あなたは「実力を活かして新しい技術・製品の開発に携わりたい」「これから成長していく会社で事業の発展に関わりたい」、このような想いでベンチャー企業への転職を考えていると思います。

ベンチャー企業は企業によって働き方、企業規模、年収などが異なります。あなたがどのような製品・サービスの開発に携わりたいか、どのような働き方をしたいかによって選ぶべき企業は変わります。

ここでは、システムエンジニアがベンチャー企業に転職するときの注意点について紹介します。

ベンチャー企業で働くシステムエンジニアの仕事内容

まず、「ベンチャー企業」に明確な定義はありません。ベンチャー(Venture)とは、「冒険」という意味があります。そのため、ベンチャー企業は「新しいビジネスに挑戦する企業」や「新しい技術を活かした製品・サービスを提供する企業」として認識されることが多いです。

では、ベンチャー企業ではどのような製品・サービスを開発しているのでしょうか。

自社のオリジナル製品の開発に従事する

最初に紹介するのは、会社独自の技術を活かしたり、既存の技術を組み合わせたりしたオリジナル製品の開発です。ベンチャー企業と聞いて、最初にイメージする仕事ではないでしょうか。

下に紹介するカーブジェン株式会社の求人では、画像AIを活用した医療支援プロジェクトに従事するアプリケーションエンジニアを募集しています。

カーブジェン社は東京都渋谷区に本社があるベンチャー企業です。感染症分野に関連した次世代技術の研究開発を主な事業としています。

この企業が行っているのは、既存の技術を組み合わせて、これまでにないサービスを開発することです。

SIerとして他社製品の開発に従事する

ベンチャー企業は、自社製品を開発している企業ばかりではありません。SIerとして、他社製品のシステム開発を行っている企業もあります。

例えば、下に示す株式会社NODEは、大手メーカーや優良企業と取引があり、実際のプロジェクト例も紹介されています。

NODE社は、福岡県福岡市に拠点があるITベンチャー企業です。設立して間もない企業であり、これから成長していくという意味でベンチャー企業に分類されます。この求人ではシステム開発やインフラ構築などのプロジェクトから、希望の仕事を選択できます。

このように、SIerとして事業を展開しているベンチャー企業もあります。

システム開発業務と社内SE業務を兼任することがある

ここまで紹介した仕事内容は、いずれも製品・サービスの開発です。

あとで詳しく紹介しますが、ベンチャー企業は従業員数が少ないことが多いです。そのため、仕事内容に製品・サービスの開発だけでなく、社内SE業務も含まれることがあります。

実際の求人例としては、下に紹介する株式会社サリバテックの求人が該当します。サリバテック社は、AI技術を活かしてだ液からがんリスクを診断できる製品を開発している企業です。

この求人で挙げられている仕事内容は、Webシステムの開発です。具体的には、社内システムやWEB顧客システムの開発に従事することになります。

しかし、求人票には「AIを用いて検査精度の向上に貢献できます」とも記載されています。この業務内容は、製品開発に関係するものです。

ベンチャー企業のように従業員数が少ない企業では、特定の業務だけを担当するのではなく、複数の役割を担うこともあります。

ベンチャー企業の特徴

ベンチャー企業とそうでない企業では、どのような違いがあるのでしょうか。

企業規模は小さい会社が多い

前の章で少し触れましたが、ベンチャー企業は従業員数が少ない企業が多いです。

ここまで紹介した3社の従業員数をまとめたものが、下の表です。いずれの会社も規模は小さいです。

会社名

従業員数

(人)

カーブジェン(株)6 7
(株)NODE1 25
(株)サリバテック3 21

従業員数が少ないと、前の章で触れたように複数の業務を兼任する可能性があります。

その一方で、会社によっては、従業員数がかなり多い会社もあります。

下に紹介する株式会社オープンハウスグループは、求人票でギガベンチャーと謳っています。

そしてオープンハウスグループ社は、従業員数が4493人です。これまで紹介してきた3社と比べると、従業員数が圧倒的に多いです。

オープンハウスグループ社は、設立が1997年です。当然設立時は、従業員数が今よりも少なかったです。事業が成長するにつれて従業員数が増えて、現在の規模になっています。

現在も成長を続けている企業という意味でギガベンチャーと紹介していると考えられます。

ベンチャー企業のほとんどは従業員数が少ないですが、まれに従業員数が多い企業も含まれていることを覚えておきましょう。

経営不安定なこともありリスクを伴う

ベンチャー企業は、立ち上げて日が浅い企業であることが多いです。そのため、実績も少なく、経営が安定していないことが多いです。

私の知り合いで、ITベンチャー企業を立ち上げた人がいます。彼の会社は、従業員数が2人だけです。私の友人と、システム開発を担当するシステムエンジニアです。

彼の会社は、行政機関向けのアプリケーション開発を主な事業としています。私が話を訊いたときは、会社を立ち上げて3か月目くらいの時期でしたが、「まだ契約は取れていない。あと半年で契約が取れないと、システムエンジニアに給料を払えなくなる」と嘆いていました。

立ち上げて間もない会社は、いつ私の友人の会社のような状況に陥ってもおかしくありません。

・客観的に評価される企業に転職する

では、ベンチャー企業はどの会社も経営のリスクが高いのでしょうか。少しでも事業が発展していきそうな会社を見つける方法はないのでしょうか。

1つの方法は、客観的に評価をされている企業に転職することです。

例えば、下に示す株式会社プラスアルファ・コンサルティングは、ベストベンチャー100に選出されている企業です。

ベストベンチャー100とは、企業のマーケティング・ブランディングや官公庁と民間企業の共創を支援しているイシン株式会社が、これから成長が期待されるベンチャー企業を選出しているものです。

引用:ベストベンチャー100 – ベンチャー通信が「これから成長が期待される100社」をご紹介より

このように、他社からの評価を受けている企業であれば、今後の事業成長の可能性が高いと考えることができます。

未経験者でも応募できる求人もある

冒頭で紹介したように、ベンチャー企業は「新しいビジネスに挑戦する企業」や「新しい技術を活かした製品・サービスを提供する企業」を指します。そのような企業から出される求人は、経験者を募集していることが多いです。

最初に紹介した、画像AIを活用した医療支援プロジェクトを展開しているカーブジェン社の求人では、以下のように経験者を募集しています。

では、システムエンジニアとしての業務経験が全くない未経験者は、ベンチャー企業に転職できないのでしょうか。

実は、求人数は少ないですが、未経験者でも応募できるベンチャー企業の求人は存在しています。前の章で紹介したNODE社の求人がその例です。

NODE社の求人の応募条件は、以下の通りです。未経験者でも歓迎されることが記載されています。

システムエンジニア経験者は、身につけている知識・技術をそのまま活かして転職後も働くことができます。

一方で、未経験者がベンチャー企業に転職するときには、すべてをゼロから学ばなければなりません。そのため、転職後に学べる環境が整っているかを確認するようにしましょう。

さきほどのNODE社では、先輩のサポートのもとで基本スキルから習得できることが、求人票に記載されています。

ベンチャー企業は、立ち上げてから日が浅いことが多いです。そのため、教育環境や福利厚生などが十分に整っていない可能性もあります。

転職してから後悔しないように、求人票の内容を確認したり、選考過程で企業に直接質問したりして、情報収集を怠らないようにしましょう。

提示されている年収はさまざま

最後にベンチャー企業のシステムエンジニアに転職したときの年収を確認してみましょう。

ここまで4件の求人を紹介しました。それぞれの求人で提示されていた年収をまとめたものが、下の表です。

企業名 提示年収

(万円)

カーブジェン(株)6 540-780
(株)NODE1 264-480
(株)サリバテック3 450-800
(株)オープンハウスグループ4 600-1200
(株)プラスアルファ・コンサルティング5 450-800

NODE社の求人は、未経験者も歓迎していました。そのため年収は低めに設定されていると考えられます。オープンハウスグループ社は、従業員数が4000名を超える企業です。そのほか3社の求人は、いずれも経験者を募集しています。おおよそ500万円~800万円が提示されています。

参考までに、サラリーマン・OLの平均年収は、約500万円です。また、システムエンジニアの年代別の平均年収は、厚生労働省が毎年調査・報告しています。その報告内容をグラフ化したものが、下の図です。

引用:賃金構造基本統計調査より

このような信頼性の高いデータと、求人で提示されている年収を比較することで、提示されている年収の水準を確認することができます。

ベンチャー企業への転職を考えているあなたは、「給料はほとんどなくてもいいから、新しい技術を活かした製品開発に関わりたい」とは考えていないと思います。

転職の満足度を高めるためにも、仕事内容や企業の風土だけでなく、提示されている年収の妥当性を確認しながら応募する企業を選びましょう。

まとめ

ここでは、システムエンジニアがベンチャー企業に転職するときの求人の探し方、求人・会社ごとの違いについて解説しました。

ベンチャー企業は、自社の技術を活かした製品・サービス開発や、SIerとしての事業展開をしています。

ベンチャー企業は、従業員数が少ないことが多いです。なかには、事業が発展して、大企業になったベンチャー企業もあります。

設立して日が浅い企業が多いので、経営が不安定な可能性があります。他社からの評価を受けている企業などを探すことで、少しでも事業が発展していく可能性が高い企業を見つけることができます。

提示されている年収は、システムエンジニアの平均的な水準よりも高い場合があります。政府統計などを参考に、提示されている年収の妥当性を確認しながら応募する企業を選択しましょう。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。