化粧品メーカーの処方開発は、新製品の開発や既存品の改良に直接かかわることができるやりがいのある職種です。

処方開発の求人自体は比較的多く公開されていますが、実は会社によって仕事内容が大きく異なることがあります。また、あなたにこれまで処方開発に長年携わった経験があっても、応募できない求人もあります。

ここではまず、化粧品メーカーの処方開発担当者として転職したときの仕事内容について整理します。その後、転職の際に求められる経験やスキルについてまとめます。

処方開発の仕事内容の特徴

処方開発では新製品の処方内容を検討したり、既存品の改良をしたりします。そして、処方開発の求人は、転職サイトで「化粧品 処方開発」で検索すると比較的簡単に見つけることができます。

実際の求人例を示します。下の求人は、栃木県にある大手化粧品会社のものです。

化粧品メーカーは、同じブランドでも異なるユーザーを対象とした商品を発売していることは多いです。例えば、花王株式会社から発売されているニベアボディミルクは、複数の商品展開をしています。

具体的には、「つややかな肌へ」「弾むような肌へ」「澄みわたる肌へ」「乾燥トラブル肌に」のように、それぞれの商品ごとにテーマが異なります。もちろんこれらの商品は組成が異なっています。

また、処方開発の担当者として採用されると、処方内容を検討するだけでなく、試作したサンプルの製剤安定性も検討します。

そして、既存の商品も、常に同じものを売り続けることはほとんどありません。改良を加えて、使用者により満足してもらえるものを提供し続ける必要があります。

例えば、大手外資系の化粧品会社ユニリーバの日本法人であるユニリーバ・ジャパンが販売しているダヴは、以下のように商品に改良した旨を表記しています。

そして、商品の裏面には、高保湿ミルクが配合されていることが記載されています。

新たな成分を配合したり、新たな機能を追加したりした製品を見かけたときに、同じような表記を見たことがあると思います。

化粧品業界は新商品の発売が頻繁にあります。商品によっては、半年に1回くらいの頻度で新商品が発売になることもあります。このような新製品の発売に大きく貢献しているのが処方開発の担当者です。

市場調査や特許申請も担当することがある

処方開発の担当者として転職しても、処方開発だけを行うとは限りません。会社によっては、ほかの職種が行う仕事も兼任することがあります。

次に紹介する求人は、北海道札幌市に拠点を置く自然派化商品や健康食品の製造・販売をしている会社のものです。この求人に挙げられている仕事内容の1つに「市場調査、マーケティング」があります。

市場調査は、マーケティング部門が行う業務です。マーケティング職の仕事も幅広いですが、ライバル会社の商品の売り上げを解析したり、自社の既存製品がどの客層に対してよく売れているかを解析したりするのが主な仕事です。

続いて紹介する求人は、大阪府にある化粧品メーカーのものです。この求人の仕事内容の欄には、特許調査だけでなく、出願申請も担当することがあると記載されています。

私は医薬品の原薬や化粧品原料を製造するメーカーで研究職として働いていたことがあります。私が担当していたテーマは3人で業務を分担していました。

そして、テーマリーダーの先輩は、研究のマネジメントをしながら自ら実験も行いつつ、特許申請にも関わっていました。

その会社には知的財産部があったので、申請自体は知的財産部の担当者が行っていました。しかし、特許の明細は研究所が中心となって作成していました。

このように、会社によっては実際に実験で手を動かした人が特許申請に関わることもあります。

会社によって仕事内容の幅は大きく異なる

処方開発の求人でも、会社によって仕事内容が異なることを説明しました。

一般的には、企業の規模が大きくなるほど、部署が細分化できるので、1人に任される仕事の幅は限定され、専門性が高くなります。

冒頭で紹介した求人は、主に処方開発の仕事に携わるものでした。この求人の企業名は非公開ですが、大手企業であることが記されています。

逆に、会社の規模が小さくなれば、1人が複数の業務を兼任することになります。私が以前働いていた会社での話はまさにこの例です。

しかし求人のなかには、従業員が少なくても担当する仕事内容が処方開発に限定されているものもあります。

下に示す求人は、東京都世田谷区にある化粧品メーカーのものです。この会社は、従業員数が9名で、配属される部署には1名しかいません。

会社の規模としてはかなり小さいですが、この求人の仕事内容の欄に記載されているのは処方開発が中心です。

このように、会社の規模だけでは仕事内容が予測しにくいものもあります。したがって、転職活動をするときには、転職後に携わる仕事内容をしっかり確認し、あなたがやりたい仕事と合致しているか、相違がないかをチェックするようにしましょう。

転職で求められるもの

処方開発の求人は、比較的簡単に見つけることができます。しかし、誰でも転職できるわけではありません。続いて、処方開発の求人に転職する際に求められるものについて整理していきます。

処方開発の経験は必須

処方開発の求人票を見ると、そのほとんどで業務経験が必須条件に挙げられています。冒頭で紹介した求人にも、以下のように処方開発の経験が必須条件の1つに挙げられています。

また求人によっては、携わった化粧品の剤形が指定されているものもあります。続いて紹介する求人は、化粧品・食品・OTC医薬品などの研究開発を行っている埼玉県にある大手企業のものです。この求人では、水物や乳化剤など、粉体ではない化粧品の処方開発の経験が必須です。

化粧品にはハンドクリームや日焼け止めのような液状のものもあれば、口紅やアイシャドウのように固形のものもあります。

剤形が異なれば、使用する基剤成分は変わります。処方開発の経験と一言でいっても、商品が変われば経験を活かしにくいこともあるので、この求人のように剤形が指定されることもあります。

基本的に未経験での転職は難しい

ここまで紹介してきた求人は、すべて処方開発に携わった経験が必須条件に挙げられている求人です。では、処方開発の経験がない場合の転職の可能なのでしょうか。実は、未経験者の転職は現実的にかなり難しいです。

転職サイトのミドルの転職で「化粧品 処方開発」で求人を検索すると、以下のように150件の求人がヒットしました。このすべてが処方開発の求人ではありませんが、このなかで処方開発の未経験者が応募できる求人は1件だけでした。

その1件の求人は、会社名は非公開ですが東京都にある化粧品メーカーのものです。この求人の応募資格の欄には、「処方設計もしくは基礎研究の経験」が必須条件として挙げられています。

つまり、処方開発の経験がなくても、基礎研究の経験があればこの求人に応募することができます。ただし、処方開発の担当者を募集しているので、基礎研究に携わることで化粧品の基礎知識がある程度身についていることは最低条件といえるでしょう。

未経験者が処方開発に転職するためには、このような求人を根気強く探さなければなりません。

英語ができれば選択肢が広がる

化粧品の市場は日本国内だけではありません。多くの企業が市場拡大を試みており、世界中で製品を売ることを考えています。

また、化粧品を製造するのも、日本国内の工場だけではありません。人件費の安いアジア圏などの工場で製造することもあります。

そのため、企業によっては仕事で英語を使用する場面もあります。下に示す求人は、前の章で紹介した従業員数が9名の化粧品会社のものです。応募資格の1つに、メール交換レベルの英語力が挙げられています。

仕事で英語を使用する場面が多い人は、このような求人にも自信をもってエントリーすることができるでしょう。

実は、処方開発の求人では、英語力が必須条件に挙げられることは稀です。続いて、英語力が求められない求人例を2例紹介します。

1例目は、冒頭で紹介した東京都の化粧品メーカーです。この会社は海外展開も行っていますが、英語力は不問です。

2例目は、千葉県松戸市にある化粧品メーカーの求人です。この求人では管理職を募集していますが、英語力は不問と記載されています。

もちろん英語ができて困ることはありません。当然ですが、高い英語力があれば、英語力が求められる求人にエントリーすることもできます。また、英語力不問の求人で採用されても、入社後の事業展開によっては、英語を使用する場面が出てくる可能性はあります。

ただし、求人全体からみると、処方開発の求人に転職するときには、英語力がなくてもエントリーできる求人が多いことを覚えておきましょう。

転職エージェントに登録をしていれば、担当者を介してどの程度英語を使用する場面があるかを確認するのもよいでしょう。

まとめ

ここでは、化粧品メーカーの処方開発の求人に応募するときのポイントについて解説しました。

処方開発の本業は、新製品の処方を検討したり、既製品の処方に改良を加えたりすることです。しかし、これらの業務だけに専念できる求人ばかりではありません。求人によっては、市場調査や特許申請の一部も担当することを認識しておく必要があります。

処方開発の求人で採用されるためには、化粧品メーカーでの処方開発の経験が必須です。ただし、特定の剤形の化粧品開発に携わった経験が求められることがあるので注意しなければなりません。なお、処方開発の未経験者が応募できる求人はほとんどありません。

あなたに高い英語力があればアピールすることで転職を成功させやすくなります。求人票に英語力が応募条件として挙げられているものは少ないですが、今後は仕事で英語を使用する頻度は増える傾向にあることを認識しておく必要があります。

以上のことを理解して転職活動を進めることで、あなたの希望に沿った求人に出会いやすくなります。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。