薬剤師資格を有していれば、企業への転職が可能です。さまざまな業界で薬剤師は活躍していますが、そのなかの1つに食品メーカーがあります。

ただし、食品メーカーが取り扱っている商品カテゴリーは幅広く、すべての商品で薬剤師の知識が活かせるわけではありません。取り扱っている商品を認識したうえで企業を選ばなければ、あなたの知識や経験を活かすことはできません。

ここでは、薬剤師が食品メーカーに転職をするときのポイントについて解説します。具体的には、どの商品カテゴリーを選ぶべきか、薬剤師の知識を活かせる職種、求人の実態、転職を成功させるための秘訣について順に紹介します。

取り扱う商品カテゴリーは健康食品か医薬部外品

食品メーカーと一言でいっても、商品カテゴリーは非常に幅広いです。スーパーマーケットに入ってなかを見渡すと、冷凍食品、お菓子、清涼飲料水、総菜など、多くの品目が置かれています。

そのなかでも、薬剤師資格を活かすことができるのは、健康食品と医薬部外品です。これらに共通するのは、「ヒトに対して何らかのプラスの作用を期待したもの」であることです。

逆に、健康食品や医薬部外品以外を研究・開発・製造している食品メーカーには、薬剤師の知識を活かせる場面はありません。もちろん転職できないわけではありませんが、資格を活かした転職とは趣が異なります。

薬剤師の知識を活かせる職種を理解する

では、薬剤師資格を活かして健康食品や医薬部外品を扱っている食品メーカーに転職する場合、どのような職種が応募の対象となるのでしょうか。具体的な求人例を紹介しながら解説していきます。

研究開発職

最初に紹介する職種は、研究開発職です。研究開発職の求人のなかには、薬剤師資格が必須条件に挙げられているものがあります。下に示す求人は、会社名は非公開ですが、京都府にある健康食品メーカーのものです。

そしてこの求人で採用されると、研究開発を担当することになります。

具体的には、新たな生理活性物質を探索したり、研究対象の化合物の活性評価や問題点を解決したりします。活性評価では、以下のようなマイクロプレートを使用し、吸光度や蛍光強度を測定することで生理活性物質の有効性を評価します。

例えば、花王株式会社が発売しているヘルシア緑茶は、茶カテキンによる脂肪燃焼効果が認められている商品です。あなたの周囲で実際に飲んでいる人もいるのではないでしょうか。

しかし、茶カテキン自体には苦みがあり、決して飲みやすいものではありません。そこで花王株式会社の食品事業の研究部隊は、どうすれば苦みを感じにくい商品ができるかを研究し、現在発売されているヘルシア緑茶の開発に至っています。

ほかにも、どうすれば有効成分の安定性を延長させることができるか、容器は遮光にした方がよいのかなどを検討し、製品の品質向上を目指します。

このように、研究開発職として働くと、新製品の開発や、既存品の問題点の解決に携わることになります。

品質管理・品質保証

品質管理や品質保証にも薬剤師資格を活かして転職することができます。例えば、下のような求人が該当します。

この求人は、三重県にある総合食品メーカーのものです。この求人では、品質管理と品質保証の両方に携わる担当者を募集しています。

品質管理では、原料や製品が規格に適合しているかを検査することが仕事になります。具体的には、工場で原料の純度や粒度、製品の水分含量を検査したり、製品の菌検査を実施したりします。そして、検査で使用するのはHPLCなどの検査機器です。

このような機器を、薬剤師として働いているときに使用したことがある人は少ないと思います。多くの人は、薬学部で卒業論文研究の際に使用してから触れる機会がないのではないでしょうか。品質管理の担当者として採用されると、さまざまな分析機器を使用して、規格に適合しているかを検査することになります。

また品質保証の仕事は、製品が手順書通りに製造されているか、規格適合試験が正しく実施されているかなどをチェックすることです。そして、製品を出荷してもよいかを判断する部署が品質保証部です。

このように、どちらの仕事も商品の品質を検査したり、出荷の可否を判断したり、大きな責任を伴う仕事を担当することになります。

学術職(DI:ドラッグインフォメーション)

薬剤師として働いた経験だけでなく、薬学部で学んだ知識を活かすことができるのが学術職です。次に紹介する求人は、京都府にある日系グローバル企業でDI業務の担当者を募集しています。

学術職の仕事内容は、社内への情報提供とお客様対応の2つに分かれます。

社内への情報提供では、勉強会を開催して、社員の健康や病気に関する知識の教育を行います。

そしてお客様対応では、商品利用者の不満や疑問点の解消することが仕事になります。あなたもさまざまな商品パッケージに、以下のような連絡先が記載されているのを見たことがあるかもしれません。

商品を利用した人からの問い合わせに対応することも、学術職の仕事内容に含まれます。

業務経験必須の求人が多く、薬剤師資格が必要な求人はほとんどない

ここまで紹介してきた求人は、すべて薬剤師資格が必須条件に挙げられているものです。例えば、最後に紹介した学術職を募集している求人票の応募資格の欄は以下の通りです。

このように薬剤師資格が必須条件に挙げられていますが、実は食品業界の求人で薬剤師資格が必須の求人は稀です。つまりほとんどの求人は、薬剤師資格がなくても応募することができます。

例えば、下に示す品質管理の担当者を募集している求人では、品質管理の業務経験が必須条件の1つに挙げられていますが、薬剤師資格は挙げられていません。

このように食品業界の求人は、薬剤師資格よりも業務経験が求められるものが多いです。

食品業界で働く知人に、薬剤師資格が業界内でどのような扱いになるかを訊くと、以下のような話をしてくれました。

基本的には、どの仕事も薬剤師資格がなくてもできる。薬学部出身者が多いわけでもないし、さまざまなバックグラウンドの人が働いている。

薬剤師資格を有している人もいるが、特別優遇されているわけではない。資格手当も支給されないし、むしろ雑用を任させることがある。例えば、毒物劇物取扱責任者を任されている人や衛生管理者を任されている人がいる。

このような話も踏まえると、薬剤師資格があることで優遇される求人は少ないといえます。薬剤師資格があれば食品メーカーに転職できる求人もありますが、転職後は有資格者であることがプラスに働く場面は少ないことを覚えておく必要があります。

食品メーカーで働くときの年収

薬剤師が食品メーカーに転職すると、どのくらいの年収をもらうことができるのでしょうか。

冒頭で紹介した研究開発職を募集している求人は、以下のように450万円~600万円が提示されています。

そして、ここまで紹介した求人のうち、薬剤師資格が必須条件に挙げられている求人の提示年収をまとめたものが下の表です。すべて会社名が非公開の求人のため、紹介した順に番号を振っています。

求人番号 職種 提示年収

(万円)

1 研究開発職 450~600
2 品質管理・品質保証 ~650
3 学術職 500~600

そして、厚生労働省が報告している賃金構造基本統計調査では、薬剤師の平均年収は530万円~600万円です。この統計調査結果と比較すると、薬剤師資格を活かして食品メーカーに転職した場合、ほぼ同等の年収をもらうことができるといえます。

なお、薬剤師として働いていると、昇給額が少ないと感じている人は多いのではないでしょうか。私の知り合いで病院薬剤師として働いている人は、毎年の昇給額は月収で2,000円だそうです。特に地方都市で働いている場合は初任給が高く設定されているので、新卒で採用になったときと給料があまり変わっていない人もいるかもしれません。

一方で、食品メーカーは会社の業績によって昇給額が変わってきます。それでも私の周囲の食品メーカーで働いている人に話を訊くと、月収で5,000円~10,000円の昇給があることが多いです。

つまり、食品メーカーに転職すると、転職時の給料は同等でも、その後の昇給額が多い可能性が高いことも覚えておく必要があります。

転職成功のためには転職エージェントの活用が必須

ここまで3件の求人を紹介しました。実は、大手を含む5つの転職サイトで「食品メーカー 薬剤師」で検索して、薬剤師資格が必須条件に挙げられている求人はこれだけでした。

あなたが希望する職種や勤務地の求人が運よく見つかればよいですが、これだけしかない求人のなかから選ぶのは、あまりにも選択肢が少ないです。

そこで、転職を成功させるための効果的な方法が、転職エージェントから非公開求人を紹介してもらうことです。

実は、転職エージェントが取り扱っている求人のほとんどは非公開求人です。つまり求人サイトで検索しても、ほとんどの求人は公開されておらず、閲覧さえできません。

実際、多くの求人を扱っているマイナビエージェントでは、取り扱っている求人の80%程度が非公開求人であることがホームページに紹介されています。なお、非公開求人の割合は、どの転職エージェントでもほぼ同じです。

引用:非公開求人とは? – マイナビエージェントを改変

つまり、非公開求人を紹介してもらうだけで、あなたが出会うことができる求人は5倍になります。少しでも多くの求人から納得できる条件の求人を見つけることが、転職成功のための秘訣です。

また、非公開求人には条件面で優れた求人が多く含まれています。具体的には、「未経験でも応募できる」や「高年収」などの求人が非公開求人には多いです。

私が製薬会社に転職活動をしていたときも、転職エージェントから多くの非公開求人を紹介してもらいました。そのなかの1つで、新薬開発の安全性を管理する職種(ファーマコビジランス)の求人を紹介してもらったことがあります。

ファーマコビジランスは、未経験者が転職することはまず不可能な職種です。転職サイトで公開求人を検索しても、未経験者が応募できるものはほとんどありません。

そして、食品業界においても非公開求人を探すことで、公開求人を探しているだけでは見つからないような優れた求人に出会いやすくなります。

転職エージェントを活用し、非公開求人を紹介してもらうことで、あなたの転職が成功する可能性が高くなることを覚えておきましょう。

まとめ

ここでは、薬剤師が食品メーカーに転職するときのポイントについて解説しました。

薬剤師資格を活かすことができる商品カテゴリーは、健康食品か医薬部外品です。ヒトに対して何らかの作用をする商品を開発している企業で、薬剤師の知識・経験を活かすことができます。

職種としては、研究開発職、品質管理・品質保証、学術職が薬剤師を求めていることがあります。ただし、いずれの職種も薬剤師資格がなくてもできる仕事です。そのため、薬剤師資格が必須条件の求人は数が限られます。

食品メーカーで働くときの年収は、薬剤師の平均年収とほぼ同等です。前述のいずれの職種でも、求人票に提示されている年収に大きな差はありません。ただし、薬剤師と比べて食品メーカーでは昇給額が異なることを認識しておく必要があります。

そして、薬剤師が食品業界に転職成功させるには、非公開求人を紹介してもらい、より多くの求人に触れる必要があります。非公開求人を積極的に探すことによって、転職成功しやすくなります。

研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。