業展開をしている企業です。
この求人のようにインフラエンジニアのキャリア採用求人であっても、資格なしでも問題なく応募できます。資格が応募条件に挙げられていても、必須条件として挙げられることはありません。
これまでインフラエンジニアとしての業務経験がないあなたも、資格がなくても応募をためらう必要はないです。
インフラエンジニアの仕事に活かせるIT資格一覧
インフラエンジニアは資格がなくても働くことができます。しかし、資格があれば転職活動でアピールすることができるので、転職活動を有利に進めることができます。
では、インフラエンジニアに転職するときに、取得していて有利になる資格はどのようなものがあるのでしょうか。
求人票で具体的な資格名が記載されているものを2件紹介します。
1件目は、東京都でサーバーインフラやネットワークの設計構築を事業展開している株式会社プロトシステムの求人です。プロトシステム社の求人では、歓迎・優遇条件として多くの資格が挙げられています。
続いて2件目の求人は、冒頭で紹介したいちえん社の求人です。この求人でも5種類の資格が活かせる経験・スキルとして挙げられていました。
この2つの求人票に挙げられている資格の概要をまとめると、以下の表のようになります。
資格名 | 概要 |
CCNA | ネットワークエンジニアの技能を認定する試験。基礎的なネットワーク技術を有することを証明できる |
CCNP | CCNAの上位資格の位置づけ。大規模ネットワークの導入・運用・保守の技術を証明できる |
LPIC | オープンソースであるLinuxの技術者としてのスキルを認定する資格。世界中で実施されている |
LinuC | LPICの日本国内版試験 |
Citrix認定試験 | コンピュータの仮想化やネットワーク機器などの開発・販売しているCitrix社の製品に関する専門知識を有することを証明する資格 |
MOS | WordやExcelなどのマイクロソフトオフィス製品の利用スキルを証明する資格 |
MCP | マイクロソフト社が提供する各製品に関する知識や利用スキルを証明する資格 |
ORACLE MASTER | オラクル社が開発・販売しているOracle Databaseシリーズを扱う技術力を認定する資格。データベースの管理・運用について問われる |
基本情報技術者試験 | IT全般の基礎となる知識・技能を認定する国家試験 |
応用情報技術者試験 | 基本情報技術者試験の上位資格の位置づけ |
ほかにも、クラウド環境として汎用のAWS(Amazon Web Service)の認定資格を取得するインフラエンジニアもいます。
いずれの資格もインフラエンジニアが働くときに活かすことができる資格です。そして、どの資格もIT業界の業務未経験でも受験することができます。
転職活動時にこれらの資格を取得していれば、転職活動でアピールすることができます。
転職前に資格取得するメリットはある
あなたがさきほど紹介したIT関係の資格を取得していれば、存分にアピールすればよいです。
では、資格を取得した状態で転職活動をすると、具体的にどのようなメリットがあるのかについて解説します。
知識をアピールできる
資格を取得するためには、スクールに通ったり、書籍を購入したりして勉強する必要があります。そして、資格を取得できると、ある一定以上の知識をもっていることを証明できます。
そのため、求人によっては資格をもっていることで、インフラエンジニアとして働くために必要な知識を持っていることを証明できます。
例えば、下に示すアルユーアイ株式会社の求人票には、「独学でもよいので、知識があること」が条件に挙げられています。アルユーアイ社は、東京都中野区に本社があるIT業務請負事業と人材事業を柱に事業展開している会社です。
この求人は、IT業界での勤務経験がなくても応募できます。つまり、未経験者でも応募し、採用される可能性が十分ある求人です。
そして、求人によっては、資格名が求人票に挙げられて、知識の目安として使われることがあります。実際に資格名が挙げられている求人票を2件紹介します。
1件目の求人は、東京都新宿区にオフィスがある株式会社KDDIエボルバのものです。この求人では、「ITパスポート相当の知識」があると歓迎されます。
KDDIエボルバ社は、ネットワーク・サーバーの設計構築・運用保守を提供しているIT企業です。
ITパスポート試験は、IT業界の資格のなかでは最も難易度の低い国家資格です。特に文系出身者や、IT業界未経験者が最初に取得を目指す資格です。私の知り合いで、営業職からエンジニアにキャリアチェンジした人も、転職後にITパスポート試験を取得していました。
2件目の求人も同じKDDIエボルバ社でインフラエンジニアを募集している別の求人です。この求人では、「CCNA相当の知識」があると歓迎されます。
CCNAは、ネットワークに関する知識・技能を認定する試験です。ネットワークエンジニアが受験を促されることが多いですが、インフラエンジニアにもネットワークの知識が必要なので取得を目指す人もいます。
これらの資格を取得していれば、知識を習得していることを証明することができます。
学習意欲があることをアピールできる
資格を取得することでアピールできるのは、知識だけではありません。
資格取得は、一夜漬けの勉強で達成できるものではありません。これまでIT関係の学習をしたことがない場合は、何カ月も勉強してようやく合格を勝ち取ることができます。
そのため、資格を取得していれば、IT関連の知識を習得しようとする意欲があることも伝えることができます。
私は過去に、転職フェアに参加してシステムエンジニアへの転職について企業の採用担当者に質問したことがあります。そのとき、以下のような話をしてくれました。
未経験者が転職するときは、中途半端な気持ちの人が多い。「何か勉強していますか?」と質問をしても「いや~特に何も」と答える人がほとんど。
興味があれば自分で勉強をする。そういう人を採用したい。
採用担当者に学習意欲があることをアピールすることで、印象を大きく変えることができます。資格を取得していれば大きなアピールポイントになります。
資格手当で年収を上げることができる
資格取得のメリットの3つ目は、「資格手当で年収アップを達成できること」です。
例えば、さきほど紹介したKDDIエボルバ社の求人では、資格手当として毎月の給料に3,000円~20,000円が上乗せされることが記載されています。
資格を取得していることで知識・技術力を証明できるだけでなく、給料も上がれば一石二鳥です。
なお、あなたが現在働いている会社でも資格取得支援制度が整備されているかもしれません。しかし、業務と直接関係ない資格は、受験費用の補助してもらえなかったり、取得時の一時金が支払われなかったりします。
私が化学メーカーで働いていたときに、入社直後は時間に余裕があったので、暇つぶしに資格取得を目指しました。これまでのバックグラウンドとは全く関係ない簿記の3級の勉強をして合格しましたが、資格手当はもらえませんでした。
このように、従事している仕事と直接関係のない資格は、取得しても年収には反映されないことが多いので、注意しなければなりません。IT関係の資格を取得してインフラエンジニアに転職すれば、業務に直結する資格なので資格手当が支給される可能性が高いです。
転職前に資格取得するデメリットを理解する
資格を取得していれば、知識・学習意欲をアピールでき、年収に反映させることも可能です。しかし、転職する前に資格を取得することはメリットばかりではありません。
続いて、転職前に資格取得をするデメリットについて解説します。
あなたに合った優れた求人を取りこぼす可能性がある
資格を取得するためには、ある程度の期間勉強しなければなりません。そして、資格によっては試験の開催頻度が多くないものもあります。
ITパスポート試験を例に説明します。ITパスポート試験は、東京のような大都市であれば毎週開催されています。しかし、私が住んでいる岡山県は以下のように1カ月に1,2回しか開催されないこともあります。
そして、ITパスポート試験は合格発表までに受験から1カ月ほどかかります。
ほかにも、多くのエンジニアが取得する基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、以下のように1年に2回しか開催されません。
引用:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験制度:試験区分一覧より
このように、資格の取得は勉強を始めてから合格するまでに何カ月もの時間が必要です。この期間に全く転職活動をしていないと、あなたの希望に合うような求人を逃してしまう可能性があります。
転職活動は新卒の就職活動と違って、早い者勝ちです。企業が気に入った人材を確保したら、ほかの求職者は応募すらできなくなります。
また、求人には募集期間が定められています。例えば下の求人では、掲載期間が記載されており、約4週間です。この期間を越えると、この求人は閲覧すらできなくなります。
あなたが資格取得のために勉強をしている間に、あなたに合った求人がほかの求職者にとられてしまう可能性は十分にあります。
資格取得を目指して勉強をすることは大切ですが、優れた求人を逃さないようにするための工夫も必要です。
受験費用の補助を受けることができない
2点目のデメリットは、資格取得のための受験費用の補助を受けられないことです。
資格の受験費用はさまざまですが、1万円を超えるものもあります。例えば、CCNAの受験費用は33,600円です。
さきほど、私が化学メーカーに勤務しているときに簿記3級に合格した話を紹介しました。このときの受験費用は私の自腹でした。会社が負担してくれるか一応上司に確認してみましたが、あっさりと却下されたことを覚えています。
その一方で、仕事に関連する資格取得を促されたときは、受験費用、試験会場までの交通費を会社が全額負担してくれました。
インフラエンジニアにとって、IT関係の資格は仕事に直結する資格です。そのため、多くのIT企業で資格取得のための支援をしてくれます。
例えば、下に紹介する株式会社スピードリンクジャパンは、未経験者でも応募できる求人を出しています。スピードリンクジャパン社は、東京都新宿区にオフィスがある、システムインテグレーション以外にも教育事業や就活支援サービスも展開している企業です。
スピードリンクジャパン社の求人で採用されると、まずは研修を受けて、インフラエンジニアとして働くために必要な知識・スキルを身につけます。
そして、研修の最終目標はネットワーク関連の知識を問われるCCNAの取得です。資格取得のために必要な教科書の購入費や受験費用は、会社が負担してくれます。
このような会社に転職するときには、転職前に資格取得する場合と比べて、転職後に取得した方が金銭的なメリットがあります。さらに、資格取得のための教材のサポートも受けることができます。
ここまで紹介した転職前に資格取得するメリットとデメリットを把握して、転職活動を進めるようにしましょう。
まとめ
ここでは、インフラエンジニアに転職するときの資格取得について解説しました。
インフラエンジニアは資格がなくても仕事はできます。そのため、資格取得を最優先に考えなくても転職は成功できます。
もちろん資格を取得していれば、知識や技術力をアピールできます。そこで、転職前に資格取得するメリットとデメリットを理解しておく必要があります。
転職前に資格取得するメリットは、履歴書や面接でインフラに関する知識や学習意欲をアピールできることです。会社によっては資格手当が支給されるので、年収を上げることもできます。
一方で、資格取得を優先しすぎると、あなたに合った求人を逃してしまう可能性があります。転職は早い者勝ちであることを認識して、転職活動を進めなければなりません。
また、転職前の資格取得では、受験に必要な費用を会社が負担してくれないことが多いです。インフラエンジニアに転職した後であれば、受験費用、交通費、教材代などを会社が支給してくれます。
以上のことを意識して資格取得と転職活動を進めることで、満足できる転職を実現しやすくなります。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。