世の中にある多くの製品・サービスには、何かしらのシステム(ソフトウェア)が利用されています。このシステムを設計・開発する職種が、システムエンジニア(SE)です。

システムエンジニアは、モノづくりやサービス提供に関わることができる、やりがいのある職種です。

そして、システムエンジニアは未経験からでも転職することができる職種です。学生時代にシステム開発の学習をしたことがないあなたでも、転職を成功させて活躍することができます。

ここでは、20代30代が未経験からシステムエンジニアに転職するときの求人の探し方・求人の特徴を解説します。

システムエンジニアが活躍する業界は幅広い

システムエンジニアが活躍する業界・製品は非常に幅広いです。私たちの身近にある多くの製品やサービスが、システムエンジニアの仕事によって作られています。

例えば、下の写真は、私のスマートフォンの画面です。この画面に表示されているアプリは、すべてシステムエンジニアが開発したものです。

ほかにも、転職者の多くが閲覧する求人サイトも、システムエンジニアが開発しています。例えば、下の写真のdodaには、多くの求人が掲載されています。この求人サイトの機能を設計・開発することも、システムエンジニアの仕事です。

そして、企業から出される求人票にも、携わる製品やプロジェクトの概要が記載されていることがあります。

次に示すアクサス株式会社から出されている求人には、携わるプロジェクトの内容が記載されています。アクセス社は、東京だけでなく北海道から福岡まで全国9カ所に事業所がある企業です。

機器やサービスが使用者の指示通りに動くためのシステムを設計・構築するのがシステムエンジニアの仕事です。幅広い業界の製品開発でシステムエンジニアは活躍しています。

未経験からシステムエンジニアに転職するときのポイント

冒頭で、業務未経験からでもシステムエンジニアに転職できることを紹介しました。

ここからは、実際の求人例を示しながら、未経験者が応募できるシステムエンジニアの求人や、転職活動のポイントを確認していきます。

あなたはシステムエンジニアにどのようなイメージを持っていますか? おおよそ以下のようなイメージではないでしょうか。

  • プログラミングができないと仕事にならない
  • 学生時代に専門で学んだ人でないと携わることができない

もちろんこれらのイメージは正しいことが多いです。しかし、すべてのシステムエンジニアに当てはまるわけではありません。

全くの業務未経験のあなたでも転職して、活躍することは十分可能です。

高卒や文系出身者でもシステムエンジニアに転職できる

私の大学時代の友人・先輩後輩のなかには、工学部を卒業してシステムエンジニアとして活躍している人が何人もいます。

では、大学のような教育機関で専門教育を学んだ人しかシステムエンジニアに転職できないかというと、そうではありません。

これまで全く畑違いの業務しか従事してこなかった人でも、システムエンジニアの求人に応募することができます。実際の求人例を1例紹介します。

次に示す株式会社夢テクノロジーから出されている求人は、高校卒業以上の学歴があれば応募することができます。また、文系出身者であっても、エンジニアに興味があれば問題ありません。

夢テクノロジー社は、主に製造業やIT業界向けのアウトソーシング事業を中心に行っている企業です。

私の知り合いのなかには、大学で文学部を卒業してシステムエンジニアとして働いている女性がいます。彼女は「おもしろそうだから」という理由でシステムエンジニアになり、女性SEとして活躍し続けています。

もちろん、未経験者がシステムエンジニアに転職して、転職直後から開発現場で活躍できるわけではありません。転職後には研修を受けて、実力をつけてからシステム開発に携わるようになります。

さきほどの夢テクノロジー社の求人にも、さまざまな研修が社内に整備されていることが紹介されています。

この求人に限らず、未経験者が応募できるシステムエンジニア募集の求人は多いです。

10万件を超える求人を取り扱っている大手転職サイトのdodaで「システムエンジニア 未経験」と「SE 未経験」のキーワードで求人を検索した結果が、下に示す図です。多くの求人がヒットすることがわかります。

これまで専門的な知識を習得していない高卒の学歴しかない人や文系出身者でも、システムエンジニアに転職して、将来的に活躍することは可能です。

未経験でシステムエンジニアに転職できるのは何歳まで?

転職を考えるときに、年齢は気になるポイントの1つです。新卒として働き始めた直後や、20代であればそこまで気にならないかもしれません。しかし、30代になってくると「未経験で応募できる求人はあるだろうか」と思うでしょう。

まず、前提として、企業が求人を出すときには、年齢制限をすることは原則禁止されています。つまり、何歳でも応募できますし、何歳でも採用される可能性があります。

しかし、現実はそうではありません。それは、例外が認められているからです。

具体的には、若手を採用して長期的にキャリア形成を図る目的で求人を出すことが認められています。このような場合は、年齢制限が設けられています。

実際に年齢制限が設けられている求人を2件紹介します。

1例目は、神奈川県川崎市に本社がある株式会社アルファシステムズから出されている求人です。アルファシステムズ社はソフトウェアの受託開発をコアビジネスとしている企業です。

アルファシステムズ社の求人では、26歳以下が応募条件です。大学を卒業している場合は、いわゆる第二新卒であれば年齢の条件をクリアできます。

2件目の求人は、株式会社セラクから出されているものです。セラク社は、東京都に本社があり、IT技術に強みがある企業です。

セラク社の求人では、32歳以下であることが条件に挙げられています。

すべての求人で年齢制限が設けられているわけではありませんが、少しでも年齢が低い方が転職を成功させやすいことは間違いありません。これは、採用する企業の立場になって考えるとわかりやすいです。

以下の3人が同時に応募してきたときに、どの人材を採用したいと思いますか? ほとんどの採用担当者は、20代前半の応募者を採用すると思います。30代後半になると、さらに選択肢が狭くなります。

20代・30代の未経験者がシステムエンジニアに転職することは可能ですが、少しでも早く転職活動を始めた方が、応募できる求人の選択肢が広くなります。

製品・サービスが使われる業界の知識があれば仕事をしやすい

最初の章で、システムエンジニアはさまざまな製品のシステム開発に携わることを紹介しました。製品のジャンルは幅広いです。

仕事をするときには、その製品・サービスが使われる業界の知識があれば、仕事がやりやすいです。実際の求人でも、製品やサービスの知識があれば応募しやすいものがあります。

次に紹介する株式会社日立製作所の求人では、これまでの経験や希望に応じて担当するフィールドが決まります。複数の仕事が挙げられていますが、そのなかの1つに金融システムがあります。日立製作所社は、世界有数の大手電機メーカーです。

そして、この日立製作所社の求人の応募条件は、以下のとおりです。システムエンジニアとしての業務経験がなくても問題なく応募できます。そして、金融や保険における業務知識が「あると望ましい条件」の1つに挙げられています。

この求人では、金融機関向けのITシステムやサービスの開発に携わる可能性があります。このようなプロジェクトに関わるときには、金融の知識があれば仕事がしやすいです。

システム開発をするときには、開発するシステムを利用するユーザーと打ち合わせをします。金融機関向けのシステムの場合は、金融機関の人と打ち合わせをします。

そのときに、「金利とは何か」「元本とは何か」のような金融の基礎知識がないと、打ち合わせになりません。

システム開発をするときには、そのシステムが組み込まれる製品やサービスの知識があれば仕事をしやすいです。また、これまで未経験の業界の製品開発に携わる場合は、その業界の知識を吸収する姿勢があれば、仕事に早く慣れることができます。

SEになるにはIT系の資格があれば有利に転職できる

資格があれば、あなたが有している知識を客観的に評価できます。転職活動のときに、資格はアピールポイントの1つになります。

情報技術に関する知識習得を担保する資格は、いくつか知られています。具体的には、以下の3つの資格は、システムエンジニアが取得を目指すことが多い資格です。

  • ITパスポート試験
  • 基本情報技術者試験
  • 応用情報技術者試験

いずれの資格も、システムエンジニアで働いている経験がなくても受験し取得することができます。参考書も下の写真のように書店で購入することができるので、独学で取得することができる資格です。

そして、資格があれば、ITへの興味・関心があることをアピールできます。転職する前の時点で取得していれば、システム開発に必要な知識やシステム開発への関心をアピールすることができます。

例えば、下に紹介する株式会社テクノプロの求人では、ITに関する資格があれば、応募条件を満たします。

テクノプロ社は、1万人を越える技術者・研究者が在籍する技術人材サービス企業です。この求人では、大阪府の開発センターで業務システムの導入やリプレース(交換)を担当する人材を募集しています。仕事内容は以下の通りです。

IT系の資格があれば、転職活動のときに有利になりますが、注意しなければならないことがあります。それは、システムエンジニアとして働くために資格は必須ではないことです。

私の知り合いのシステムエンジニアのなかにも、さきほど紹介した資格を取得していない人もいます。

資格がなくても、システムエンジニアの仕事をすることはできます。資格がなくても、システムエンジニアへの転職をためらう必要はありません。

SEに向いている人・向いていない人

未経験の業種に転職するときに、「自分に向いているだろうか」と考えると思います。私も未経験の職種に転職しましたが、転職前は同じ不安がありました。

転職してから「こんなはずじゃなかった。辛い。きつい」と感じても遅いです。転職する前から、システムエンジニアに求められるスキルや考え方を把握しておくことで、このような後悔を防ぐことができます。

続いて、実際にシステムエンジニアとして働いている私の友人の経験談も含めて、システムエンジニアに求められるスキルや、向いている人について解説します。

コミュニケーションスキルがなければSEで活躍することは無理

システムエンジニアは、製品やサービスのシステムを設計する職種です。これらの開発には、多くの人が関わります。それらの人と適切にコミュニケーションを取りながら仕事を進めなければなりません。

私の友人が、システムエンジニアとして働いていて苦労した話を教えてくれました。

私が働いている会社は、自社でオリジナルのシステムを開発するだけでなく、親会社やそれ以外の会社からシステム開発を受託している。

システムを設計するときに、少しでもお客さんの要望を取り入れないといけないし、満足させないといけない。そのための調整をするのがシステムエンジニアの仕事だから、コミュニケーション能力は大切。

お客さんが求めているものを作らないと、開発の終盤になって「求めていたものと違う」と言われて、設計からやり直しになることがある。

また、プログラマーに「〇〇日までに作ってください」と依頼をした場合に、その後の進捗を確認しないといけない。進捗がわからないと、何が問題になっているか、どこで詰まっているかがわからない。

トラブルの内容によっては、システムの設計から変更しないといけないこともある。設計を根本から変えないといけない場合は、納期に間に合わないこともある。

もし納期が間に合いそうにない場合も、ちゃんとお客さんに遅れる理由を説明して、納得してもらわないといけない。そうしないと、お客さんからの印象は悪くなる。

システムエンジニアと顧客、システムエンジニアとプログラマーは、どちらも適切なコミュニケーションをとらなければ、仕事をスムーズに進めることはできません。

求人によっては、コミュニケーションスキルについて明記されている求人もあります。

下に示す株式会社アスペックの求人では、コミュニケーションスキルが必須条件の1つに挙げられています。この求人では、営業支援システム(企業が顧客情報や営業活動内容を管理するために利用するシステム)の開発・保守を担当する人材を募集しています。

アスペック社は、広島県に本社があるIT企業で、システム開発やソリューション提供を主な事業としています。

なおこの求人は、経験者を募集しています。未経験のあなたは応募できませんが、これからシステムエンジニアを目指すあなたにもこのスキルは必要になります。

システムエンジニアは開発に関わる人とコミュニケーションを取り合い、製品を開発しなければなりません。

論理的思考ができなければきつい

システムエンジニアは、製品やサービスのシステムを設計する職種です。システム設計をするときに、論理的思考は必須の考え方です。

設計の例を、下に示すクレジットカードの申し込み画面で紹介します。このwebサイトのページも、システムエンジニアが設計しています。

クレジットカードの申し込みでは、氏名、性別、生年月日などを入力しなければなりません。そして、それぞれの項目で、入力する内容には条件があります。

例えば、氏名の「ふりがな」を入力する箇所に漢字を入力すると、エラーが表示されます。「ふりがな」には全角のひらがなを入力する必要があります。

入力した内容をチェックし、問題があればエラーを表示する機能もシステムエンジニアが設計します。

そして、設計したシステムをプログラマーに説明して、プログラムを作ってもらわなければなりません。システム開発をほかの企業から受託する場合は、発注元企業の担当者に設計内容を説明して、要望を満足するものかの確認もします。

このような仕事のプロセスで、順序だてて論理的に説明できるスキルが必要になります。

システムエンジニア・SEの年収の実態を知る

最後に、システムエンジニアに転職したときの年収を確認しましょう。

システムエンジニアの平均年収は、毎年厚生労働省が賃金構造基本統計調査として報告・公開しています。この調査結果をグラフ化したものが、下の図です。

サラリーマン・OLの平均年収は、約500万円です。この数値と比べると、システムエンジニアの平均年収は比較的高いと言えます。

しかし、この統計はすべての経験年数のシステムエンジニアが含まれています。未経験で転職する場合は、元々システムエンジニアとして働いている同世代の人に比べて、どうしても年収は下がります。

経験年数0年、つまり未経験者の年収についても、賃金構造基本統計調査が実施されています。その結果が、下に示すグラフです。

実際の求人でも、この調査結果と同じ水準の年収が提示されています。例えば、最初に紹介したアクサス社の求人では、以下のように420万円以上が提示されています。

ここまで7件の求人を紹介しました。経験者を募集していたアスペック社以外の6社の求人で提示されている年収を一覧にしたものが、下の表です。

企業名 提示年収

(万円)

アクサス(株) 420~
(株)夢テクノロジー 300~450
(株)アルファシステムズ 350

(大卒1年目)

(株)セラク 300~500
(株)日立製作所 450~
(株)テクノプロ 350~450

未経験からシステムエンジニアに転職するときには、転職直後の年収相場や、将来の年収の増え方を把握しておく必要があります。

まとめ

ここでは、未経験からシステムエンジニアに転職するときに押さえておくべきポイントについて解説しました。

システムエンジニアが活躍できる業界は、非常に幅広いです。あなたの身の回りにある製品や、日常的に利用しているサービスは、システムエンジニアが開発したシステムで成り立っています。

未経験からシステムエンジニアに転職するときには、学歴がなくても問題ありません。全く専門知識を学んでいない文系出身者でも、応募条件を満たす求人があります。

募集を出す企業は、少しでも若い人材を採用したいと考えます。20代・30代で応募できる求人は多いですが、少しでも早い方が有利に転職できます。

システムエンジニアとして働くときに必要なのは、コミュニケーションスキルと論理的思考です。システム開発には多くの人が関わるので、適切にコミュニケーションをとりながら仕事を進めなければなりません。

未経験からシステムエンジニアに転職した直後は、現在の年収から下がる可能性もあります。経験を重ねることで、サラリーマン・OLの平均年収を超える年収になる可能性が高いです。


研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。

一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。

ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。

これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。