食品製造業の事業所数は、製造業のなかで最も多く、食品業界は日本国内の巨大産業の1つです。
そして、マーケティング職の仕事は、企業の売上に直接影響を与える重要な仕事です。厳しい側面もありますが、やりがいも感じやすい職種です。
実は食品業界のマーケティングの仕事は、会社によって特徴が大きく異なります。そのため、転職失敗を防ぐためには、求人ごとにどのような違いがあるのかを把握して転職活動をする必要があります。
ここでは、食品メーカーのマーケティング職への転職を成功させるための方法を解説します。
まずは、マーケティング職の具体的な仕事内容について確認します。その後、会社ごとの仕事内容の違い、転職で求められる経験、転職を成功させるためのポイントについて順に解説します。
もくじ
マーケティング職の幅広い仕事内容を理解する
マーケティング職は、その企業の売上の責任を負う部署です。売り上げ目標を立てることや、目標を達成するための施策を立案して、多くの部署と連携をとって仕事を進めなければなりません。
そして、マーケティング職の仕事内容は非常に幅広いです。
実際の求人例を下に1例示します。この求人は大手食品メーカーの日清食品株式会社で、即席麺のマーケティング担当者を募集しています。
この求人を見ればわかると思いますが、マーケティング職では単一の仕事だけをするのではなく、多くの仕事を担当することになります。
この求人で挙げられている仕事内容について順に解説していきます。
市場調査
商品を売るときに、闇雲に商品を作って販売しても目標の利益を達成することはできません。市場規模や商品売り上げの現状を把握した上で、販売戦略を考える必要があります。
例えば、自社商品が市場のなかでどのくらいのシェアがあるかを把握しなければ、今後の売り上げ目標を立てることはできません。
また、自社製品のシェアの変動だけでなく、ライバル会社の商品の動向も調べなければなりません。
例えば、昨年の同時期と比べて自社製品のシェアが50%から45%に減り、ライバル会社Aの商品が30%から35%に増えている場合を考えます。この場合、売り上げの5%がライバル会社に食われているので、その原因を考えなければなりません。
シェアの変動を正確に把握しなければ、そもそも売上低下の原因を考えることができません。このように、市場調査は今後の売上目標や売り上げ改善策を考えるための重要な仕事です。
なお市場調査は、自社で消費者にアンケートをすることもあれば、調査会社からデータを購入することもあります。
商品企画
複数の商品を取り扱っている場合は、どの商品の販売を止めて、どの商品を育て、どのタイミングで新商品を出すのかについて考えます。
例えば、大手食品会社の株式会社明治が発売しているカールシリーズを知っていますか? 子供の頃に食べたことがある人も多いと思います。
そして明治社は、市場調査の結果を踏まえて、カールシリーズの販売地域変更と一部商品の販売終了を発表しました。
このような決断をすることは、商品企画の仕事に含まれます。
また、食品メーカーは常に新商品を生み出す仕事をし続けなければなりません。新商品企画のための材料は、市場調査の結果や、商品開発部門や営業部門からの情報などです。
例えば、「10代の女性を対象としたカロリーを抑えたスナック菓子」というコンセプトを立案し、商品開発部隊に開発を依頼します。このような新商品の企画をすることもマーケティング職の1つです。
販売促進(販促、セールスプロモーション)
新商品や既存の商品は、何も宣伝をしないとユーザーの目に留まる機会が少ないので、売り上げを伸ばすことができません。そこで、販売を促進するために宣伝活動をしなければなりません。
宣伝の方法は多岐に渡っており、具体的には以下のようなものが挙げられます。
- テレビCM
- SNS(Twitter、Instagram、LINEなど)
- 店頭でのPOP
テレビCMであれば、同じCMを何年も流していると視聴者も飽きてしまいます。そのため、定期的にリニューアルをしなければなりません。
例えば、アイドルや俳優がCMに起用されていても、ずっと同じ人が起用され続けることはありません。具体的な事例としては、下に紹介する缶コーヒーのCMも、起用される人は時代の流れに合わせてどんどん変わっています。
SNSは多くの人が利用しているツールです。SNSを利用していて、以下のような商品の宣伝を見たことがある人もいると思います。
また、店頭でもイベントを企画して、利用客が商品に興味をもつような工夫をしなければなりません。例えば、バレンタインデーが近づくと以下のようなチョコレートの宣伝を毎年のように見ると思います。
このような宣伝をいつ、どのくらいの経費をかけて実施するかを立案・決定するのが販売促進の仕事内容です。
会社によって仕事内容は大きく異なる
マーケティング職が担当する仕事が幅広いことが理解できたと思います。では、マーケティングの担当者として採用されると、前の章で紹介したすべての業務に携わることになるのでしょうか。
実は、会社によって担当する仕事の種類は大きく異なります。実際の求人例を2例紹介します。
まず1例目は、東京都港区に本社を置く大手乳製品メーカーの森永乳業株式会社の求人です。この求人の「仕事内容」の欄を下に紹介していますが、多くの仕事内容が挙げられていることがわかると思います。
これらはすべてマーケティング職の職域に含まれる内容です。
続いて紹介する2例目の求人は、愛知県名古屋市が拠点のお菓子メーカーのものです。この求人では、販売促進の企画を担当する人材を募集しています。
さきほどの求人と違い、挙げられている業務内容は限定されています。おそらくこの会社では、マーケティング部門のなかで販売促進、市場調査、商品企画のそれぞれに担当者が配置されていることが予想されます。
パッケージデザインの管理も担当することがある
ほとんどの食品は包装容器に入って販売されており、包装容器にはパッケージデザインがあります。例えば、下の商品は大手食品メーカーの味の素株式会社から発売されているものです。おいしそうな餃子の写真や商品の特徴がプリントされています。
ほとんどの会社は自社でパッケージデザインの素案は考えますが、最終的なデザインは外注します。そして、自社の担当者と外注先がすり合わせを行いながらデザインを決定します。このような過程を経て、パッケージのデザインが決まります。
そして、マーケティング部門が外注先との窓口になることが多いです。そのため、仕事内容にパッケージデザイン関係の業務が含まれることがあります。
下に示す求人は大阪府八尾市が拠点の飲料・食品メーカーのものです。この求人では企画開発部の人材を募集しており、仕事内容にパッケージデザイン検討が挙げられています。
この求人で中途採用されると、一般的なマーケティング職の仕事内容であるコンセプト立案や商品企画も担当します。
なお、マーケティング職の全員がパッケージデザインに携わるわけではありません。先ほど述べたように、会社によって担当する仕事内容は大きく異なります。
商品開発も兼任することがある
マーケティング職の仕事は、一言でいうと「売り上げの責任をもつ」ことです。売り上げ目標を立て、目標を達成するための市場調査、商品企画、販売促進を実行します。これらの仕事はデスクワークが中心であり、会社の実験室で実験を行うことはありません。
その一方で、商品の試作品を作成することは、商品開発職の仕事であり、明確に職域が異なります。
このような違いは、求人サイトの分類を見てもわかります。下に示す求人サイトでは、マーケティング職と商品開発職は分類が異なります。
引用:食品転職.COMを改変
ところが、会社によってはマーケティングと商品開発を兼任することがあります。
下の求人は愛知県名古屋市が拠点の粉末食品・菓子メーカーのものです。この求人の仕事内容の欄には、マーケティングの仕事と商品開発の仕事の両方が挙げられています。試作品の開発は、商品開発部門の仕事内容です。
この求人で採用されると、商品の企画から最終的な商品化まで担当することになります。ここまで説明したように、会社によって担当する仕事内容は大きく異なります。
このような現状があるので、あなたはまず転職後にどのような仕事に携わりたいのかを明確にしなければなりません。そのうえで、求人票に記載されている仕事内容をしっかりと確認し、ミスマッチが起きないように転職活動をする必要があります。
マーケティング職への転職はキャリア採用が基本
では、食品メーカーのマーケティング職に転職を成功させるためにはどのような経験が求められるのでしょうか。
食品メーカーのマーケティングの求人は、ほとんどの場合マーケティングの経験が必須条件に挙げられています。
冒頭で紹介した日清食品株式会社の求人では、応募するためにはマーケティング経験が必須です。目安は5年以上とされています。
詳細は割愛しますが、ここまで紹介してきた求人はすべて業務経験が必須条件として挙げられています。このように、マーケティング職の未経験者が中途採用されるのは難しいと考えてください。
食品業界以外からの転職も可能
実は、食品業界以外の業界でマーケティングの仕事に携わった経験があれば、食品業界に転職することは可能です。マーケティング職の求人では業界が指定されていることは稀です。
さきほどの求人でも、求められているのは「一般消費者向けの商材を扱うメーカー」でのマーケティング経験です。
マーケティングの仕事は、化粧品業界、電機業界、自動車業界、通信業界など、多くの業界であります。例えば、テレビをつければ化粧品、家電、自動車、携帯電話などのCMを見る機会は多いです。
これらは各社のマーケティング部隊が販売戦略を考えて、CMを打ち出しています。このような業務に携わった経験は、業界が変わっても活かすことができます。
転職失敗を防ぐために転職エージェントを活用する
転職活動をするときに、求人サイトで求人を検索し、気に入った求人が見つかれば応募する人が多いかもしれません。このとき、転職エージェントの力を借りることで、転職の失敗を防ぎやすくなります。
転職エージェントを利用するメリットは多くありますが、その一部を下に示します。
- 仕事内容の詳細を企業に確認してくれる
- 非公開求人の紹介
最初の章で述べたように、マーケティング職の仕事は多岐に渡ります。そして、会社によって担当する仕事内容は大きく異なります。
転職エージェントは、求人を出している会社がどのような人材を募集しているのかを熟知しています。あなたのやりたい仕事と、求人票に挙げられている仕事内容がマッチしているかを確認してくれます。
2点目のメリットは、出会うことができる求人数を増やす方法です。非公開求人とは、一般には公開されておらず、転職エージェントを介してのみ出会うことができる求人のことです。
実は、転職エージェントが取り扱っている求人は、ほとんどが公開されていません。例えば、大手転職サイトのマイナビエージェントでは、下図のように取り扱っている求人の約80%が非公開求人です。
引用:非公開求人とは? – マイナビエージェントを改変
つまり、非公開求人を紹介してもらうだけで、出会うことができる求人数は5倍になります。少しでも多くの求人からあなたの希望に沿ったものを選ぶことで、転職の失敗を防ぎやすくなります。
まとめ
ここでは、食品メーカーのマーケティング職に転職するときのポイントについて紹介しました。
マーケティングの仕事は、市場調査、商品企画、販売促進など非常に幅広いです。すべての業務を担当することもあれば、単一の業務だけを担当する会社もあります。
またこれらの業務以外にも、会社によってはパッケージデザインの管理や商品開発も兼任することがあります。このように、会社ごとに仕事内容は大きく異なることを認識しておく必要があります。
食品メーカーのマーケティング職に転職をするときには、これまでにマーケティング職として勤務した経験が求められることが多いです。なお、マーケティング職の経験があれば、食品業界以外からの転職も可能です。
そして転職の失敗を防ぐためには、仕事内容をしっかりと確認し、少しでも多くの求人に出会う工夫をする必要があります。
研究職や開発職で転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自力で求人を探すと、希望の条件の求人を探す作業だけでなく、細かい労働条件や年収の交渉もすべて自分でやらなければなりません。
一方で転職サイトに登録して、転職エージェントから求人を紹介してもらうと、非公開求人に出会うことができます。また、労働条件や年収の交渉もあなたの代わりに行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が異なります。例えば「取り扱っている求人が全国各地か、関東・関西だけか」「事前の面談場所は全国各地か、電話対応だけか」「40代以上でも利用できるか、30代までしか利用できないか」などの違いがあります。
これらを理解したうえで転職サイトを活用するようにしましょう。そこで、以下のページで転職サイトの特徴を解説しています。それぞれの転職サイトの違いを認識して活用することで、転職での失敗を防ぐことができます。